屋根は目が届かない場所にあるため、メンテナンスを軽視してしまう方が多いがこれは大変危険だ。なぜなら屋根は、紫外線や風、雨、雪、雹など被害を直接受ける部位でありその損傷も大きいから。
損傷部分をそのまま放っておくと、雨が侵入し内部の仕上げ材までに行き着き雨漏りとなる可能性もある。また、直接室内に雨漏りが確認できない場合でも、内壁や構造体に水分が染み込むことで、腐敗やカビの原因となってしまい、建物の寿命を極端に短くしてしまうこともあるのだ。
つまり、定期的に屋根のメンテナンスをするということは、建物の寿命を大きく伸ばす上で欠かすことができないとうことだ。
この記事読むことで理解できること
屋根の定期的なチェックはどのように行うか?
では、実際にどのような方法で屋根の確認を行えば良いのか?新築の家であれば当然ながらチェックは不要だが、築6年以上度経つと劣化によりあらゆる不具合が生じてくる場合が多い。
また、大きな自然災害が発生した際にもチェックが必要だ。台風による風害では屋根の一部が剥がれたり、大雪による雪害では重みで屋根にへこみや割れが生ずることもある。
屋根のチェック方法だが、屋根から少し離れて地上からチェックしたり、付近の高い建物から確認する、2階の窓から1階の屋根を確認するなどの方法が一般的だが、それでも見れない場合は脚立を使って屋根に登る方法がある。
注意点としては普通の脚立だと屋根との接触部分でズレ落ちる危険性があるので、より安全を考慮する場合はこのようなアタッチメントを使うと良い。
また、最近では長い棒にタブレットを装着してチェックしたり、ドローンを使って無人で調査する方法も行われている。いずれにしても、大切な家を守るために必要なことなので是非実践して頂きたい。
チェック後、下記のような損傷があった場合は要注意だ。すぐにでも修復工事をして雨の侵入等を防ぐ必要がある。
屋根のリフォーム4種類を徹底解説!
屋根の損傷は軽度なものから重度なものまで様々だが、早期対策が最も費用が安くなると言える。軽度の場合であれば、「塗り替え」や「カバー工法」、「屋根補修」で対応可能だが、時間が経ち重度となると、屋根全体を取り替える「葺き替え」が必要になるからだ。
当然ながら費用は高くなってしまう。よって見て見ぬふりをするのでは無く早期にしっかりと対策することをお勧めする。ではこの4つの屋根リフォーム手法について詳しく説明をしていく。
①屋根塗り替えの種類とメリット、デメリットとは?
最も基本的な改修方法。塗装ができる屋根材で下地があまり傷んでいない場合に実施可能だ。塗装できる屋根材は「セメント瓦」「化粧スレート」「金属系屋根材」「アスファルトシングル」などだ。
塗り替えの目安としては、スレート系が7〜10年、セメント系は7〜9年、金属系は5〜7年程度が目安となる。自分でチェックしてみて屋根の表面が錆びていいたり、剥がれがあった場合は検討が必要となる。
実際に塗装する際に重要なことは、どのような塗料を使用するかという問題だ。塗料は価格もその効果も様々で専門的内容となるが、基本的には価格が高ければ高いほど性能が良くなる。
一般的に良く使われているのが「アクリル樹脂塗料」「ウレタン樹脂塗料」「シリコン樹脂塗料」と「フッ素樹脂塗装」の4種類だ。
アクリルやウレタン系は、価格が圧倒的に安く、頻繁に使われているが、耐用年数が低いため長期的なコストパフォーマンが低い。
最もコストパフォーマンスが高いのはシリコン樹脂塗装で、耐久性や耐熱性に優れている上に、人体への影響もない。
紫外線に非常強い特徴があり、汚れ防止やカビ防止の効果もある耐用年数は10年以上で費用対効果に優れた塗料と言える。後者は性能面で抜群の効果を発揮する。
フッ素系樹脂は紫外線に非常に強く耐用年数は15年以上の上、光沢のある艶を20年以上維持することができる。美観を重視した建物の外壁塗装の殆どはフッ素樹脂塗装と言って過言ではない。但し、他の塗料を比べて費用が高くなる。
塗り替えは修繕費用を抑えることができるメリットがあるが1点だけ注意点がある。屋根の下地そのものに損傷があった場合は、塗装だけでは対処ができないという点だ。下地にも割れやへこみ等が生じている場合は雨漏りを防ぐためにも、下記のカバー工法か葺き替え工事を実施する必要がある。
②カバー工法(重ね葺き)を徹底解説!
上述した様に塗り替えが最も安価であるのは確かだが、「軽量スレート」や「カラーベスト」いわゆる「コロニアル屋根」と言われる材料を使用している屋根の場合は塗装はあまりお勧めできない。塗装をすると湿気を含むことになり、長期的に見れば屋根自体を痛めてしまう可能性があるからだ。また屋根の損傷が激しい場合や既に雨漏りがある場合も、その段階で塗り替えをしても意味がない。
そこで採用すべきが「カバー工法」だ。屋根を現状のままの状態で上から新たな屋根材で覆い被せる方法となる。葺き替えに比べて「下地材の撤去」や「野地板工事」が不要なため工期が短くて住む。
塗り替えに比べて工事費用は高くなってしまうが、40年間メンテンナンスが不要なため、長期的に見れば10年スパンで必要な塗り替えに比べてコストは低くなる。よってカバー工法を選択する人が多い。
クボタ松下電工外装株式会社(現ケイミュー株式会社)の屋根材の商品名。化粧スレートの一部でセメントや繊維により構成される。軽量且つ耐熱性や耐候性に優れ且つ軽量のため国内で広く普及している屋根素材。
カバー工法は機能的にも、長期的なパフォーマンスも含めて非常にメリットが大きいが、デメリットもある。その1つがその重量による耐震性への影響だ。
屋根が軽いほど地震時の揺れを軽減し、リフォーム時の間取りの変更も自由にし易い。地震大国である日本では、いかに軽い屋根を設置するかが重要なポイントとなる。
しかし、カバー工法は既存の屋根から新たに屋根材を被せる工法であるため、重さが増すことになるのでそいうった意味ではマイナスになるのである。しかし、現在では素材内に気泡を含めて軽さを重視しつつ、繊維剤を混入することで強度もつけた商品が販売されているのでそのようなものを採用するのが良いだろ。
③屋根の葺き替えを徹底解説!
そして最後の選択肢が、葺き替えとなる。屋根材を全て撤去し、屋根材を支える野地板も新たに設置をしなければならない。その上で新たに屋根材の施工を行う。
工期も長く、工事費用も最も高くなる。カバー工法でも対応できないぐらい、損傷が進んでいる場合は選択せざるお得ないだろう。また重要な注意点として、古い建物の場合、耐火被覆及び断熱、吸音材としてアスベストが使用されている場合がある。
アスベストは有害物質として現在は使用を禁止されているが、古い建物にはまだ存在している。屋根材解体の際にはこのアスベストが飛散する必要があるので調査や飛散防止のために余分な費用がかかる場合もあるので注意したい。
④屋根の部分補修の方法と注意点とは?
瓦の割れや欠け、隙間やズレ、スレート系、コロニアル系屋根の割れ、ヒビなどが軽微であり部分的であれば補修という選択肢もあり得る。しかも器用な人であれば、自分で直すことも可能だ。屋根の補修材としては「シート系」と「パテ系」に分類される。それぞれ説明していこう。
パテ系補修材料について
上述した通り屋根には様々な素材が使用されるため、そこに使われるパテ剤も変わってくる。瓦の場合は瓦用パテ、すスレート系であればそれ用のパテを使った方が効果が高い。
手順
・施工箇所のゴミ、ホコリ、油類等の汚れを除去し、完全に乾燥させる(水分が付着していると接着が悪くなるため)
・必要量をヘラを用いて、穴や隙間、ひびに埋め込んでいく
・ヘラの反対側で伸ばして平らにする
シート系補修材料で気をつけるべきこととは?
続いてシートタイプの屋根補修材だ。雨漏りの際の応急措置用に良くもちいられるというこもあり、素人の方でも割と扱いやすい。
ハサミを使って適宜大きさに切り取り、傷や穴部分に貼り付ける。伸縮性に優れているので施工性が良い。シールタイプのものが殆どのため接着剤は不要で5分以内程度であれば脱着が可能なためやり直しも可能だ。しかしあくまでも応急措置のためのものという認識は忘れてはならない。
補修については、現在の築年数を見ながら慎重に検討する必要がある。たとえ現状での損傷が部分的であったとても、その後にその他の場所で同じような損傷が発生する可能があるからだ。
その度に補修を繰り返すことになると、合計費用はかなり高くなってしまう。屋根の性能を担保し続けるためには最低でも10年に一度は塗り替えが必要となる。
部分的な補修を繰り返すのであれば、塗り替えをしたりカバー工法でしっかりと対策した方が長期的に見ると得をするとが充分にありえる。この当たりは専門家である工事会社からアドバイスを受けながら方向性を決めていくのが良いだろう。
⑤屋根遮熱塗料の可能性とは?
最近では屋根塗装において遮熱塗料の可能性が取り上げられることが多い。屋根材の断熱性能を上げて、夏場の室内の温度上昇を抑制し空調効率を上げるという効果があるのだのだが、注意点がいくつかある。
1つ目は屋根そのものの素材によって効果が異なるという点だ。セメント系瓦、スレート系の素材と金属製の素材では熱伝導率(熱の伝わりやすさ)が異なる。感覚的にも理解頂けると思うが、真夏日中に石とフライパンを外においてその表面温度を比較すると、フライパンの方が圧倒的に暑くなる。つまり金属屋根はより熱が伝わり易く室内の温度上昇に影響を与えやすいのだ。
下記に各素材の熱伝導率を比較する。
スレート系屋根材:約0.1〜0.15W/m・K
金属系屋根素材:約80W/m・K
2つ目は、家のプランニングだ。家の中には複数の部屋が存在するが、それぞれの部屋で滞在時間帯が異なる。例えばリビングダイニングは日中居ることが多いが、寝室や各個室は夜間に居ることが多い。屋根は直接太陽の熱を受けるのでその直下階(2階建てであれば2階)の温度に最も影響を与え易い。
例えば、1階にリビング・ダイニング、2階に寝室や個室がある間取りの場合、たとえ遮熱塗料を使用して2階の温度が下がったとしても、日中は部屋に居ないのであまり意味が無いということになる。
つまり、最近よくある1階が駐車場、2階が個室、寝室、3階がリビング・ダイニングといったプランニングの住宅であれば効果は高いだろう。
3つ目は、遮熱塗料の色について。ご存知の通り色によって熱の吸収率は異なる。白は光を反射し、黒は光を吸収する。遮熱塗料の目的は熱の吸収を抑えることにあるので、黒系の色は当然ながら選んではいけない。白系の色を選ぶべきだ。殆どの塗装会社からは、そのような提案があるので、好みの色があったとしても素直に従った方が得策だ。
各リフォーム方法の価格とメリット・デメリットを徹底比較!
さてここまで説明をした通り、屋根の修繕には主に3つの手法がある。屋根材の損傷が軽度の場合は「塗り替え」、ある程度損傷が大きい場合は「カバー工法」、損傷具合が極度に激しい場合は「葺き替え」を選択することになる。
素人が判断するには難しいところだが、極力自分で考えて最終的に専門家である工事会社の意見を聞くのが良いだろう。費用としては塗り替えが40万円〜。カバー工法が80万円〜、葺き替えが120万円〜となる。
単発で見れば塗り替えが最も安価であるが、上述したとおり長期的視点で見るとカーバー工法の方がコストパフォーマンスは高くなる。
よって、築20年未満の住宅であればカバー工法がお勧めであり、築20年以上経っていて、今後は建て替えや住み替えを考えているのであれば塗り替えにした方がお得になるだろう。下記に比較表をを作成したので参考頂きたい。
※築10年の住宅の場合
築1~10年 | 築10~20年 | 築20~30年 | 築30~40年 | 築40年〜 | 備考 | ||
塗り替え | ー | 40万円 | 40万円 | 40万円 | 建て替え | 合計120万 | 10年スパンで工事が必要 |
カバー工法 | ー | 80万円 | 建て替え | 合計80万 | 40年間メンテナンスフリー |
※築30年の住宅の場合
築30~40年 | 築40年〜 | 備考 | ||
塗り替え | 40万円 | 建て替え | 合計40万円 | 10年スパンで工事が必要 |
カバー工法 | 80万円 | 建て替え | 合計80万円 | 40年間メンテナンスフリー |
火災保険を活用して工事費用をできるだけ安く抑える方法とは?
火災保険は一般的には火災の時にだけ適用されると認識されているが実際には、台風などの風害、大雪による雪害、地震や雹による損傷など自然災害が原因によるものであれば適用される。
よって、あなたの家の屋根の損傷がそれに当てはまれば、修復のための工事費用は保険金として受け取ることができる。そのためには保険会社にしっかりとした資料を提出しなければならない。
具体的には損傷部分の写真と損傷箇所を示した図面を中心とした調査資料、そして、その損傷を修復するために必要となる工事費用を示した見積書だ。当然ながら建築の素人には作成ができないので工事会社に依頼する形になるのだが、どのような会社でも良いというわけではない。火災保険活用については下記記事に詳細を説明しているので是非参考にして頂きたい。
「自然災害でも火災保険が適用されるのか? 4つの事例を検証!」
保険会社に認めてもらうには理路整然とした内容にしなければならないので、正しい知識と経験が必要となる。当サイトではこのような申請ができる工事会社と提携して屋根の無料調査を行っている。
できるだけ費用を抑える或いは全く全く費用負担無しで工事をしたいという方は是非活用頂きたい。
最後にまとめ
屋根の改修には現状の屋根の状況や築年数によって様々な方法が考えられる。諸要因を考慮し、どの様な方法が得策が検討して頂きたい。そして最終的には専門家の意見を聞くのが良いだろう。
また、工事費用も決して安い金額では無いので、その損傷が自然災害によるものなのかの調査は必ず実施して頂きたい。調査自体は無料であり、もし自然災害として認められた場合の恩恵は非常に大きいからだ。
例え認められない場合でも工事を見送れば良いだけの話だ。全くリスクは発生しないので是非とも行動移してみてはどうだろうか。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。