引っ越し作業や子供のいたずらで、室内壁に傷をつけたり穴が開いてしまったりすることはよくある。目立つ場所にあると目に入って気分が落ち込む原因となるし、大きな穴は放っておくと広がってしまう場合もある。
当記事では、元リフォーム営業マンの筆者が室内壁のDIY修理方法を解説する。
壁の損傷具合別に必要な道具と材料、作業手順まで修理に必要な情報をすべて掲載する。参考にして挑戦してみて欲しい。
記事の最後に、火災保険を利用した費用ゼロ円の補修方法を紹介するので、修理を検討している方はぜひ目を通していただきたい。
この記事読むことで理解できること
壁の損傷具合で補修方法と難易度が変わる
クロス表面の破れから石膏ボードの穴など、室内壁の損傷具合によって補修に必要な道具、方法と難易度は大きく変わってくる。10cm以上の大きな穴などは大工工事が必要になるため、かなり難易度が上がるがDIYに自信がある人なら不可能ではないのでぜひ挑戦してみてほしい。
ただし、賃貸住宅の場合はプロに依頼するのをおすすめする。素人では壁の一部を切り取って補修するのが限界のため、プロが見ればすぐに分かる可能性が高い。黙って補修を行うと、穴を不当に隠そうとしている印象を与えてしまうかもしれない。
比較的簡易的な補修
画鋲を差した後の小さな穴や、壁のちょっとした傷跡を埋めるのは専門技術が無くてもできる簡単な補修だ。家庭にある物と簡単な道具を使うだけで、穴の跡を隠すことができる。特に難しいこともないので、穴が目立って気になるようならぜひ挑戦して欲しい。
道具と材料があればできる補修
クロスの引っかき傷や破れといった表面的な損傷や、5cm以下の石膏ボードの穴なら道具と材料をそろえれば補修は難しくない。専用の補修キットなどもホームセンターなどで販売されているため、入手も苦労しないだろう。
大工仕事も発生しないため作業自体の難易度も高くはない。作業手順を守り、1つずつ丁寧に行えば初めての人でもキレイに仕上げられるだろう。
専門技術が必要になる補修
石膏ボードに空いた10cm以上の大きな穴の補修は、大工工事の技術が必要になるため、難易度が高くなり必要な道具も多くなる。DIYが得意な人なら補修できないことはないが、自信のない人は手を出さない方がいいだろう。
参考までに、プロが行う補修手順の動画を挙げておくので参照してほしい。動画を見て自分にもできそうだと感じたら挑戦してみるのもいいだろう。
画鋲の小さな穴の補修方法
壁にカレンダーやポスターを固定する際に使った、画鋲の穴を補修する方法を解説する。手順も少なく、簡単に行えるため気軽に挑戦してみて欲しい。
準備・必要な道具
・針または爪楊枝などの尖った物
・ティッシュ
・木工用ボンド
・カッター
針が無ければ爪楊枝でも補修できるが、先端が細い方が使いやすくなるためできれば針の方がいいだろう。木工用ボンドはどこにでも売っている一般的なもので構わない。
手順
①穴をボンドで埋める
まずは穴にボンドを詰める。穴が小さいためはみ出すことになるが、よくふき取らないと後で変色する場合があるのでよくふき取ること。
②ティッシュを針で押し込みなじませる
ティッシュを、用意した針で突きながら押し込んでいく。押し込みにくい場合は、先端を細長くねじると押し込みやすくなる。はみ出した部分をカッターで切ったら、手や針で周りの壁と馴染ませれば完成だ。
壁のネジ穴の補修方法
準備・必要な道具
・穴埋め材
・スポンジ
・カッター
・ドライヤー
クロスの穴埋め材はホームセンターやネット通販などで簡単に手に入る。1つ持っておくと何かと便利なので、使い終わったら保管しておくといいだろう。何種類かカラーが選べる商品もあるため、壁の色に合わせて選んで欲しい。スポンジは穴埋め材に同梱の場合も多いが、無ければ家庭用の物で構わない。
参考商品:クロスの穴うめ材
手順
①表面を平らにならす
ネジを抜いた後の穴の周囲は少し盛り上がっているので、カッターを使って平らにならす。カッターの先端を使うようにすると、余計な部分を傷つけずに済む。
②穴埋め材を注入する
穴埋め材の先端をネジ穴に押し当て、全体に染み渡るまで充填する。空洞があると乾いた後に凹む場合があるため、少しはみ出すくらいにしっかりと圧をかけて注入すること。
③スポンジでふき取る
あふれた穴埋め材を、スポンジを使ってふき取る。スポンジの平らな面を使って、表面をならすようにふき取ると仕上がりがキレイになる。ふき取りが甘いと、残った穴埋め材が目立つようになるのでしっかりとふき取ること。
④ドライヤーで乾かす
穴埋め材をドライヤーで温めると、乾燥しながら少し膨れて穴と密着し、表面も盛り上がって自然な仕上がりになる。壁のクロスはビニール素材のため、ドライヤーを当てすぎると溶ける可能性がある。壁に近づけ過ぎずに、様子を見ながら少しずつ暖めること。
下記はリペアのプロによるネジ穴補修の様子である。参考にご覧いただきたい。
クロス(壁紙)破れの補修方法
石膏ボードの破損がなく、クロス表面の破れのみの場合の補修方法を解説する。四角く切り取ったクロスの一部を補修するため、周りと似ている補修用クロスを選ぶのが重要となる。
準備・必要な道具
・定規(地ヘラ等)
・カッター
・パテ
・パテ用ヘラ
・サンドペーパー
・押さえローラー
・スポンジ
・補修用クロス(のり付きの方が簡単)
・手に持ちやすいサイズの角材(サンドペーパーを巻き付けるための物)
参考商品:補修用クロス のり付き
参考商品:クロス押さえローラー
参考商品:下地調整用パテ
参考商品:パテ用ヘラ
パテ・ヘラ・サンドペーパー・押さえローラーは比較的大きなホームセンターに行けば手に入る。近くに無ければ通販を利用するのが便利だ。補修用クロスはのり付きの物を選ぶと貼る工程が楽になる。
手順
カッターで四角く壁紙を切り取り剥がす
破れている部分より少し大きめの範囲で、四角くカッターを入れる。定規を当て、鉛筆でマーキングしてから行うと失敗が少ない。
四方にカッターを入れたら、カッターの先端を使って少し端を剥がし、後は手を使ってゆっくりと全体を剥がす。カッターの入りが甘いと、周りのクロスも一緒に剥がれてしまうので注意してほしい。
①パテ処理をする
クロスを剥がすと、石膏ボード表面の薄紙が剥がれて表面が凸凹になる。そのままクロスを貼ると仕上がりが悪いのでパテ処理を行い平らにする。大量に粉塵が出るので床面を養生しておくこと。
パテにメーカー指定量の水を加えて練り、パテ用のヘラで下地面に塗り付ける。時間を置いて乾燥したら、サンドペーパーを角材に巻きつけて表面を平らに削っていく。力を入れず、縦横に動かして均一面を出すようにすると仕上がりがよくなる。
②補修用クロスを貼る
補修用クロスを補修面より少し大きめに切断し、補修面からはみ出すように上から貼りつける。
既存壁紙と、新たに上から大き目に張った壁紙が重なっているラインに、地ヘラを定規にして、2枚のクロスが重なっている部分にカッターを入れる。
新しい壁紙の切りしろ(四角の枠)を取り除き、下側の既存壁紙の切りしろも取り除く。この時、新しく貼った壁紙がずれないように注意。余った部分を取り除いたらローラー等を当てて密着させる。
のりが乾くまではクロスが動くので、あまり力を入れずにそっとローラーを当てるのが上手く仕上げるコツだ。クロスを動かさないように、はみ出したのりをスポンジでそっとふき取ったら乾くのを待って完成。
また、わずかな剥がれの補修方法については下記動画のように貼り戻すことができる。
石膏ボードごと空いた5cm以下の穴の補修方法
強い衝撃で石膏ボード事空いてしまった穴も、5cm以下の小さなサイズなら大工工事なしで補修できる。クロスのみ補修にちょっとした手間が加わるだけなので、初めての人でも問題なく行えるだろう。
準備・必要な道具
・定規
・カッター
・パテ
・パテ用ヘラ
・サンドペーパー
・押さえローラー
・スポンジ
・補修用クロス(のり付きの方が簡単)
・手に持ちやすいサイズの角材(サンドペーパーを巻き付けるための物)
・石膏ボード補修用ネットシート
基本的には上で紹介したクロスのみ補修と同じ道具が必要となる。石膏ボードの穴をふさぐためのシートだけ追加で用意してほしい。強度があり、剥がれにくいアルミテープなどでも代用はできるが、専用品を使ったほうが簡単に施工できて不具合が出づらい。
参考商品:室内壁の補修 ネットシート 5枚入り
手順
手順も、先に解説したクロス破れの補修方法の手順に、「リペアシートを貼る」という工程が一つ増えるだけである。
①カッターで正方形に壁紙を切り取り剥がす
※4-2:手順を参照
②リペアシートを貼る
穴の周りをよく掃除し、表面に粉などが浮いていない状態にする。掃除が足りないとシートがはがれやすくなるので注意してほしい。穴より少し大きめにシートを貼って、簡単に剥がれないかよく確認する。
③パテ処理をする
※4-2:手順を参照
④補修用壁紙を貼る
※4-2:手順を参照
石膏ボードごと空いた10cm以上の穴の補修方法
10cm以上の大きな穴の補修は、プロが行っても半日前後の仕事となる。慣れない素人が行うと1日では終わらない可能性もあるため、多めに作業時間を想定しておくこと。大工工事で1日、パテとクロス補修で1日と区切りをつけるのもいいだろう。
準備・必要な道具
・定規
・カッター
・パテ
・パテ用ヘラ
・サンドペーパー
・押さえローラー
・スポンジ
・補修用クロス(のり付きの方が簡単)
・手に持ちやすいサイズの角材(サンドペーパーを巻き付けるための物)
・下地用の角材(太さ30mm×40mm、長さは穴のサイズに合わせて適宜用意)
・石膏ボード(9.5mmか12mm、厚みを確認する)
・のこぎり
・ビス(木材用、コースレッドと呼ばれる物を選ぶ)
・ドライバー
クロス補修の道具に加えて、石膏ボード補修を行うための道具と材料が必要になる。注意してもらいたいのは石膏ボードの厚みで、住宅に使われるのは9.5mmか12mmのどちらかだ。空いた穴で確認できるはずなので、定規やノギスを使って確認し、同じ厚みの石膏ボードを用意すること。
ビスはホームセンターに行けばたくさんあるが、種類が多すぎて分からない可能性がある。どうしても分からなければ店員に声をかけて、石膏ボードを固定するための物を選んでもらうといい。ドライバーは電動があれば楽にビス固定ができるが、手回しでも問題ない。
手順
①穴より少し大きめに石膏ボードを切り落とす
穴より少し大きめの長方形を壁にマーキングし、のこぎりを使って切り落とす。この時かなり粉塵が出るので、床面をしっかりと養生しておくこと。のこぎりの歯が引っかかった状態で無理やり引くと、石膏ボード全体が割れてしまう事があるため慎重に行って欲しい。
②補修ボードを切り出す
切り広げた穴のサイズに合わせて、補修用の石膏ボードを切り出す。寸法を測って石膏ボードに鉛筆でマーキングをしたら、定規を当ててカッターで切り込みを入れる。反対側から軽く手で叩くと簡単に割れて、仕上がりものこぎりよりキレイなのでぜひ試してみて欲しい。
補修用のボードが切り出せたら、補修箇所にはめ込んで隙間なくきれいに納まるか確認する。
③木下地を作る
石膏ボードをビスで固定するための木下地を、新しい木材で作る。2点だけ守ってもらいたいルールがある。
【ルール1】石膏ボードの表面が平らになるように下地を作る
下地が凸凹しているとパテ処理が大変になり、仕上げも悪くなるので時間をかけてなるべく平らに仕上げたい。
【ルール2】補修用ボードの四辺すべてに木下地を作る
補修用ボードは四方向すべて固定しないとぐらつきや歪みの原因となる。元のボードと新しいボード両方を同じ木にビス止めできるようにすること。
この2つのルールさえ守れば、どのように木下地を作っても問題ない。もともとある木下地と接続して、しっかりとボードが固定できるように気を付けること。
④ボードを取り付ける・面取りする
石膏ボードをはめ込み、壁面が平らになっていることを確認したらビスで固定する。特に規定はないが、目安として20mm~30mm間隔でビス止めするとガタつきがないだろう。ビスはボード面から飛び出しているとクロスの仕上がりが悪いので、厚紙一枚分くらいめり込ませる。めり込ませすぎるとボードを貫通してしまうので、力加減に気を付けて欲しい。
ボードを固定したらボードの周囲をカッターで斜めに切り落とす面取りを行う。新しいボード、古いボード両方とも切り落とし、断面で見るとV型の溝がある状態にする。面取りを行うことでパテがなじみやすくなり、仕上がりがキレイになるので必ず行うこと。
➄パテ処理をする
※4-2:手順を参照
基本的には上で紹介した手順と同じだが、面取りした部分がしっかりと埋まるように念入りにパテを盛ること。
⑥補修用壁紙を貼る
※4-2:手順を参照
室内壁の損傷も火災保険が適用される!
クロスの剥がれや壁の穴は突発的に発生するため、予想していない補修費は手痛い出費だ。そこでまず確認していただきたいのが、住宅の火災保険の加入状況だ。
火災保険と聞くと、火災以外には使えないような気がするが、実は天災や盗難など幅広い被害に適用することができる。住宅ローンを組む際に加入が必要となることが多いため、加入している方も多いだろう。
毎月保険料を払っているのだから、使えるときに有効活用したほうがいい。保険証書を調べて、担当者に連絡を取ってみるのをおすすめする。
保険適用となる「不測かつ突発的な事故」とは
壁のクロスを剥がしてしまったり、穴を開けてしまったりといったケースは「不測かつ突発的な事故」に区分され、保険適用の対象となる。火災保険の保障対象は基本的に建物全体となるので、室内壁も含まれる。
保障される金額は損傷の状態によって違うので、火災保険の申請実績も豊富な業者に、損傷の状態を伝えて無料見積もりを出してもらうと良いだろう。
さらには、無事保険金が支払われたら工事に取り掛かる業者であり、もしも保険申請が通らなかった場合は、無理に工事を進めない業者が良い。
賃貸住宅でも、流れとしてはまず、保険証書を確認し、「不測かつ突発的な事故」又は「破損・汚損」が契約内容に含まれているか確認し、含まれていれば業者に見積書やその他報告書の作成を依頼する。
含まれているかわからない場合は保険会社に連絡を入れて確認すると良い。
プロに依頼する際は補修が得意な業者を選ぶ
クロス補修をプロに依頼する際は、内装補修が得意なリペア業者を選んで欲しい。内装が得意でない業者は補修のノウハウが少ないため、仕上がりが不自然になる可能性がある。
そもそも内装の職人を抱えていない業者の場合、協力業者から応援を呼ぶこともあり、中間マージンが発生して費用が高くなる。腕のいい職人が来るとは限らないので、仕上がりにも期待できない。
依頼先を選定する際は、内装の事例を調べたり直接聞いてみたりして、補修が専門分野のリペア業者を選んで欲しい。
まとめ
室内壁の補修は損傷具合によって難易度が変わるが、5cm以下の穴やクロス破れ程度であれば難易度は低い。必要な物が揃っている補修キットなどもあるので気軽に挑戦してみて欲しい。10cm以上の大きな穴も、時間をかければ何とか補修することはできるが、自信のない方はプロに依頼をするのが無難だ。
また賃貸住宅の場合は、穴を隠したことが発覚すると大家とトラブルになる可能性があるため、必ずプロに依頼すること。その際は、先述したように火災保険を利用できる可能性があるため、まずは保険証書の内容確認をしてほしい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。