玄関ドアの傷や凹みといった損傷を、開け閉めには問題がないからと放置していると非常に危険だ。
それらの損傷はドアの素材によっては変形や錆を発生させ、修理費用が増していくからだ。
そこで今回は素早く修理を行って頂くための参考として、玄関ドアの修理費用相場と自分でできる修理法を、建築のプロである一級建築士が詳しくご紹介したい。
さらに賃貸ではどこまで自分の責任で直すべきかや、火災保険を使って最低限の出費で修理を行うテクニックなど、玄関ドアを元通りにする上で役立つポイントをお伝えしている。
ぜひ最後までお読み頂き、大切な住まいの玄関を重症になる前にきれいにしてあげて欲しい。
この記事読むことで理解できること
玄関ドアの傷・凹みはすぐに直そう
玄関ドアの傷・凹みは開閉には支障がないからと、修理を後回しにしていないだろうか。
傷・凹みはドアの表面が木製であれば、そこから雨水や朝露が染み込み変色や変形、さらには腐食が発生し、急速に劣化して汚らしい姿に変わっていってしまう。
さらに木目のFRP樹脂がラミネートされているドアでは、傷が裂けてその周りがどんどん剥がれていくことになる。
またアルミは確かに錆びにくい素材ではあるが、外部に面している傷に雨や朝露がかかり続ければ必ず腐食はおき、確実にドアを蝕んでいくことになる。
こうしてすぐに直していれば簡単な補修で済んだものが、損傷の悪化により高額な部品交換や、最悪の場合ドアの全交換にまで発展しかねないのだ。
ドアの傷は、初めは小さくても必ず大きなものになり、修理費の増大という深刻な事態を招くものだと、しっかりと認識をして頂きたい。
傷・凹み修理の費用相場
玄関ドアの代表的な修理の費用相場をご紹介する。
傷の程度によって額は変動するが、修理依頼を検討する上での参考にして頂けるはずだ。
ただし賃貸で請求される原状回復工事の場合は、非常に割高になるケースが多いため、以下の相場よりもかなり多めに金額を見積もっておいた方が安全だろう。
補修内容 | 技術費用相場 |
浅い傷補修 | 30,000円〜 |
深い傷や凹み | 50,000円〜 |
鍵の交換(シリンダー部のみ) | 50,000円〜 |
全交換(カバー工法) | 250,000円〜 |
※材料の新規取り寄せ費や出張料は別途となる。
玄関ドア素材別のDIY補修法
玄関ドアを自分で補修できれば、それが最も出費を抑えられる方法だ。
特に擦り傷であれば大きな手間もかからず、道具もネットやホームセンターで手に入るもので十分直すことができる。
早速購入し悪化をする前に取り掛かるようにして欲しい。
一方で凹みに関しては残念だが補修が非常に難しく、パテで一時的に埋めることはできるが、DIY補修ではすぐに剥がれてしまう可能性が高い。
さらにアルミとFRP樹脂のドアでは、パテを平坦にするためにサンドペーパー掛けてしまうと、その跡への色付けが非常に難しく逆に目立つ結果となりかねない。
木製無垢のドア以外は、必ず専門業者へ任せるようにして欲しい。
アルミドア
アルミドアの表面にできた擦り傷なら、まずは車のボディ用のコンパウンドを試してみよう。
軽くすった程度の傷ならかなり効果があるが、ドアの表面の仕上げによっては逆に目立ってしまう恐れもあるため、下の方の目立たない場所で必ず試してから行うようにて欲しい。
コンパウンドで効果が無い場合は、やはり車のボディ用のタッチアップペンで色を塗ってみよう。
手順は傷をしっかりと拭いた後、マスキングテープで養生をして丁寧に塗るだけなので簡単だ。
車用は非常に色数が豊富なのでかなり近い色に仕上げることができるが、残念ながら完全に同じ色にするのは難しい。
あくまで傷がわかりにくくなる程度と思っておいた方が良いだろう。
FRP樹脂ラミネートドア
木目の柄などが付いたFRP樹脂をラミネートしたドアの擦り傷は、室内補修用のペンで色を塗ることで目立たなくできる。
室内用は水性が多く屋外用の油性に比べ耐久性が若干劣るが、油性はFRP樹脂の素材を痛めたる恐れがあるため、一般の方がDIYで使うには水性が安全だ。
また室内用は色が薄いものが多く重ね塗ることを前提にしているため、油性のようにいきなり濃い色を塗り目立ってしまうという失敗も防げる。
丁寧に塗っていけばかなり色は近づけられるので根気よく取り組んで頂きたい。
無垢材ドア
無垢のドアに関しては擦り傷と凹みの両方がDIYで補修可能だ。
前述の2つの素材に比べてぐっと難易度は下がるので、ぜひ挑戦してみて欲しい。
・擦り傷
無垢材のドアの擦り傷はFRP樹脂のドアと同様に室内用の補修ペンで直すことができる。
水性ではあるが一般の方には失敗も少なくムラもできにくいのでお勧めだ。
手順は傷を拭いてからマスキングテープを貼って塗るだけなので非常に簡単であり、目立たなくする役目は十分に果たしてくれる。
・凹み
木製無垢材ドアの凹みはパテで補修することができる。
材料はエポキシパテなどで屋外使用が可能と明記されているものを選ぼう。
手順は塗装より少し気遣いが必要なので順を追って解説する。
①凹みを濡れた布で拭き、乾いたら周りにマスキングテープを貼って養生をする。
②少し多めにパテを盛り付属のヘラで軽く均す。
この後に削るので完全に平坦にする必要はない。
③硬化したらサンドペーパーで削りって平らにする。
初めは180番辺りで荒削りをして徐々に目を細くしていく。
④最後に補修ペンで色付けをする。
取っ手の傷
ドアの取っ手にも傷や凹みが付くことがあるが、こちらもその損傷によって対処が変わってくる。
頻繁に触る取っ手は他の場所に比べて劣化が速いので、以下を参考に早急に対処することをお勧めする。
・擦り傷
玄関ドアの取っ手はスチールやアルミ製のため、擦り傷であればアルミドアでご紹介したコンパウンドやタッチアップペンで直すことができる。
ただしゴールド色やマットな仕上げの取っ手の場合は、補修跡がかなり目立つ恐れがあるため、必ず下部の見えない部分で試してから補修するようにしよう。
・凹み
取っ手の凹みは一般の方が行える補修で完全に直すことは難しい。
人が握る場所のため金属用のパテを盛っても、ドアの表面以上にパテが剥がれやすくなるからだ。
この場合はレバータイプや握り玉タイプの取っ手のように、同じ部品が手に入れば交換が比較的簡単なものもあり、取り替えてしまった方が確実に改善できるだろう。
ただし同じ純正品が廃盤で無かったり、ドアノブがプッシュプル型と呼ばれるタイプであったりの場合は、一般の方では交換が困難なため専門業者へ相談するようにして欲しい。
これらドアノブの交換については以下の記事でもご紹介しているので、参考にして欲しい。
「ドアが閉まらない時の直し方!すぐにできる簡単修理法を徹底解説」
・ドアノブ交換は可能?
https://shufukulabo.com/the-door-does-not-close#i-6
・レバータイプの取っ手
・握り玉タイプの取っ手
・プッシュプルタイプ型の取っ手
賃貸のドア修理での注意点
賃貸のアパートやマンションの玄関ドアには、持ち家と違う様々なリスクが潜んでいるため、ここで特に知っておいて欲しい注意点をご紹介しておきたい。
余計に高額な修理費を払うことにならないよう、じっくり読んで役立てて欲しい。
責任は傷の場所で変わる
まず賃貸では借り主が責任を負う場所をしっかりと確認することが大切だ。
一般的には玄関ドアの内側が借り主の管理責任となり、外側については共用部分として廊下などと同様に、大家や管理組合側が補修などの責任を持つ場合が多い。
ただしこれはあくまで標準的な管理規約の雛形に記されているだけで、法などで明確に規定されている訳ではなく、ドアの外側も借り主の管理責任としている物件も存在する。
もしドアの外側に第三者や台風などによって傷をつけられた場合は、この物件の規約によって責任の所在が異なってくるため注意が必要だ。
現実的には共用部分としている物件が圧倒的に多く、借り主が責任を負うケースは少ないが、しっかりと入居時に渡された規約を確かめ、特に外側は誰が責任を負うのかを把握しておこう。
もちろん外側であっても借り主が故意や過失で傷つければ、当然補修の責任を負うのは言うまでもない。
原状回復費は相場より高額
賃貸を退出するときには、部屋を借りた時の状態に戻す原状回復工事の費用が請求される。
通常使用による劣化は除かれるが、玄関ドアに付いた傷がその範囲を超えるとなれば借り主の費用負担となる。
ここで注意をしたいのが賃貸の回復工事の金額で、冒頭にご紹介した補修の費用相場よりかなり高額になるケースが多い。
これは貸主側が「どうせ借り主が払う代金だ」と工事業者と値段交渉をしなかったり、管理会社がマージンを上乗せすることもあったりと、構造的に金額が跳ね上がる仕組みになっているからだ。
もしこれを避けるには自分で補修を手配するのも手だが、物件の中には借り主の方で補修手配を禁止している場合もある。
やはりしっかりと規約を確かめ、禁止されている場合はリスクを理解した上で、どのように対処をするか検討するようにしよう。
DIYでは原状回復費が安くならない
高額な原状回復費を安くするため自分で直そうと考える方がいるかもしれないが、それは最も危険であり逆に高額な出費になる恐れがあるため、ぜひとも避けて頂きたい手段だ。
その理由は、DIY補修では傷跡を完全に消すことは難しく、あくまで目立たないようにするのが精一杯だという点にある。
大家や管理会社は次に借りようと検討している人に敬遠されないよう、原状回復では傷や汚れを完全に消してしまいたいと考えている。
しかしDIY補修では直した跡がわかってしまうため、傷や汚れがあるのと同様の判断となり原状回復工事を避けることはできない。
それどころかそのDIY補修を一旦剥がす必要があればその手間代も請求され、無駄になったDIY補修の道具代を合わせれば、大変高額な出費を招くことになるのだ。
賃貸では玄関ドアの傷の修理は決して自分行わず、傷をしっかり消せる専門業者に任せた方が、結果的には安く済むということを知っておいて欲しい。
傷・凹みを跡形もなく消すなら補修屋へ
もし自分で玄関ドアの傷や凹みを消す専門業者を手配するのであれば、補修屋という業者がお勧めだ。
補修屋とはドアに限らず、床や壁、室内のドアや収納の扉など、住まいのあらゆる場所にできた傷や汚れを跡形もなく消してしまうリペアのプロフェッショナルだ。
腕の立つ補修屋なら傷があったことを全くわからないように消せる技術を持ち、しかも損傷部分に絞って作業を行うので、非常に手頃な値段で頼めるのも大きな魅力だ。
また傷や汚れでドア全体が劣化しているようなら塗装を行ってもらい、交換するよりも遥かに安い費用で新品同様にすることも可能だ。
以下に室内ドアではあるが、補修屋の技術の高さがわかる動画をご紹介するので一度ご覧頂き、補修の依頼先として検討してみたらいかがだろうか。
玄関ドア補修実例
表面のひっかき傷補修
作業時間:2時間
補修料金:¥55,000
木製玄関ドアの全塗装
作業時間:7時間
補修料金:6~7万円
賃貸物件アパートの玄関ドアの破損による、リペア
作業時間:6時間
補修料金:¥50,000
技術費用相場
依頼を検討する上で参考にして頂くため、補修屋の技術費用相場をご紹介する。
傷の程度によって費用は変動するが、メールで写真を送れば無料で見積もりをしてくれる業者もあるので、正確に知りたい方は一度相談してみると良いだろう。
補修内容 | 技術費用相場 |
浅い傷補修 | 15,000円〜 |
深い傷や凹み | 30,000円〜 |
鍵の交換(シリンダー部のみ) | 30,000円〜 |
部分塗装 | 20,000円〜 |
全塗装 | 50,000円〜 |
※材料の新規取り寄せ費や出張料は別途となる。
補修屋に依頼するメリット
傷を完全に消してしまえる他にも、補修屋に依頼するメリットはいくつかあるのでご紹介しておきたい。
まず、もし修理で部品交換が必要でも古いドアのため部品在庫が無い場合、リフォーム業者では高額な全交換しか方法がないと言われてしまう。
しかし補修屋なら傷だけの補修で済ませられるため出費を大きく抑えられる。
さらに補修屋はその守備範囲が非常に広いため、ドアだけでなく床や壁などの損傷、キッチンの天板に出来た焦げ跡や洗面所のボールの割れなど、以前から気になっている傷や汚れをまとめて直してもらうことが可能だ。
これならそれぞれ別の業者へ依頼するよりも、連絡の手間や打ち合わせ時間を減らすことができ、損傷の数が多ければコスト面でのメリットも期待できる。
いずれの点で見ても傷を確実に直しながら出費を抑えられることに繋がるため、お勧めしたい理由をわかって頂けるのではないだろうか。
腕の確かな補修屋の選び方
補修屋に依頼する上でぜひ注意して欲しいのが、どの補修屋でも傷を完全に消せる訳ではないという点だ。
補修屋の中には他の建築の仕事をしている職人がアルバイトで行っている場合もあり、当然だが専門の補修屋とは腕に大きな差がある。
傷をわからないように消すには、傷や汚れと素材に対する豊富な知識、そして様々な補修を実践してきた十分な経験が必要だ。
このため名前だけの補修屋に誤って依頼してしまうと、傷を消し去るどころかDIYと大差ない仕上がりにされてしまう恐れがある。
このため補修屋を選ぶときは必ず、その実績を目で見える形で確認することが重要だ。
例えば自社サイトで補修実績を画像つきで多数掲載しているような補修屋なら、その腕前を確かめることができ、しかも公開するということは腕に自信があるとも言え、任せる上で大いに参考になるはずだ。
くれぐれも金額のことばかりアピールしていたり、言葉だけで「豊富な実績」と宣伝していたりするような補修屋は避け、しっかりと信頼できる相手か確かめた上で依頼をするようにして欲しい。
火災保険でドア修理を格安に行う
玄関ドアの修理を格安で行いたいのであれば、加入している火災保険をぜひ確かめて頂きたい。
現代の火災保険は火事だけでなく、台風などの自然災害や盗難による破損など、住まいの様々な損傷を補償する総合保険になっている。
今回の玄関ドアの傷も条件によっては補償の対象となり、最小限の自己負担額でプロの補修を行える可能性があるのだ。
ここではどういった傷が補償されるのかと、保険を使って修理を頼む業者を選ぶ上でのリスクをご紹介したい。
持ち家や賃貸で保険が使える条件
まず持ち家の場合は、ドアの損傷が「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」に適合すれば補償される。
これはと例えば重いものを運んでいてうっかりドアにぶつけてしまったり、お子さんがおもちゃなどを投げつけたりして、できた傷や凹みを補償するものだ。
またドアの外側に台風などで物が飛んできて当たってできた傷なら、「風災」の補償対象となる可能性がある。
いずれも発生した日時や原因がはっきりしている必要があり、その場所の機能に支障が出ていると適用されやすい。
一方で賃貸なら入居時に加入した家財の火災保険に「借家人賠償責任担保特約」が付加されていれば、貸主から傷の賠償を求められた場合に補償される可能性がある。
いずれも保険加入時の書類や証券などで確認し、どうしても不明な場合は直接保険会社に問い合わせしてみることをお勧めする。
保険での修理依頼は実績重視
保険を使って修理を依頼する専門業者は、その実績をしっかりと確かめてから任せるようにしよう。
保険を利用する際には、傷の原因や現状を正確に書類で保険会社に伝えなければいけないが、これが不慣れな業者に頼んでしまうと失敗してしまう恐れがあるからだ。
経験の浅い業者にとってこの申請が意外に難しく、本来保険が使える傷なのに保険会社の審査で否認されてしまうケースがあり、これでは何のために今まで保険料を払ってきたかわからない。
こういったトラブルを避けるためにも、必ず保険で修理をする場合は申請実績が豊富な業者に依頼するように注意して欲しい。
まとめ
玄関ドアの傷や凹みを放置すると損傷が広がって修理費が増し、最悪の場合ドアの全交換に発展する恐れがあるため、損傷を発見した場合は早急に修理を行うべきだ。
DIYによる補修が可能であれば積極的にトライし、被害を最小限に抑えるよう努めて頂きたい。
ただし賃貸のようにDIY補修をすることで、結果的に出費が増えてしまうケースもある。
持ち家でも傷をわからないように消してしまいたい方も含め、DIYを避け専門業者に任せるべきかを冷静に判断をして欲しい。
腕の確かな補修屋のようなプロの技であれば、リスクを回避できるだけでなく、仕上がり後の満足も金額以上のものがある。
ぜひ直した後のことを重視し堅実な選択をして頂きたい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。