屋上はその器のような形状から雨を受け止め溜め込んでしまうため、雨漏りが発生した場合は漏れ出る雨量が通常の屋根と比べて非常に多いという恐ろしさがある。
しかも発生してから原因を探そうとするなら対応は後手となり、時間とともに被害は拡大していくだろう。
そこで今回一級建築士がご紹介する屋上雨漏りの原因と、DIYで可能な応急処置をご覧頂ければ、被害の拡大を一刻も早く止めるために役立てて頂けるはずだ。
記事の最後には火災保険を利用した自己負担無しで補修する方法もご紹介しているので、ぜひ最後まで目を通して頂き、雨漏り被害を最小限にするため活用して欲しい。
この記事読むことで理解できること
危険度が高い屋上からの雨漏り
屋上の雨漏りでは損傷の小さな初期段階は天井にシミができる程度であり、それ程緊急性を感じない場合が多い。
しかしいざ本格的な雨漏りが発生すれば漏れ出る雨量が多く、被害は一気に広まることになる。
ここで改めて雨漏りの及ぼす被害を再確認し、漏れ出る雨量が少なうちに対策を講じるようにして頂きたい。
建物の内部腐食
屋上から建物の内部に雨水が侵入すると、そこにある構造体の木材には腐れ、鉄骨や鉄筋には錆を発生させ、建物の耐久性や耐震性を大きく損なう。
そして内部被害をさらに恐ろしくしているのが、そういった腐食被害が外見上は全くわからない点だ。
天井裏や壁の中の隠れた場所では人知れず腐食が進行し、被害が表に現れた時には取り返しの付かない状態となっている。
また湿気により内部にシロアリが発生すれば木質の材料を食い荒らされ、被害はさらに重なっていくことになる。
鉄骨やコンクリートの建物はシロアリと無縁と考える方もいるが、天井の下地枠や壁内のサッシ下地など、いかなる工法の建物でも木材は必ず使っているため、シロアリ被害の可能性は十分にあり得る。
いずれも建物の寿命や性能と大きく関わる構造部分に発生するため、雨漏りの最も深刻な被害と言えるだろう。
修復の難しい内装の汚れ
雨漏りが室内にまで及べば天井や壁のクロスにシミやふやけを発生させる。
しかもそれらは発生直後だけでなく、数週間あるいは数ヶ月経ってから現れることもあり、片付けなどが終わって一段落ついた後なら、非常に大きな精神的なダメージを受けるだろう。
さらに下地の石膏ボードは濡れるとふやけて崩れやすくなり、本来の防火の機能も低下してしまう。
しかもこれらの補修は傷んだ部分だけ交換することが出来ず、ジョイントからジョイントまでの広い範囲で交換するため、補修費用は想像以上に大きなものとなる。
また和室の柱や鴨居など白木の材料にシミとなった場合は完全に除去することが難しく、しかも壁紙のように簡単に交換することはできないため、見すぼらしい姿で住み続けることになるだろう。
家具や家電の破損
雨漏りの下に家具や家電があれば濡れて故障や破損の原因となる。
家具であればシミや歪みが発生し、最悪扉や引き出しが閉まらなくなることもあり、こうなれば補修はほとんど不可能で、多くが買い替えとなってしまうだろう。
また家電も濡れれば無事では済まず、故障はもちろん買い替えとなれば家計の大きな痛手となるはずだ。
特にパソコンはデータの損失という金額以上に深刻な被害が起きる可能性もあり、家族写真のような大切なデータの場合は精神的にも大きなダメージを受けるだろう。
カビによるアレルギーや喘息
雨漏りによる湿気が天井裏や壁内に籠もると、そこにカビを発生させアレルギーや喘息などの健康被害の一因となる。
しかも隠れた場所である上に、雨漏り補修が終わった後から徐々にカビが発生するため原因として気付かれにくい。
この原因不明なところが症状に苦しむ方々をさらに悩ませ、雨漏りが及ぼす人への被害として非常に深刻なものにしている。
漏電による被害
雨水が電気設備や配線にかかれば漏電を起こし漏電遮断器が作動する。
しかし原因が解決されず電気の遮断が繰り返されると、電気製品の故障に繋がっていく。
特にパソコンやその周辺機器は不意の電気の遮断に弱いものが多く、補修や買い替えとなれば決して安くない出費となるだろう。
また濡れた電気製品やコンセントから漏れ出た雨水に触れれば感電の危険性もある。
痺れる程度なら良いが火傷を負うこともあり、特に小さなお子さんなら大怪我に発展する恐れもある。
これらの被害は雨漏りを片付けている最中に受けることもあり、作業の際は細心の注意が必要だろう。
屋上からの雨漏り原因は5つ
万一雨漏りが発生した場合には、予め代表的な原因を知ることで素早い対処が可能になり、被害の拡大を防げる。
また雨漏りを未然に防ぐ上でも代表的な原因を知っておくことは非常に有効だ。
ここでは屋上の代表的な雨漏り原因をご紹介する。
ぜひ早期対処や予防のため、屋上へ上がった際は確認し役立てて欲しい。
防水層の劣化・損傷
屋上の床にはアスファルト防水やシート防水、ウレタン塗装やFRPといった各種防水層が造られ、その表面にトップコートという保護塗膜が塗ってある。
このトップコートは10年程度で劣化しヒビ割れるのだが、そのままにしておくと今度は下の防水層が直射日光や風雨によって劣化し損傷することで雨漏りへと繋がる。
場所を特定する際はトップコートのヒビ割れはもちろんだが、その下の防水層の損傷も必ず確認することが大切だ。
また予防の面では屋上は普段から紫外線や風雨に晒され床の劣化が早いため、小さなキズでもすぐに大きな損傷へと繋がってしまう点に注意したい。
初めは表面の微細なヒビ割れでも決して軽視せず、早めにトップコートの塗替えなどのメンテナンスを行えば雨漏りに発展することを防げるだろう。
笠木周りのジョイント
屋上の立ち上がり壁の上に被せてあるのが笠木だが、その繋ぎ目や上に設置してある手摺の根本、外壁に当たっているジョイントなどにコーキングが打ってあり、ここに経年劣化による割れが発生すると雨漏りへと繋がる。
コーキング自体がヒビ割れることもあるが、接着面との隙間が空くケースもあるためチェックする際は丁寧に確認したい。
また水が入り込むほどではないが、小さく細かいヒビが無数に入っているようなら劣化が進行しているサインだ。
これから雨漏りとなる危険性があり、打ち替え時期が来ていると考えて良いだろう。
排水口周りの割れや管の詰まり
屋上にある排水管の内部が詰まって雨水が溜まり、管のジョイントが劣化していると漏れ出て雨漏りとなる。
さらに雨が降り続け屋上自体にも雨水が溜まれば、窓や出入り口の隙間や内壁のジョイントから内部に雨水が入り込み、雨漏りとなるケースもある。
特に雨水が屋上に溜まって発生する雨漏りは、水量も多く絶え間なく漏れ出てくるため大きな被害になる。
また排水口周りの継ぎ目が割れて雨が漏る場合もあるが、そこには屋上の雨水が集まってくるため、傷口は小さくても漏れる量が多く注意が必要だ。
ヒビ割れが小さく見つけにくい場合もあるが、手で排水口の周りを触ると解るので確認してみよう。
窓や出入口周りの防水割れ
屋上の塔屋に設置してある出入り口や窓の周りにあるコーキングが割れることで雨漏りとなる場合もある。
特に上部のコーキングは普段見えない位置のため、痛みが進行して大きなヒビ割れになっていることも多い。
さらに屋上に天窓が設置してあると非常に雨漏りの可能性が高く、重点的に点検をしたいポイントだ。
ガラスと枠の隙間にあるパッキンや、天窓を囲んでいる板金、防水シートなど、常に紫外線や風雨に晒され劣化も早いため原因となる部分が多い。
目視だけでなく触ってみるなどして丁寧にチェックしてみると良いだろう。
内側外壁のヒビ割れや損傷
屋上の周りを囲う腰壁の内壁や、塔屋の外壁のヒビ割れから雨漏りになる可能性もある。
地震だけでなく近隣に大通りや工事現場があればその揺れで割れることもあり、小さなヒビ割れは決して珍しいものではない。
場所としては窓の角や換気口周辺、外壁をビス止めしてある部分が割れるケースが多く、点検時は重点的に確認すると良いだろう。
また中古物件の場合は補修した跡が劣化して雨水が浸入する場合もあるので、屋上内を一回り点検してみることをお勧めする。
屋上雨漏りのDIY補修法
屋上の雨漏りは安全が確保できればDIYで応急処置が行える部分もある。
今回は材料が大型のホームセンターやネットで購入が可能で、作業も比較的行いやすいものを解説する。
注意して頂きたい点は用意する材料の量で、不慣れなうちは失敗したり使う量の加減が分からなかったりして、作業の途中で足りなくなることが多い。
材料に記載されている使用量の目安は、職人や扱いに慣れた人を基準にしてあるので、初めて使う場合は目安量の1.5〜2倍ほど用意したいところだ。
材料不足によって作業が中断すると無用な継ぎ目ができてしまい、後々そこから剥がれや隙間が生まれ雨水の浸入に繋がりかねない。
万一を考え多すぎると思えるくらい用意して取り掛かることをお勧めする。
床の防水層
屋上の防水層の補修は、表層のトップコートを紙やすりで傷口より少し広めに剥がし、雑巾できれいに拭いた上から防水シートを貼る方法が、DIYでも行いやすくお勧めだ。
ただ防水層の劣化は全体的に進行しているので、今後も他の場所で損傷が発生してくることも考えられ、さらには防水層の下に雨水が入り込み腐れやカビが発生している恐れもある。
くれぐれも応急処置で安心せず、全体的な点検も兼ねて専門業者に必ず確認してもらおう。
一方FRPやウレタンなど塗装系の防水層は、材料がネットで手に入るためDIYで塗替えをすることも可能ではある。
ただし塗替えは短時間で複数の工程を行う必要がありDIYでは難易度が高い。
相当慣れた方でなければ結果的に簡単に剥がれてしまい、さらに見た目も非常に見苦しくなるため、できるだけ専門業者へ依頼した方が安全だろう。
笠木周り
笠木の周りの補修はコーキングが主になるが、既存のコーキングが打ってある場合は手間を惜しまず一度古いものを撤去し、新たにコーキングを打つ打ち替えがお勧めだ。
古いコーキングの割れている部分に上塗りする増し打ちも手軽で良いが、打ち替えとは後の持ちが全く違う。
ただし数日のうちに専門業者へ補修を依頼する予定であれば、応急処置として増し打ちでしばらくの間雨漏りを止めるのも良いだろう。
排水口・管
屋上の排水口周りに劣化でヒビ割れや隙間ができた場合は、コーキングテープやエポキシパテで埋めると良い。
平らであればテープ、凸凹がある場所ならパテがお勧めになる。
ただし排水口には屋上の雨水が集まってくるため、流れる雨水でテープやパテが剥がれてしまいやすい。
しかも剥がれた物が排水口の中に入り込み詰まりの原因となるため、DIYで応急処置をした後は早急に専門業者へ補修を依頼しよう。
一方排水管の詰まりは排水口から手を伸ばしても詰まっている物が取れないようなら、速やかに専門業者に連絡しよう。
高圧洗浄機で圧をかけて押し流す方法もあるが、知識を持って慎重に行わないと症状を悪化させる恐れがある。
専門業者なら詰まりの解消だけでなく内部のクリーニングも行えるため、DIYによる補修は控えるようにしたい。
窓や出入口周り
屋上に面する窓や出入り口の周りに打たれたコーキングの補修は、笠木周りと同様コーキングの打ち直しで応急処置を行おう。
もちろん近々専門業者にきちんとした補修を依頼する予定なら増し打ちでも構わない。
一方で天窓は構造がDIYをするには複雑な上に、コーキングでは対応できない損傷も多いので、ブルーシートを被せて雨漏りひとまず止め早急に専門業者へ補修を依頼しよう。
またサッシメーカーの天窓に対する補修対応打ち切りも出始めており、その点でも早めに専門業者に対処をしてもらった方が良いだろう。
壁のヒビ割れ
塔屋や屋上を囲う腰壁のヒビ割れはコーキングで応急処置が可能だが、最も心配なのはヒビ割れの奥にある構造体の腐れや錆だ。
コーキングでひとまずヒビ割れを塞いだら、なるべく早く専門業者に確認をしてもらおう。
ただし専門業者の補修であってもヒビ割れを補修した跡は色が変わってしまうことになる。
もし色の違いが気になり、しかも10年以上外壁のメンテナンスを行っていないようなら、建物全体の外壁塗装を検討しても良いだろう。
応用範囲の広いコーキングを解説
前章でも触れたコーキングは道具や材料が入手しやすく、DIYにおいて最も行いやすい補修方法だ。
しかも外壁のヒビ割れや板間、窓まわり、笠木の周辺など、出番が非常に多く、覚えておくと非常に重宝する。
ここではコーキングの打ち方と道具について解説するので、ぜひ安全に注意しながら一度試してみよう。
打ち替えと増し打ち
コーキングの打ち方には、古いコーキングを撤去した上で新たにコーキングを打つ「打ち替え」と古いコーキングの上に被せて打つ「増し打ち」がある。
打ち替えの方が手間は増えるが持ちが良く、専門業者の補修も基本はこちらで行われる。
ただし数日の内に専門業者へ補修を依頼する予定で、それまでの応急処置であれば増し打ちを選択しても良いだろう。
またサッシ上のコーキングの奥には防水テープが貼られてあり、古いコーキングを取る際にカッターで傷つけてしまう恐れがある、など、増し打ちが望ましい場所もある。
そういった部分は一般の方では判断が難しいため、心配であれば初めから専門業者へ依頼した方がトラブルは避けられるだろう。
実際の打ち方と道具
既存コーキングを撤去する
コーキングの接着面をコーキングカッターで切り離し、ラジオペンチで引っ張り出す。
さらに接着面に残っているコーキングをカッターできれいに剥がし取る。
この既存をきれいに取ることでコーキングの持ちが大きく変わってくる。
力と手間が想像以上にかかるため時間は余裕を持って行うようにしたい。
またカッターの刃はすぐに駄目になるので必ず予備も用意しておこう。
・コーキングカッター
・ラジオペンチ
マスキングテープで養生する
コーキングが損傷箇所の周り付いてしまわないようマスキングテープで養生をする。
コーキングを打つ面にテープが入り込まないように貼るのがポイントだ。
・マスキングテープ
プライマーを塗る
コーキングの付きを良くするため接着面に塗るのがプライマーだ。
塗りムラが出ないようたっぷり塗るようにしよう。
・プライマー
コーキングを打つ
コーキングも隙間の奥までしっかり入るようたっぷり打つ。
最後のヘラで形を整える際にいくらでも取れるので山盛りになっても構わない。
また価格が少し高いが変性コーキングが打つ場所を選ばないためお勧めだ。
・コーキング
・コーキングガン
ヘラで成形し養生テープを剥がす
ヘラでコーキングの形をならしながら養生テープを剥がしていく。
コーキング表面は固くなるのが早く養生テープと付いてしまうため、少しヘラでならしてはテープを剥がすようにし、スピーディーに作業をしよう。
・ヘラ
知っておきたいDIYのリスク
DIYは専門業者へ依頼するより安く済むため検討する方は多いが、実は大きなリスクが存在し必ずしも安上がりとは言えない。
DIYを検討する際はこれからお伝えするリスクを考慮し、目先の費用だけでなく長期的な視点で安価で、しかも建物にとって最善なのはどの方法かを考えた上で選択をして欲しい。
寿命が短い
現代は専門業者と同じ道具と材料が簡単に手に入るため、同じ補修ができると錯覚しがちだが、DIYで行った補修はすぐに取れて再発してしまうケースは非常に多い。
しかも再発しても目に見える所なら良いが、天井裏のような見えない場所だと気付くのが遅れ被害が重症化してしまう。
DIYによる補修は長持ちしないことを認識し、必ず専門業者による確認と補修を行ってもらうようにしよう。
安全性の問題
DIYで最も注意したいのが安全性の問題だ。
屋根上や外壁ほどではないが、笠木やサッシ周りの作業で外側に身を乗り出すようなら非常に危険だ。
本来なら専門業者に依頼して欲しいところだが、どうしても自分で行う場合はヘルメットを着用し2人以上で行うなど、十分に安全へ配慮をして頂きたい。
ヘルメットと言うと大袈裟に思うかもしれないが、専門業者の職人たちはどんなに安全に見える場所でも危険がある事を知っているため、必ずヘルメットを着用している。
仕事として慣れている彼らでさえ被っているのに、素人がヘルメットを被らなくて良い理由はどこにもない。
僅かな費用を惜しんで大怪我をしてしまわないよう安全には十分注意して頂きたい。
後で行う業者補修が割高に
専門業者が補修を行う際に、DIYの補修部分を撤去するために工事費が追加になったり、元々の損傷をさらに痛めてしまったりすることがある。
例えば笠木下の壁内が腐っているのにジョイントをコーキングで固めてしまったため、撤去費が追加になったり、防水層の損傷にDIYでたっぷりと上塗りをしてしまい、それを剥がす際に防水層を痛めてしまったりなど、専門業者から非常に多くの話しを聞く。
加減は難しいかもしれないがDIYはあくまでその場の雨漏りを止める範囲に控え、専門業者に本格的な補修を行ってもらうまでの応急処置であると認識すると良いだろう。
プロに依頼するメリット
現在は専門業者と同じ道具や材料が入手でき、ネットで調べれば作業方法も知ることができる。
そのため専門業者の仕事は高いだけでDIYと大差ないと考える方もいるが、それは大きな誤解である。
専門業者が行う補修にはその金額に見合った、あるいはそれ以上の価値が必ずあるものだ。
ここではそのプロの仕事の代表的なメリットを解説するので、ぜひ金額だけでなく総合的に費用対効果が高いのはどの方法かご理解頂いた上で判断をして欲しい。
補修の持ちが違う
同じ補修材を使っているようでも、専門業者は補修部分の材質や環境に応じて何種類もの選択肢の中からベストなものを選んでいる。
例えばコーキング一つ取っても外壁にとってどれがベストか、また打った後に塗装をするのかなど、諸条件を考え使い分けをしている。
また使う場所の材料によって目荒しやプライマー塗布など、適切な下処理を行うことで補修材の付きを良くもしている。
さらにDIYでは軽視されがちな既存の撤去や清掃なども丁寧に行い、補修が長期間持つよう手間をかけているのだ。
そしてこれらの細かい作業をどの程度まで行えば良いかの加減も、プロならではの経験や知識を持った上で判断をしている。
こういった小さな工夫の積み重ねが補修の持ちの良さに繋がり、細かいことを省きがちなDIYと最も大きな差として現れ、DIYが応急処置に過ぎないと言われる理由にもなっている。
他の損傷を見つける
専門業者は補修する場所だけでなく広範囲に目が届き、補修箇所の周辺やそこに至る道中で新たな損傷を見つけることもできる。
新たな雨漏りの原因を発見したり、瓦の損傷や樋の痛み、アンテナの劣化であったりなど、屋根だけでも様々な損傷を教えてくれることだろう。
しかも現在損傷している部分だけでなく、例えば外壁のチョーキングなど今後痛むだろう前兆も、経験が豊富な専門業者は見つけることができる。
このため被害が発生してから依頼するより安上がりに補修できたり、錆や腐れなど実害が起きることも未然に防げたりといった、予防の効果もDIYには無い大きなメリットだろう。
内部の損傷を確認
建物にとって最も重要と言えるのが、専門業者は雨漏りの入り口である損傷から内部の状態を確認できる点だ。
一般の方は損傷を直すことはできても、その奥の状態を確認する術を持っていない。
しかし専門業者は損傷のわずかな隙間から内部の状態を判断できる経験値があり、必要とあればその周辺の材料を剥がし確認することもできる。
一方DIYでは内部に腐れや錆といった腐食があっても気付かず、対策をせずに表面だけ補修をして蓋をしてしまい、人知れず腐食が進行し建物に大きなダメージを与えることになる。
これを予防できることは非常に重要であり、専門業者に補修を依頼することでのみ可能であると言えるだろう。
高精度の雨漏り原因調査
目に見える損傷の無い雨漏り原因を探ることは専門業者でさえ難しい作業だ。
慎重に原因を調べた上で補修を行っても一度では直らず補修を重ねることがある。
ましてDIYでは原因がわからずあちこち手を付け、結局お手上げになって専門業者へ依頼するケースは多い。
しかし修理専門の業者は、目視だけでなく散水や発光液調査、サーモグラフィー調査など、精度の高い調査を行った上で補修を行うので無駄が無い。
補修自体はDIYで行えても原因の特定はまだまだ知識や経験が必要であり、この点は専門業者でも特に修理を専門とする業者へ依頼する大きなメリットと言えるだろう。
専門業者へ依頼した場合の費用相場
それでは専門業者へ雨漏りの補修を依頼した場合、相場としてはどれくらいの費用になるのかを一覧にてお伝えする。
確かにDIYよりは高額になるが、先程お伝えした持ちが良い点や新たな損傷が無いかを確認してもらえる点などを考慮し、長期的な視点で検討して頂きたい。
補修場所 | 補修内容 | 相場費用 | 詳細 |
屋上床防水 | シート防水補修 | 5〜8万円 | トップコート+防水層の補修 |
FRP防水補修 | 6〜10万円 | ||
ウレタン塗装補修 | 8〜12万円 | ||
各所コーキング | ヒビ割れ埋め | 2万円前後 | 外壁、笠木、排水口周りなど |
割れの打ち替え | 3〜5万円 | 外壁の板間や窓周りなど既存コーキング有りの場合 | |
排水管 | 排水管詰まり解消 | 2万円〜 |
陸屋根補修の注意点
ここで屋上と同時に用いられる陸屋根という言葉についても解説しておきたい。
屋上とは建物の屋根の上面のことを指し、ここから意味が広がって人が出ることのできる平らな屋根上のことで用いられる。
一方陸屋根は屋根形状の一種で、一般的に戸建てで見られる三角の勾配屋根に対して、平面の形状の屋根を意味している。
ただし一般的には人が出られる屋根を屋上とし、出ることができない屋根上を陸屋根として分けている場合と、両者とも人が出られるものとして同じ意味で用いている場合とが混在している。
ここでは屋上とは違い人が出入りできない平らな屋根形状でのDIYによる補修の注意点を解説するため、陸屋根をその意味で用いさせて頂く。
DIYは手摺がなく危険
あくまで屋根である陸屋根は人が出入りしないため、周りを囲う腰壁や手摺といった落下防止策となるものが無い。
このためDIYで雨漏りを補修する場合、傾斜のある屋根ほどではないが落下の危険性が十分にあると言える。
家の外回りのDIYによる補修において安全性の確保は非常に重要な問題で、これが不十分な場合は極力作業は避けた方が良いだろう。
もし万一作業を行う場合は既に述べたように、ヘルメットを着用し、2人以上で安全に注意しながら行って頂きたい。
人が乗る造りになっているか?
人が歩いたりすることが前提の屋上は、当然その荷重がかかっても大丈夫な造りになっており、雨漏りの原因を探したりDIYを行うことは十分に可能だ。
しかし人が乗ることを想定していない陸屋根は、どこでも乗ったり歩いたりして構わないようには出来ていない。
専門業者は荷重をかけて良い部分を理解しているため乗ったり作業をしたりできるが、一般の方が不用意に陸屋根に乗ると防水や下の小屋組を痛めかねない。
また屋根を痛めないよう気にしながらDIYを行えば、作業に支障をきたして補修が不十分な仕上がりになり、雨漏りが直らないことも考えられる。
陸屋根のDIYによる補修は下手に手を出すと雨漏りの箇所を増やしてしまう恐れもある為、できる限り専門業者に依頼する方が安心だろう。
火災保険を使って0円補修
雨漏りの補修は突然発生するため手痛い出費となってしまうが、そこで検討して頂きたいのが火災保険の利用だ。
火災保険というと火事のときにだけ使うものと思いがちだが、現代の保険は台風や落雷、盗難等、様々な住宅被害を補償するものになっており、条件が合えばゼロ円で補修も可能だ。
ぜひ契約時の書類や保険会社に問い合わせるなどをして、補償の範囲を確認してみると良いだろう。
ここではその保険を利用できる条件と、申請する上での注意点を解説していきたい。
火災保険を利用できる条件
火災保険においては台風や竜巻、大雪や雹、大雨などの自然災害によって住宅が損傷し、雨漏りとなった場合にその補修費が補償される。
例えば台風によって瓦が割れ、その下の防水シートも傷ついて雨漏りとなった場合などだ。
ただし経年劣化による雨漏りは補償外となってしまうのだが、一般の方には原因が自然災害なのか経年劣化なのか判断は難しい。
火災保険を利用する場合は雨漏り補修の見積もりを取る段階から、火災保険への申請の実績が豊富な専門業者に依頼をし、見積もりと同時に雨漏りの原因をしっかり調べてもらった方が、確実性が高いだろう。
保険利用での最重要ポイントは実績
火災保険で雨漏り補修を補償してもらう為の大切なポイントは、雨漏りの原因が自然災害にあることを確実に保険会社に伝えることだ。
そのためには雨漏りと自然災害の因果関係を証明する建築の知識や、数多くの写真が必要になる。
これは一般の方にとって難しいのはもちろんだが、補修を行う専門業者でさえも簡単なことではない。
工事だけでなく自然災害と雨漏りの因果関係をしっかり説明する技術も持っていなければ、例え専門業者でも審査に通らない事があるのだ。
この点からもやはり保険申請を数多くこなしているかなど、実績を重視した業者選びをすることが重要になるだろう。
危険な業者の見分け方
保険を利用した補修を行う際に、専門業者の中には「申請は必ず通るから大丈夫だ」と言って、審査が終わる前に工事の着工や手付金の入金を要求してくる者がいる。
もし補修を着工したり手付金を払って職人や材料の手配をされたりすれば、万一審査が通らなかった場合は費用が全額自己負担になってしまう。
こういった要求は早く代金が欲しいという業者自身の都合によるもので、お客の事を考えての行動ではなく、当然お客の側に立った工事をするとは思えない。
契約する前に必ず着工や手付金支払いのタイミングを確認し、審査が通る前にそれらを要求してくる業者は避けた方が良いだろう。
まとめ
どのような場所の雨漏りも被害を最小限に食い止めるには、原因を素早く特定し早急に補修を行うことに尽きる。
そのため屋上からの雨漏りは場所が平坦なこともあり、DIYで補修を行おうと考える方は多いかもしれない。
しかしDIYでは補修の持続性など専門業者の補修と大きな差があり、再発の危険性を考えれば初めから専門業者へ依頼した方が良いと言えるだろう。
しかも火災保険によって費用の負担が軽減できれば、DIYにこだわる理由は無くなってくる。
ぜひ無駄なく確実に補修できる方法を選択し、大切な住まいの雨漏りをストップさせて欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。