以前から気になっていた浴室の床や壁のタイルの損傷。お風呂に入るたびに気になっている人も多いのではないだろうか。
普段、他人の目に触れない浴室のタイルの劣化は、つい放置してしまう傾向にある。
タイルをどう扱っていいのかわからないこともあり、気にはなっていても、いざ補修するまでに時間がかかる場合も多い。
しかし、浴室のタイルのように水分が多い場所の劣化は早急に対処する必要がある。建物の内部に水分が侵入することで、劣化を早め、修復が困難になるからだ。
今回は浴室の床タイルのDIY補修、さらに、タイルの種類や症状別に補修する方法を解説していく。
この記事読むことで理解できること
浴室・風呂場の床タイルの補修はお早めに
建物が劣化する原因には様々な要素があるが、中でも建物の構造部分に侵入した「水分」から劣化が進む場合が多い。
なぜなら、水は家の建材に使われる木材や鉄、コンクリートを腐食させる力があるからだ。
家の中で最も水分が多い場所は浴室だ。浴室・風呂場の床や壁のタイルの損傷に気づいたら早めに対処することがとても重要なのだ。
床タイルの劣化が進むとどうなる?
最初はどんな損傷でも気づかないくらいに小さい。床タイルの劣化が進むと具体的にどのような現象が起きるのかをここで考えておきたい。
床タイルの損傷の初期症状は、目地やタイルに浮きやひび割れ・亀裂が見られる。目立たないからと放置しおくと、そこから水分が侵入して劣化が拡大する。
水分が侵入することで、目地やタイルが割れたり、欠けたり、剥がれたりしてしまう。
そうなると、さらに水分が内部に侵入しやすくなり、ますます劣化が進みやすくなる。その水分が建物の構造自体に悪影響を与え始めたら、補修する手間や費用も多大なものとなってしまう。
さらに、浴室タイルの損傷は建物自体を傷めるだけでなく、タイルの割れや破片から人体にも危害を与えかねないのだ。タイルの損傷を放置しておいたばかりに、補修費用がかかるだけでなく、ケガや事故、構造部へのカビ繁殖などを起こしては元も子もないだろう。
よって、とくに浴室の床や壁のタイルの補修は急ぐ必要があるのだ。
床タイルの劣化の症状に応じた補修方法
床タイルは劣化の症状に応じて補修方法が大まかに3つある。
【DIYで修復する方法】
タイルの損傷が軽い場合や、小規模の範囲であれば、DIYキットを活用して自分で補修することが可能だ。Amazonなどのオンライン通販やホームセンターでタイル補修剤が簡単に購入できる。
【業者に依頼する】
タイルの劣化がひどい場合や、広範囲に渡る場合には必ず業者に依頼するようにしたい。素人では適切な対処法がわからなかったり、完全に補修することができなかったりと、劣化を進行させてしまう可能性が高いからだ。
【火災保険を利用する】
タイルの劣化が生じた原因によっては、火災保険で補修できる場合がある。火災保険は、火災だけでなく水災・水漏れ、突発的な事故による家の損害に対して保険金が支給される。
火災保険を活用する場合には、火災保険への申請方法を熟知している業者を探す必要がある。
床タイルのDIY補修方法
それでは実際にDIYで補修する方法を紹介していこう。近年では、デザイン性が高く外観がお洒落に仕上がることからタイルを好む人も多い。色や形、素材なども様々な種類のタイルが使われている。
タイルの種類を確認
タイルをDIYで補修するには、まずは補修するタイルの種類を確認しておくことが大切だ。
市販の補修キットを使用する場合は、適した素材の記載がされている為、事前に確認しておくとスムーズである。また業者に補修依頼する際にもスムーズに状況説明ができるだろう。
タイルの種類を区分する方法は、タイルの表面、タイルの素材、タイルの形状、目地の種類から見ていくことができる。
【タイルの表面】
タイルは表面に釉薬(うわぐすり)が塗ってあるものと無いものがある。表面がツヤツヤして光沢があるものは釉薬が塗ってある。ザラザラしているタイルは釉薬が塗ってない。
【タイルの素材】
次に確認しておきたいのはタイルの素材だ。タイルの素材は大きく3つの種類が一般的に使われている。天然石のような陶器タイル、透明感のある磁器タイル、粘土のようなせっ器タイル。
【タイルの形状】
そして、タイルの形状が四角、丸、長方形なのか、1枚のタイルのサイズを測っておこう。同じ形状のタイルでなくとも全体的な模様に合わせて、様々な種類のタイルを組み合わせることもできる。
【目地の種類】
最後にタイルの目地にどんな素材が使われているのかを確認しておきたい。よく使用される目地には、セメントのようなモルタルタイプとゴムのようなアクリルタイプがある。
劣化の具合をチェック
タイルの種類が確認できたら、劣化の具合をチェックしておこう。ひび割れ程度なのか、欠けているのか、タイルが剥がれてしまっているのかによって、補修剤の種類や必要なタイルの数が異なってくる。
もし、損傷の長さが15cm以上ある場合や、深さが1mm以上ある場合は、業者に依頼するようにしよう。
補修に必要な材料
では、補修に必要な材料をご紹介する。補修剤やタイルとは別に、あらかじめ家で用意できるものがないかどうかを最初に確認しておく。
新聞紙、布巾・タオル、ヘラ・ナイフ、ボール、マスキングテープ、スポンジ、サンドペーパーなど。他には、劣化したタイルや目地をきれいに剥がすために、ドライバーや金づち、スプーンなどがあるとよい。
補修剤やタイルはネット通販でも多彩な種類から選ぶことができる。おすすめの補修剤やタイルをいくつかご紹介しておくので、参考に見ておくといいだろう。
【補修剤】
※セメダイン バスコーク
表面的なひび割れや、小さな箇所のタイル補修に使える少量のチューブ入り補修剤。アイボリー、黒、半透明など6色から選べるから便利だ。
※タイルの目地材
タイルを張り替える際には、この目地材を水に混ぜて下地に使う。色は白とグレーから選べる。
【タイル】
※モザイクタイル
1㎝×1㎝の小さな陶器タイルが20色、300個のセットで見ているだけでも楽しくなる。部分的なタイルの補修や、隙間を埋めたりするのにも使える。
※淡色陶器タイル
こちらのタイルは、よく見かけるタイプの浴室用タイルだ。3色から選べて、ちょうど30㎝×30㎝分が埋まる数が1セットになっている。
床タイル補修の手順
それでは、床タイルの補修の手順を簡単にご説明しておこう。
【下準備】
タイル補修を行う箇所やその周囲を、まずはきれいに清掃しておく。ホコリやカビなどがついたままだと補修剤の粘着力が弱まる。
また、マスキングテープや新聞紙などを使って周囲が汚れないように、しっかりカバーしておこう。
【ひび割れ】
タイル用補修剤(目地補修剤)を目地やタイルのひび割れ部分に埋め込むようにして塗り込んでいく。ヘラやナイフを使って表面をきれいに整える。できれば、仕上げにコーティング剤を塗っておくと耐久性が高くなる。
タイルの色や柄に合った補修剤がなかった場合は、補修剤を塗りこんだ後、浴室用の塗料を使って着色する方法もある。
【タイルの貼り替え】
タイルを張り替える場合には、まず、既存のタイルのかけらや目地のクズなどをきれいに取り除いておく。補修部分にまず下地となる目地材(タイル補修剤)を平らに塗り広げる。その上からタイルをきれいに押し込みながら並べていく。
目地材を厚く塗りすぎるとタイルから余計にはみ出てしまい、後で処置が大変になるので注意したい。
また、慣れないと時間がかかり、目地材が乾いてしまうので最初は少量ずつ進めていくのがいいだろう。目地材の水の分量を少し多めにしておくのも1つの方法だ。
最後にはみ出た目地材のふき取り、足りない目地材の塗り込みを行い、表面の目地材が均等になるようにする。最終的な仕上げは、完全に乾いた後にサンドペーパやスポンジなどで表面をきれいにする。
床タイルの補修をプロの業者に依頼
以上ご紹介したように、軽いひび割れや部分的なタイルの貼り替えであれば自分でもDIYで補修が可能だ。
しかし、床タイルの損傷が大きい場合や、広範囲に渡る場合はプロの業者に依頼したい。
タイルの割れや欠けが部分的なものであっても、目地の奥深くまで広がっている時には、注意する必要がある。素人が補修することで、床や壁自体に損傷を与える可能性があり、危険でもある。
床や壁の部分的なタイルの損傷は業者にリペア(部分補修)してもらうことが可能だ。
また、床や壁全体のタイルにひび割れ、変色、カビ、欠けなどが見られる時にはリーフォーム(全面改修)を業者に依頼した方がよい。
表面的なタイルの損傷だけでなく、床や壁の内部にも劣化が見られる場合もあるからだ。
業者に依頼するメリット
プロの業者に依頼するには、どうしても費用がかかるため、ためらう人も多いかもしれない。そのことが、かえって家の補修を遅延させる結果となる場合も多い。
しかし、補修が遅くなればなる程、費用がかかることを考慮しておくことが大切だ。
プロに依頼することで、外観が驚くほど美しく甦るだけでなく、気づかなかった劣化も診断してもらえる。プロの技で完璧な補修を行うことで、根本的に家を長持ちさせることにもつながる。
確かに費用はかかるのだが、業者に依頼するメリットは測り知れないものがあるのだ。
【補修事例】
このように一見するとタイルの表面的なひび割れでも、壁の土台の部分に損傷が拡大していたとなれば、壁全体が崩壊する恐れもある。
業者に依頼することで、下記のように美しく仕上がるだけでなく、構造的な診断もしてもらえるから安心だ。
床タイルの補修にかかる費用相場
そこで、いざ業者に依頼した際にはどれくらいの費用がかかるのだろうか。
タイルの損傷の程度や、タイルの種類、補修する箇所や範囲などによって、補修費用は異なり、一概にはいえない。また、依頼する業者によって見積りも違ってくる。
概ねのところでは、部分的なリペアの場合だと1箇所で1万5千円(技術料)~だ。明確な金額を知る方法は、損傷箇所のわかる画像をメールや問い合わせフォームから業者に送れば、無料で見積金額を掲示してくれる。
業者を選ぶポイント
では、実際にプロの業者に依頼するとして、業者を選ぶポイントをいくつかご紹介しておこう。
- 複数の業者の見積り価格を比較する(ただし安さのみで選ぶと技術不足で失敗しやすい)
- 見積り掲示が一式ではなく、必要経費など内訳がわかるように記載されているおり適正価格である事が確認できる。
- 信頼できて、実績のある業者の中から要望に合った業者を選ぶ
- 問い合わせた際の対応からも判断できる
最近はインターネットで業者の情報をHPで調べることができるから便利だ。業者のHPに掲載されてある画像や動画などで補修事例をチェックしよう。
ちなみに下記からは業者の補修事例の一例だ。ぜひ、業者選びの参考にして頂きたい。
※洗面台の穴補修
※ユニットバス穴の補修 お客様の声
補修に火災保険が適用できる場合がある
もう1つの補修方法として、冒頭でも軽くお伝えしたように火災保険が適用できる場合がある。火災保険は火災の時の損害のみでは・・・?と疑問に思う人も多いだろう。
実は火災保険の対象となる損害は火災だけではないのだ。
火災保険の対象とは
一般的な火災保険では、火災以外にも、大雨・台風などの「水災や風災」さらに「不測かつ突発的な事故」の損害補償がついている。
これらの損害は、実は単なる経年劣化と区別がつきにくく、素人が判断することは難しい。思いがけず保険金が支給されるケースも多々あるのだ。
火災保険で補修する際の注意点
ただ、火災保険を活用する際には、適切な申請を保険会社に行わなければならない。
保険会社が保険金を支給してくれるかどうかは、納得いく申請書類の内容であるかで大きく左右されるからだ。
そこで、保険金が支給されるよう申請を行うためには業者選びが最も重要なポイントになる。
火災保険で住宅の補修ができること理解している業者でも、実際に保険会社への申請において実績を持つ業者は少ない。
従って、火災保険で補修する際には、保険活用の長年の経験と実績を持つ業者を選ぶようにしたい。
玄関の床タイルの補修にもチャレンジ!
それでは、最後にタイルがよく使われる箇所として玄関の床タイルの補修方法も紹介しておこう。
一般的にタイルは、浴室、トイレ、キッチンなどに使われることが多いが、玄関の床にもよく使われている。玄関の床タイルの補修を行う際も、先に解説した浴室のタイルと同じように扱っていいのだろうか。
浴室や風呂場の床タイルとは違う?
浴室や風呂場のタイルは、基本的に屋内用タイルを使い、玄関の場合は、屋外用タイル、または玄関用タイルが使用されている。
玄関は基本的に土足であるから、外からの土やホコリ、雨、雪などから汚れがつきやすく、滑りやすくなる。玄関の床タイルには、掃除がしやすいもの、表面が滑りにくいものが条件であることを、補修の際にも覚えておいてほしい。
デザインにこだわってお洒落に仕上げる
玄関の床タイルの補修をするなら、併せてぜひデザインにこだわってお洒落に仕上げることも考えてみてはいかがだろうか。玄関は家の入口であることから、普段から多くの人の目にとまる。
補修の工程は浴室の床タイルの場合とほぼ同様に行うことができる。
浴室以外のタイル補修を自分で行う手順を下記でも紹介している為、是非ご覧いただきたい。
【DIYによるタイルの補修方法】
https://shufukulabo.com/tile-repair-magic#DIY
玄関床であれば、面積によっては自分でも補修できるし、すでに敷いてあるタイルの上からタイルを張り付けていくタイルonタイルという工法も使える。玄関マット替わりにシールタイプのフロアタイルを張り付けいく方法もある。
【接着剤不要フロアシート】
こちらのフロアタイルは30.5㎝×30.5㎝のタイルが1㎡分をセットで購入できる。耐久性、耐水性に優れた素材で、素人にも簡単に扱える。
また、高級感がある大理石タイル調、レンガタイル調などを部分的にでも使うと家のイメージが一気にレベルアップするのが嬉しい。
補修を行う機会でグレードアップさせたい場合には、その旨も補修業者に相談してみてもいいだろう。
まとめ
今回は浴室などの床タイルの補修方法について解説させていただいた。
浴室はプライベートな空間であり、他人が利用する機会も少ない。従って、タイルに多少の劣化が見られても、放置してしまいがちだ。
しかし、冒頭でご説明したように、水は住宅の大敵となる。浴室から、建物の劣化が進むことも多いのだ。浴室のタイルに劣化が見られたら早急に対処することがとても大切だ。
損傷が小さいうちなら、自分でも補修が可能だし、業者に依頼したとしても費用は少なくて済む。それに、もしDIYに興味があるのであれば、浴室こそ他人の目に触れないため、ご自身の腕を試してみるチャンスでもある。
ただ、床や壁のタイルの損傷が深い、大きい、広範囲に渡る場合には、必ず業者に見てもらうようにしよう。そうすることで、大切な住まいを長く良好な状態に保てるなら、費用がかかったとしても、最終的に得をするのはご自身だ。
タイルは小さなピースを複数組み合わせて、多彩なデザインを考案できるのが大きなメリットになる。それぞれの趣向に合わせて、より快適でお洒落な空間を造ることが可能だ。
ぜひ、この機会に、浴室タイルだけでなく玄関の床タイルなども楽しく検討してみることをおすすめしたい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。