フローリングが傷ついているのなら至急ワックスを塗って補修を行うべきだ。
傷が軽傷のうちならワックスで消せる場合も多いのだが、時間が経つとそれが難しくなり、費用をかけて専門業者に依頼することになってしまうからだ。
そこで今回は傷を消すためのワックスの塗り方とお勧めの道具を、建築のプロである一級建築士が徹底的に解説する。
さらにムラなく塗るための注意点や、部分的にワックスを新たに塗る上級者テクニックを簡単に行う方法まで、わかりやすくお伝えしている。
ぜひワックスで傷を消し、きれいなフローリングを復活させるために役立てて頂きたい。
この記事読むことで理解できること
ワックスはフローリング保護に必須
ワックスは見た目をきれいにするだけでなく、樹脂の膜を作ってくれて傷や汚れ、水分からフローリングを守ってくれる保護の効果もある。
薄い皮膜ではあるが小さな物を落としたり、物を引きずったりした傷を未然に防いでくれて、さらにこぼしたジュースなどのシミからも守ってくれるだろう。
ただしワックスの膜は人が歩いたり物を移動させたりすることで徐々に剥がれていくため、保護力を維持するには定期的な塗り直しが重要だ。
今回は特に一般の方でも簡単に、しかもきれいに塗り直しができるよう、作業のポイントを解説している。
もしワックスが薄くなっているようならすぐにでも、フローリングの保護力を復活させるようにして欲しい。
失敗しないワックスの塗り方とお勧め道具
ここから具体的なワックス塗り直しの作業をご紹介する。
繰り返しになるがワックスは時間と共に剥がれてしまうため、放置すれば傷やシミが直接フローリングに達し、ワックスの塗り直しだけでは消えなくなってしまう。
道具に関しては全てホームセンターやネットで簡単に買えるものなので、用意ができたら早めに作業を始めるようにしよう。
準備する道具リスト
・ヘラ
フローリングの上に残った古いワックスを剥がすために使う。
プラスチックでも良いがカーボンの方が程よい柔らかさがあるため、フローリングに傷を付けにくい。
しかも軽量なので広い面積を剥がす場合は疲れにくくお勧めだ。
・剥離剤(リムーバー)
古いワックスを剥がすためのものが剥離剤(リムーバー)だ。
この後でも解説しているが古いワックスをしっかり剥がすことは、新しいワックスの仕上がりの良さや耐久性に繋がる。
特別高級なものは必要ないが広い面積を剥がす場合は量をたっぷりめに用意しよう。
・雑巾
剥離した古いワックスを拭き取るために使うが、ボロボロではなく繊維や糸くずが出ない程度にきれいなものを使おう。
拭き取る時に繊維が床に残ってそのまま新しいワックスを塗ると、乾いて光沢が出てから繊維が非常に目立ってしまう。
仕上がりを重視したい方はぜひ気にして欲しい。
・バケツ
古いワックスを拭き取った雑巾をゆすぐために一つと、もし薄めるタイプの剥離剤を使うならもう一つ必要になる。
フローリングの汚れ具合によってはゆすぐ方のバケツはかなり汚くなるので、使い古しのものがお勧めだ。
・手袋
手袋は雑巾をゆすぐ回数が多いので手荒れ防止にもなるし、手がワックスまみれになってヘラが滑ってしまうのを防いでもくれる。
特に部屋全体を剥がすとなるとかなりの作業量なので疲労軽減にもなる。
食器洗い用でも構わないが、薄手でぴったりフィットする作業用ゴム手袋の方が、滑り止め効果が高くお勧めだ。
・ワックス
ワックスは市販のもので十分だが値段に応じて耐久期間が長くなり、手頃なものだと半年、高価なものだと1年〜2年も長持ちする物もある。
ただし玄関ホールや頻繁に人が通る動線部分、椅子を動かすダイニングテーブル周りなどは、表示よりも劣化は早くあくまで目安と考えよう。
マメにかけられるなら手頃なものを選んで短期間で塗り直す方が実はツヤを維持できる。
・ワックスワイパー
ワックスを塗るには長い柄付きのワックスワイパーが最適で、均一に力が加えられるためムラなく仕上がる。
ヘッドに付けるシートはワックスを染み込ませてあるものではなく、ワックス用の厚手のドライシートを選ぶようにしよう。
染み込ませてあるものではワックス量が足りず、結局はボトル入ワックスを使うことになるため、ドライタイプの方が出費を抑えられる。
特に上記のワックス用ドライシートなら、ワックスを垂らして染み込ませるためのトレイも付いていて非常に便利だ。
塗るのに最適な日を選ぶ
道具が用意できたらワックスを塗る最適な日を選ぼう。
まずワックスを剥がしたり塗ったりした後の乾燥は非常に重要なので好天が続く日が良い。
特に剥がした後に水分が残った状態でワックスを塗ってしまうと、密着不良を起こして後日ぼやけたような白に変色する恐れがあるため、十分に乾燥をさせよう。
また風のある日にワックスを塗ってしまうと、窓の隙間などから侵入した土ぼこりや砂埃が積もってしまうため、風のない穏やかな日に塗るようにしたい。
また作業できる時間をしっかり取れる日を選ぶことも大変重要だ。
ワックスがけに慣れていないと必要な時間が読めず、時間が足りなくなり雑な塗り方になる恐れがある。
ワックスをきれいに仕上げるには道具よりも丁寧に塗ることが重要であり、時間をしっかり確保することが満足のいく仕上がりに繋がる。
作業を行う際は、天候と時間の2点に注意をして日を選ぶようにして欲しい。
傷を消すために大切な剥離
一見するとフローリングに付いたような傷でも、浅いものは古いワックスが傷ついているだけのことが多く、補修ではなくワックスの塗り直しで消すことができる。
ただしそのためには古いワックスをしっかり剥がすことが大切になってくる。
また気付きにくいがフローリングの表面は非常に汚れており、剥がさずに新たなワックスを塗り重ねてしまうと、古い汚れを埋め込んでしまうことになる。
この剥がしが傷や汚れを解消し、仕上がりのきれいさや耐久性を劇的にアップさせてくれるため、必ずしっかりと行うようにして欲しい。
※疲れないように剥離をするポイント
初めて剥離をする方は試しに1m四方など小さい範囲をやってみて、かかる時間と疲れ具合を確かめてから広い面積に取り掛かることをお勧めする。
場合によっては部屋を分割し何日かに分けて行うと、途中で疲れや飽きで雑になるのを防ぐことができる。
・手順
①ワックスをかける場所に掃除機をかけ水拭きを行う。
②剥離剤をフローリングに撒き、数分待った後で、ヘラで古いワックスを取っていく。
少し多めに撒いた方がワックスを剥がしやすい。
③剥がれたワックスを雑巾で拭き取り、バケツで洗いながら剥離剤が無くなるまで何度も行う。
剥がすことよりもこの拭き作業が体力的に大変なので時間をたっぷり取っておこう。
③最後にしっかり乾燥させて剥離は完了。
天候や季節にもよるが最低でも1日は乾燥させた方が間違いないだろう。
塗る動線を予め考える
広い部屋などにワックスを塗る前は大まかで良いので塗る動線を考えておこう。
ポイントは2つで、フローリングの板の継ぎ目に沿って塗ることと、出口に向かってバックしながら塗る点だ。
フローリング板の継ぎ目に沿ってワックスワイパーをかけるとワックスのムラや泡を防げるため、まず継ぎ目の方向を確認する。
次に出口から遠いところからスタートし、出口へ向かって蛇行しながら下がってくるように動線を考える。
横移動をしないでワックスを塗れる幅で、一筆書きをするイメージで考えると良いだろう。
下記のように板の継ぎ目と交差するように横移動しながら塗ってしまうと、エリアごとのワックスの継ぎ目ができ、見た目が悪くなるので注意しよう。
ムラなく塗るテクニック
ムラを作らないようにワックスを塗るには、上記でもお伝えしたフローリングの板の継ぎ目に沿って塗ることが最も重要で、さらに先に塗ったところにワイパーの端が少し重なるよう次を塗ると塗り残しも防げる。
また塗る動きは決してこするように前後に細かく動かさず、絵の具を筆で塗るようイメージでゆっくり動かし、なるべく1回の動作で塗り切るようにする。
慣れない内はワックスを多めに浸すと失敗が少ないだろう。
またワックスを直接フローリングに撒くとその跡が残ってしまうことがあるので、トレイにワックスを垂らしシートをそこで浸して塗るようにしよう。
ワンランク上のワックステクニック
ここまでで解説してきたのは基本的なワックスの塗り方だが、もう一手間かけて仕上がりをさらに良くするためのテクニックをご紹介しよう。
できると便利な部分ワックス
全体のワックスがそれほど劣化していないので、汚れや擦り傷などができた周りだけを塗り直すのが部分ワックスだ。
手順
①塗り直す部分を水拭きし、しっかり乾燥させる。
②極力幅広のマスキングテープを板の継ぎ目に沿って幾重にも貼る。
③周囲へはみ出さないようにするためジェル状の剥離剤を撒きヘラで剥がす。
ジェル状のものは中性で剥離の力が弱いのでじっくり剥がすようにし、強くこすって傷付けないよう注意しよう。
④雑巾がけをして剥離剤を拭き取ったらマスキングテープを剥がし、再度新しいマスキングテープを貼る。
⑤ワックスを塗り乾燥したら完了。
塗る部分の幅が狭いようならワックスワイパーのヘッドを縦にして塗ると良い。
ワックスがボロボロになるのを防ぐ
ワックスを塗った後にボロボロと剥がれてしまうことがあるが、これは大抵が汚れや剥離剤を取り除き切れていないことに原因がある。
これらは地道な単純作業だが念入りに行い、きれいに取り切ることで剥がれを防ぐことが出来る。
また古いワックスを剥がす際にアルカリ洗剤やエタノールを使ってしまうと、わずかに残っただけで新たなワックスが密着しにくくなるため、必ず専用の剥離剤を使うようにしよう。
そして最近増えているワックスフリーのフローリングも、新たに塗ったワックスが取れやすい。
汚れなどの異物が表面に付きにくい加工が施してあり、ワックスであってもその効果が出てしまうからだ。
傷を消したり汚れを落としたりするには新たなワックスを塗らず、専用クリーナーや指定の掃除方法で作業をするようにしよう。
プロに任せるべき2つのケース
フローリングの素材や状態によっては不用意にワックスをかけてしまうと余計に痛めてしまうケースがある。
特にフローリングは方法を間違うと張り替えなどの莫大な費用のかかるトラブルに発展しかねない。
以下の場合はリスクや難易度が高いため、自信の無い方は専門業者へ任せた方が良いだろう。
無垢フローリングのワックス選びは難しい
無垢材のフローリングは表面にオイルやウレタン塗料などが塗られており、適切なワックスを選ばないと変色や剥離などの大きなトラブルを招く。
しかも樹種に応じた独特な塗料が用いられている場合も多く、一般の方がどのワックスが良いか判断するのは難しい。
施工会社から使うべきワックスが伝えられているなら自分でワックスをかけることも可能だが、中古物件などで不明な場合は無垢材に明るい専門業者へ頼む方が安全だ。
以下の記事でワックスを含めた無垢のメンテナンス方法を解説しているので、ぜひ目を通して頂きたい。
「無垢フローリングのお手入れマニュアル!掃除からワックスまで徹底解説」
https://shufukulabo.com/caring-for-solid-flooring
色あせや日焼けをきれいに仕上げたい
色あせや日焼けは症状が進行して表面がざらざらに毛羽立っている場合、不用意にワックスをかけてしまうと染み込みが不均等でまだらのようになってしまう。
この場合は一旦削りをかけて全体を塗装し直す必要があり、DIYに慣れた方でないと非常に難しい。
以下の記事を参考にして頂き、手に負えないように感じたなら専門業者へ任せるようにしよう。
「フローリングの日焼けはDIYで直す!簡単補修方法と費用を徹底解説」
https://shufukulabo.com/tanned-flooring
傷が消えないなら補修屋に任せよう
ワックスを剥がしても傷やシミが消えないなら、新たなワックスを塗る前に補修屋に消してもらおう。
補修屋とは床や壁、扉の表面などあらゆる素材の表面にできた損傷を、跡形もなく消してしまうリペアのプロフェッショナルだ。
ワックスを剥がしても消えない傷や汚れは補修をするしか手はないが、残念ながらワックスかけのように簡単ではなく、しかもDIYでは直した跡がはっきりわかる仕上がりになってしまう。
しかし補修屋なら傷があったことが全くわからないように直してくれ、しかも傷んだ場所に絞った作業のため非常に手頃な金額で済むというメリットもある。
以下に補修屋の高い補修技術がわかる動画をご紹介するので、ぜひご覧頂き依頼を検討してみたらいかがだろうか。
補修屋の費用相場
補修屋への依頼を検討する上で参考にして頂くため、その技術の費用相場をご紹介する。
傷の種類や程度によって価格は変動するので、もし正確な金額が知りたい場合は、補修部分の写真をメールで送ると無料で見積もりをしてくれる補修屋もあるので、一度相談してみると良いだろう。
補修内容 | 技術相場金額 |
フローリング色あせ | 10,000円〜30,000円/㎡ |
フローリングの傷、凹み | 25,000円〜 |
フローリング剥がれ | 40,000円~ |
フローリングのシミ | 30,000円~ |
ペットのおしっこのシミ | 70,000円〜 |
ペットによる傷 | 45,000円〜 |
※材料の新規取り寄せ費や出張費がかかる場合は別途。
腕の立つ補修屋の見分け方
補修屋を選ぶ際に気を付けて欲しいのは、どの補修屋も傷をきれいに消せる訳ではない、という点だ。
傷跡がわからないように直すには、豊富な知識と多くの経験が必要だが、補修屋の中にはそこまでの腕がない者も当然存在する。
しかしそういった未熟な補修屋でも「高い技術」があると宣伝しているため、惑わされて依頼してしまいDIYと大差ない補修をされてトラブルになるケースもある。
そういった事態を避けるには、その補修屋の腕を自分の目で確かめることが重要で、例えば自社サイトで過去の実績を画像付きで公開しているようであれば、大いに参考になるはずだ。
くれぐれも言葉だけの「高い技術」に騙されないよう、しっかり腕を確認した上で頼むようにして欲しい。
火災保険で床の傷を直すテクニック
床にできた傷を格安で直したいのであれば、加入している火災保険を確かめてみて欲しい。
火災保険は実は火事だけでなく、台風などの自然災害や盗難による被害など、住まいのあらゆるトラブルを補償する総合保険になっているからだ。
例えばフローリングの傷が重いものを運んでいる時にうっかり落としたり、お子さんがおもちゃを投げたりしてできたものなら「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」として補償される可能性がある。
あるいは台風で屋根が壊れて起きた雨漏りでできたシミがあれば「風災」の被害として補償されるかもしれない。
ただしいずれも発生した日時や原因がはっきりしている事や、損傷した部分の機能に支障があるなど、保険によって条件が設定されている。
まずは適用される損傷か保険加入時の書類や証券に目を通し、不明の場合は保険会社に問い合わせるなどして確認をしてみよう。
まとめ
フローリングの傷はワックスで消えるものも多いが、時間が経つとそれが難しくなってしまうため、早めに塗り直しをするようにしよう。
道具は入手しやすいものばかりなので、ご紹介したポイントに注意しながら早速取り掛かって欲しい。
ただし自分で行うには難しい場合や、古いワックスを剥がしても消えない傷もきれいにしたいなら、専門業者へ相談した方が安全だ。
特に補修屋のように傷や汚れを完全に消してくれれば、ワックスの効果も一段と素晴らしいものになるはずだ。
よりきれいに仕上がるようにワックスかけをして、大切な住まいのフローリングをリフレッシュさせて頂きたい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。