家具や家電などを移動させる際の傷や、うっかりつけてしまった汚れなど、室内の壁は年数が経つごとにダメージが蓄積していく。高さや場所にもよるが、目立つ場所の汚れや傷は美観を大きく損ねるため早めに対処して気持ちよく過ごしたいものだ。
そこで今回は、元リフォーム営業マンの経験を持つ筆者が室内塗装壁のDIY補修方法をご紹介する。
一部補修の方法から全面塗り替えまで材料や作業方法まで詳しく解説するので、室内壁補修を検討している方はぜひ参考にして欲しい。
記事の後半では、火災保険を利用して費用ゼロ円で補修する方法も紹介する。対象となるケースなども詳しく説明するので、ぜひ目を通して欲しい。
この記事読むことで理解できること
内壁塗装の補修DIYのメリット・デメリット
室内壁の塗装を自分でおこなう場合のメリットとデメリットをそれぞれ解説する。
メリット
・費用を抑えられる
プロに頼む場合と比べ、工賃がかからないDIY補修は総費用を抑えられるのが大きなメリットだ。工具を買い足す場合もあるが、大掛かりなDIYでなければそこまで高額にはならないだろう。
・自分の家に愛着がわく
DIYはプロの手際と比べるとスムーズに進まないものだが、手間暇かけて苦労した分、自宅への愛着が増すという一面もある。
・好きなタイミングでできる
内壁塗装をする場合、室内の荷物を移動することになる。プロに頼むと一度に部屋を空にする必要があるが、DIYなら一面ずつ進めるなど自分のペースで行えるため慌てずに済む。
デメリット
・見栄えが悪くなる場合がある
最近は塗りやすい塗料などもあるが、プロと比較してしまうと仕上がりが劣るのは仕方がない。下地の状態によっては見栄えが悪くなってしまう場合もある。
・選べる塗料、色が少ない場合がある
最近はインターネットなどで塗料を手に入れやすいが、少量販売していないプロ仕様の塗料などは購入しづらい。
・部分的な塗装補修は既存箇所とのギャップ埋めが高度である
1面、または全面を塗装するのは素人でも難易度は高くないが、一部補修は周りになじませるのが難しいためハードルが上がる。
補修DIYに必要な道具・材料
自分で補修DIYをおこなう場合はまず道具と材料をそろえて欲しい。作業を始めてから足りないことに気づいても遅いので、作業開始前に揃っているか確認すること。
必ず必要になるもの
・塗料
塗料は大きく分けて水性と油性があり、最近では性能差もなくなり環境にも良いことから水性塗料が主流となっている。臭いも少なく扱いやすいので、特別なこだわりがなければ水性塗料を選ぶべきだろう。
【ロックペイント 水性ツヤ消し塗料】
・ローラー・バケット
室内壁の塗装は基本的にローラーで行う。初心者でも扱いやすく、失敗が少ない。作業する範囲に合わせてローラーのサイズを選ぶこと。
【アサヒペン AP万能用ローラーバケセット】
・養生ビニール・マスキングテープ
床や家具などを汚れから守るための養生は必須品だ。テープ付きのマスカーは張るときに便利なので、マスキングテープと併用して使うといい。
【アイリスオーヤマ 養生 マスカー】
・脚立
天井や高い場所を塗装する場合は脚立が必要となる。足に靴下をはかせておくと床を傷つけにくくなる。
・ドライバー
コンセントやスイッチプレートを外すのに必要。
・カッターナイフ
窓枠などマスキングした箇所を乾燥後剥がす際に使用する。
場合によって必要になるもの
・補修用パテ
壁面に凸凹がある場合に使用する。
【セメダイン 室内壁補修用 かべパテ(サンドペーパー・ヘラ付き)】
・スクレーパー
塗装の浮きや剥がれで使用する。
【TRUSCO(トラスコ) スクレーパー】
・下塗り剤
塗装の浮きや剥がれが発生している際に使用する。塗料と同様に水性の物が臭いがなくおすすめだ。
【ロックペイント 水性シーラー 多用途下塗り】
・汚れ落とし
壁面に汚れがある場合使用する。
【業務用洗剤 万能シミ汚れ落としクリーナー 】
室内壁のDIY塗装方法
塗装面の状況や塗り替える範囲の違う3パターンのDIY塗装方法を紹介する。それぞれの方法すべてに共通する作業として、まずは作業範囲の養生をすき間なく行って欲しい。
塗料が飛び散る可能性もあるため、作業範囲より少し広めに養生しておくのが周囲を汚さないためのコツだ。窓枠など塗料をつけたくない場所もマスキングテープでしっかり養生しておくこと。
塗装範囲にスイッチやコンセントがある場合は、ドライバーを使ってプレートを外しておく。塗装が完了したら、十分に乾燥してからプレートをもとに戻すこと。
マスキングテープを剥がす際は、軽くカッターナイフでテープの際に切り込みを入れてからはがすと、塗膜を引っ張って剥がすのを防げる。
塗装面が汚れている場合は汚れ落としを使ってできるだけきれいにしてから塗装を行う。タバコのヤニや油汚れがあると、塗料がはがれやすくなるためだ。
塗装壁に傷・割れ・欠けがある場合
塗装壁に傷や割れ、欠けなどの凹み損傷がある場合は、まず表面をパテで平らにならす。
ヘラを使ってある程度平らにパテを盛ったら、既定の時間を置き乾燥させる。乾燥後は平らな物にサンドペーパーを巻き付け、表面を平らに研磨する。
平らになったら固く絞った濡れ雑巾で表面の粉塵をふき取り、乾燥させた後で塗料を塗る。バケットに塗料を入れ、ローラーに垂れない程度染み込ませたら力を入れずに壁面を均一に転がす。なるべく薄く、2~3回重ね塗りすると失敗が少ない。
一部塗装の場合は、あまりに小さい範囲を塗ると目立つ場合があるため、ある程度範囲を決めて広めに塗り替えるといいだろう。既存の色と塗料が合わずに目立つ場合は、3-3で紹介する全体の塗装塗り替えへの移行も検討すること。
塗装が浮いている・剥がれている場合
古い塗装が浮き上がり剥がれている状態の壁面は、そのまま塗装すると古い塗膜ごとはがれてしまうため下地処理が必要だ。目に見えて剥がれている場所は、スクレーパーを使ってある程度剥がしてしまって欲しい。
段差がついて目立つ場合は、3-1と同じようにパテ盛り⇒研磨作業を行い平らにする作業も必要だ。
次に、密着を高めるために下塗り剤を塗る。厚塗りはせず、既定の時間しっかりと乾燥させるのが下塗りを失敗しないコツだ。
以上の下地処理が完了したら、3-1と同様の手順で塗装作業を行う。
全体の塗装塗り替えを行いたい場合
部屋全体の壁面と天井を塗装する場合は、できることなら部屋の荷物を全て出して一度に行うのがおすすめだ。一面ずつ行えば作業を何日かに分けることも可能だが、作業の度に養生をするのは効率的ではない。
ただし、荷物の量や作業時間の確保などの理由で、一度に作業するのが難しい場合もあるだろう。その場合は無理のないペースで進めることも可能だ。
しかし、平面の途中で塗装を中断・再開すると継ぎ目が目立つため、最低でも一つの面は塗りきるようにしたい。最近は水性塗料がメインだが、それでも多少の臭いなどはあるので、作業中は十分な換気を行うこと。
寝室の塗り替えを行う場合は、乾燥が終わって臭いが落ち着くまで、しばらく他の部屋で寝ることも検討しておくと慌てずに済む。
プロに依頼する際に押さえてくべき事
DIYを実践してみたがうまく仕上がらなかった場合や、時間などの問題でDIYができない場合はプロに依頼することになる。その際に把握しておいて欲しいポイントや費用の相場について解説する。
部分補修はリペア・全体の塗装はリフォーム
塗装壁面を補修するという意味では同じだが、割れや欠けなどの一部補修はリペア、一部屋全体を塗り替えるのはリフォームという区分になる。どちらもプロが行うと仕上がりは美しいが、特に技術が必要なのはリペアの方だ。
例えば下の写真のようなちょっとした凹みもプロの手にかかればぱっと見分からないレベルになってしまう。範囲が狭いため簡単なように思えるが、色や質感まで周囲に合わせるのは難しい。
次の写真のような、大きな穴のリペアもプロならではの仕事だ。このような難易度の高い補修は、プロに任せて狭い範囲で済ませたほうがDIYより安く上がるケースもある。
壁の補修だけでなく、次の写真のようなドア枠の引っかき傷などもプロならば補修可能だ。単品で頼むよりまとめて頼んだ方が安くなるため、塗装で補修できそうな箇所をピックアップしておき、見積りを取ってみることをおすすめする。
リペアとリフォームの費用相場
依頼する業者にもよるが、リペアの場合は最低でも1箇所の職人技術料費用として15,000円~20,000円前後掛かる場合が多い。
ただし、複数箇所まとめて補修依頼した方が、道具の用意や出向く手間、出張費などがかさばらない為、気になる箇所がある場合は一度で補修依頼する方が良いだろう。
直したい場所が複数あれば見積り時に相談してみて欲しい。
リフォームの場合の費用相場は、塗料のグレードにもよるが六帖の天井と壁全面で6~10万円前後だ。他にもちょっとした補修がある場合は、単品で頼むより安く済む可能性もあるので、見積時に相談してみること。
内装の補修にも火災保険が適用される場合がある
今回ご紹介した室内壁の補修に、火災保険が適用できるケースがあることをご存知だろうか?火災保険は誰もが加入している事だろう。
うまく活用すれば費用ゼロ円で補修することもできるため、次で紹介するケースに当てはまる場合はぜひ検討してみて欲しい。
保険適用となるのは「不測かつ突発的な事故」
例えば子供が料理をこぼしてしまい壁に汚れがついてしまったというケースは「不測かつ突発的な事故」扱いになり、保険適用の対象になる。ただし、「不測かつ突発的な事故」が起きた原因と日にちが明確である必要がある為、「もしかしたら対象となるかもしれない…」と思われた際にはメモで残しておいてほしい。火災保険は建物全体にかかるため、室内の天井と壁も保険適用の対象となる。
保険で支払われる金額は保険会社や契約内容によってさまざまなため、一度加入している保険証書の内容を確認してみてほしい。
この保険を活用した補修で重要なのは、火災保険の申請実績が豊富な補修業者に依頼することである。保険会社が納得のいく資料を用意する事は、実はどの業者でも行えるわけではない。
詳細は是非、こちらをご覧いただきたい。https://shufukulabo.com/
まとめ
塗装壁のDIYは比較的手軽に行えるものの、少しの範囲を補修するリペアの場合少々ハードルが高い。リビングなど来客があるような場所の場合は、プロに依頼するのも検討してほしい。
その際、うっかりつけてしまった傷や汚れであれば、火災保険を適用できる可能性が高いので、一度、弊サイトにご相談いただきたい。
毎日目に入る壁面は、汚れたり傷ついたりすると精神衛生上よろしくないだろう。どちらの方法にせよ当記事を参考にして、費用を抑えてマイホームを美しく保って欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。