賃貸アパート・マンションの雨漏り・水漏れ被害の責任と損害賠償の請求

アパートの雨漏りは誰の責任?原因別被害請求マニュアル

アパートの雨漏り被害は誰に損害賠償を請求すれば良いのか、そもそも賠償してもらえるのかが非常にわかりにくい。

建物を直すのは大抵が大家だが、住人側の被害は原因によって請求する相手が様々だ。

今回建築のプロである一級建築士が解説する原因別の請求相手を確認して頂ければ、回り道をせずダイレクトに請求相手へ対処する行動をとって頂くことができるだろう。

ぜひ早急に原因を確認し、被害の回復をしてもらえるよう役立てて欲しい。

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この記事読むことで理解できること

アパート・マンション・店舗の雨漏りの責任はだれ?

アパート・マンション・店舗の雨漏りの責任はだれ?

アパートやマンション・店舗などの賃貸契約での物件で雨漏り・水漏れが起きた場合、その建物の修繕費用などは誰が責任を取らなければいけないのだろうか。この疑問について賃貸借の民法を確認していく事が大切だ。では、下記にて具体的に解説していく。

賃貸の雨漏りは大家の責任!瑕疵担保責任・民法から見る損害賠償

賃貸の雨漏りは大家の責任!瑕疵担保責任・民法から見る損害賠償

賃貸のアパートやマンション、店舗で雨漏りが起きた場合、基本的に大家が責任を取る事になる。それはなぜかというと、下記の民法601条と民法606条第1項をまず確認してもらいたい。

民法601条

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

民法606条第1項 賃貸物の修繕などについて

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。

上記の条文により、大家と借主との間で賃貸契約がされると、その物件に必要な修繕は大家が行う義務となっている。大家は建物を管理する義務があり、雨漏りなど建物の瑕疵がある場合は修繕を行い維持し管理をしていかなければならない。これができていないと瑕疵担保責任が守れていないという事になる。

賃貸契約の際に「屋根や天井の修理は借主が負担とする」といった特約が含まれている場合、そこで雨漏りが起こった時の負担は必ずしも借主となるわけではない。本来屋根や天井は雨が建物の中に入らないように作るため、そこで雨漏りが起きるという事は建物の機能が欠けているという事になる。この場合の特約は無効となる可能性が高いだろう。

また、民法606条第1項の「ただし書き」があるように、もし借主側に原因がある場合は貸主(大家、管理会社)には修繕の義務がないという事になるので気を付けていただきたい。

雨漏りが起きて修繕が必要な旨を大家に伝えても応じてくれない場合、下記の法律が当てはまる。

民法607条の2

賃借物の修繕が必要である場合において、次に掲げるときは、賃借人はその修繕をすることができる。

一 賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき。

二 急迫の事情があるとき。

これは、大家が雨漏りが発生している事を知っていながらも何も対策をしなかった場合やその旨を伝えても修繕に応じてくれない場合、急迫の事情がある時は借主側が修繕をしていいという事になっている。だが、修繕にかかる費用がいくらまで妥当なのか、相当の期間内とはどの程度なのか明確にされていない。この法律について大家は知らない可能性もあるので、感情的にならず内容を伝え冷静に交渉していく事が大切だろう。

アパート・マンション・店舗の水漏れの責任はだれ?

アパート・マンション・店舗の水漏れの責任はだれ?

水漏れもアパートやマンション、店舗などの賃貸で多いトラブルだ。水漏れは建物の中に設置されている給水配管や給湯配管、排水配管などの劣化や損傷、施工不良など様々な原因で起こる。マンションなど集合住宅で水漏れが発生すると下の階の住人などに被害を与えてしまう。この場合の責任は住居人側にあるのか、それとも貸主(大家、管理会社)側にあるのかが問題となってくる。

水漏れが起きる状況では

・建物の経年劣化

・貸主の過失

・住居人の過失

などの原因が考えられる。

「建物の経年劣化」と「貸主の過失」が原因して水漏れが起きた場合、これは責任が貸主側にある。上記でお伝えしたように給水配管・給湯配管・排水配管などの配管類から水漏れが起きる可能性が高く、これら配管の経年劣化による水漏れは貸主側に責任が生じてくる。ただし、賃貸契約の内容によっては変わる可能性もあるので、契約内容の確認は必要だ。

「住居人の過失」が原因して水漏れが起きた場合、これは残念ながら住居人側に責任が生じてしまうだろう。住居人の過失で水漏れが起きるのは下記のようなものが考えられる。

・蛇口の締め忘れ

・水道器具など無理な使い方をして破損させる

・洗濯機ホースが外れる

特に洗濯機は一度動かしてしまうと放置してしまうため、ホースが外れても気づかない事が多い。ホースが外れていると排水した時に大量の水が床に流れ下の階にまで被害が出てしまう恐れがある。このような事がないように洗濯機の下に防水パンの設置やホースが外れない対策をしておく事が大切だ。

退去時の原状回復ガイドライン

退去時の原状回復ガイドライン

住まいは住んでいると時間と共に痛みや損傷などがでてくる。賃貸契約では借主と賃借人の双方の合意に基づいて契約は行われるが、退去時における住まいの原状回復についてトラブルが起こりやすい。

雨漏りで濡れてしまった壁紙や普段生活している上でついてしまった傷などは借主、賃借人のどちらが修繕費用の負担をしなければいけないか疑問に思うかもしれない。国土交通省は賃貸契約による物件の原状回復条件のガイドラインをこう記している。

部位賃貸人の負担となるもの賃借人の負担となるもの
床(畳、フローリング、カーペットなど)1. 畳の裏返し、表替え(特に破損していないが、次の入居者確保のために行うもの)

2. フローリングのワックスがけ

3. 家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡

4. 畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)

1. カーペットに飲み物などをこぼしたことによるシミ、カビ(こぼした後の手入れ不足などの場合)

2. 冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損などの損害を与えた場合)

3. 引越し作業などで生じた引っかき傷

4. フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)

壁、天井(クロスなど)1. テレビ、冷蔵庫などの後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)

2. 壁に貼ったポスターや絵画の跡

3. 壁などの画鋲、ピンなどの穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)

4. エアコン(賃借人所有)設置による壁のビス穴、跡

5. クロスの変色(日照などの自然現象によるもの)

1. 賃借人が日常の清掃を怠ったための台所の油汚れ(使用後の手入れが悪く、ススや油が付着している場合)

2. 賃借人が結露を放置したことで拡大したカビ、シミ(賃貸人に通知せず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁などを腐食させた場合)

3. クーラーから水漏れし、賃借人が放置したため壁が腐食

4. タバコなどのヤニ・臭い(喫煙などによりクロスなどが変色したり、臭いが付着している場合)

5. 壁などの釘穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)

6. 賃借人が天井に直接つけた照明器具の跡

7. 落書きなどの故意による毀損

建具(襖、柱など)1. 網戸の張替え(破損はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)

2. 地震で破損したガラス

3. 網入りガラスの亀裂(構造により自然に発生したもの)

1. 飼育ペットによる柱などのキズ・臭い(ペットによる柱、クロスなどにキズがついたり、臭いが付着している場合)

2. 落書きなどの故意による毀損

設備、その他(鍵など)1. 専門業者による全体のハウスクリーニング(賃借人が通常の清掃を実施している場合)

2. エアコンの内部洗浄(喫煙などの臭いなどが付着していない場合)

3. 消毒(台所・トイレ)

4. 浴槽、風呂釜などの取替え(破損などはしていないが、次の入居者確保のために行うもの)

5. 鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)

6. 設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)

1. ガスコンロ置き場、換気扇などの油汚れ、すす(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)

2. 風呂、トイレ、洗面所の水垢、カビなど(賃借人が清掃・手入れを怠った結果汚損が生じた場合)

3. 日常の不適切な手入れもしくは用法違反による設備の毀損

4. 鍵の紛失または破損による取替え

5. 戸建賃貸住宅の庭に生い茂った雑草

<引用元:平成23年 8月 国土交通省住宅局 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)>

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000021.html

上記のように賃借人が故意・過失による傷や手入れを怠ってしまうと、修繕費用は賃借人が負担する可能性が高い。ただし、経年劣化や通常の使用による摩耗などの修繕費用は賃料に含まれるものとしてガイドラインは考えられている。

国土交通省のガイドラインでは、原状回復とは「賃借人の住居、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されている。そのため原状回復とは賃借人が借りた当時の状態に戻す事ではない事を明確化している。

このような入退去時でのトラブルを未然に防ぐためにも損傷の有無や物件の状況をよく確認する事が大切だ。契約締結時に原状回復の条件を双方がよく確認をして、内容を納得した上で契約する事がトラブルを防ぐことになる。

大家側が被る損害賠償の必要な費用と相場

もし雨漏りや水漏れが発生し賃借人に被害を与えてしまった場合、貸主(大家、管理会社など)はどのような賠償が発生するか把握しておく必要があるだろう。賠償で考えられる項目は下記のようなものがある。

・雨漏りによるパソコンや家具などの家財の賠償

・雨漏りによる建物の修繕費用

・雨漏りにより店舗や事務所が営業できなくなった場合の賠償

・店舗や事務所の売り物が雨漏りにより損傷を与えた場合の賠償

・雨漏りが原因して借主が病気、ケガをしてしまった場合の賠償

・雨漏りの原因による家賃の値下げ

それぞれの賠償費用の相場というものは基本的にない。損害の規模によって賠償金額は変わり、家財についても定価ではなく現在まで使用されてきた年数や劣化状況などを考慮して価値が判断される。

また、建物の修繕の場合、修繕が終わるまでの仮住まいの費用も賠償費用として含まれる可能性がある。法律で家賃の値下げを求める事は認められているため、なかなか修繕に応じない場合だと賃借人が家賃の値下げを求めてくる場合もある事を把握しておこう。

放置は危険!雨漏り・水漏れの深刻な被害

アパートでの雨漏りだと自分の建物ではなく、あくまで借り物という意識からか放置してしまう方もいる。

しかし確かに建物は大家のものだが、雨漏りが本格化するとその被害は建物だけでは済まず、住む人の健康や財産にも大きな損害を与えるようになる。

しかも放置すれば被害拡大を防止する対処を行わなかった、ということで損害賠償を請求されることもあり、決して他人事ではない住まいの事故なのである。

ここで雨漏りの被害の深刻さを改めて理解して頂き、ぜひ軽度な内に対処をするよう努めて欲しい。

カビによるアレルギーや喘息

カビによるアレルギーや喘息

雨漏りが発生すると天井や壁が湿気を持ち、表面にカビが発生しアレルギーや喘息の原因となることがある。

これだけでも症状にお悩みの方にとっては非常に苦しいものだが、更に恐ろしいのは雨水が溜まる天井裏や壁の中で発生するカビだ。

表面にあれば原因もわかるし除去するなど対策も打つことができが、隠れた部分では原因もわからず対処のしようもないため、苦しむ一方となってしまう。

雨漏り放置の代償としては最も深刻な被害と言って良いだろう。

濡れると買い替え!家具や家電

濡れると買い替え!家具や家電

雨漏りは通常の雨ではシミが出来る程度でも、台風や豪雨で一気に漏れる量が増えることがある。

するとその下にある家具や家電がまたたく間に水濡れの被害を受けることになる。

家具ならシミや変形を起こし、みすぼらしい姿のまま使い続けるか買い替えで不要な出費をすることになる。

家電であれば最低でも修理か場合によっては買い替えとなり、特にテレビ周りやパソコン関係の物は高額なため、非常に手痛い出費となってしまうだろう。

被害縮小の為にも気になっているわずかな損傷も、早めに対応していただきたい。

感電による怪我の可能性

感電による怪我の可能性

雨漏りが本格化し家電や建物のコンセントなどが濡れた状態で人間が触れれば、漏電によって感電をする恐れがある。

痺れる程度で済めば良いが火傷をすることもあり、小さな子どもであればそれ以上の怪我をすることも十分に有り得る。

通常は漏電遮断器が作動するが、築年数の経ったアパートでは故障して作動しないケースも考えられる。

命に関わる被害を引き起こす可能性もあるため、雨漏りが広がる前に対策を講じておきたい。

アパート・マンションで水漏れが起きた時の被害

アパート・マンションで水漏れが起きた時の被害

水漏れの被害は基本的に物損事故にあたる。雨漏りと同様に水漏れが原因して家財や建物の内装など被害が出てしまった場合、それが貸主側に責任がある時は損害賠償を請求する事ができる。ただし、水漏れの原因が賃借人側にある場合は賃借人が修繕費用など負担をしなければいけない。

また、慰謝料の請求も考えられるが、前述したように水漏れは物損事故のため基本的には慰謝料の請求はできないと考えられている。ただし、トイレの汚水が水漏れし、それが原因して精神的に苦痛を受けたという事で慰謝料を請求したケースはあるようだ。

このように被害を与えてしまった場合は、まず管理会社や大家に被害状況を報告し状況を把握してもらう事が大切だ。その後、賠償の必要がある場合はすみやかに対応して謝罪をしよう。

重要なのは決して一人で事を進めずに貸主に報告をする事だ。それというのも本当に自分が原因して水漏れが起きたのか判断するためだ。マンションのような供用部分での水漏れは居住人の責任ではなく貸主(大家、管理会社)側にあり、この場合は賃借人が賠償する必要がない。

水漏れのトラブルは、事態が収束した後も双方住み続ける事が多い。近所関係もあるため被害を起こしてしまった側は、お互いの関係性を悪くしないように誠意を持った対応が大切だ。

雨漏りと水漏れの違い

雨漏りと水漏れの違い
雨漏りと水漏れの違い

アパートの室内に水が漏れてくる現象は、その原因によって「雨漏り」と「水漏れ」に分かれる。

部屋に現れる現象が殆ど同じなのでつい「雨漏り」の一言でまとめて呼んでしまいがちだが、この2つは明確に違う現象だ。

このため被害の補償について保険会社や相手方と話しをする際には、明確に違いを理解して話す必要がある。

雨漏りは字の通り雨水が建物の傷口や隙間から内部に入り込んで漏れてくる被害を指し、水漏れは上階の部屋のトイレなど水回り設備や天井裏にある給排水管などから漏れてくる現象を指している。

その原因によって補償になるかならないか、あるいは誰に損害賠償を請求すれば良いかが変わってくるため、正確に把握し使い分けなければならない。

この後で紹介するそれぞれの主な原因に照らし合わせ、自分の被害がどちらなのかをしっかりと確認して頂きたい。

建物の雨漏り3大原因

まずは雨漏りの代表的な原因をご紹介したい。

細かな例外はあるがこの3つが殆どを占めている。

雨漏り発生時に疑わしい箇所を管理会社や大家に連絡をすることで、修理や応急処置を素早く行う手助けになるかもしれない。

室内の応急処置が出来たら、外部から見える範囲で確認してみても良いだろう。

最も多い屋根

最も多い屋根

屋根は雨漏り原因の定番中の定番で最も確率が高い場所になる。

瓦の割れやズレ、傾斜の頂上にある棟と呼ばれる部材の損傷、本瓦であればその下にある漆喰のヒビ、屋根傾斜同士が合流する谷樋の鈑金の腐食、折板屋根など金属製屋根のボルト穴、雨樋や各所のコーキング等など、雨水の入り口となりうる場所が数多く存在する。

しかも外壁や窓まわりと違い見えにくい場所のため、雨漏りが発生してから損傷に気づくケースが圧倒的に多い。

管理会社による建物の定期点検が法定範囲の簡単なものや、オーナーがメンテナンスに消極的な場合に、被害が起きやすいことも知っておくと良いだろう。

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気づきにくい外壁

気づきにくい外壁

外壁の雨水の侵入口は、パネル間や帯など各種材料のジョイントの開きと、サッシコーナーや固定釘周りを中心としたひび割れが主になり、屋根に比べると種類が少ない。

しかし雨水の浸入口と室内に漏れ出る場所が離れていることが多く、しかも上階の壁の損傷は下から見えにくい上に、以前より増えてきている外壁周りの装飾材が侵入口を発見しにくくしている。

また室内に徐々に漏れるケースが多いため気づくのが遅れがちで、知らぬ間に家具の裏や押入れの奥に染み出ていてカビだらけになる事もある。

派手に漏れ出ないため気づくのが遅れ、しかも原因箇所の特定にも時間がかかるという、時間をかけて少しずつ深いダメージを与えてくるのが外壁からの雨漏りの恐ろしいところだ。

室内へ直結の窓まわり

室内へ直結の窓まわり

室外側の窓枠と外壁のジョイントはコーキングによる防水が施されているが、これが経年劣化などにより割れて雨水が浸入しての雨漏りとなる。

特に南側に面した掃き出し窓は大いため、劣化も早く大きなリスク箇所となっている。

またサッシ上部のコーキングは割れの可能性が高いだけでなく、雨水が溜まりやすいため特に気をつけて頂きたい部分だ。

雨が浸入すると自室の室内側に現れることが多いが、中には上階の窓枠の隙間からの浸水が下の階の部屋に漏れ出ることもありベランダに出た際に自室の窓枠に割れなどを発見した際は早急に管理会社へ連絡し補修をしてもらうようにしよう。

上階からの水漏れ原因

上階の水回り本体や天井裏に通っている配管から水道水や生活排水が漏れ出てくるのが水漏れである。

雨漏りと違い人為的な不手際や経年劣化、故障など原因は様々だ。

原因が天井裏や壁内だと突き止めるのに時間がかかる上に、複数の要因が重なったり他の住人が関係したりすると、なかなか費用負担や損害賠償が進まないことも多い。

以下に代表的な原因を挙げておくので素早い原因発見と早期解決に役立てて欲しい。

キッチン排水管の詰まり

キッチン排水管の詰まり

キッチンの排水に異物を流してしまったり、洗い物の際に流す油が配管の内側に少しずつ堆積したりして、配管を詰まらせて劣化したジョイントから排水が漏れ出す。

油を直接排水口に流す方はあまりいないと思うが、炒め物や焼き肉をした後のフライパンを洗い流すだけでも僅かずつ堆積していくのだ。

始めに紙などで油を拭いてから洗うだけ全く違うので、自分が加害者にならないよう意識してみよう。

トイレに異物を流す

トイレに異物を流す

トイレに大量のトイレットペーパーを流してしまい、詰まってあふれ出た汚水が階下に水漏れしてくることがある。

また流してはいけない物でトイレを溢れさせてしまう住人は意外に多く、大量のペットのフンや食べ残し、タバコの吸殻、中には紙オムツを流して詰まらせた例もある。

しかも溢れ出るのは汚水であるため、被害を受ける側のダメージが一層大きいのも特徴だ。

また一時期トイレのタンクに水の入ったペットボトルを入れて節水するという節約術が流行ったが、流れる水量が減ると汚物を流す力が弱まり詰まりの原因となる。

自分が水漏れを発生させる側にならないよう心当たりのある方は注意しよう。

洗濯機ホースの外れ

洗濯機ホースの外れ

洗濯機の排水ホースが外れて水が溢れてしまうのもメジャーな水漏れ原因だ。

ホースを掃除するため一度外して繋ぎ直して外れてしまったり、ホースの中に異物が詰まり逆流して溢れてしまったりすることが多い。

また古いアパートは排水管が昔の洗濯機に合わせた細いもので、ここで大量の水を一気に排水する全自動洗濯機を使うと、飲み込み切れず溢れることもある。

いずれも洗濯機の水漏れは短時間に大量の水が溢れるため、上階水回りでの水漏れの中でも被害が大きい原因の一つになっている。

古いタイル浴室は要注意

古いタイル浴室は要注意

近年では少なくなったタイル貼りの浴室も非常に危険な存在で、メンテナンスせず年数が経っているとタイル目地が細く割れて水漏れを起こす。

この原因が厄介なのはトイレや洗濯機と違い漏れている事が一見してわからないことだ。

水漏れがはっきりわかれば即座に止める処理ができるが、タイルのひび割れからの漏れは少量ずつ漏れ出るため、使っている本人もなかなか気付かない。

しかも少しずつ漏れるということうは長期間天井裏が濡れることになり、調べてみたらカビがびっしりと生えていた、などという被害も多い。

階下へ漏れ出る量は少ないかもしれないが、建物の内部被害は大きい水漏れと言えるだろう。

隠れた給排水管

隠れた給排水管

上階用や共用の給排水管、エアコンのドレンパイプなど、一般の方が想像する以上の管が天井裏には張り巡らせてある。

古い物件だと現代のジョイントを極力減らしたフレキシブル管ではなく塩ビ管などが一般に使われ、ジョイントの多さからどうしても劣化による水漏れが発生しやすい。

またアパートは短期工事やコストダウンの影響で一戸建ての住宅より施工不良が多く、残念ながら水漏れトラブルは無くならないだろう。

しかも天井裏や壁の中など隠れた場所の配管だと、発生してから原因を確認し応急処置をするまでに非常に時間がかかる面がる。

こちらも天井の小さなシミや湿気が多いなど、異常を感じたらすぐに管理会社や大家に連絡をすることが被害を最小限に抑えるポイントとなるだろう。

雨漏り発生時に取るべき行動

雨漏りが発生した際に取るべき行動は非常に重要になる。

突然発生すれば混乱してしまうが、どのように行動するかでその後の被害や補償が大きく変わってくるので、冷静にこの後の事例を参考に行動して欲しい。

バケツと雑巾で応急処置

バケツと雑巾で応急処置

実際に雨漏りが発生したらまずバケツで受け止め周りに広がらないようにしよう。

周りの床が濡れているようなら、床板にシミができたり変形したりしてしまうのでしっかり拭いておく。

壁からの雨漏りは雑巾などを水が落ちる場所に置き雨水が広がらないようにする。

冒頭でもお伝えした通り賃貸だからと言って放置したり眺めたりしているだけだと、被害の広がりを防ぐ対処をしなかったとの責任を問われる。

自室の被害はもちろん階下に被害があればその責任も問われることにもなるので、被害が拡大しないようしっかりと対処をして頂きたい。

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管理会社や大家へ連絡

管理会社や大家へ連絡

バケツなどで応急処置を行ったら速やかに管理会社か大家へ連絡をし、大至急修理をする業者を手配してもらおう。

保険の関係もあるので、自身で修理を手配するのは控え相手に任せた方が無難である。

ただし早急に対応しなければ被害がどんどん広がってしまう場合は、応急処置の業者を手配し費用を後日大家へ請求することもできる。

また可能なら管理会社の人間にすぐに来てもらっておくと、後日被害状況を書類などで提出する際に話が早いし、原因の特定にも役立つだろう。

状況の記録

状況の記録

雨漏りが発生した際はその状況を必ずカメラで撮影しておこう。

さらに発生の日時、天候、音や状況の変化などもメモしておくと、後日保険を利用する際に提出する書類を作る上で非常に役立つ。

記憶が薄れることも有り得るので発生してから時間を置かないことがポイントだ。

また被害を受けた家具や家電なども撮影し、可能なら濡れていたり、雨水がかかっていたりする様子も撮影できればなお良いだろう。

善管注意義務違反に注意!不具合を放置すると損害賠償問題になる

雨漏りの責任は基本的に貸主(大家、管理会社)側にある事は前述した。

しかし、例外があり、もし賃借人は雨漏りが発生した事を貸主に伝えずそのまま放置してしまい建物に損害を与えた場合、返って賃借人自身が責任を取らなければいけない可能性がでてくる。

雨漏りが発生した時に賃借人はそのまま放置せずに貸主(大家、管理会社)に連絡をするか、雨漏りの応急処置を行わなければいけない。これを怠ってしまうと善管注意義務違反にあたり、修繕費を請求されてしまう可能性がある。

善管注意義務違反とは借りる側も借りている建物の状況をみる義務があるという事で、雨漏りが発生しているのに何も対策をしないという事は、賃借人は建物をしっかりと管理していないという判断がされてしまう。

雨漏りは建物内部に水が侵入する事で構造体などの木が腐食し、放置すると被害が大きくなってしまう。そして被害が大きくなるほど工事規模や修繕費もかかるので、雨漏りが発生した場合は、すみやかに借主に報告を入れ対応してもらう事をお勧めする。

雨漏り被害の保証はどこまででる?

雨漏り被害の保証はどこまででる?

家財や引っ越し代は損害賠償の保証がでるか?

通常雨漏りが起きた賃貸物件は大家側が責任を取り保険(火災・自然災害)を利用して修繕していく。雨漏りの被害は建物だけでなく部屋に置いてあるパソコンや家具などの家財にも及ぶ事があるが、これらは賠償請求する事は可能だろうか。

この場合は大家側に過失がない場合は借りている側が自己負担となる可能性が高い。そのため家財などは自身の損害保険を使う必要がある。

ただし、貸主側に過失があり雨漏りが起こる可能性があった場合は見舞金として賠償金を請求できる可能性がある。家財については自然災害が原因での雨漏りでは損害賠償の請求は難しい事に気をつけていただきたい。

続いて雨漏りが原因して引っ越しを行う場合についてだ。雨漏りが発生しても中々修繕してくれない場合、家賃の減額を申し出る事が可能だが、引っ越しをしてしまうという方法もある。雨漏りが発生すると木の腐食やカビが発生するため生活するには衛生上悪い状態となる。

我慢して生活していくよりも引っ越してしまう方が良い場合もあり、このようなケースの時は引っ越し代の請求を求める事ができる。ただし、現在借りている賃料よりも高くなる場合は引っ越し費用の全額を請求する事は難しくなる事に注意していただきたい。

不具合は勝手に修理をしない

賃貸ではなく購入した物件の場合は問題ないが、賃貸では雨漏りや水漏れが起きた場合は自分で修理する事は避けた方がいいだろう。特に近隣に住む人や建物に影響が出るような被害の場合は決して自分で行わない事だ。

雨漏りや水漏れの修理は専門的な知識と技術が必要で素人ができるものではない。また、現時点で症状が止まったとしても目に見えないところで水が侵入、若しくは漏れている場合もある。

目に見えてこないまま症状が進行し悪化した状態で被害が発覚してしまうと、最悪のケースは賃借人側で損害賠償の責任を取らなければいけなくなる可能性がある。自分で修理する場合はあくまでも応急処置で留めておき、雨漏りや水漏れが起きた事を必ず貸主に伝える事が重要だ。

雨漏り・水漏れは誰が直し被害は誰が賠償するのか原因別で解説

アパートの雨漏りにおける建物の損傷は当然ながら大家が修理するが、一方で住人の家財被害を補償してくれるのは必ずしも大家とは限らない。

しかも保険が適用されなかったり補償が相手次第だったりと、改めて確認するとなおさらアパートの雨漏りは他人事と考えていると危険なことがわかる。

ここで原因別に損害をどこに請求すれば良いか整理し、発生した場合は適切な相手に素早く対処を求められるよう役立てて頂きたい。

※ここで解説する補償を求める相手は、一般論とされている内容をまとめたものである。

実際には複数の要因が関係し責任が一者ではなかったり、保険商品によって条件は変わったりするので、必ず保険会社や管理会社の見解を確認するようにして頂きたい。

台風や積雪暴風などの自然災害は火災保険が適用されるか確認

自然災害は火災保険で

台風や竜巻、大雨や大雪による建物修理は大家の加入する火災保険で行うが、住人の家具家電などの家財被害は大家側の火災保険では補償されないため、自身で加入する火災保険の自然災害補償で直すことになる。

 そのため普段から雨漏りが発生した際の保険の連絡先を把握しておく必要がある。

アパートの住人は契約時に何らかの火災保険に加入しているはずなので、どのような内容になっているか確認してみると良いだろう。

老朽化は保険が適用されない

老朽化は保険適用外

建物が老朽化して雨漏りとなった場合は保険では補償されず、建物修理は大家自身が行うことになる。

また住人側が受けた被害も保険の適用にはならないので、大家が雨漏りにならないようアパートの維持管理をしてこなかった為に発生した被害として、損害賠償請求することになる。

給排水設備の事故

給排水設備の事故

給排水設備の不測の事故、例えば突然配管が破裂した等で起こった雨漏り被害は、自身の加入する火災保険の水漏れ補償で直すことができる。

ただこの老朽化なのか突発的な事故なのかは判断が難しいところだ。

大家に必ず専門業者による調査をしてもらい原因を明確にしてもらおう。

施工不良は瑕疵担保責任による保証となるか

施工不良は保証か大家に

築10年以内であれば賃貸住宅においても、品確法で定められた住宅瑕疵担保責任に基づく施工業者の10年保証が付けられている。

これにより雨漏りの修理はもちろん濡れた家財も損害賠償の対象となる。

ただし10年経過してしまうと保証は切れるため大家が自身で修理や賠償をすることになるが、現実は資金に困窮している大家だと賠償されないケースも多い。

借主が原因で損害を与えた場合

雨漏りや供用部分の水漏れは基本的に貸主が責任を取る事になっている。では、賃借人側が原因となる場合はどんなケースだろうか。まず、前述した借主の管理不足による善管注意義務違反があたる。

また上記でお伝えした民法606条第1項のただし書きについて確認してもらいたい。

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。

これは賃借人側が原因して修繕が必要な場合は、貸主の責任は問われず賃借人が修繕する必要がある。このような場合とはどういう状況か、下記に記す。

・窓の閉め忘れで雨が侵入する

・外壁に設備を設置した際にあいた穴からの水の侵入

・ベランダの排水口に物を置いて塞いでしまったがために雨漏りしてしまう

・水の出しっ放しによる被害

・故意・過失による傷からの水の侵入、若しくは漏れ

・トイレの詰まりによる水漏れ

・洗濯機ホースの外れによる水漏れ

上記のような事が考えられ、賃借側の故意・過失によるものは貸主側で責任を取ってくれない可能性があるので注意すること。

住人が原因なら個人賠償責任保険

住人が原因なら個人賠償責任保険

水漏れ原因で紹介した上階の住人が原因の水漏れは、その相手へ損害の賠償を求めることになる。

もしアパートの契約時に上階の住人が個人賠償責任保険に加入していれば、被害を補償してもらえる。

ただし上階住人が保険に未加入な上に損害賠償の請求を拒否された場合、自身の加入している火災保険の水漏れ保険で補償してもらえる可能性もあるので、一度確認してみると良いだろう。

またこの個人賠償責任保険は、自分が加害者になってしまった場合に非常にありがたい保険になる。

水漏れを起こした時だけでなく他の住人の物を傷つけてしまった場合などにも有効で、特にアパートのような複数の他人と同じ建物で暮らす環境では非常にお勧めだ。

もし未加入の場合は火災保険に付加もできるので保険会社に問い合わせてみよう。

原因家財被害の請求先備考
自然災害自身の加入する火災保険自然災害の補償
建物老朽化大家に損害賠償保険対象外
給排水設備等の事故火災保険に付加の水漏れ保険
施工不良築10年以内なら施工業者の保証11年目以降は大家に請求
住人の不手際その住人か個人賠償責任保険不可能なら自身の水漏れ保険

雨漏りを防ぐ対策

一度雨漏りが起きるとその被害はとても大きい。できることなら雨漏りが発生させない事が望ましい。貸主側は建物の劣化と共に定期的なメンテナンスを行う事が大切だ。

雨漏りが起きやすい場所である屋根や外壁は耐久年数を超えるあたりで修理を行なっておく事をお勧めする。なぜなら、たとえ雨漏りがしていなくても耐久年数を超えると雨漏りする可能性は高くなるからだ。

雨漏りは柱などの木を腐食させシロアリ被害を起こす可能性もある。そのため雨漏りしてからの修理では遅いのだ。

賃借人側でも建物に雨漏りが発生しそうな状態を確認した時は貸主に報告し対応してもらうようにしよう。また、雨漏りは必ずしも貸主が責任を取るわけではない事を前述した。

そのため賃借人は下記のような事に注意しておく必要がある。

・自分に過失が発生しない生活を心がける

・火災保険を見直しておく

・賃貸契約の内容を確認しておく

火災保険は保険が適用できないケースもあるため契約内容を確認しておくこと。また、賃貸契約の内容も確認する事が重要だ。契約内容によっては修繕費用を負担してもらう代わりに家賃を減額するという内容もある。

まとめ

アパートの雨漏りは自宅と違い仮の住まいであるため軽視する方もいるかもしれない。

しかし被害はアパートだからと言って戸建て住宅と何ら変わることはなく、補償の面ではむしろしっかりした自己防衛が必要だ。

また雨漏りが発生しても何もせず放置していれば、被害が拡大するだけでなく損害賠償を請求されることにもなりかねない。

必ず必要な応急処置を行い被害を最小限に食い止め、しっかりと被害が補償されるよう正しく対処をして頂きたい。

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【記事監修】 山田博保

株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士

一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。

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