玄関スライドドアの修理を後回しにしているとしたら非常に危険だ。
それは毎日触れるため損傷悪化スピードは他の不具合の比ではなく、高額修理や人へ怪我をさせる恐れがあるからだ。
そこで今回は、自分で簡単に行えるスライドドアの修理や調整方法を、建築のプロである一級建築士がご紹介する。
もし自分で解決が可能であれば非常に安価で、しかも最も素早い対応になるはずだ。
また失敗のリスクなどを考慮し専門業者へ依頼すべきケースと、比較検討のための費用相場についてもご紹介している。
記事の最後の火災保険を使って費用を抑えるテクニックと併せ、プロの補修をなるべく手頃に行えるよう活用して頂きたい。
この記事読むことで理解できること
スライドドアの故障を放置すると危険
スライドドアの不具合修理を「開け閉めはとりあえずできるから」と後回しにしている場合、取り返しのつかない事態になる恐れがある。
玄関は毎日開け閉めするため常に負荷がかかり、不具合は確実に悪化してさらなる故障を招くことがあり得る。
そうなればこの後ご紹介する安価に自分で修理することが不可能になり、否応なく専門業者の修理を頼ることになってしまう。
またスライドの動きの不具合から人がぶつかったり指を挟んだりする恐れもあり、しかも玄関のスライドドアは重量があるため大怪我に繋がる事も予想される。
開け閉めができるから修理は後で良いと安易に考えていると、重大な損害に繋がりかねないことを十分に承知して頂きたい。
スライドドアの故障原因と簡単修理法
それではスライドドアの代表的な故障の原因とその修理方法をご紹介する。
スライドドアのような機械部分の多いものは、まず的確に原因を突き止めることが重要であり、それが適切な修理の第一歩となる。
もし原因を見極めないまま作業を行うと、無駄な作業や余計な道具の出費などに繋がる恐れがあるため、しっかりと観察し原因を特定した上で修理に臨んで頂きたい。
レールの清掃
スライドドアで最も多い不具合が、動きが悪くなったり異音がしたりするケースで、多くがレールのゴミ詰まりに原因がある。
外部に面している上に開け閉めによる露出も頻繁なため、異物がどうしても入り込んでしまいやすい。
土や砂から綿埃、小枝、紙切れ、あるいはお子さんのおもちゃの破片などが不具合の原因として良く見られる。
解消法は何よりもまずは清掃で、ドアを全開にした状態でレールからホウキなどでゴミを掃き出し、こびり付きがあれば使い古しの歯ブラシでこすり取る。
最後に濡れた雑巾で磨き上げれば動きはかなり改善されるはずだ。
ただしレールにクレ556のような潤滑油を吹き付けると、土や砂の付着を招いて余計に動きが悪くなってしまうため、使用は避けるようにしよう。
戸車の不具合
レールを確認してもゴミなどが無いようなら、ドアの下部に付いている戸車を確認しよう。
スライドドアの両脇を持ち上げて下部を手前に引くと外れ、確認と清掃ができるようになっている。
ただしドアによっては保護カバーを外したりソフトクローズを解除したりと、外す前の作業が必要な製品もあるので必ず説明書に目を通そう。
外したらまずは戸車にゴミ詰まりがないかを確かめ、もしあるようなら歯ブラシや爪楊枝を使いしっかりと取り除く。
その上で滑車に割れや変形がないかを確認し異常があれば交換となる。
戸車部品はネットで購入可能なものも多いが、純正品でないとしっかりとはまらなかったり動きが悪かったりするので、出来る限りメーカー製のものを選んだ方が間違いはない。
比較的新しめのスライドドアでは、下部に戸車が無く上部で吊られているモデルもあるが、吊り部分の不具合解消は戸車より若干補修のレベルが高くなる。
説明書を確認して自分でできる調整方法があればそれを試し、もし直らないようなら専門業者へ依頼する方が安全だろう。
ブレーキが効かず勢いよく閉まってしまう
ソフトクローズやストッパー、ダンパーなどと呼ばれる、引き戸が勢い良く閉まってしまうことを防ぐ機能部品の不具合も、比較的多い現象だ。
その部品は通常上部のレール内に備わっているが、形状や調整方法はメーカーごとで異なっているため、説明書などでしっかりと確認し可能であれば調整を行う。
多くの場合はドライバーでネジを動かしたり、位置を調整したりすることで解消できることが多い。
しかしそれでも解消されなかったり部品自体が破損したりしている場合は、DIYによる部品交換は困難なため専門業者へ修理を依頼するようにしよう。
ご自身で交換して不具合が直らなかった場合、玄関ドアは重量があるため大怪我に繋がる可能性がある。
また室内ドアと違いメーカー側も一般ユーザーの部品交換を推奨しておらず、部品の入手も難しいものが多い。
万一を考え調整で直らない場合は専門業者へ依頼するようにしよう。
表面の傷など
表面の傷は浅く細いものなら、市販の補修道具を使い目立たなくすることは可能だ。
木製の玄関なら木材に使う補修用ペンで傷を使うと良いだろう。
色の選択が難しいが、一発で既存と合わせようとせず薄い色を重ねて濃くしていく感覚で塗れば、かなり目立たなくすることができる。
またアルミやスチール製のものなら、車用のタッチペンやコンパウンドで補修することが可能だ。
浅い傷ならまずはコンパウンドを試し、どうしても直しきれない場合にタッチペンで補修をしてみよう。
ただしいずれの補修方法も、既存の色や材質などによっては逆に目立ってしまう可能性もあるため、必ず下端の目に付きにくい場所で試してから行うようにして欲しい。
特に色に関してはDIYではあくまで目立たない程度に直すレベルが限界だ。
玄関は日の当たり具合が様々に変化するため、例えば後でご紹介する補修屋のような相当に高い技術を持った専門業者でないと、完全に見えないように傷を消すことは難しい。
傷に関しては、DIYはあくまで応急処置と捉えておいた方が妥当と言えるだろう。
電動スライドドアの故障を解決
近年増えてきた住宅用の電動スライドドアの故障で、ご自身で解決できるものをご紹介する。
トラブルとして最も多いのがスライドの動きが悪くなる現象だが、これは手動と同様にレールにゴミや土、砂埃、こびり付きなどがあれば取り除こう。
ただし手動と違い電動の場合は簡単に本体を外すことができないため、滑車に不具合の疑いがある場合は、専門業者に依頼するようにして欲しい。
次に多い不具合は開閉センサーが反応しないトラブルだが、まず確認して頂きたいのはセンサー部分の電源である。
商品によってはセンサー部分に電池が入っていることもあり、その電池が切れて動かなくなることがある。
交換方法は説明書を参照して欲しいが、ほとんどが一般の方でも簡単に取り換えることができるはずだ。
またセンサーの赤外線を発する部分や受光部のカバーが汚れていて反応が悪くなっているケースも多い。
こちらは雑巾などで拭けば簡単になおるため、まずは試して頂きたい。
これらを行っても症状が改善しないようなら、安全性にも関わるため早期に専門業者へ依頼をするのをお勧めする。
こんな場合は専門業者へ頼もう
ここからはご自身での修理ではなく専門業者へ依頼すべきケースをご紹介したい。
玄関に限らないが住まいの補修を自分で行い、失敗して状態を悪化させてから専門業者へ依頼すれば費用の追加もあり得る。
費用を抑えるつもりでDIYを行ってもそれでは本末転倒であるため、冷静に判断をすることが必要だ。
またスライドドアの場合は使う人の安全性にも関わるため、お伝えした清掃などの方法で改善されない場合は、無理をせず専門業者の判断を仰ぐようにして欲しい。
凹みや深い傷、塗装は補修屋へ
ドアの表面にある傷や凹みは、DIY補修では直した跡が逆に目立ってしまう危険性がある。
このため傷などを完全にわからないように直したいのなら、リペアのプロである補修屋へ依頼するのがお勧めだ。
補修屋とは住まいのあらゆる場所にできた傷をピンポイントで消し去ってくれる専門業者で、高い技術を持つ者なら補修した跡を気づかれる心配は全くない。
また傷んだ部分に絞って補修するため価格が非常にリーズナブルであり、しかもドアに限らず壁や床など守備範囲が非常に広いため、普段から気になっている傷も一緒に直してもらうことができる。
以下に室内ドアではあるがその技術の高さが伺える動画をご紹介するので、その仕上がりの良さをご覧いただき、ぜひ依頼を検討してみて欲しい。
鍵はさらなる悪化や防犯上の心配あり
鍵の不具合も玄関ドアでは非常に多い不具合だが、こちらは初めから専門業者へ任せる方が良いだろう。
鍵の抜き差しや回転の動きが悪いだけなら、説明書にも記載されている鉛筆の芯の粉を塗りつけたり、専用の潤滑剤を吹き付けたりする方法で改善はできる。
しかし年数が経っていて内部の損傷も発生している場合は、シリンダー交換しかなくなるのだがこれが一般の方には意外と難しい。
シリンダーの交換自体はできても、スライドドアは動きのスムーズさを確保しながら鍵がしっかりかかるようにしなければならず、その調整には十分な知識と豊富な経験が必要とされる。
これを不慣れな方が行うと何度も不要な調整を繰り返すことになり、ネジ頭やラッチを痛めるだけでなく、防犯上のリスクも発生してしまう。
鍵は交換するだけで簡単だと安易に考えず、高い精度の調整が必要なデリケートな部分と捉え、不具合の初期段階からプロに任せるようにして欲しい。
傷が多く部品が廃盤なら全交換
ドアの表面全体に傷や凹みが多く劣化が激しく、しかも交換部品が廃盤になっているようなら本体の全交換がお勧めだ。
全交換となると高額な費用のイメージがあるかもしれないが、既存のドア枠の上から新たな枠を被せる、カバー工法と呼ばれる工事なら出費を抑えることができる。
元々の枠は生かすため壁を壊したりする必要がなく、ドア交換で最も多く用いられている方法だ。
本体を交換すれば見た目が新しくなるのはもちろんのこと、古いドアに比べて防犯性や気密性がアップするというメリットもある。
ただし補修に比べ大きな工事にはなるため、十分な経験のある専門業者を選ば無ければならない。
依頼の際は相手の実績をしっかり確かめるようにし、例えば自社のサイトで実例などを紹介しているような業者に相談すると良いだろう。
プロの補修費用相場
専門業者への依頼の参考にして頂くために、代表的な補修の費用相場をご紹介する。
損傷の大きさや程度によっては増額があり得ること、出張費や材料の追加などが別途必要になる場合がある点はご了承頂きたい。
詳しく金額をご存知になりたい方は、メールで写真を送ると無料見積もりをしてくれる専門業者もあるので、一度相談してみると良いだろう。
補修内容 | 技術費用相場 |
浅い傷補修 | 15,000円〜 |
部分塗装 | 20,000円〜 |
深い傷や凹み | 30,000円〜 |
戸車交換 | 25,000円〜 |
ブレーキ調整 | 20,000円〜 |
センサー調整(電動スライドドア) | 25,000円〜 |
鍵の交換(シリンダー部のみ) | 30,000円〜 |
全交換(カバー工法) | 250,000円〜 |
火災保険でスライドドアを格安補修
スライドドアの修理を専門業者へ頼みたいが、やはり費用の負担が大きいと言う方は、ぜひご自身の加入する火災保険を確かめてみて欲しい。
ドアの修理で火災保険と聞くと不思議に思うかも知れないが、現代の火災保険は火事だけでなく、風災や水災による住宅の損傷を幅広くカバーする住宅の総合保険になっている。
今回検討されているドアの損傷も条件が合えばその修理費用が補償される可能性があり、適用になれば最小限の自己負担で済むことになる。
ここではどのような費用が保険の対象になるのか、また保険で直す際にはどのような専門業者へ依頼したらより確実なのか、をご紹介したい。
どんな損傷が補償されるのか
まずはその損傷が「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」であると補償の対象となる。
これはうっかり物をぶつけてドアを損傷したり、お子さんが遊んでいて壊したりした場合などに補償されるものだ。
その他の条件としては発生した日時と原因がはっきりしている必要があり、またドアの機能に支障が出ていると補償の対象となりやすい。
あるいは台風や強風で物が飛んできてぶつかったために壊れた、などの「風災」も補償対象となる。
こちらも発生日時が明確な必要があるため、台風が通り過ぎた後などは玄関に限らず、住まいの外回りを一通り点検してみると良いだろう。
一方で経年劣化のようにいつの間にか壊れていた、というケースは保険の対象外となるので注意して欲しい。
いずれも保険会社によって細かな条件や自己負担額が設けられている場合などがあるので、まずは契約時の書類を確認し、それでも判断がつかない場合は保険利用に詳しい専門業者へ一度相談してみると良いだろう。
8-2:保険補修を依頼する業者に注意
保険を使って補修を行う際に、実は保険の条件以上に気をつけて頂きたいのが依頼する専門業者の選択だ。
保険を利用する場合はその損傷の原因と現状を保険会社へ書類で伝える必要があるが、これが慣れた専門業者でないと詳しく正確に伝えられない恐れがある。
当たり前だが補修の腕と申請の正確さは別の技術が必要であるため、依頼の際はしっかりと相手の保険申請実績を確認することが重要だ。
申請の経験が足りず書類の不備で保険会社に却下されてしまっては、今まで支払ってきた保険料が全くの無駄になってしまう。
保険を使って補修を行う場合は、保険申請の実績が十分な専門業者へ依頼するようにして欲しい。
まとめ
玄関のスライドドアは不具合があれば、安全のためにも早急に対処すべだ。
自分で解消できるようならそれが最も早く安価な補修になるため、積極的に取り組んで頂きたい。
しかし場合によっては初めから専門業者へ依頼した方が、結局は出費を抑えられたり失敗して遠回りをしたりすることを防げるケースも多い。
ぜひリスクをしっかり考慮した上で冷静に判断し、可能なら火災保険を活用しながら安全で確実な方法を選択するようにして欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。