壁からの雨漏りは、初めは小さな染みかもしれないが、その被害は天井の雨漏り以上に広範囲に渡る。
隙間の無い壁の中で雨水が飽和状態になっている為その内部被害は刻一刻と拡大し、漏れ出した雨水は直下に被害が集中する天井雨漏りと違って扇状に広がっていく。
早急に入り口となる原因箇所の発見し応急処置を施さなければ、被害は深刻なものになるだろう。
今回は建築のプロである一級建築士がその発生箇所の発見とDIYによる補修の方法をお伝えする。
ぜひ目を通して頂き被害を最小限に食い止めるために役立てて欲しい。
火災保険を利用して修理費の自己負担分を減らす方法も解説しているので、併せて一読して頂きたい。
この記事読むことで理解できること
壁の雨漏りから起こる8つの被害
天井の雨漏りはその直下の被害が中心だが、壁からの雨漏りの被害は想像以上に広範囲だ。
発生箇所付近の内装材、もちろん壁内部、そして壁に接する家具家電などにも被害が及ぶ。
初めは小さな染みかもしれないが、壁内の雨量が飽和して現れているので、油断しているとその広がるスピードは非常に速い。
また壁や物陰に隠れて発生すれば発見が遅れ、被害をさらに広範囲にしてしまうという怖さもある。
この決して侮れない壁からの雨漏りの被害とはどんなものか、改めて確認してみよう。
クロスの染み・剥がれ
まず思い浮かぶのがクロスに染みや剥がれが発生することだろう。
濡れている時点ではそれ程の被害に見えないが、乾いてから浮きや波打ちが現れたり、気泡が入った膨らみが出るなど後から大きな被害が現れる。
更に時間が経つと変色なども加わりじわじわとダメージが現れるため、精神的に参ってしまう方も多い。
またクロスは痛んだ所だけを貼り直すのが難しく、広範囲に修理するので意外に費用がかかってしまうのもこの被害の特徴だ。
下地ボードの崩れ
クロスの下地の石膏ボードまでひどく濡れてしまうと被害はさらに拡大する。
石膏ボードは濡れるとふやけて変形するだけでなく、程度がひどいとボロボロと崩れてきてしまうからだ。
こうなってしまうと上からはクロスが貼れないだけでなく、元々の目的である防火の性能も大きく落ちてしまうことになる。
また石膏ボードも一部だけ貼り直すことが難く広い面積で張替えとなる上に、大工仕事となるためクロス業者との2業者の工事となり更に修理費は高額になる。
和室京壁の染み
壁がクロスではなく京壁という和風の塗り壁の場合はさらに被害は深刻だ。
クロスより染みははっきりと残るので見た目のダメージも大きく、しかも塗り直さない限り取る事はできない。
大抵は上塗りで直せるのだが染みが出来た壁だけを塗り直すと、明らかに他の壁と色が変わってしまうので結局はその部屋の壁を全て塗り直すことになり、結局は高額の修理費になる。
またクロスと同様に下地のボードが変形していたりすればその張替えの可能性も出てくる。
和室の白木造作材の染み
和室の柱や廻り縁や鴨居、吊束など白木で出来ている材料も濡れると染みになるが、目に見える被害ではこれが最も直すのが難しい工事になり厄介な被害だ。
これらの材料を取り外して交換するにはかなりの大工事になり、金額も大変な額がかかるので現実的には不可能である。
他の方法としては無垢材であればカンナで削る方法もあるが、染みが深ければ完全に取ることは出来ないし、そもそも近年の住宅は集成材がほとんどなのでカンナかけは不可能だ。
また漂白して塗装したり、化粧貼り材を被せるなどもあるが、いずれも仕上がりはイマイチな上に結構な金額になってしまう。
コンセント・スイッチ類の漏電
壁面にはスイッチやコンセントがあり、壁に雨漏りが浸入して濡れてしまうと非常に危険だ。
ブレーカーの漏電遮断機が何度も落ちていれば、家電やパソコン機器などにダメージを与えることもあるし、感電や古い建物で漏電ブレーカーがきちんと作動しないと最悪火災に繋がる可能性もある。
しかも壁内での火災は発見が遅くなりがちなので、被害が非常に大きくなる危険性を持っていると言えるだろう。
カビ
壁の雨漏りはすぐに現れず壁内でじわじわ広がるので、湿気を含む程度の浸水範囲はかなりのものになる。
これに気付かないと一通り雨漏りで汚れた壁などを修理しても壁内に湿気が残ることになり、数週間後にタンスの裏などにカビが出てくるなど時間差で被害が現れる。
見えるところに現れてくれれば良いが、壁内でカビが発生し気付かずにいると住人の健康被害に繋がる可能性もある。
壁内の構造材の腐食
これもカビと同様で壁内に残った湿気が原因で内部の構造材の腐れや錆を発生させる。
壁の中は天井裏と違い空間が狭いために通気が取りにくく、湿気による被害は大きくなりがちだ。
しかも一旦内装工事が終わってしまえば気付く事は難しく、まるで時限爆弾をしかけられたようなもので数年後には耐震性が大きく損なわれた危険な状態になるだろう。
家具、家電などの被害
壁からの雨漏り被害は建物だけに留まらず、その壁に接して置いてある家具や家電への被害も多い。
特にタンスのような大きな物の裏側に雨漏りがしていると発見も遅れ被害が拡大していく。
また家電は水濡れは即故障に繋がり修理不可能の場合も多く、しかもテレビを中心に最近は高額化しているため金銭的なダメージも大きい。
しかもパソコンなどは中のデータを失うこともあり得るため、金額以上の被害を受けるだろう。
原因はココにあり!浸入箇所を徹底解説
室内への雨漏りの浸入箇所は様々であるが、もし発生した場合は早急にその原因を探ることが重要だ。
発見できれば応急処置が可能かもしれないし、もし見つからなくても予想をしておけば専門業者に対応を依頼した場合に初期対応が素早くなるだろう。
以下に代表的な浸入箇所を挙げておくので探す手助けにして欲しい。
また残念ながら発見できなかった場合は状況が悪化する前に早急に専門業者へ連絡しよう。
外壁からの浸入箇所
室内壁面の雨漏りの浸入箇所で最も多いのは当然外壁であるが、それを探す前にひとつ注意して頂きたいのが外壁の中の造りだ。
築20年未満の建物は外壁の中がすぐに建物本体ではなく、通気層という数センチ程度の空間を設けた工法を取り入れている住宅が多い。
元々は壁内に湿気が籠らないようにする為の造りなのだが、この構造だと外壁のひび割れなどから雨水が入ってもすぐに建物本体に達しないので、外壁以外に原因箇所がある可能性も十分に出てくる。
まず自宅の壁内の造りを施工会社に確認するなどして把握してから探すと良いだろう。
板間のコーキングひび割れ
外壁のジョイント部分がコーキングや塗料で埋められているが、それがひび割れているとそこから雨水が内部へ浸入する。
築10年を越えてくればひび割れは十分に起きることであり、特に日当りの良い南側などは更に早いこともある。
また築年数が経つと硬化しているため小さな地震でも一気に開いてしまい、直後の雨で漏れが発生することもある。
ちなみにコーキング割れに限らず雨漏りの発生箇所は、室内側の雨漏り場所のすぐ外側とは限らない。
発生場所の上方の外壁や窓周りも注意して探すようにすると良いだろう。
外壁のクラック
同じく地震などで外壁自体が割れ、そこから雨水が浸入していることもある。
窓のコーナー付近や角のビスが打ち部分から割れる事が多いのでその辺りを良く見てみよう。
原因は地震だけでなく大型車両が頻繁に通ったり、近くで解体工事があった場合でも割れることがあるので、心当たりがあればその方向の外壁を見るのも良いだろう。
窓周りのコーキング
気付きにくいのだが窓周りのコーキング割れも、外壁の割れなどと同様に雨漏りの発生箇所になりやすい。
特に窓の上部や窓周りの飾りモール付近には雨が溜まりやすく、コーキングの劣化、割れが早い。
注意したいのは、サッシ枠は壁を通り抜けて設置されているので、前述した壁内の通気層があったとしても関係ないことだ。
サッシ上部の割れから浸入した雨水はサッシ本体を橋として壁内、室内へ浸入する。
一般的には知られていない場所なので発見が遅れがちだが、直接被害に繋がりやすいので注意して頂きたい。
屋根
屋根も雨漏りの代表的な浸入箇所だ。
通常は屋根から雨水が浸入すると天井に漏れ出てくることが多いが、建物の外周付近上の屋根に損傷があると室内の壁に浸入してくることも十分にあり得る。
雨漏りは様々な部材を伝わって意外な場所に現れるので、壁面だからと言って外壁にばかり捕われず屋根もしっかりとチェックして頂きたい。
瓦割れやずれ
瓦の割れやズレは即雨漏りに繋がるわけではないが、長年放置されていたり経年劣化などによって防水材が痛んでいれば雨漏りに繋がる。
ただ下からは見えないこともあり発見が遅れがちで、外壁周りを散々探した挙げ句に実は屋根が浸入口だった、というケースも多い。
漆喰の崩れ
漆喰は平面の軒瓦が棟瓦下に突き当たる部分の隙間を埋めている白い材料だ。
築10年を越えるとヒビなどの劣化が出るようになり地震で一気に崩れる場合もあるし、築20年を越えれば経年劣化で自然に崩れることも良くある。
この材料の奥は葺き土で水が簡単に内部へ届きやすいので甘く考えていると非常に危険だ。
場所的に屋根裏から天井の雨漏りになりやすいが、前述のように建物外周付近の漆喰崩れなら十分に壁面への雨漏りになるので、瓦割れなどと一緒にチェックしよう。
谷樋
谷樋は屋根の傾斜が合わさる谷に雨水受けとして施工されている板金だ。
ここにゴミが詰まってオーバーフローをしたり銅製だと酸性雨で穴が空いたりと、目立ちにくいが雨漏りの原因箇所としては業者間では知られた存在だ。
ゴミ詰まりなら取り除けば良いが、腐食の穴空きだと1箇所塞いでも連続して穴が空く事もあり交換がお勧めだ。
板金の隙間
屋根が外壁に当たる部分やスレート瓦の棟部分板金など、ジョイントに使われているコーキングが劣化で割れてしまうとそこから雨水が入り込む。
特に屋根の側面部と外壁の取り合い(ジョイント)は雨が溜まりやすく浸入が心配されるポイントだ。
雨漏りをしている壁の上にそういった取り合いがあれば、コーキングはもちろん板金の状態やその下のシートの状態などもチェックして欲しい。
ベランダ
ベランダは排水口や手摺の付いた腰壁の下が室内の壁である事が多く、外へ面した壁面からの雨漏り原因箇所では常連になっている。
またそのコップのような形のおかげで雨水を受け止めるようになっているので、入ってくる雨量は他の場所よりも多く被害も大きくなりがちなので対応は早めに行った方が良いだろう。
ただ高い位置の外壁や屋根よりは安全に原因箇所を探せるので、しっかり細部まで見ておきたいところだ。
防水層の割れ
ベランダの歩くところは保護膜塗装が施してあり、その下は各種防水材が施工された防水層になっている。
ガラス繊維とプラスチックを混合したFRP防水やウレタン塗装防水、また塩ビやゴム製のシート防水などの種類があり、これらが硬化し割れると雨水が浸入し雨漏りに繋がる。
保護膜塗装のトップコートが剥がれている部分に割れが発生しやすいので、それを目印に浸入箇所を探すと良いだろう。
排水管詰まり
ベランダには溜まった雨水を逃がす排水口があり建物内の配管へと繋がっているが、それが落ち葉や風で堆積した土などで詰まることがある。
するとその配管のジョイントから雨水が漏れ出し壁内から壁に染み出してくるのだ。
厄介なのはジョイントが隠れていると発見するのが難しく、その上修理も壁を剥がすなど大掛かりになりがちなことだ。
何にしても疑わしい場合は被害を広めないためにも早めに専門業者へ連絡する事をお勧めする。
笠木のコーキング割れ
ベランダを囲う腰高の壁の上に被せてある鋼製のカバーが笠木だ。
ここに手摺が取り付けてあるとジョイントにコーキングが打ってあり、劣化して穴が空くとそこから雨が浸入し壁内を広がって雨漏りに繋がる。
また笠木の端が外壁に当たっている部分にもコーキングが打ってあり、ここも割れが発生すれば雨漏りの原因となる。
DIYでできる補修
雨漏りの発生箇所によってはDIYで応急処置が可能な場所がある一方で、初めから専門業者に対応してもらった方が良いケースもある。
技術的な面や安全性など理由はそれぞれだが、選択を間違うと結局は高く付く事になったり見えない部分で被害を大きくしかねない。
以下ではDIYで補修が可能な箇所とその方法、そして次章では不可能な箇所とその判断基準を解説するので、家のためにベストな判断をして頂きたい。
コーキング補修
コーキングは比較的DIYでも行いやすい作業である。
まずは可能な箇所を以下に挙げてみよう。
・外壁の板間(ジョイント)ひび割れ
・窓周りのコーキング割れ
・屋根板金の開きや既存コーキングの割れ
・ベランダ笠木コーキング割れ
こうして見ると多くの箇所がDIYできる訳だが、作業のポイントは十分に時間を確保することだ。
DIYで出来上がりが悪くなるのは、大抵が時間が足りなくなり焦って作業をしたり工程を省いてしまうことからおきる。
出来が悪いとコーキングが取れてしまい再度やり直して高くついたり、初めから専門業者へ頼んだ方が良かったという事になりかねない。
ぜひ十分な準備と時間を確保して作業に臨んで欲しい。
コーキングの補修の増し打ちと打ち直し
コーキング補修の方法は既存コーキングの割れに上塗りする「増し打ち」と、既存コーキングを全て剥がして新規に打つ「打ち直し」がある。
上塗りは簡単に作業できるので早急に雨水の浸入口を塞ぎたい場合には有効だが、剥がれやすく長期的な防水というより応急処置になるだろう。
一方で打ち直しは既存コーキングの劣化に左右されないため比較的長持ちする仕上がりになるが、手間はかかるのでしっかり時間を確保して行うようにしよう。
コーキングの手順と道具
それでは具体的なコーキングの手順と道具を紹介しよう。
①マスキングテープで養生
まずコーキングする周りを移りがないようにマスキングテープで養生する。
②プライマーで下地処理
コーキングの定着を良くするためにプライマーを増し打ちする箇所に塗る。
③コーキングを塗る
厚みをなるべく確保するように塗る。
理想は10mm確保したいので、最初は多めに盛り次のコテで調整する。
④ヘラで形を整える
ここで仕上がりの綺麗さが決まるので丁寧に行なおう。
屋根周りの補修
屋根周りの補修では瓦の浮きやズレの直し、あるいはコーキングなどが比較的DIYしやすい。
ただし屋根上の作業は例え平屋だとしても危険な場所になるので、もし行なうなら安全面に十分注意するようにしよう。
またご紹介する補修はあくまで表面的なものであり、瓦の下の雨水の浸入口を発見したり補修したりするのはDIYでは難しい。
念のため瓦をどかして下の防水のルーフィングやシートの状態を確認する程度なら良いが、それ以上は技術的に困難な上に安全面も心配になってくるので専門業者に依頼するようにしよう。
瓦の浮きやズレ
本瓦の浮きやズレは、周りの瓦に介ものをして浮かせば比較的簡単に直す事ができ、割れた瓦の交換も固定されていなければ同様のコツで可能だ。
ただし全て釘止めしてある耐震施工の場合は動かすことが難しいので、専門業者に任せるしかない。
そもそも耐震施工になっているのに浮いたりズレたりするのは、構造的な損傷も考えられるので早急な対応が必要だろう。
板金の隙間
板金の隙間をコーキングで直す程度ならDIYでも可能なので、十分に安全に配慮して行なって欲しい。
しかし瓦と違い簡単には剥がせないので、その奥の損傷は直すどころか見つける事もできない。
コーキングで補修した後は必ず専門業者に内部の確認を依頼しよう。
板金の隙間をコーキングで直す程度ならDIYでも可能なので、十分に安全に配慮して行なって欲しい。
しかし瓦と違い簡単には剥がせないので、その奥の損傷は直すどころか見つける事もできない。
コーキングで補修した後は必ず専門業者に内部の確認を依頼しよう。
DIYは応急処置と心得よう
DIYによる表面的な補修で一時的に雨漏りを止められるかもしれないが、根本的な原因を発見したり内部の痛みを確認、補修することはできない。
また専門業者の補修は事前の下処理や作業自体の丁寧さもあり、DIYとは出来が全く違い圧倒的に長持ちをする。
DIYはあくまで応急処置と考えて頂き、行なった後には必ず専門業者に調査と補修を依頼しよう。
そうすることで再発を防げる上に、見えない部分での家の損傷を防ぐ事もできる。
DIYではできない補修
DIYではできない補修にはまず技術的に難しい場合が考えられる。
現在は大抵の道具や材料がネットで手に入るが、それらを的確に使いこなす技術や工事のノウハウはプロの仕事にはかなわない。
また安全面も非常に重要で万が一があれば命に関わるので、特に高所作業は決して無理をしないで頂きたい。
高く不安定な屋根や外壁、窓周り
屋根上や上階の外壁でDIYを行なうのは基本的に危険だ。
特に本瓦は表面が滑りやすいし、勾配がきつければ更に危険度が増す。
また窓などから身を乗り出して行なうのも手を着く場所が無く非常に危険である。
少しでも不安定だったり手掛かりになるものが無いようなら、専門業者へ必ず依頼するようにしよう。
屋根の漆喰、谷樋
これらは専門的な知識や道具、かなり高度な技術を必要とするので初めから専門業者に任せた方が良い。
一応応急処置の方法もあるが完全に補修するのはDIYでは不可能な上に、そのDIY補修が専門業者の補修の手間を逆に増やしてしまう可能性があるのでお勧めできない。
バルコニーの排水管詰まり
バルコニーの排水の詰まりは入り口で詰まっているだけなら良いが、建物内部の深い所で詰まっている場合は場所の特定が難しくDIYでの補修は不可能だ。
しかもDIYでは排水口から高圧洗浄などをかけてしまい、建物内にさらに雨漏りをさせてしまう2次被害の恐れもある。
専門業者なら専用の道具を使うなどして被害を広げずに直してくれるので、初期段階から任せてしまおう。
押さえておくべき安全対策
雨漏りのDIYや原因箇所を探る際には安全に十分注意して頂きたい。
万一のことがあれば家の事どころではなくなるし、例えケガで済んでも仕事に支障を来せば、費用を抑えるためのDIYなのに意味が無くなるだろう。
ここでは基本的な安全対策をご紹介するのでぜひ取り入れて頂きたい。
ヘルメットの着用
もし屋根の上など高所に上がる場合はぜひヘルメットを着用するようにして欲しい。
素人の方ほど大げさに思うかもしれないが、近くで何かしらの工事現場があったら注意して見て欲しい。
ほとんどの職人が必ずヘルメットを着用しているはずで、それだけ彼らでも日常的に危険があるということだ。
シンプルなものなら1,000円強で手に入るし、格好の良いアメリカンなデザインのものでも2〜3,000円程度だ。
災害時用の備えに使うこともできるので、この際ぜひ購入して頂きたい。
天候の良い日を選ぶ
屋根の瓦の上はただでさえ滑りやすいので、もし雨などで濡れていると大変危険な状態である。
また風が強い日はバランスを崩しやすく、屋根上はもちろん窓から身を乗り出して行なう作業も危険になる。
DIYで高所の作業をする際はぜひ天候に注意し、風が無く雨の心配もない日を選んで行なうようにして欲しい。
専門業者の修理費用と頼む事のメリット
専門業者に任せるか、DIYで直すか悩むポイントは金額ではないだろうか。
現在は多くの材料が大型ホームセンターやネットで手に入るので、コストを重視するなら最もかかる手間代、人件費を削れば良いと考えるのは自然だろう。
ここではDIYを検討する材料として、専門業者へ頼んだ場合の金額相場とそのメリットを示しておきたい。
ぜひ参考にして頂き建物にとってどちらがベストなのかを考えて判断して欲しい。
専門業者の費用相場
・外壁周り
外壁割れ補修 | 2〜3万円 |
板間コーキング補修 | 5〜10万円 |
サッシ周りコーキング補修 | 5〜10万円 |
コーキング外壁全面打ち替え | 30万円〜 |
・屋根周り
瓦浮きずれ補修 | 3〜5万円 |
瓦交換 | 5〜10万円 |
漆喰打ち直し | 30〜50万円 |
棟瓦補修 | 10〜30万円 |
屋根周り板金補修 | 5〜20万円 |
谷樋部分補修 | 3〜5万円 |
谷樋葺き替え(1カ所) | 10〜20万円 |
・ベランダ周り
ベランダ防水補修(トップコート全面塗装含む) | 10〜20万円 |
コーキング部分補修(笠木周りなど) | 3〜5万円 |
排水口詰まり(内部配管詰まりの場合) | 20万円〜 |
プロの仕事とは?
腕の確かな専門業者が行なういわゆる「プロの仕事」と、DIYの大きな違いは何であろうか。
丁寧さや仕上がりの綺麗さは当然のこととして、ここではさらに経験から来る先見の目が違うと言っておきたい。
専門業者は依頼主に指摘された場所以外に、自然と「きっとこっちも痛んでいるはず」と損傷が疑われる場所へ目が向くものである。
窓のそばに換気扇があればその周りのコーキングもチェックするだろうし、屋根に上がれば全体の止め釘や雨樋にも目がいく。
こうして現在痛んでいるとことはもちろん、近いうちに損傷になるであろう劣化も発見し先手を打って直すことができるのである。
これこそが依頼主にとってDIY以上の金額を払う価値のある「プロの仕事」である。
危険な業者の見分け方
一方で目先の報酬を目当てに手間を省き、さっさと仕事を済ませてしまいたい業者がいるのも残念ながら現実だ。
特に雨漏りは長期戦になるケースも多く、真面目で面倒見の良い業者でないと敬遠しがちな仕事だ。
最初の仕事を済ませお金を支払ったら音信不通で、アフターケアが依頼できないということもある。
そこでそんな悪質な業者の見分け方をご紹介するので、ぜひ業者を選ぶ時に役立てて欲しい、
工程の説明が無い
工事に取りかかってから順にどんな作業を行なうかが工程で、業者自身が作業を確認するために把握をしているはずだ。
それを事前に説明してもらうことで、依頼主側は工事内容と見積りが合っている事を確認できるし、何より手抜き工事を防ぐ事もできる。
業者側にとってはその工事を必ずやるという約束になる訳だが、中にはいかに工程を省いて工事代を浮かすかを考えている業者もいて、そちら側からしてみると工程はなるべく明かしたくないものになる。
ぜひ工程の説明を頼んでその反応を見て欲しい。
不真面目な業者は工事を始めてみないとどういった作業をやるかわからない、などともっともらしい言い訳で説明を避けるのでそういった業者は候補から外す方が良いだろう。
契約を急がせる
契約を急がせるのはどんな仕事でも信用できない業者共通の特徴だ。
殆どが、よほど仕事が無くて困っているか、見積りが高く吹っかけてあり他と比較されては困るかのどちらかだ。
真面目で腕の良い業者はある程度先まで仕事が入っているので、お客を焦らせる意味がない。
また見積り金額についてもきちんと根拠があり、さらに自分の仕事に自信があれば比較されても問題無いはずだ。
雨漏りは確かに早く直したいことなので焦る気持ちがあるかもしれないが、そこにつけ込む業者もいるので冷静に対処して頂きたい。
飛び込みの業者は避ける
いきなり訪問してきたりポストにチラシが入っていたり、また突然営業の電話をかけてきたりするような業者は避けるようにしよう。
素性の良くわからない業者は、工事後のアフターケアなどで連絡を取りたくても音信不通になることが多い。
しかもそういった業者は会社が遠方な事も多く、急いで対応して欲しい時に動きが悪くなりがちだ。
雨漏りなどの何度も来てもらうであろう修理を依頼する時は、なるべく近くの会社であった方が安心である。
火災保険を使って賢く費用を抑える
雨漏りは時に大規模な修理に発展することもあり、大きな費用負担になる場合もある。
特に急に発生した場合は家計としては大変困ることだろう。
そこでぜひ活用したいのが火災保険だ。
雨漏りで火災保険と聞くとピンとこない方も多いと思うが、実はその修理費を補償してもらえる場合もあるのだ。
雨漏りで使える火災保険とは
火災保険には自然災害による家の被害を補償してくれる特約が付いている場合がある。
具体的には台風や竜巻、大雪や雹など、自然災害によって住宅が損傷し雨漏りとなった場合だ。
こういった特約が付いていれば修理費が保険で補償され、自己負担を抑えられる可能性があるのだ。
該当するかは火災保険を契約した際にもらった証券や説明書類で確認できるし、もしよくわからなければ保険会社に連絡をすれば教えてくれる。
ただし保険会社にきちんと申請をして承認されてから工事に取りかからないと、保険金が下りない場合もある。
この後に火災保険を利用する場合の具体的な手順を示しておくので、間違えないようにして頂きたい。
火災保険の申請方法
1.保険会社へ補償の申請をすることを伝え必要書類を送ってもらう。
2.申請書類と状況報告書を作成し、修理の見積書と一緒に保険会社へ送る。
3.保険会社に依頼された損害鑑定人に損傷や被害を確認してもらう。
4.申請書類や鑑定人の報告を元に保険会社が審査を行なう。
5.審査が承認されると保険金の支払いが決定する。
申請する上で最も大切なのは?
この火災保険の申請では状況報告書によって、自然災害による損傷で雨漏りが発生したことを確実に保険会社に伝えなければならない。
ところがこれが想像以上に手間がかかり、DIYどころか専門業者であっても不慣れなら的確な報告書を作るのは難しい。
せっかく保険料を払っているのに肝心な出番の時に補償が適用されないのでは意味がない。
このケースで最も大切なのは火災保険申請の取り扱いに長けた経験豊富な専門業者を選ぶことである。
まとめ
雨漏りは早急に対処することで被害を最小限に食い止めることが出来る。
もちろん安全に配慮しながらDIYが可能ならそれも良いであろう。
しかし残念ながらDIYは応急処置であり、長期的に見れば必ず専門業者にも対応をしてもらうことが重要だ。
火災保険を利用できれば補修費の自己負担も減らせるので、末永く安心して住める家にする為にも信頼できる専門業者に依頼し、徹底的に原因を撲滅してほしい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。