賃貸物件のフローリングを傷つけてしまうと、退去時に現状復旧費用を請求されることになる。放っておくと美観を損ねるだけでなく、ケガの危険性もあるため早急に対処したい。
そこで今回は、元リフォーム営業マンの筆者が賃貸フローリングの傷や凹みをDIYで補修する方法を解説する。アイロンや簡単な補修材を使った方法を中心に解説するので、特別な知識や技術を持たない方でも挑戦できるだろう。
記事の最後には、費用ゼロ円で補修できる火災保険の利用方法を紹介するので必ず目を通して欲しい。
この記事読むことで理解できること
フローリングの傷や凹みによる弊害
フローリングに傷や凹みがついてしまうと、さまざまな弊害が発生する。意匠性の問題だけでなく、実害もあるため注意が必要だ。
賃貸の退去時に復旧費用がかかる
契約時の内容にもよるが、賃貸住宅のフローリングを傷つけた場合、ほとんどの場合復旧費用が発生する。あらかじめ敷金を預けてある場合は相殺となるが、その場合も現金を払っているのと変わりはない。
また、大家さん又は管理会社が業者を手配して修繕を行う際、手配する手間代も上乗せとなる場合があり、実質費用よりも高く請求される事となる。
放置すると足に引っかかって危険
フローリングをえぐるような深い傷の場合、ささくれだった木で足を怪我する危険性がある。足で踏まないように塞ぐか、カッターなどで平らにならしておいた方がいいだろう。ただし塞ぐ等の処置はあくまで応急処置である。
傷が広がってしまう
傷部分はワックスが剥がれてむき出しの状態になり、紫外線のダメージや水分の影響を直接受けることになる。長く放置すると腐食や経年劣化が広がりダメージが広がるので、早めの処置がおすすめだ。
視界に入ると落ち込む
意外に思うかもしれないが、傷や凹みを付けてしまったという精神的ダメージは思っているよりも深いものだ。視界に入る度に思い出し、落ち込んでしまう。綺麗に掃除をしていても、こだわったインテリアにしていても、目立つ箇所のフローリングに損傷が出来てしまうと、そのイメージが与える影響は強い為、気持ちよい空間作りの為にも早めの補修を検討いただきたい。
フローリングの凹み・傷の種類とよくある原因
普段の生活で発生しやすい傷の種類と、発生するシーンを紹介する。気を付けていても傷をつけてしまう事はあるが、なるべく予防して被害を最小限に抑えてほしい。
今から紹介する原因のほとんどは故意ではなく「うっかり」が多い。もしも「うっかり」つけてしまった傷や凹みであれば、最後の項目にて詳しく解説しているが、修理費用を保険でカバーできる可能性がある事を、先にお伝えする。
食器を落とした小さな凹み
ティーカップや大きな皿など、重量のある食器の尖った部分がフローリングに直撃すると小さな凹みになりやすい。普段の生活中で発生頻度が1番高いため気を付けたい。
重い家具を落とした大きな凹み
スピーカーなどの大きくて重量のある物を落とすと、大きな凹みの原因となる。深く、面積が大きくなるほど補修は難しくなるので注意したい。
椅子や冷蔵庫など家具を引きずった細かい傷
模様替えなどで重たい家具を引きずる、椅子を引くなどの動作でフローリングの表面に細かい傷がつく場合がある。スリッパの底が固い素材の場合などにも発生するので選ぶ際に注意が必要だ。
冷蔵庫は台所の端に配置することが多いが、冷蔵庫を配置したり、移動したりする際に、キャスターが上手く回らないと床を引きずってしまい細かい傷がついてしまう。
また、床の素材が柔らかいと時間が経つにつれて冷蔵庫の重みで凹むこともある。普段見ることがない場所なため、冷蔵庫の買い替えや賃貸の引っ越し時に傷や凹みがあることに気づくケースが多いので注意しなければならない。
尖って重いものを落とした深い傷
ハサミや包丁などの尖った刃物や、角の尖ったオブジェなどを落とすと深く抉れた傷になる。前述したように足を怪我する危険があるため、早急に対処したい。
犬や猫などペットによる傷
犬や猫など室内でペットを飼っている家庭も多いだろう。可愛いペットがいることに癒やされる気持ちになるが、床の傷はペットによる原因も多いのだ。犬や猫などの爪は、床を痛めやすく、ペットが走り回ったり、爪とぎをしてしまったりすると床に擦り傷を作ってしまう。
また、フローリングは犬や猫には滑りやすい材質となっているため、ペットが滑って床に傷をつけてしまうのだ。ペットを飼っているご家庭は、ペット用に対策された傷がつきにくく滑りにくいフローリングを使用すると傷の予防となるためおすすめだ。
荷重や水分による変形とフローリングのささくれ
フローリングの材質は木材でできているためか水分をよく浸み込む特性がある。床を濡らしてもすぐに拭けば問題ないが、そのまま放置してしまうと床に水が浸み込んでしまう。水を含んだ床は、膨張するので変形や割れの原因となるのだ。
造作材の含水率は15%以下とJAS(日本農林規格)により規定されている。しかし、無垢のフローリング材などすべてを測定することができていないというのが現状であり、十分な乾燥がされていない建材も出回ってしまっているのだ。
乾燥が不十分な場合、造作材として安定していないため、暖房などの影響により急激な乾燥で変形し割れが起こる可能性がある。
フローリングの不具合は荷重によることも多い。フローリングは一般的に幅303mm、長さ1818mmの一枚板となっていて、フローリングの両端は実(さね)という凹凸構造となっている。凹状の実を雌実、凸状の実を雄実と呼ばれ、雌実(凹)と雄実(凸)が組み合わさってフローリングを施工している。
実の部分に釘を打ち付けて固定していくのだが、その下に床下地(構造用合板)を支える根太に目掛けて釘を打つのが施工の基本だ。釘を打ち付ける箇所に根太がない場合、床からの荷重に対して強度が弱くなってしまうため、撓みや割れが発生する可能性がある。また、根太が劣化し強度が落ちている場合も同様だ。
さらに家具を移動する際に、キャスターによる摩擦を何度も繰り返してしまうとフローリングの表面が剥がれてしまったり、ささくれてしまったりするので注意が必要だ。
日光による色あせや変色・経年劣化
フローリングは木材のため膨張と伸縮を起こす。安定性のある複合フローリングでも木質系なため多少は膨張と伸縮を起こすのだ。湿気を含んだフローリングは膨張し、乾燥すると伸縮する仕組みとなっている。
無垢材のフローリングで起こりやすいのが反りによる変形だが、これは無垢材が乾燥し伸縮することで起きている。
そのため、無垢材フローリングは伸縮度が大きいとも言えるのだ。フローリングの変形や割れは、日光や暖房器具による影響がある。フローリングが過乾燥すると膨張し変形や割れが起きるのだ。また、日光による紫外線は複合フローリングの表面に塗装された塗膜を分解し色あせや塗膜表面のひび割れを起こす。
このように直接的にフローリングを劣化させる原因もあるが、その他に経年劣化というものがある。建材は年数が経てば劣化が生じるため定期的なメンテナンスが必要である。
複合フローリングは、表面の塗装のひび割れや表面化粧材を貼る接着剤の劣化により剥がれてしまうことが起きる。無垢材フローリングは、適切な時期にオイルやワックスを塗布することで経年劣化を抑制することができるので、ぜひ行っていただきたい。
フローリングの種類
凹みや傷がついてしまったフローリングの種類によっても、補修の可否は異なる。主に2種類のフローリングの違いと、見分け方について解説する。
無垢フローリング
1枚板で出来ている純粋な木質のフローリングを指す。基本的に高級な材料になるため、賃貸系では採用例が少ないが、戸建て賃貸物件などでは使われる可能性がある。
見分け方は、フローリング同士の隙間で判断する。気温と湿度で伸縮する無垢フローリングは、名刺1枚分の隙間を開けて貼るのが基本。実際に厚紙を差し込んでみて、入れば無垢フローリングだ。
複合フローリング
薄い板を何枚も重ねたベニヤ層の上に、薄い仕上げ層が貼り付けてあるタイプが複合フローリングだ。価格が安いため採用例が多いため、ほとんどのフローリングはこちらのタイプと考えてよいだろう。
見分け方は上で紹介した厚紙を使う方法で、隙間が空いていないものは複合フローリングで間違いない。
床材を自分で簡単補修する9つの方法
フローリングの傷や凹みを、DIYで簡単に補修する方法を紹介する。
しかし、自分で出来る補修には限界がある。目安としては、損傷の長さが15cm以上ある場合や、深さが1mm以上ある場合は、プロに修復を依頼することをおすすめする。
特に、賃貸フローリングであれば、失敗や補修跡が残ってしまった場合、逆に貸主に悪い印象を与えてしまうので慎重に判断いただきたい。
これから紹介する自分でできる補修方法は小さな傷や凹みに有効である。
紅茶の茶葉を使う方法
細かい引きずり傷を目立たなくするのに有効な手段だ。紅茶を入れた後の茶葉を使って色を染め、傷を周りになじませる。ナチュラルカラーのフローリングだと上手くいかないため、濃く暗い色のフローリングの場合試してみるといいだろう。
針と水を使う方法
小さめの凹みが無垢フローリングについてしまった場合に有効な方法だ。
手順は簡単で、フローリングの凹み部分に水滴を垂らし、針でつついて数か所に小さな穴を開けてしばらく放置する。木の材質や加工方法によって差はあるが、水を吸い込んだフローリングが膨らんで元に戻ることが多い。元に戻らない場合は、次項のアイロンを使う方法に移行する。
アイロンを使う方法
上の水と針を使う手順に、追加でアイロンを使う方法だ。複合フローリングは熱により剥離を起こす場合があるので、絶対に行わないこと。
手順は水と針を試したあと、厚手の布を当てて10秒前後アイロンを当てて離す。様子を見ながら数回繰り返してみるといいだろう。長時間当てると高音で焦げる場合があるため危険。少ない秒数で様子を見ながら、十分注意して行ってほしい。
クレヨン補修材を使う方法
浅い引きずり傷に有効なのは、クレヨン系の補修材を使う方法だ。何色かセットになっている物がホームセンターなどで売られているので、近い色の物を使うとうまく目立たなくなるだろう。フローリングだけでなく、棚やドアなどの家具にも使えるため、持っておけばいざという時役に立つことが多い。
ウッドパテを使う方法
専用のパテを使って傷を埋める補修方法だ。凹みや深い傷なども補修することができる。一見難しそうだが、コツをつかめば簡単にできるので、ぜひ挑戦していただきたい。
手順は、補修箇所の色に近いパテをホットナイフで溶かして埋め込んでいくだけだ。色が合わない場合は複数のパテを混ぜ合わせて調色することも可能。数十秒でパテが硬化したら、表面をスクレーパーでこすって平らにする。
ワックスを使う方法
細かい引きずり傷に有効なのは、全体にワックスをかけてしまう方法だ。
ただし、賃貸では基本的に借主が無断で全体にワックスがけを行うことはおすすめしない。入居時と異なる状態にしたとみなされて逆に原状回復の費用を請求される可能性が高い。
どうしてもワックスをかけて綺麗にしたい場合には必ず貸主に許可を得てから行うこと。
ワックスがけは、コーティング層を塗りなおすことで光沢が復活し、傷が目立たなくなる。保護にもなるため、新しい傷がつきにくくなるというメリットもある。
また、前回のワックスが古くなっている場合は一度ワックスを剥離してからかけなおす必要がある。目安として5年以上経っている場合は剥離したほうがいいだろう。
よって、賃貸でのワックスのかけなおしによる補修は選択肢としては難しいが、フローリングにおける知識として、また持ち家の場合であれば有効な為、覚えておいていただきたい。
日焼けによる色あせを直す方法
フローリングの日焼けや色あせを直す場合、変色や損傷の程度が浅ければワックスやニスを塗ることで目立たなくさせることができる。床の色あせで変色しているのならカラーワックスを使うことで色味を回復させることができるので試していただきたい。
ワックスやニスは、既存のフローリングに適合するものを選ぶ必要がある。複合フローリングは表面にコーティングされているので、既存の床の色に合った水性の専用ワックスを使う。無垢材のフローリングは、ステイン塗料やオイル塗料など浸透性のある塗料を保護材として使用することができるのだ。
注意しなければいけないのが変色や損傷の程度が激しい場合だ。無垢材のフローリングは表面を研磨して再塗装する方法もあるが、複合フローリングの場合はそう上手く再塗装ができるわけではない。表面の仕上げ材に天然木が使用されている床材でも塗装をすると塗料の染み込みが多く綺麗に仕上がらない可能性がある。
また、木目シートで仕上げられている床材は、塗料を弾いてしまうのでそもそも塗装を行うのは厳しいだろう。若しくは、床材の仕上げ材が捲れてしまっていて合板の部分が露出している場合も塗装をすると塗料の染み込みが多く、返って目立ってしまう可能性があるため注意が必要だ。
このような状態の場合は、プロのリペア専門業者に相談、依頼することをおすすめする。
フローリングの色あせについてはこちらの記事で詳細に解説しているため、ぜひご覧いただきたい。
■フローリングの色あせをDIYで直そう!失敗しない補修方法を完全解説
https://shufukulabo.com/flooring-iro-ase-repair
■フローリングの日焼けはDIYで直す!簡単補修方法と費用を徹底解説
https://shufukulabo.com/tanned-flooring
カビを取る方法
フローリングは水気を含んでしまうことや湿気が多い部屋、風通しの悪い部屋などの環境下だとカビが発生する恐れがある。
台所やトイレ、洗面所、お風呂などでカビが発生するのは水気が多く、湿気が溜まりやすい場所だからだ。また、窓を閉めっぱなしにすることで風が通らず湿気が逃げていかなくなる。このためカビがより発生しやすい環境となるわけだ。
カビの発生は臭いや空気中に浮遊する胞子を吸い込む原因となるので、カビが著しく発生している部屋に居続けるのは健康にも良くない。このような状態ならカビを除去することが必要だ。
フローリングにカビが発生した場合、無水エタノールや消毒用アルコールを使用しカビを拭き取って除去する方法がある。使用する無水エタノールや消毒用アルコールは水を加えて薄める。
床材に影響がでないか一度目立たない箇所で試して脱色が起きないか確認すること。床材に問題がなければカビを除去できるまで拭き取る。作業する際は、カビに触れるためゴム手袋とマスクを着用することをおすすめする。
柔らかいクッションフロアの凹みをドライヤーで補修
クッションフロアはビニール製でできている柔らかい床材だ。クッションフロアはC Fと表記されることもあり、トイレや洗面所、台所など水回りの部屋によく用いられる。
クッション性がありひんやりしている特性を持つが、弾力性のある素材のために家具の跡など凹みがつきやすいのが欠点だ。
ただし、クッションフロアは元に戻りやすい特性を持っているため、定期的に家具の位置を動かすことで凹みの防止をすることができる。
もし、凹みが戻らず目立つ場合は、ドライヤーや低温にしたアイロンを床に当てて柔らかくすることで凹みを直す方法がある。注意することは熱に弱い素材なので、近づけすぎて素材を溶かしたり、焦がしてしまったりしないことだ。
補修に失敗してしまうと、返って目立つ可能性があるのも注意が必要だ。クッションフロアが貼られている部屋が広い場合、貼り直しが広範囲となる。
補修のつもりが貼り替えとなると費用も掛かるので、目立ちそうな箇所や補修する箇所が多いなどの時は専門の業者に依頼する方がいいだろう。
フローリングの損傷に使える補修材
床の補修材はホームセンターやネットショッピングで購入することができる。上記でお伝えした補修材の他にも便利な補修材があるのでご紹介していきたい。
【フローリング補修テープ】
補修テープは傷のあるフローリングの上に貼るだけなので、簡単に傷を隠せる補修材だ。テープ幅と色の種類があるので既存のフローリングに合うものを選ぶ必要がある。
【キズ補修用筆ペン】
クレヨンタイプやパテタイプの他に筆ペンタイプの補修材もある。補修材は単色のため仕上げの木目を描く時に筆ペンは便利だ。
【床鳴り補修材】
床鳴りの補修材もネットショッピングで購入することができる。これはフローリングの実部分が擦れて音が鳴っている時に使用できる補修材となっている。
フローリングの継ぎ目に補修材を流して木部を柔らかくし、継続的に補修材を使用することで床鳴りが緩和される仕組みだ。
ただし、床なりの場合は補修材の使用に慎重になることが大切だ。その理由は床鳴りの原因が多岐にわたるため、補修材の効果が期待できない場合もあるからだ。
原因がはっきりしないまま無闇に手を加えてしまうと床鳴りの症状を悪化させてしまう恐れもあるので注意していただきたい。床鳴りの原因を解明するにはある程度の専門知識と技術力を必要とする。そのため、原因がはっきりしない場合は、一度専門業者に相談することをおすすめする。
【補修キット】
補修キットは伝熱コテや補修材のパテ、木目ペン、ツヤあり・ツヤなしのワックスなどがセットとなっている。これ一つあればフローリングの補修は十分対応可能だ。伝熱コテや補修材のパテがセットになった補修材はあるが、ツヤ用のワックスは別に用意しなければいけない製品も多い。
仕上げにワックスを使うことでキズを目立たなくさせる効果があるので一緒に用意しておくといいだろう。
プロのフローリング補修の価格相場
専門の業者でフローリング補修をする場合の価格は、時間単価制と面積単価制の2つに分かれる。それぞれの相場とメリットを紹介するので、自分の家の場合どちらが良いか検討してみていただきたい。
時間制の価格相場
時間によって単価を決めている業者の場合、頼んだ時間内で補修できる部分はすべて直してくれる。ただし、時間内に仕上がらないと追加料金がかかる場合もあるため必ず見積を取ってほしい。
時間の最低単位は0.5日~が多く料金は3~4万円が相場だ。直したい傷が家じゅうの色々な場所にある場合、時間単位制の方がメリットは大きいだろう。
箇所制の価格相場
箇所制の場合は一箇所辺りの業者が多い。相場はフローリングの場合、最低15,000円/箇所だが、床の状態や材質によっても変わることがあるため、正確には見積を取ってもらいたい。
よく傷や凹みを付ける場所が決まっていて、一ヵ所に集まっている場合は箇所制の方が安くなる場合が多い。
種類別・床の修理の費用相場
床の損傷はキズの他に色あせや剥がれ、シミなどがある。下記の表にフローリングの補修内容と技術相場金額をまとめたのでご覧いただきたい。
補修内容 | 技術相場金額 |
フローリング色あせ | 10,000〜30,000円/㎡ |
フローリングの剥がれ | 25,000円〜 |
フローリングのシミ | 30,000円〜 |
ペットによるキズ | 45,000円〜 |
床鳴り | 10,000円〜 |
床の修理でも張り替えとなると掛かる費用も補修と比べて大きくなる。使用する床材の種類やグレードによって金額は異なるが、クッションフロアよりもフローリングの方が高くなる。
フローリングは一般的に1ケースの入数が一坪となっている。6畳の部屋の床を張り替える場合、単純計算で3ケース必要となるのだ。フローリングの金額が1ケース2万とすると、この時点で6万円掛かることになる。
さらに工事の費用も加算されるため、6畳の部屋のフローリング張り替えは約10万円〜が費用相場となる。ただし、部屋の形状が単純な四角ではなく、凹凸のある部屋の場合だとフローリングも多く使うため、さらに費用は嵩むことに注意していただきたい。
クッションフロアの場合は、素材がメーター売りとなっていて単価もフローリングより安い。6畳の部屋のクッションフロアを張り替える場合は約6万円〜となる。床の張り替えを行う時は幅木も一緒に行うことで新しい床材と古い幅木の違和感を取り除くことができる。
床の張り替えと幅木の交換の工事を同時に行っておくことで、別々に工事を行う時より割安となるため、このタイミングで行っておくことをおすすめする。
深い傷のDIYは注意!業者の選び方と見積りの取り方
DIYの良さは業者に依頼するよりも費用を抑えられることだ。業者に依頼すれば人件費と材料費、経費などが費用として発生する。しかし、DIYなら自分で作業を行うため人件費はかからず材料費のみで行えてしまう。
費用の面だけ見ればDIYの方がお得に感じるかもしれないが、損傷状態によっては業者に依頼する方がメリットは大きい。業者はプロの専門家であり、豊富な専門知識と高い技術力を持っている。無論作業した箇所の仕上がりや耐久性は業者に依頼する方が信頼性は高い。
作業技術が備わっていないまま行ってしまうと耐久性が低く、直してもすぐに不具合を起こしてしまう可能性がある。
最初は費用が掛かっていなかったとしても何度も修理することになってしまえば、その分材料の費用も嵩み結果的に業者に依頼するほどの費用が掛かっていたということになりかねない。
仕上げについても断然業者に依頼する方が綺麗だ。補修後の目立ちやすい大きな傷や傷のある箇所が広範囲の場合は、専門業者に依頼する方が無難だろう。
もし、業者に依頼する際に必ず行っていただきたいのが相見積もりだ。相見積もりとは、複数の業者に見積もりを依頼して工事内容や工事金額を比較することだ。
複数の業者に見積もりを取ることで工事内容の把握や費用の相場というものを知ることができる。また、悪徳業者に騙されない効果もある。
工事を依頼すると決めたなら、もちろん優良な業者に依頼したいと思うはずだ。だが、初めて業者に依頼する方は、何を基準にして選べばいいか分からないかもしれない。
優良な業者の特徴とは、工事の内容を丁寧に説明し、契約を急がせないことだ。
工事について聞いても曖昧な説明で終わらせたり、対応が悪くなったりするような業者は論外となる。優良な業者は豊富な専門知識と多くの実績を持っている。
建築は専門用語も多いため一般の方には理解しづらい。このことを理解せずお客様の目線で対応できない業者は選ばない方が無難だろう。
防止対策!傷や凹みを防ぐ便利グッズ
すでについてしまった傷や凹みはどうしようもないが、次の被害を防ぐための対策は必要だ。凹みと傷それぞれに有効な対策を1つずつ紹介するので、ぜひ試してみてほしい。
物を落としそうな場所にはラグマットを敷く
台所や作業台の周りなど、床に物を落としそうな可能性の高い場所にはラグマットを敷いておくといいだろう。食器など軽めの物であれば、凹みを防げる場合もある。凹み予防とプラスしてインテリアを楽しむものとしても選んでいただきたい。
椅子の足にはチェアーキャップをかぶせる
食卓や書斎でキャスターなしの椅子を使う際は、チェアーキャップを使用すると傷がつかない。柔らかく滑りやすい素材で包むことで、引きずり傷を防止することができる。角型や丸形など様々な形のタイプが販売されているので、自宅の家具に合った物を探してみて欲しい。
また、適した形状のキャップが見つからない場合には、フェルトシートが便利である。キャップよりも交換頻度は高くなるものの、好きな形にカットできるので様々な家具に対応できる。
床に並べるだけ!フローリングタイル
カーペットを敷いてしまうと木の魅力が半減してしまうと感じる方は、無垢材を使用したフローリングタイルを検討してみてはいかがだろうか。タイルのように床に敷き詰めるだけなのでDIYで行うのも簡単だ。
フローリングの他にも畳などでも使用することができ、子供の遊び場用に部分的に敷いてもいいだろう。本製品は塗装やワックスを掛けることも可能で、木の魅力を存分に味わうことができる製品だ。
置くだけで簡単施工!イージーロックフローリング
こちらはタイル形状ではなくフローリングと似た形状の床材となっている。上記でご紹介した床材とは違い、床材を一枚一枚嵌め込んで敷くタイプとなっている。
フローリング工事のように釘や接着剤、特殊な技術を必要としないため、手軽にフローリングスペースを作りたいと思っている方におすすめだ。こちらの製品も塗装やワックス掛けを行うことが可能となっている。しかし、両製品とも床暖房の対応はされていないため、製品の注意事項をよく確認することが必要だ。
お手入れは水拭きと乾拭きを使い分けること
最近のフローリングは、表面が特殊コーティングされてメンテナンスフリーとなっている。しかし、メンテナンスフリーとは言ってもまったく手入れしなくていいというわけではない。
フローリングの美しい木目を保つためには、日頃から掃除を行っていくことが大切だ。コーティングされたフローリングを掃除する時は、基本的に乾拭きで行う。若しくは掃除機では取りにくいホコリを取り除くために化学モップを使用してもいいだろう。
フローリングの汚れは放置しておくと落ちにくくなってしまう。子供が床に落書きしたクレヨンの跡や食品をこぼした跡などは早めに拭き取ることが大切だ。
拭いても取れないようなひどい汚れの場合は、硬く絞った雑巾で拭き取ること。それでも汚れが落ちないようなら水に少量の中性洗剤を入れ、雑巾に染み込ませて拭き取ってみよう。
剥がれる前に定期的なワックス掛けを行う
フローリングにワックスを塗布することで、傷や汚れから保護し艶を保たせてくれる。製品によってはワックス不要となっているメンテナンスフリーのハードコーティングされているフローリングもあるが、水性や樹脂系ワックスの場合は定期的にワックスを塗布する必要がある。
ワックスが劣化してくると、艶が少しずつ落ちていき、ひび割れや剥がれが生じる。メンテナンスの頻度は半年に1回ワックスの上塗り、5年に1度はワックスを剥離して塗り直すことをおすすめしたい。
ワックスを塗布する場合は、既存のフローリングとの相性を確認することが大切なため、専門業者に相談することをおすすめする。
フローリングの凹みに火災保険が使える!?
フローリングの傷や凹みは突発的に発生するため、補修費用は手痛い出費となる。そこでまず確認してほしいのは、住宅の火災保険だ。
火災保険は火事にしか使えないようなイメージがあるが、実は自然火災や盗難といった幅広い被害を補償している。賃貸住宅では加入が必須となっているため、せっかく保険料を払っているのだから使わない手はないだろう。
賃貸契約時に交わした書類があるはずなので、まずは確認してみて欲しい。
不測かつ突発的な事故は保険適用される
フローリングに物を落としてしまい傷や凹みを付けてしまったケースは、「不測かつ突発的な事故」に含まれる。保険の対象は住んでいる建物全体なので、フローリングも対象範囲となり保険が適用されることになる。
補修費用の上限などは保険会社によって様々なので、まずは加入している保険会社に問い合わせてみて欲しい。
まずは見積を取ってみよう
保険が利用できるとわかったら、次は補修の見積を取る必要がある。見積を保険会社に提出し、手続きが終わってから補修作業となるので、見積業者には事前に保険利用であることを伝えておいた方がいい。見積も保険会社への提出を前提として、正式に作成してくれるだろう。
管理会社への連絡は控えた方が良い
全ての準備が整い、補修作業を業者に依頼する際に注意して頂きたいのは、賃貸物件の場合は管理会社への連絡は控えた方が良いという点だ。管理会社に連絡をしてしまうと、修理の主導権が管理会社に移ってしまうからだ。
管理会社は原状回復の工事を受注して利益を出すケースが多い。つまり、高い工事金額をオーナーに提示することになる。その費用負担の請求は当然、借り主に向けられるので、金額が大きくなれば敷金はもちろんのこと、自己負担を強いられるケースも多い。
よって、この類の補修は管理会社やオーナーには何も言わず、直接工事会社や補修業者とやりとりをして、保険活用や工事を行うのが賢い方法と言える。
但し、賃貸契約内容によっては契約違反となる場合もある為、契約内容を確認し、リスクを考慮した上でご判断いただきたい。
賃貸は床に傷をつけてしまうと敷金が戻らないことも
賃貸物件を借りる際は、敷金を支払って入居するのが一般的だ。敷金とは、借主が何らかの理由により家賃の支払いを続けることができなくなった時の保証金となっている。
敷金は債務の担保として預けておくものであり、家賃の未払いがない限り、敷金は退去時に返還される。
しかし、賃貸物件は借主に対して原状回復義務があるため、借りている物件に傷がある場合、現状に戻す修理費用を負担しなければならない。この修理費用が敷金から差し引かれることもあるのだ。
原状回復義務とは言ってもある程度の年数住んでいれば自然と傷や劣化は生じてくる。このような年数と共に生じる劣化に対して借主が現状に戻す修理費用を負担する必要はない。原状回復義務の定義は国土交通省がガイドラインとして下記のように記している。
原状回復とは「賃借人の住居、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されている。
注意すべきことは、借主による故意・過失による傷や善管注意義務違反(物件の管理、物件の異変などの報告や対策を怠ること)となる場合は借主が修理費用を負担することになる。
この修理費用を敷金で支払われたり、損傷が激しい場合は、敷金に加算して費用の追加請求をされてしまったりする可能性があるため注意が必要だ。
原状回復のガイドラインと責任負担はどこまで
前述したとおり賃貸物件の借主は、物件の原状回復の義務はあるが、経年劣化や通常使用による消耗を元に戻す義務はない。ただし、損傷の線引きがはっきりされていないと、どこまでが借主側で責任負担をしなければいけないか把握しづらいかと思われる。
国土交通省は賃貸契約による物件の原状回復条件を下記にように記している。
部位 | 賃貸人の負担となるもの | 賃借人の負担となるもの |
床(畳、フローリング、カーペットなど) | 1. 畳の裏返し、表替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)
2. フローリングのワックスがけ
3. 家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
4. 畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの) | 1. カーペットに飲み物などをこぼしたことによるシミ、カビ(こぼした後の手入れ不足などの場合)
2. 冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損などの損害を与えた場合)
3. 引越し作業などで生じた引っかき傷
4. フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの) |
壁、天井(クロスなど) | 1. テレビ、冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
2. 壁に貼ったポスターや絵画の跡
3. 壁などの画鋲、ピンなどの穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)
4. エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡
5. クロスの変色(日照などの自然現象によるもの) | 1. 賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合)
2. 賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知せず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁などを腐食させた場合)
3. クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食
4. タバコなどのヤニ・臭い(喫煙などによりクロスなどが変色したり、臭いが付着している場合)
5. 壁などの釘穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)
6. 賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡
7. 落書きなどの故意による毀損 |
建具(襖、柱など) | 1. 網戸の張替え(破損はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
2. 地震で破損したガラス
3. 網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの) | 1. 飼育ペットによる柱などのキズ・臭い(ペットによる柱、クロスなどにキズがついたり、臭いが付着している場合)
2. 落書きなどの故意による毀損 |
設備、その他(鍵など) | 1. 専門業者による全体のハウスクリーニング(賃借人が通常の清掃を実施している場合)
2. エアコンの内部洗浄(喫煙などの臭いなどが付着していない場合)
3. 消毒(台所・トイレ)
4. 浴槽、風呂釜などの取替え(破損などはしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
5. 鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
6. 設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの) | 1. ガスコンロ置き場、換気扇などの油汚れ、すす(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)
2. 風呂、トイレ、洗面所の水垢、カビなど(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)
3. 日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損
4. 鍵の紛失または破損による取替え
5. 戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草 |
<引用元:平成23年 8月 国土交通省住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)>
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html
ガイドラインを見ての通り、借主が負担となるのは故意や過失による損傷や物件の手入れなどを怠った場合だ。退去時の修理費用についてトラブルとならないためにも、借主が負担しなければならない項目について把握しておくことが大切だ。
入居前・入居時から傷だらけの場合の対応の仕方
賃貸の入居前、入居時から傷やワックスの剥がれなどの損傷が確認できる場合は、賃貸契約した不動産屋に報告することが大切だ。そして、不動産屋への報告と一緒に入居時からある損傷だと証明できるように、損傷している箇所の写真を撮っておくことだ。
再度言うが、証拠を残す、ということが大切だ。不動産屋へ報告したから大丈夫だと安心するのは注意しなければならない。例えば損傷の報告がされていても、報告を受けたものが退職していて事実確認ができなかったり、報告の記録が残っていなかったりすると元から損傷があったことを証明できないからだ。
証明できるものが何もない場合、状況によっては損傷箇所を借主側で負担しなければいけない可能性もある。このようなことがないように証拠として写真を撮っておくことを怠らないでおいていただきたい。
また、入居してから数日して損傷を確認した場合も同様に不動産屋へ報告して写真を撮っておくこと。その他に施工不良による不具合も生じる可能性もあり、こちらも同じように不動産屋へ報告し写真を撮っておくことが大切だ。
賃貸の損傷をDIYで補修は可能?
損傷をDIYで補修しようと考えている方もいるかもしれない。DIYで補修をすれば、原状回復義務による修理費用の負担もしなくてもいいと思う方もいるだろう。しかし、
賃貸物件の損傷をDIYで補修するのは、あまりおすすめできない。
補修など建築の専門職でない限り、DIYで補修を行うことは、あくまでも現状の緩和か損傷の跡を目立たなくさせるだけで、根本的な改善にはならないからだ。
また、DIYに不慣れで仕上がりの状態が悪いと余分に修理費用を請求される可能性もある。補修の仕上がりの質は賃貸人の判断に委ねられるのだ。
また、水漏れなどの配管の損傷は、DIYで中途半端に修理してしまうと、返って損傷が激しくなり被害が大きくなる可能性もある。このような場合は、迷わず専門業者に依頼した方がよく、まず大家さんや管理会社に現状を報告することだ。
賃貸による責任負担や損害賠償の請求などについては、下記の記事で詳しくご紹介しているので、良ければご参考していただきたい。
■賃貸アパート・マンションの雨漏り・水漏れ被害の責任と損害賠償の請求
https://shufukulabo.com/apartment-leakage-2
まとめ
フローリング補修キットなどはホームセンターや通販で簡単に手に入るため、敷居の低いDIYだといえる。一時的な応急処置として有効なためぜひ挑戦してもらいたいが、賃貸住宅の場合は最終的にプロに依頼しての補修が賢明である。
その際は、火災保険が適用できる可能性があるため、必ず保険会社に確認を取るようにしたい。
賃貸であれば、退去費用を抑えて、余裕のある引っ越しができるように、
持ち家であれば、長く快適に過ごせるようにしてほしい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。