タバコや油汚れ、水回りのカビ汚れなどで、壁のクロスは年々汚れていくものだ。後でやろうと思って汚れを放置すると、汚れが固着して落としづらくなってしまう。さらなるカビの発生原因などにもなるため、放置せずになるべく早く落とすことが大切だ。
当記事では、さまざまな壁クロスの汚れの落とし方を詳しく解説する。簡単に用意できる道具で手軽に実践できる方法を紹介するので、ぜひ実践していただきたい。
記事の後半に、火災保険を利用して費用ゼロ円で汚れを落とす方法を紹介するので、壁クロスの汚れで悩んでいる方は最後までチェックしてほしい。
この記事読むことで理解できること
壁クロスは気づかないうちに汚れている
壁クロスが汚れる原因は様々だが、子供の落書きなどの突発的な汚れと違い、タバコや油汚れなどの汚れは蓄積するためすぐには気づきにくい。静電気で付着した粉塵やホコリなども蓄積すると汚れの原因となる。
模様替えなどで家具を移動したら、後ろのクロスだけきれいで周りの汚れに気づくということも珍しくない。汚れは年数が経つほど落としづらくなるため、気づいたら早めに対処したいところだ。
壁クロスは普段から掃除する場所ではないのでなかなか気づきづらいが、大掃除などのタイミングで時期を決めて毎年行うと良いだろう。
汚れの種類で有効な対処法は変わる
一口で汚れと言っても、その原因によって汚れの種類は様々だ。台所では料理による油汚れが発生しやすく、洗面所などは浴室の湿気が原因でカビが発生しやすくなる。居室でタバコを吸う場合は、部屋全体にヤニ汚れが付着することになる。
やみくもに掃除をしてみても、汚れが全く落ちないということはよくある。例えば油汚れを中性洗剤で落とそうと思ってもなかなか落とすことはできない。すべての汚れに有効な対処法はなく、汚れの種類にあわせた落とし方を実践する必要がある。
次の項目から、汚れの種類別に分けて対処法と必要な道具、おすすめの洗剤を紹介する。落としたい場所の汚れの原因を見極め、有効な手段で清掃に取り組んでみて欲しい。
油汚れの落とし方
毎日料理をする家庭で、炒め物や揚げ物が多い場合はキッチンやダイニングで油汚れが発生しやすくなる。時間が経つと油汚れの色が染みついて落としづらくなるため、料理頻度の多い家庭は年に数回汚れ落としを実施するのがおすすめだ。
また、電気のスイッチ回りなどの手が触れる場所は黒ずんでくることがあるが、これも手の皮脂による油汚れだ。階段の曲がり角など手で触れがちな場所に発生しやすいので、気になる場所があれば同じ方法を試してみて欲しい。
必要な道具・おすすめ洗剤
<必要な道具>
・雑巾二枚(水拭き・乾拭きで分ける)
・ビニール手袋
・床に敷くビニール(壁に沿って敷ける細長い物がベスト)
・歯ブラシ
・バケツ
<おすすめの洗剤>
・油汚れ用マジックリン ハンディスプレー(長年のしつこい油汚れ)
作業手順
①養生
床面に洗剤と油汚れが垂れても問題ないように、ビニールで養生を行う。ホームセンターなどにロール状の養生ビニールが数百円で売っているので活用すると良いだろう。作業を行う壁面より少し広めにしておくと、汚れが飛び散っても慌てずに済む。
風のある日などは床面にテープ固定するとさらに良いが、年数の経ったフローリングなどはテープを剥がす際に床面を傷める場合がある。粘着力の弱い養生テープを使用し、目立たない場所で試してから貼ること。
②洗剤で汚れをこする
バケツに水を汲み、用意した雑巾の一枚を濡れ雑巾にする。濡れ雑巾に洗剤をつけて壁をこすって汚れを落としていく。マジックリンはアルカリ性なので、必ずビニール手袋を着用すること。
壁クロスの凸凹が深く落としづらい場合は、歯ブラシも併用してこすると落としやすい。長年の汚れが固着している場合は、表面に洗剤を塗り付けてから少しつけ置きするのも有効な手段だ。
➂仕上げ
汚れが大体落ちたら、濡れ雑巾で汚れと洗剤をふき取り、最後に乾拭きで仕上げを行う。拭き上げてみて、汚れが落ち切っておらず斑になっている箇所があれば、②に戻って繰り返し作業する。
④養生はがし、片付け
壁面の作業が終わったら、養生ビニールを撤去してまとめて捨てる。汚れや洗剤を床に落とさないように、気をつけて丸めること。床にこぼれた場合は、変色などの恐れがあるので素早くきれいにふき取った方がいい。
カビの落とし方
洗面所やトイレなど、水場の近くでは湿気によるカビ汚れが発生しやすい。鉄筋コンクリート造の場合は湿気がこもりやすい為、建物の北側などもカビが発生しやすいので注意してほしい。
カビは一度落としても、原因を解消しない限り必ず再発する。カビが発生する三大要素「温度、湿度、栄養」のうち一つでも防げば発生を軽減することができる。カビ汚れを落とした後は、換気を頻繁に行うなどの対策で再発を防ぎたいところだ。
必要な道具・おすすめ洗剤
<必要な道具>
・柔らかいスポンジ
・雑巾二枚(水拭き・乾拭きで分ける)
・ビニール手袋
・床に敷くビニール(壁に沿って敷ける細長い物がベスト)
・歯ブラシ
・バケツ
・重曹(おすすめの洗剤で代用可)
・食用酢(おすすめの洗剤で代用可)
<おすすめの洗剤>
・暮らしの重曹せっけん 泡スプレー
・ティンクル お酢のチカラ
作業手順
①養生
※先にお伝えした2-2「油汚れの落とし方の作業手順」の養生を参照
②酢スプレーでカビを落とす
おすすめ洗剤で紹介したような酢酸系の洗剤か、家庭用の酢を薄めて作った洗剤をスポンジに含ませ、汚れをこする。クロスの凸凹が深く、汚れが落としづらい場合は歯ブラシを使ってこすれば落としやすい。
洗剤を含みすぎるとクロスのつなぎ目から浸水し、剥がれの原因となるので、少量ずつ試すこと。既にはがれかけている場所の周りは作業を行わないようにする。
➂ふき取り、仕上げ
カビ汚れが落ちたら、固く絞った雑巾で洗剤と汚れをしっかりとふき取る。汚れをふき取ったら重曹スプレーをかけて乾拭きすることで、再発防止効果が期待できる。
酢の力で殺菌作用があるものの、拭き残しがあるとそこからカビが再発しやすくなるのでしっかりと拭き上げること
④養生はがし、片付け
※2-2で先述の「油汚れの落とし方の作業手順」の④を参照
紹介の方法を行ってもすぐに再発する場合や、カビが表面だけの繁殖ではない場合には、
カビ菌の繁殖が進行している可能性が高い為、健康被害に合う前に、カビ除去や防止を専門としている業者も検討してみてほしい。人体や建材にも安全な方法にて対処してくれる。■カビラボ https://kabilabo.com/
タバコヤニ汚れの落とし方
室内で喫煙している際のタバコヤニ汚れは、日々蓄積して着色が進んでいく。長期間放置すると、クロスが染まってしまい完全には落とせなくなるため、喫煙頻度が多い家庭は頻繁な清掃をおすすめする。
汚れの再発を防ぐには、屋外での喫煙を習慣づけるか換気扇の近くで吸うようにしたいところだ。空気清浄機を用意するのも効果があるので、ぜひ試してもらいたい。
必要な道具・おすすめ洗剤
<必要な道具>
・柔らかいスポンジ
・雑巾二枚(水拭き・乾拭きで分ける)
・ビニール手袋
・床に敷くビニール(壁に沿って敷ける細長い物がベスト)
・歯ブラシ
・バケツ
<おすすめの洗剤>
・セスキの激落ちくん 密着泡スプレー
作業手順
①~④
※2-2を参照。基本的な手順は油汚れの落とし方と同様。おすすめの洗剤で紹介したような、セスキ炭酸ソーダ水系の洗剤が有効となる。
ペットの尿シミの落とし方
犬や猫などのペットを飼っている場合、本能的なマーキング行為などで壁クロスに尿が掛かってしまう事がある。見た目も良くないし、臭いが染みついてしまう事もあるため、発見次第早めの対処を心掛けたい。
必要な道具
<必要な道具>
・柔らかいスポンジ
・雑巾二枚(水拭き・乾拭きで分ける)
・ビニール手袋
・床に敷くビニール(壁に沿って敷ける細長い物がベスト)
・バケツ
・レモン汁
<おすすめの洗剤>
・キッチンハイター
作業手順
①養生
※先にお伝えした2-2「油汚れの落とし方の作業手順」の養生を参照
②漂白剤でシミを落とす
漂白剤をスポンジに染み込ませ、シミの部分を叩くようにしてシミを落とす。色が濃いクロスの場合は変色して目立つ恐れがあるため、必ず目立たない場所で試してから行うこと。
シミが十分に落ちたら、濡れ雑巾を用意して漂白成分をしっかりとふき取る。塩素系漂白剤は臭いがきついので、必ず窓を開けるか換気扇を回しながら作業を行う。
➂レモン汁で臭いを落とす
尿の成分はアルカリ性なので、酸性のレモン汁を使って臭いを中和させる。スポンジに含ませて、シミ部分を叩くようにしてなじませてから濡れ雑巾でキレイにふき取る。
ただし、先に使用した塩素系漂白剤をしっかりとふき取ってから行うこと。
④養生はがし、片付け
※2-2で先述の「油汚れの落とし方の作業手順」の④を参照
ボールペン・クレヨン落書きの落とし方
子供のいたずら書きでついたボールペンやクレヨン汚れは、時間が経てば経つほど落としづらくなるため、気づいたらすぐに対処したい。
最近のボールペンは様々なインクが使われていて、どの手段が有効になるか分からないため、汚れの落ちが悪ければいくつか試してみて欲しい。
必要な道具
・消しゴム
・研磨剤入り歯磨き粉
・メラミンスポンジ
・漂白剤(台所用・塩素系)
・歯ブラシ
作業手順
①汚れをこする
上で紹介した道具を使って汚れをこすり落としていく。消しゴム、歯磨き粉、メラミンスポンジは壁紙を少しずつ削っていくので、やり過ぎると周りとの差が出て目立ってしまう。必ず目立たない場所で試してから行う事。
漂白剤は、元のクロスの色が濃い場合は色の変化が目立つためおすすめしない。どうしても試す場合は目につかない場所でパッチテストを行う事。
油性マジック落書きの落とし方
油性マジックでの落書きはクロスへの定着が強く、洗剤などで落とすのは難しい。上手くすればほとんど分からないレベルまで落とすこともできるため、あきらめずに挑戦してみて欲しい。
対策としては、子供の手が届く場所に油性マジックを置かないことだ。子供は開けられないチャイルドロック式の戸棚などに収納するのもいいだろう。
必要な道具
・除光液
・コットン
・雑巾
作業手順
①除光液で汚れを落とす
コットンに除光液を少量含ませ、強くこすらずにトントンと叩くように汚れを落とす。広い範囲をこするようにすると、汚れが伸びてしまい余計目立ってしまうので、絶対に避けること。
クロスの素材によっては変色したり、溶けたりすることがあるので必ず目立たない場所で試してから行ってほしい。除光液のつけ置きなども厳禁。
②仕上げ
大体汚れが落ちたら、乾拭き雑巾でこすって仕上げる。汚れが残っているようなら、①の工程を繰り返す。
プロに依頼する場合の方法・価格相場
自分でできる方法を試したものの、長年の蓄積によってどうしても汚れが落とせない場合もある。そのような場合はプロに依頼をすることになるが、有効な施工は主に3つある。それぞれの方法とおおよその価格相場を記載するので、業者探しの参考にして欲しい。
クロス張替え
クロス張替えは壁面が新品になるため、当然最も美しくなる方法だが、比例して費用も一番掛かる。クロスの寿命は10年~15年前後と言われており、10年以上経っている場合は張替えを検討しても良いタイミングだ。
プロの業者に依頼した場合の費用目安は1㎡あたり1,000円~1,500円前後で、6畳の目安は約4万円~6万円だ。6畳以下の場合は割増料金となる場合が多い。部分的に張り替えても差が目立って気になるので、一部屋丸ごと貼り換えたほうが経済的だ。
施工人数や作業状況にもよるが、6~10畳程度の部屋であれば1日で張替えが完了する場合が多い。ただし、部屋の荷物はなるべく外に出した方が作業はが早くなる。どうしても外に出せない場合は、荷物を軽くして移動しやすくしておくといいだろう。
最近は汚れ防止やカビ防止機能を搭載した壁クロスも発売されている。オプション料金となる場合が多いが、汚れやすい場所に選べば費用対効果は大きい。張替えの見積を取る際は、ぜひ検討してほしい。
クリーニング
クリーニングの専門業者は、市販されていない洗剤や道具を使用することができるので、DIYの清掃よりも汚れが落ちる可能性が高い。しかし、必ず落ちるという保証はないため、依頼する場合はあらかじめ理解しておいてほしい。
料金の目安は10㎡あたり5,000円~10,000円前後といったところだ。6畳間の目安は約2万円~4万円となる。汚れの種類やクロスの種類によっても異なるので、見積を取った方が確実だろう。面積が狭い場合は割増料金となる場合が多いので、なるべくまとめて依頼するようにしたい。
メリットとしては部分的なクリーニングにも対応できるという点だ。複数の場所を少しずつクリーニングしてもらうこともできるだろう。また、クロス張替えと違い、荷物の移動など大掛かりな準備が必要ないのもありがたい。
塗装
汚れはあるものの、剥がれや傷がない場合はクロス塗装も有効な選択肢だ。単色になってしまうのがややデメリットだが、素人が見れば新品のクロスと見分けがつかないレベルまできれいになる。
プロに依頼した場合の費用は1㎡あたり1,000円~1,500円が相場となる。6畳の壁・天井全体を塗装した場合は4万円~6万円が相場となるだろう。価格相場はクロス張替えとほぼ同じだが、施工にかかる時間が短いのが大きなメリットだ。業者によっては壁の一面のみなどの部分塗装にも対応している場合があるので、部分的な汚れが気になる場合は相談してみて欲しい。
好きな色合いを選べるのも大きなメリットだ。部屋全体を塗装すればイメージを一気に変えることもできる。最近は人体に影響の少ない水性塗料が進化しているため、施工後の匂いが気にならないので小さな子供がいる家庭でも安心だ。
気をつけたいのは、古い壁クロスは塗装してキレイになってもはがれてしまう可能性があるということだ。目安として8年~10年近く経っている壁クロスは貼り換えた方が無難だろう。
壁クロスの汚れ落としに火災保険が使える!?
子供の落書きなどによる汚れは、目立つ場合が多いため来客が多い家などでは早めに対処したいところだ。予想できない急な出費は家計にとって痛いダメージだが、住宅の火災保険が利用できる場合があるので確認してほしい。
火災保険という名前から想像すると、建物の火災、延焼に限定のように感じてしまうが、落雷や水害、物体の衝突など様々な被害に対応できる。ローンを組んで購入した方は、その際に加入しているケースが多いので、一度保険証書を確認してみると良いだろう。
不測かつ突発的な事故による汚れは保険適用される
火災保険の補償となる対象範囲は、建物全体が含まれるため室内の壁クロスも適用対象となる。
子供の落書きやうっかりミスによる汚れは「不足かつ突発的な事故」に分類されて保険適用の対象となる可能性が高い。毎日少しずつ蓄積した汚れに関しては、適用は難しいので注意してほしい。
賃貸住宅の場合も火災保険は加入必須となっているため、念のため保険証書を確認して、「不測かつ突発的な事故」か「破損・汚損」が含まれているか確認してほしい。よく読んでも分からない場合は保険会社に連絡して確認してみると良いだろう。
9-2:保険適用実績のある業者に依頼する
火災保険が適用できることが分かったら、実際に工事を行う業者に見積を依頼する。業者選びの際は、火災保険の申請で実績がある業者を選ぶようにしたい。
見積は保険会社に提出して審査に通す必要があり、保険会社によって求められる形式が違う場合もある。保険申請の経験がない業者だと、対応に時間がかかることが多く、着工までの期間が長くなる。
工事が終わった後も、修繕後の写真や書類を提出する必要があるが、慣れている業者ならまとめて行ってくれる。自分で行うのは手間がかかるので、保険申請に慣れている業者に依頼してほしい。
まとめ
壁クロスの汚れは、汚れ方の種類によって必要な洗剤や落とし方が変わる。放置して長年経った汚れはどんどん落としづらくなるため、気づいたときに早めに対処したい。必要な道具、洗剤はどれも簡単に入手できる安価な物なので、今回の記事を参考に挑戦してみて欲しい。
どうしても落ちない場合は、プロに相談して一番きれいになる方法を検討すべきだ。前述したように、落書きなどの突発的な汚れについては火災保険が使えるケースもあるので、あきらめずにまずは保険内容を確認してほしい。
壁面は毎日目に入る場所のため、汚れているままだと気分が落ち込むし、来客時に恥ずかしい思いをすることになる。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。