屋根は家を構成する要素の中で最も重要なものの一つである。普段は間近で点検をしたり、劣化状況を把握したりすることができない箇所にあるだけに、定期的なメンテナンスが後回しになってしまいがちだ。
しかし、よく考えてみて欲しい。例えば梅雨時など1年の中でも雨がよく降る時期を含め、一年中雨や雪から家族の快適な生活を守ってくれるのは他でもない、屋根なのではないだろうか。
また、台風が来た時などに飛来物があっても、屋根のおかげで安全を確保することができている。さらに、しっかりした屋根がなければ室内の温度を一定に保つことすらできない。それくらい、屋根は大切なものなのだ。
屋根の性能を長期間保ち続けるためには、定期的な塗り替え等のメンテナンスが必要となるが、メンテナンスの費用相場や実際にどのような工事をすれば効果的なのかわからなくて、なかなか着手できない人も多いことだろう。
屋根塗り替え時の知っておいて得する豆知識や、工法や業者選びのステップで損しないための方法を本記事で解説していく。
この記事読むことで理解できること
屋根塗り替え工事の費用はどのくらいかかるのか?
実際に屋根の塗り替えをしたいけども、どのくらいの費用がかかるのか世間一般的には不透明な部分が多く、提示された見積書の内容が全て適正なのかどうか戸惑う人も多いのはないだろうか。
屋根塗り替え工事の費用は大きく分けて
・屋根の素材による違い
・地域毎の違い
・選択する塗料の違い
の3点による違いがある。一言で言うと、施工する屋根の状況や地域特性などを勘案するため、「屋根ごとに費用が異なる」ということになる。つまり確実に言えることは、日本全国津々浦々、一つとして同じ状況の屋根は存在しないということである。
屋根の素材が家ごとに異なるのはもちろん、同時期に建てられた家でも地域が違えば気候特性も多種多様なため、劣化の進行具合もそれぞれ異なるはずだし、メンテナンスに際してどのような塗料を選択するかによっても費用が異なるのは当然のことである。
それぞれの要素別に、より詳細に見ていこう。
屋根の素材による違い
屋根の素材は、建築の際のコスト面や施工主のこだわり、意匠の面などによっても異なる。代表的な屋根の素材と特徴は以下の通りである。
屋根材 | 特 徴 | 塗り替え時期 | 工事単価(1㎡) |
スレート | 軽量で、施工のしやすさが特徴 | 7~8年 | 2,200~6,800円 |
セメント瓦 | 塗膜の劣化によりセメント自体の劣化も進行する。 | 7~8年 | 2,700~5,300円 |
金属製屋根 | 防水性に優れているが、定期的にメンテナンスしなければ錆が回る | 7~10年 | 2,700~6,800円 |
上記の素材の違いにより、施工費用やメンテナンスの周期に違いが出てくる。
次に一般的な戸建て住宅の場合の工事単価の相場を素材別で見てみよう。もちろん、その屋根の周辺環境や劣化の進行具合にもよるため、あくまで目安として捉えていただきたい。
特に使用する塗料によって工事単価は大きく変動する。
屋根材 | 工事単価相場 | ||
---|---|---|---|
ウレタン樹脂塗料 | シリコン樹脂塗料 | フッ素樹脂塗料 | |
スレート | 21~29万円 | 26~36万円 | 49~66万円 |
セメント瓦 | 26~29万円 | 33~36万円 | 46~52万円 |
金属製屋根 | 26~29万円 | 26~32万円 | 49~66万円 |
(トタンの場合))
※戸建て住宅の延床面積の平均値が122㎡(約37坪)。屋根面積を98㎡(30坪)程度として算出。
地域による違い
日本国内であれば北は北海道から南は沖縄まで、様々な地域がある。当然、地域毎に気候特性は大幅に異なる。したがって、それぞれの地域における家づくりに対する考え方が多少なりとも違ってくるのは当然のことである。
例えば、日本の中でも気温の低い北海道では、断熱性や気密性に重点を置いた家づくりが行われるだろうし、逆に一年中気温の高い沖縄では、室内に籠もった熱や湿度を外部に逃がすための透湿性や通気性が求められるだろう。
こうした地域毎の家づくりへの考え方の違いを背景として、屋根の定期的なメンテナンス費用も異なってくるのは想像に難くない。また、気温の高低だけではなく、以下のような条件でも違いが出てくる。
条 件 | 想定されるリスク |
台風が通りやすい | 飛来物などの影響により屋根が損傷するリスクがある。塗り替え前調査のタイミングで補修が必要であることが発覚するケースが多く、費用が想定よりも上振れすることもある。 |
海沿い | 海水に含まれる塩分の影響で、特に金属製の屋根は錆が回りやすい。定期的な調査および錆止め塗装等のメンテナンスが一般的な屋根よりも高頻度で必要。 |
雨が多い | 雨に含まれる酸性の成分が屋根材の劣化を促進する。雨漏り等で部屋内への被害も懸念される。また、塗り替え工事をする際、雨の日は作業ができないため、工期の設定が困難な場合があり、人件費がかさむ傾向にある。 |
雪が多い | 雪の重さにより屋根材が変形・破損するリスクがある。雪下ろしをしなければならないほど雪深い地域では、人の体重により屋根材が破損することも考えられる。変形・破損個所への対応が別途必要になり、費用がかさむ傾向にある。 |
このように、その屋根の置かれている状況によりメンテナンスの頻度や方法、発生する費用も変わってくることがわかる。自分の家の置かれた環境に合わせたメンテナンス計画を立てておく必要があるのだ。各地域の状況を勘案して、工事相場の目安は以下のようになる。
想定される工事費用相場 | 理 由 | |
台風が通りやすい地域 | 26~36万円(+補修費用) | 雨や風などのダメージにも耐えられる塗料を選択する必要がある。飛来物等により屋根が損傷している場合は別途補修費用も必要。 |
海沿い地域 | 35~45万円 | 耐久性のあるシリコン樹脂塗料などを使用する必要がある上に、塩害による錆が著しい場合は電気工具を使用したケレン処理が必要となる。 |
雨が多い地域 | 26~36万円 | 耐久性のあるシリコン樹脂塗料などを使用する必要がある。 |
雪が多い地域 | 21~36万円 | 潤滑性の高いウレタンやシリコン樹脂塗料を使用する必要がある。 |
※戸建て住宅の延床面積の平均値が122㎡(約37坪)。屋根面積を98㎡(30坪)程度として算出。
塗料による違い
どのような塗料を選択するかによっても、費用面では大幅に変わってくる。塗料ごとの性能はもちろん、耐用年数も異なるため、イニシャルコストやランニングコストも含めてトータルで検討する必要があるのだ。屋根の塗り替えに用いられる代表的な塗料について以下にまとめる。また、塗料のおおよその価格や詳細な性能は後述する。
塗 料 | 耐用年数・特徴 | 塗料自体の単価 |
アクリル樹脂塗料 | 3~7年程度。耐久性に乏しい | 1,200~1,500円/㎡ 最も安価だが、耐用年数を考えるとランニングコストが高くなり非効率な部分がある。 |
ウレタン樹脂塗料 | 5~10年程度。施工しやすい | 1,500~2,000円/㎡ シリコン樹脂塗料と比べると耐用年数が短い。アクリル樹脂塗料と同じく長期的なランニングコストがかかるためやや非効率。 |
シリコン樹脂塗料 | 8~14年。仕上がりが美しい | 1,800~2,500円/㎡ 仕上がりの良さや耐久性にも優れているため、コストパフォーマンスが良い。 |
フッ素樹脂塗料 | 10~20年。耐久性に優れている | 3,000~4,500円/㎡ 耐久性が抜群に良いが、価格が高いため、コストパフォーマンスはやや劣る。 |
上図を見ると、「価格が安い塗料を施工して頻繁に塗り替えを行う」か「価格が高い塗料を使って長期的なランニングコストを意識するか」という選択をしなければならないことがわかる。つまり、「価格が安く、耐久性に優れた塗料は存在しない」ということになる。
屋根の塗り替え工事を行う場合は多くのケースで足場の架設が必要になるため、頻繁にメンテナンスをしていても足場架設・撤去の費用が余分にかかってくることになる。一方で耐久性に優れた塗料を選択すると、ランニングコストを抑えることができるが、一回当たりの施工費用は高額になる。これらの二面性をどのようにとらえるかという、施工主の判断にもかかってくる部分である。
各塗料別の工事費用相場を見てみよう。
工事費用相場 | |
アクリル樹脂塗料 | 18~21万円 |
ウレタン樹脂塗料 | 21~29万円 |
シリコン樹脂塗料 | 26~36万円 |
フッ素樹脂塗料 | 46~66万円 |
※戸建て住宅の延床面積の平均値が122㎡(約37坪)。屋根面積を98㎡(30坪)程度として算出。
工事費用を安く抑えようと思えばアクリル樹脂塗料かウレタン樹脂塗料だが、この2種類の塗料は耐久性に問題がある。かといってフッ素樹脂塗料は外観や耐久性は秀でているが、コストがかさむ。したがって、最も費用対効果のバランスが取れているのはシリコン樹脂塗料である。
シリコン樹脂塗料の中でもおすすめなのが、ニッペの「水性シリコンセラUV」という塗料である。耐久性に優れている上に耐熱性も併せ持っており、汚れやカビを防ぐ性能もある。長期的なスパンで見ると非常に有能と言える塗料である。
屋根塗り替え工事の項目別費用相場をチェック!損しないための知識まとめ
いざ屋根塗り替え工事を検討しようという段になった時、まずは専門業者に依頼して見積を取得することとなる。工事概要ごとの費用相場や、見積取得の際に注意すべきポイントを以下にまとめたため、是非抑えておいてほしい。
これらのポイントを考えずに検討を進めてしまうと、悪徳業者に騙されてクオリティの低い仕事をされてしまう可能性もある。良い仕事をしてもらうためには、情報を取捨選択して自分で工事概要を決め、良心的な業者を選んで依頼する必要があるのだ。
見積に提示されている各項目の内容を把握する
見積書の内訳を詳細に確認する人は少ないかもしれない。裏を返せば、業者にとって顧客の知識が少なければ少ないほど、金額を吊り上げることが容易になるということである。そうならないためにも、概ねどの項目がどのような工事や作業を意味するのか把握しておく必要がある。
一般的な屋根塗装工事で必要となる各項目の詳細と費用相場について見ていこう。
足場架設
費用相場:1㎡あたり500~1,000円
一般的な住宅の屋根を想像してみて欲しい。2階建てや3階建ての住宅もある中で、高所での作業になる。おまけに急な勾配があったり足場が悪かったりで、そのままの状態で安全に作業することは物理的に不可能である。
そこで、作業上の安全を確保するとともに、作業のために必要となる資材・塗料などの運搬を容易にするために鉄パイプや鉄製のプレートを組み合わせて足場を架設する。これは屋根や外壁工事の際には必須の項目であり、一部の陸尾根式の屋根などを除いては、足場なしで作業することはできない。
養生
費用相場:1㎡あたり200~600円
隣家への塗料の飛散を防止したり、塗料を塗装すべき箇所以外に誤って塗装しないように各種シートやテープでマスキングする作業が「養生」と呼ばれるものである。また、住宅の場合は植栽や車などに塗料や粉じんがかからないようにブルーシートなどで覆う作業も含まれる。適切な養生なしには仕上がりの品質を確保することは困難である。
費用相場の幅が広くなっていることに気付かれた方もいるだろう。養生とは「飛散防止ネット」「養生シート」「マスカー」などの養生材を使用して養生を行うものである。隣家との距離が近い場合や、下地処理作業に電動工具を使用する必要がある場合などでは塗料や粉じんの飛散防止対策として飛散防止シートを多めに消耗する必要がある。このようなケースでは、養生費用も高額になるケースがあるのだ。各養生材の役割や費用は以下の表を参照してほしい。
項 目 | 役 割 | 単 価 |
飛散防止シート | 隣家に塗料や洗浄水が飛散するのを防止 | 2,000円/枚(1.8×2.6m) |
マスキングテープ | 塗装面とそれ以外の面の縁取り | 1巻150円(18mm×18m) |
ポリシート | 塗装しない面を覆う | 1,400円/枚(1.8m×200cm) |
マスカー | マスキングテープとポリシートが融合 | 1巻350円(1,100mm×12.5m) |
高圧水洗浄
費用相場:1㎡あたり100~350円
高圧洗浄機で塗装しようとする箇所の汚れを落とす作業を指す。特に屋根材は長期間風雨にさらされ続けているため、塵や鉄粉などが大量に付着している。そうした微細な汚れを落とさずに塗料を塗装してしまうと、錆の原因になったり、防水性能を落とすことにもなりかねない。
高圧水洗浄の費用は実際の屋根の汚れ具合によって決定される。すなわち、汚れや劣化の進行具合によって対処法が違ってくるということである。そこまで汚れや劣化が進行していない場合だと高圧水のみの噴射で事足りるが、水だけでは足りないと判断された場合はバイオ洗浄剤を使用する場合もある。当然このケースでは費用も通常より多くかかるというわけだ。
下地処理(ケレン)
費用相場:1㎡あたり200~2,000円
※ただし、錆や劣化状況によっては加算あり
塗装前に下地を整える作業を指す。具体的には、微細な破損個所がある場合はコーキング材で埋めたり、欠けの補修をしたり等である。
金属屋根などの場合はそのままの状態だと表面に凹凸がなく塗料の付着が悪いため、ヤスリや工具を使って表面を傷つける作業(ケレン)を行う。ケレン作業は金属屋根の表面を傷つけるのと同時に、錆や汚れを落としたりする作業も含まれる。こうすることで塗装後の塗料の剥がれや錆を防ぐことができるため、塗装の前段階としては重要な作業である。
下地処理の方法は一つではない。費用相場を見てもわかるように、採用する手法によっては費用もかさむことがある。どんな手法を採用するかは、屋根材の錆の状況や破損状況による。下地処理の手法については以下の表を参考にしたい。
段 階 | 対 応 | 費用(1㎡あたり) |
錆等がほとんど所見されない | 表面洗浄(ワイヤーブラシ、箒) | 200~400円 |
部分的な錆が所見 | 手作業での錆除去(ヤスリ、スクレイパー) | 500~1,000円 |
錆・劣化が進行 | 機械工具での錆除去(ディスクサンダー、電動ブラシ) | 1,200~2,000円 |
下塗り
費用相場:1㎡あたり500~1,200円
※選択する塗料によって変動あり
プライマーを屋根全体に塗っていく作業を指す。プライマーとは、仕上げ材の本塗り前に塗る下地材のことで、塗料の付着を強固にする性質を持つ塗料である。
長期間に渡って塗料の効果を発揮させるためには必須の作業と言える。
上塗り(中塗り)
費用相場:1㎡あたり1,400~4,800円
※選択する塗料によって変動あり
下地材(プライマー)がしっかり乾燥したら、ここでようやく仕上げ材の塗料を塗っていく段になる。仕上げ材はプライマーの上に最低2回塗装を行っていく。こうすることで仕上げ材の層ができ、塗料の性能を最大限に引き出すことが可能になる。
縁切り(スレート瓦の場合)
費用相場:1㎡あたり200~600円
塗料は液体のため、塗装した後に放置すると、スレートとスレートの間に塗料が浸透し、隙間がなくなってしまう。こうなると、屋根の透湿性や通気性が損なわれたり、毛細管現象により部屋内への漏水の原因になったりする。
スレート瓦の場合は最後の仕上げの工程として、この項目が見積に含まれているかどうかしっかり確認しておこう。
管理費・諸経費
費用相場:上記の工事費用の合計の5~10%程度
「現場管理費」などと表記される場合もある。職人だけで作業はできないため、現場管理や実際の施工指示を出す人の人件費もこれに含まれる。また、現場までの交通費や、廃材が発生した場合の処分費もこの項目に含まれる場合がある。
上記の各項目で挙げた費用相場は、おおよその目安として考えて欲しい。地域特性や選択する塗料、屋根の立地状況による施工の難易度等によっても金額は変動するため、一概にパターン化できないのが実情である。
必ず相見積を取る
「1社の専門業者に見積から施工まで全て丸投げ」という人も少なくない。これは大変危険な行為である。提示された見積金額が適正かどうか、判断する基準がないからである。最低でも2~3社から相見積を取り、比較した上で検討するべきである。そうすることで、大まかな費用相場が見えてくる上に、結果的に施工費用を抑えることもできる。
また、信頼できる業者の見積金額が高額だった場合に、金額の安い他社の見積金額を伝えることで値引き交渉も優位に進めることができるメリットもある。
屋根の塗料の価格はどのくらい?
屋根の塗り替えにおいて「どの塗料を選択するのか」は極めて重要である。安価でも耐久性に劣る塗料があったり、逆に耐久性は優れていても高価なものもあったりするため、性能面とコストのバランスを見ながら、長期的な視点で判断する必要があるのだ。
屋根塗り替え工事に使用される一般的な塗料の価格や性能を以下に解説する。
アクリル樹脂塗料
価格相場:5,000円~10,000円(塗料単体の価格の相場となります。)
最も安価な部類の塗料である。耐久性にはあまり期待できず、長くても7~8年程度と言われている。デザインの面では優位性があり、発色が良く、施工する上でも扱いやすいため、外観を重視したい場合には短期的に使用してみるのも一つの選択肢かもしれない。
ただし、アクリル樹脂塗料が登場した当時はコスト面とデザイン性の良さから好んで使われていたが、耐久性に難があることから長期間風雨にさらされる屋根の塗り替え材としては不向きであるという意見もある。
ウレタン樹脂塗料
価格相場:10,000円~30,000円(塗料単体の価格の相場となります。)
※一般的な住宅(2階建て)の場合
防水性や耐久性などの性能面や、コストの面からもバランスの取れた塗料と言える。特にマンションの屋上やバルコニーなどでの防水仕上げ材としてウレタン塗膜防水を採用している物件も多く、施工も容易であることから屋根の塗り替え用としても選ばれる機会の多い塗料である。
後述するシリコン樹脂塗料に比べると耐久性がやや劣る面もあり、ランニングコストを考えると単純な比較は困難だが、適切にメンテナンスしていけば最大限性能を発揮してくれる塗料と言える。
シリコン樹脂塗料
価格相場:30,000円~80,000円(塗料単体の価格の相場となります。)
※一般的な住宅(2階建て)の場合
ウレタン樹脂塗料よりも耐久性に優れており、約15年程度性能を発揮すると言われている。現在の外壁や屋根材の塗り替え材としては主流になりつつある塗料である。
施工性やデザイン性も問題なく、長期間にわたって愛用していくことができる。特に屋根の場合は、塗り替え工事の際に足場架設が必須となるため、耐久性に優れたシリコン樹脂塗料は屋根の塗り替え工事に適した塗料と言える。
フッ素樹脂塗料
価格相場:80,000~160,000円(塗料単体の価格の相場となります。)
- 一般的な住宅(2階建て)の場合
シリコン樹脂塗料よりもさらに耐久性に優れており、環境によっては20年以上の長期間にわたって性能を維持することが可能な塗料である。耐久性が他の塗料と比べても格段に良く、しかも熱や寒さにも耐える能力が高いため、屋根の塗り替え材としてはこの上ないと言えるだろう。
しかしながら高性能を発揮する一方で価格が比較的高いため、まだまだ一般住宅用としては定着していないというのが実情である。
一度塗装してしまえば長期間にわたって安定的な性能を維持してくれるため、今後はシリコンやウレタンに代わる塗料として定着していく可能性がある。
屋根塗装の時期について損しないための判断基準とは?
屋根の塗り替えには、築年数や素材によって適切な時期がある。ただ、屋根はなかなか頻繁に直接確認することができないものであるために、いつ、どのように施工のタイミングを判断すれば良いのかわからない場合が多い。ここでは、施工に最適な時期をどのように判断すれば良いのかを考えてみよう。
一般的な塗り替え周期は、上述したようにスレートは新築から約10年、トタンなどの金属屋根は新築から約8年などと言われているが、その通りに施工する方がレアケースである。その屋根の劣化状況や周辺環境によって、施工時期の決定は個々に判断しなければならない。メーカーや業者が言う「耐用年数」や「塗り替え周期」は、参考程度に聞いておくのが良い。
判断基準①:塗装の艶や屋根材本来の色が失われる
新築当初は艶のある屋根材も、経年とともに劣化が進行していく。経年劣化の最初の段階として、「塗装の艶が失われる」「色が薄くなる」というものがある。とは言えまだこの段階では塗り替えを検討するのは時期尚早だと言える。
「新築と同じような状況ではなくなってきている」ということを認識し、雨漏りがしていないか、結露が出てきていないかなどを注意深く観察しておきたい。
判断基準②:屋根材が白くなっていないか
「チョーキング現象」というものを聞いたことはないだろうか。「白亜化」と呼ばれることもあるこの段階では、紫外線や風雨の影響により塗料の樹脂が劣化することにより、塗料の色成分が白い粉のようになって表面に発現している状態である。
チョーキング現象は、全体的に塗装面が白っぽくなっていることで容易に見分けることができるが、例えば白い塗料などの場合は目視での確認が困難である、このような場合は実際に塗装面を触り、白い粉が手や指に付着することで識別することができる。塗装面の劣化状況を把握する上で、見逃してはならないサインの一つである。
この兆候が見られれば、そろそろ屋根の塗り替えの検討を始める時期に来ていると言える。見積取得や専門業者への相談など、準備を進めよう。
判断基準③:コケやカビが生えていないか
かなり劣化が進行した状態である。塗装面自体にコケやカビが生えるということは、屋根材自体が水分を含んでいることと同義であり、防水性能が著しく低下している状態である。
このような状態が所見されれば、速やかに塗り替えや、劣化の進行具合によっては屋根材の交換・葺き替えを検討しなければならない。
判断基準④:塗装の剥がれ
屋根としての基本的な性能を果たせていない可能性がある。屋根材が露呈した状態だと、いつ部屋内に漏水してもおかしくないと思われる。
もう一刻も猶予はないと考えて、可能な限り速やかに専門業者への相談をおすすめする。
屋根の塗装工事の自己負担金額を火災保険を活用して減らす方法とは?
定期的なメンテナンスとしての屋根の塗り替え工事の費用が、一部でも火災保険から賄えるとなったらどうだろう。少しでも施工費用を抑えられるに越したことはないし、せっかく保険料を支払っているのだから、有効に火災保険を使いたいというのは当然の希望であると思われる。
分譲マンションの場合などは居住者全員から毎月決まった金額の修繕積立金を徴収して、貯まったお金の範囲内で計画的に修繕を実施していくが、一戸建ての場合はそうした資金計画を自ら作成する必要がある。当然、「屋根の塗装工事を見越した資金計画」まで詳細に組めている人は少数であるというのが現状である。したがって、屋根塗装工事は一戸建てオーナーにとっては突発的な支出になり得るのだ。
そこで、火災保険の基本的な仕組みや実際に火災保険を活用して屋根塗装にかかる自己負担額を減らすことによって、突発的な支出に賢く備える方法についてご紹介しよう。
火災保険の役割
家を建築した時に火災保険に加入されているだろうか。火災保険は、一定の事象により保険対象の建物や家財が損害を被った場合に、予め定められた契約内容により保険金が支払われるものである。
住宅ローンの審査申し込みには火災保険の加入が前提となっているケースがほとんどのため、おそらく「全く無保険の家」というのはそうそうないのではないかと思われる。
実はこの火災保険を有効に使えていないケースが目立つ。一括払いであれ毎月払いであれ、せっかく高い保険料を保険会社に支払っているのに、大変もったいない話である。
火災保険で何が補償されるか
「火災保険」が何を補償の対象にしているのか、明確に答えられるだろうか。意外とこの部分についてほとんど知らず「火災保険に入っているからうちは安心」などと言っている人を見かけることがある。火災保険によって何が補償されるのか説明するためには、火災保険の大まかな種類を理解する必要がある。
・建物を対象とした火災保険
世間一般で認識されている「火災保険」は、おおむねこの「建物を補償の対象とした火災保険」と言うことができる。文字通り、自然災害や突発的な事故発生時に建物の全部もしくは一部分が破損・汚損した場合に、損害保険金が支払われる仕組みになっている。ここで言う「建物」とは、柱や梁などの主要構造体から外壁や屋根などの外装材などをいう。契約内容によっては基礎や門、塀なども含まれる。
代表的な例としては、火災等が発生した場合に建物に生じた損害を補償してくれるというものだ。具体的には「キッチンでの揚げ油の不始末を原因としてガスコンロや換気扇などの一部分が焼けてしまった」場合には、それらの補修費用が損害保険金が支払われる。今回の記事では、この建物火災保険を活用して屋根塗り替え工事の自己負担額を抑える手法をご紹介する。
・家財を対象とした火災保険
建物を補償の対象とする火災保険に対して、あまり知られていないのが「家財を補償の対象とした火災保険」である。ここでいう家財とは、ソファーやテレビ、ベッドなどの家具類を始め、日常生活で使用する衣類やカーテン、場合によっては時計などの携行品も含まれる。つまり、家の中の「建物以外のもの」が補償の対象になるのだ。こちらの火災保険は、自然災害や事故発生時に家財に発生した損害が補償される。
詳しくは下記記事にてまとめているので是非チェックして頂きたい。
「自然災害でも火災保険が適用されるのか? 4つの事例を検証!」
火災保険を利用して屋根の修復を行う場面
まず、実際に屋根の修理工事が必要になる場合を想定してみて欲しい。すると、以下のようなケースを挙げることができる。
台風による被害
台風上陸時は、猛烈かつ長時間にわたる突風により屋根が損傷することがある。具体的には、強風によって物が飛んできて屋根に当たって損傷したり、屋根材自体が剥がれたりずれたりする場合などが考えられる。このような場合で発生した損害は、火災保険に付帯されている風災補償により補填されるのが一般的である。
落雷による被害
雷が落ちて、屋根に穴が開いたり損傷したりする場合も考えられる。こうした場合でも台風の時と同様に、火災保険で補償される。
積雪や雹による被害
雪の多い地域などでは屋根の上に大量の雪が積もり、屋根材の損傷に繋がることが考えられる。また雹が降った場合、屋根に穴が開いたり損傷したりする可能性もある。いずれの場合も、火災保険によりで補償される。雪害による被害についての詳細はは下記記事を参照頂きたい。
屋根の塗り替え工事の自己負担額を抑える具体的な方法
「各種自然災害により毀損した箇所の補修工事」と、「定期的なメンテナンスとしての屋根の塗り替え工事」は一見すると全く関係がない工事の様に思える。実は、そう考えて諦めてしまうのはまだ早いのだ。
一般的な屋根工事の方法を思い浮かべてみて欲しい。屋根工事をするためには専門家の目視により、修理が必要となる箇所の確認が必ず必要になる。また工事が始まれば、複数の職人が屋根に上って屋根材の交換や損害箇所の補修作業を行うこととなる。
この流れの中で、必ず必要となる要素とは何だろうか。それは「足場」である。家の構造にもよるが、足場がなければ高所にある屋根まで上がることはできない。つまり、専門家や職人が詳細に現場調査をすることができないし、補修に必要な部材を運ぶこともできないのだ。
自然災害の影響により毀損した箇所の修復には足場を架けることが必要となる。したがって、火災保険の各種補償ではこの「足場架設費用」は補償対象となることを意味する。
こうした足場を組むタイミングで、屋根の塗り替え工事を施工してもらうと、どうだろうか。足場架設費用を除いた施工費用を自己負担額として支払いさえすれば、屋根の塗り替え工事を行うことができるということなのだ。もちろん自然災害による損傷を修復するために塗装が必要であることが認められれば、その工事費用も保険金で賄うことができる。
これが、火災保険を活用して屋根の塗り替え工事の自己負担額を抑える手法である。火災保険に加入している以上、損害が発生した場合に損害保険金を請求するのは当然の権利であり、職人や足場が揃ったタイミングでついでに定期的なメンテナンスをするのは何ら問題はない。是非、試してみて欲しい。
最後に
屋根の塗り替え工事にかかる費用は、ある程度の相場があるとは言え基本的にはケースバイケースである。その屋根の置かれた環境により、相場よりも高くなったり安くなったりする場合があるのだ。
大切なのは、適正な価格で工事を発注するための基礎知識を身に着けておくことであり、そのためには、相見積を取得したり、各作業項目の概要を把握しておく必要があることはお分かりいただけただろう。
また、屋根塗り替え工事の費用を削減するためには、本記事中で紹介したように火災保険を有効活用することも視野に入れて欲しい。自己負担額を抑えられるだけでなく、大切な家を長期間にわたって保全していく上では、こうした方法もあることを知っておくことは有益である。いざという時に実践してみてはどうだろうか。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。