クローゼットのドアにできた傷や凹みは、見た目の問題だと対処を後回しにすると大きな被害に繋がる可能性がある。
日常的に使う部分は負荷が加わるため、症状は少しずつだが確実に悪化していくからだ。
今回はクローゼットドアにできた損傷を専門業者へ補修依頼した際の費用相場と、簡単に自分でできるDIY補修方法を建築のプロである一級建築士が解説したいと思う。
また賃貸でDIYを行う際の危険性や、火災保険を利用して0円でプロの補修をするテクニックなどもご紹介しているので、ぜひ最後まで目を通して頂きたい。
この記事読むことで理解できること
クローゼットの傷や凹みを放置すると危険
クローゼットの扉にできた傷や凹みを放置しておくことは非常に危険である。
扉には開け閉めする際に大きな力が加わるため傷や凹みが拡大し、補修費用が余計にかかることになる。
さらに損傷が重症化し扉の交換ともなれば想像以上の費用がかかるし、10年を越えるクローゼットであれば部品在庫が無く修理自体が不可能という事態さえ考えられる。
また損傷が割れてくればささくれや鋭利な断面ができ、人に怪我をさせてしまうこともあり得るだろう。
大人なら気を付けることもできるが、小さな子供なら思わぬ大怪我に発展する可能性もあり、見た目だけの問題だと軽視はできない。
クローゼットの扉は日頃触れる機会が多いだけに、補修を後回しにせず早急に対処すべきと捉えて頂きたい。
クローゼットの修理費用相場とは?
それではクローゼットのドアの損傷を専門業者へ補修を頼んだらいくらかかるのだろうか。
様々な依頼先の平均だが、表面的な浅い傷で2〜30,000円、大きめの割れや穴の場合で50,000円〜が一般的だ。
ただし後で解説するように依頼先により金額に大きな差があるので注意して欲しい。
特に損傷部分の補修ではなく、扉を交換するなど大掛かりな工事になりやすい依頼先に任せてしまえば、片側扉交換で80,000円〜、扉の在庫が無く枠と両扉交換となれば150,000円〜と、大きく金額が跳ね上がってしまう。
わずかな傷でこのような高額な修理費用にならないよう、依頼先は慎重に検討をして欲しい。
DIYで格安修理にトライしよう!
一方でクローゼットのドアの損傷を最も手頃に直せるのがDIYによる補修だ。
現在はホームセンターやネットで多くの補修キットが手に入るため取り組みやすく、タイミングによっては業者に依頼するより素早く直すこともできる。
ただし他のDIYにも共通することだが時間をかけ丁寧に行うことが大切になる。
DIYの失敗で最も多い原因は途中で面倒になったり必要な時間を少なく見積もったりして、途中から作業が雑になることだ。
何日かかっても良いくらいに余裕を持って作業に当たって欲しい。
浅いキズは補修用クレヨンで直す
浅い傷の場合はクレヨンタイプの補修材で色づけと傷埋めが一度にできるため、不慣れな方でも簡単に行うことができる。
ただし色を元のドアの色に完全に合わせることは難しいので、あくまで目立たないようにする程度と理解して欲しい。
手順
①傷の周りを布で拭き汚れやホコリを取り除く。
②クレヨンをドライヤーなどで熱し、柔らかくしてから傷部分に塗り込む。
③付属のヘラで余分を削り取る。
④最後に布で周囲に付いた補修材を軽く拭き取る。
凹みや割れはエポキシパテがお勧め
凹みや割れになっている場合はパテを盛ることで補修ができる。
クローゼットの扉は開け閉めで力が加わるため、手間は若干かかるが固着性が良く取れにくいエポキシ系のものがお勧めだ。
ただしクローゼットの扉の表面がメラミン樹脂だったりフッ素系の加工がしてあったりすると、一般の方の施工ではパテを盛っても簡単に剥がれてしまう。
一度目立たない裏側などに試しに塗りつけてみて、すぐに取れてしまうようなら専門業者へ依頼するしかないだろう。
手順
①損傷部分を布で拭き汚れやホコリを取り除く。
②周りに養生のためマスキングテープを貼る。
③手荒れを防ぐためビニール手袋をする。
④パテを必要量取ってよくこね、手早く3分以内に盛りヘラで均す。
⑥24時間乾燥させた後カッターで荒削りをし、サンドペーパー(240番あたり)で仕上げの均しをする。
⑦パテの表面に色付けをする。
損傷部分の周りにサンドペーパーをかけた時の傷があれば、同じように着色する。
⑧最後に乾いた布で優しく何度も磨く。
専門業者に頼んだ方が良い損傷
割れや凹みの損傷部分を軽く押しただけでたわんだり、完全に内部に抜けてしまったりするようだと、エポキシパテで盛っても動いて剥がれてしまう可能性があり、専門業者に依頼したほうが間違いない。
この場合は補修部分が動かないように穴の内側に下地を作るのだが、限られた厚みの中で作業をするのはDIYでは困難を極める。
もし下手に手を出して収拾がつかなくなってから専門業者に助けを求めることになれば、それまでの材料費や時間が無駄になってしまう。
DIYに相当の自信がない限りは初めから専門業者へ相談することをお勧めする。
賃貸でDIY修理をするリスク
DIYでの修理は確かに安価で済むが、賃貸の場合は逆に高額な支払いに繋がる危険性がある。
賃貸のアパートやマンションでは退出する際に管理会社が点検し、もし損傷があれば原状回復の義務から補修が行われ借り主の費用負担となる。
これを避けるためにDIYで補修をしたくなるところだが、最大のネックはDIYでは色柄までは完全に再現できない点だ。
貸す側は次に借りる人が敬遠したくなるようなレベルの補修では意味がないと考えるため、DIYによる補修は無視され結局は管理会社が別に補修を手配することとなる。
これでは専門業者の補修費がかかるだけでなく、それまでに費やした時間や道具代は無駄になり、DIYをしなかった時よりも出費は多くなってしまう。
賃貸の場合は自分で補修するのは避け、補修した跡がわからないような仕事が出来る専門業者へ依頼した方が、結局は安く済むと言えるだろう。
どこへ修理を頼むのが良いのか?
ではクローゼットのドア補修を専門業者へ依頼するとしたら、どこへ相談したら良いかわからない、という方もいるだろう。
そこでここでは代表的な補修の依頼先を、その特徴と共にご紹介したい。
どこも同じように見えるが金額は大きく違い、さらにその仕上がりにも大きな差があるので、じっくり読んで頂き慎重に判断をして頂きたい。
補修屋
価格を抑えながらベストな仕上がりを求めるのであれば、最もお勧めなのが補修屋だ。
補修屋とはあらゆる素材と傷の種類に精通し、補修の道具や材料の知識が豊富な専門業者だ。
クローゼットのドアに限らず壁や床など、あらゆる住まいの部分的な損傷をピンポイントで直してくれるリペアのプロフェッショナルである。
大掛かりな工事ではなく損傷部分に絞って補修を行うため、手頃な価格で気軽に依頼できるというメリットを持つ。
まず、百聞は一見にしかず、その腕前が紹介された動画をご覧頂きたい。
こちらは部屋のドアの補修だが構造はクローゼットと同じなので参考になるはずだ。
注意点としては同じ補修屋でも価格に幅があり、格安を売りにしているところはDIYと大差ない仕上がりになる危険性があるため、しっかり実績を確かめた上で依頼することが大切だ。
リフォーム業者
良く聞くリフォーム業者の場合は建築全般を請け負う工務店であることが多い。
そのため傷や凹みを直す技術に長けているというよりも、比較的大きな規模の工事を得意とする業者となる。
このためクローゼットの扉であれば部分補修ではなく交換になるケースが多く、完全に直るのは確かだがその分費用や日数がかかることになる。
このため小さな補修の場合はコストパフォーマンスに劣るが、全体に損傷があったり老朽化していたりして、扉ごと交換の方が妥当な場合には良い依頼先だと言えるだろう。
飛び込みやチラシの入っていた業者
飛び込みやポストにチラシが入っている工事業者にも補修を依頼することができるが、非常に注意が必要なのも事実だ。
補修はその日の内に作業が終わり代金の回収までできることが多いため、いい加減な工事をしてそのまま音信不通になってしまう業者がいる。
これでは後日気になることが出てきても対応してもらえず泣き寝入りになってしまう。
残念だが飛び込みやチラシがきっかけとなる業者にはそういった者が多く、後々のトラブルを避けるなら信頼できるところからの紹介や、名が通っていて大きな店舗を構えているような業者を選んだ方が安心だろう。
賃貸の管理会社
賃貸なら管理会社に連絡を取ればいつでも補修する業者を手配してくれるだろう。
もちろん管理会社にしてみれば自社で扱う部屋なので、いい加減な補修を行う業者に依頼するとは考えにくく、仕上がりはある程度信頼できる。
ただし問題はその金額で、前述の通りしっかり直そうとする余り冒頭の相場より高額な補修費になりがちだ。
また補修業者との間で中間マージンを取る管理会社もあるため、今回挙げている候補の中では最も金額がかかる依頼先となる。
どうしてもその会社を通さないと補修材料が手配できないなどの場合を除いては、他からも見積もりを取って慎重に検討した方が良いだろう。
リペアのプロフェッショナル補修屋とは?
クローゼットのドアを補修する場合、先に挙げた依頼先の中では費用と仕上がりのバランスが良い補修屋がお勧めだ。
ここではその補修屋に依頼した際の技術費用相場と、補修屋を選ぶ上での注意点を解説したい。
補修屋の技術費用相場
表面の浅い傷 | 15,000円〜 |
ひび割れや凹み | 25,000円〜 |
貫通した穴 | 35,000円〜 |
冒頭の様々な業者を含めた平均よりはだいぶ手頃な価格になるのがおわかり頂けるだろう。
ただし損傷サイズにより増額の場合があり、材料新規取り寄せや出張費等は別途になるので、正確な価格を知るためには一度見積もりを取ってみると良いだろう。
補修屋ならどこでも良い訳ではない
補修屋と一口に言ってもその腕前は大きな差があるのが現状だ。
補修という作業は部品を持って来てはめ込んでおしまいという仕事ではなく、損傷のある場所の素材や劣化具合、そして傷の種類や程度に応じて様々な補修材を用い、多くの方法から最善のものを選ぶ。
このため知識の豊富さやそれを実際に施工した経験などが、仕上がりに大きく影響するのだ。
間違いのない仕事をしてくれる補修屋を選ぶには、その実績を確かめることが非常に重要で、例えば自社サイトで補修の実績を画像付きで公開していたりすれば非常に安心できるだろう。
くれぐれも言葉だけの「実績豊富」に惑わされないように注意をしたい。
火災保険を利用して0円修理ができる?
腕の立つ補修屋に依頼したいとなっても、やはり費用がネックだという方はぜひ自身が加入する火災保険を確認して欲しい。
火事でもないのに保険が使えるのか不思議に思われるかも知れないが、現代の火災保険は自然災害や盗難など住宅に関する総合保険になっているものがほとんどで、今回のクローゼットドアの損傷も条件が揃えば保険の対象になる可能性が十分にある。
ここではどういったケースが補償されるのか、そして保険を利用して補修を行う際の業者選びの注意点を解説する。
どのような傷が保険対象になるのか
まず持ち家の方が加入する火災保険においては、保証項目に「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」があるか確かめて欲しい。
これはうっかり物をぶつけるなどして住宅の一部を壊してしまった場合を補償するもので、今回のクローゼットのドアの損傷が不注意でできたものであれば対象となる可能性がある。
適用条件としては他に原因や発生した日時がはっきりしている必要があり、またドアの機能に支障が出ている場合の方が補償されやすい傾向がある。
一方アパートやマンションなどの賃貸は、入居時に契約した家財の火災保険に「借家人賠償責任担保特約」が付加されていれば、補償の対象となる可能性が出てくる。
これは借りている人が大家に対して損害賠償をしなければいけないケースを補償するもので、今回のクローゼットのドアの補修費も対象になり得るだろう。
いずれの場合も保険加入時の証券や書類で確認し、それでも不明な場合は保険会社に問い合わせをして確かめてみよう。
保険修理を依頼する業者の注意点
保険を利用する際は、保険会社に損傷の原因と現在の状態を正確に書類で伝えなければならないが、これはどの補修屋でも確実にできるものではない。
万一保険申請の経験の少ない補修屋に依頼をしてしまうと、本来補償の対象となるべき損傷なのに、申請内容が不十分なため承認されないことがあるのだ。
当たり前だが補修の腕と申請が確実に行えるかは別の話であるため、補修の技量と共に必ず保険申請の実績も確認した上で依頼先を決めるようにして欲しい。
まとめ
クローゼットのドアの傷や凹みは放置すれば補修費用が膨らみ、しかも人に怪我までさせかねない早急に対処すべき損傷だ。
可能であれば積極的にDIYによる補修に取り組んで欲しいが、賃貸の場合は逆に高くつく結果になりかねないので、DIYか専門業者に依頼するかは慎重に検討すべきだろう。
特に腕の立つ補修屋に依頼ができれば、確実な仕上がりと高い満足感が得られるためぜひお勧めしたい。
さらに火災保険が利用できれば、費用の自己負担を抑えながらプロの補修を受けられることになる。
ぜひ仕上がりを重視し建物にとって最善の方法で補修をして頂きたい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。