屋根や外壁とともに、雨水から住まいを守る働きをしている樋。屋根から流れ落ちる雨水をスムーズに排水する樋の機能は、住まいになくてはならないものである。
樋が破損したり穴が空いたりすると、雨が屋根から地面に直接落ちることで、雨音や水はねなどの生活が不快になるだけでなく、外壁の劣化や雨漏りを引き起こす要因となる。
もし、樋の不具合を発見した場合は放置すべきではない。そこで、今回は樋を修繕するなら必ず知っておきたい種類や材料について解説する。
この記事読むことで理解できること
樋の種類にはどんなものがあるか?
樋の構成は、大きく分けて3つとなる。
軒先に固定し屋根から落ちてくる雨水を受ける軒樋と、軒樋の水を集める集水器と、そこに集まった水を下へと流し、雨水枡や側溝に送るための縦樋の組み合わせだ。
この組み合わせにより、屋根から流れる雨水を軒先や軒裏、外壁などにかからないようにする。樋の種類として、形状と大きさと材質の違いによりさまざまタイプがあるが、屋根や軒のデザインによって最適なものが選ばれる。
純和風住宅であれば、昔ながらの半丸形状が住まいの外観にふさわしい。モダンな住宅であればシャープな角形形状のものが似合う。
洋風住宅ならその住まいにあったテイストの形状を選定する。色もホワイトや茶色、ブラックなどの定番色以外にも金属色なども選ぶことができる。ここでは形状とサイズとそれらの特徴について解説する。
雨樋の形状とサイズ
【樋の形状】
半丸一般型:最もスタンダードで主張の少ないさりげなさが特徴の樋。和洋どちらの住まいにも合わせやすく、丸のやわらなか曲線が美しい樋。昔からある形状なので、古い住宅は半丸型の場合が多い。
幅のサイズも75mm・100mm・105mm・120mmと豊富にあるため、既存の樋の部分修繕も容易だ。縦樋も半丸形状の軒樋にあった円筒形のものになる。
角形一般型:洋風の外観の合う直線的なラインが特徴。軒先がすっきり見える形状。角形形状の樋は同幅の半丸タイプよりも排水有効断面積が大きく取れるメリットがある。
集水器もスマートな形状で、縦樋もスクエアなシルエットとなっている。同素材の場合、半丸型よりも価格が高い。円筒形の縦樋と組み合わせることもできる。
機能型:樋の前面部が雨だれをカットする水切り構造をなっているタイプ。雨だれによる汚れを軽減するだけでなく、軒先との一体感が生まれる形状となっている。
また、落ち葉による樋のつまりを防止するため上部カバーのついた形状のものもある。デザイン性と合わせ表面の仕上げに高級感や耐久性を持たせたものが多く価格も少し高くなる。
大容量型:半丸型と比較して、2倍以上の排水有効断面積を持つタイプ。大きな屋根を持つ住宅や店舗や施設で採用されることが多い。
角形の幅広のタイプもあれば、機能型と同様に全面部分が高くなっているタイプもある。大型施設で使われるタイプの場合、金属製の素材である場合が多い。
デザイン重視型:形状や光沢感などにこだわり、美しさと機能性を両立したタイプ。屋根や軒の美しさ引き立てるシルエットを追求しており、深い軒を持つ和モダンの住宅や平屋の住まいで選ばれることが多い。神社仏閣や純和風住宅に合う伝統的な装飾が施された、銅いぶし樋などもある。
デザイン重視型:形状や光沢感などにこだわり、美しさと機能性を両立したタイプ。屋根や軒の美しさ引き立てるシルエットを追求しており、深い軒を持つ和モダンの住宅や平屋の住まいで選ばれることが多い。神社仏閣や純和風住宅に合う伝統的な装飾が施された、銅いぶし樋などもある。
【樋のサイズ】
樋のサイズは、屋根から流れ落ちる雨水の量を基準に選定する。屋根面積が広ければそれだけ流れ落ちる雨水は増えるため、それに対応できる軒樋や縦樋が必要となる。
排水能力は、軒樋の断面形状と縦樋の太さにより決まる。軒樋に流れる雨水は集水器に集められ縦樋へと流れるので、集水器(落し口)の必要個数も排水能力の計算をもとに決定する。
勾配の小さな広い屋根を持つ住宅の場合、屋根から流れ込む雨水の量が多いため、排水能力の高い軒樋と縦樋と組み合わせにする必要がある。
昨今、度々発生する集中豪雨などで、雨水が樋から溢れるなどが発生している場合には、樋修繕のタイミングで樋のサイズを見直すのも良いだろう。住宅の場合は、排水能力とともにデザインで選ぶ場合が多いが、店舗などでは建物の規模が大きく屋根面積も広くなるため樋のサイズ選定は大切だ。
- 排水能力表を利用した樋の適合サイズの決め方
メーカーが樋の種類毎に掲示している「排水能力表」というものを見ると、適合サイズを見つけることができる。排水能力表を見るためには下記2つを確認する必要がある。
①「落とし口1か所あたりの屋根投影面積S」
②「地域別降雨強度」
「落とし口1か所あたりの屋根投影面積S」の求め方
1.建物の図面より「落とし口1か所あたりの屋根投影面積S」を求める。
(数種ある場合は最大値のSを求める)
※屋根投影面積とは、屋根上から統計して現れる水平上の面積のこと(図の黒枠部分)
2.「排水能力表」には「「落とし口1か所あたりの屋根投影面積」の項目がある為、1で出した「屋根投影面積S」の数字以上の欄を見る。それにより、「軒樋」と「縦樋」の組み合わせと排水方法としての自在ドレン/集水器(サイズ)を決定する。
※軒樋、縦樋の組み合わせによる排水能力は、軒樋と縦樋の排水能力のうち、小さい方の能力を選定している。
地域別降雨強度 | 160mm/h | 140mm/h | 120mm/h | 100mm/h |
凡例 | ||||
該当都道府県名 | 三重、和歌山、高知、鹿児島、沖縄 | 茨城、千葉、栃木、群馬、埼玉、長野、静岡、愛媛、福岡、佐賀、長崎、宮崎 | 青森、岩手、秋田、宮城、福島、東京、神奈川、山梨、富山、石川、福井、岐阜、愛知、滋賀、京都、大阪、奈良、兵庫、鳥取、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、大分、熊本 | 北海道、山形、新潟 |
続いて「地域別降雨強度」は、上の図と表で確認していただきたい。こちらも「落とし口1か所あたりの屋根投影面積S」と共に、「排水能力表」で当てはまる欄を見ていく。
降雨強度とは
降雨強度(mm/h)は、1時間当たりの降雨量をいう。地域別降雨強度は、気象庁発行の「日本の気候表」の中に掲載されている10分間降雨量より、特別な豪雨を除いた5〜6年に1度位現れる程度の降雨量を基準として、1時間当たりに換算したものである。
雨樋の色の種類
昔の雨樋の形状は半丸型で統一されていることが多く、色の種類も豊富ではなかった。現在ではスタイリッシュな形状の雨樋も増え、時代の流れに追随して色の選択肢も増えている。下記の雨樋はパナソニック製のグランスケアPGR60のカラーラインナップだ。
出典:https://sumai.panasonic.jp/amatoi/aian/lineup/s02_gr_01.html
※(左から)ミルクホワイト、パールグレー(しろ)、しんちゃ、ブラック、モダンベージュ、オークブラウン
住宅も和風の他に洋風、煉瓦造り、プロヴァンス風、アメリカンなど外観スタイルの幅が広くなった。このため建物の外観に合う雨樋の選択ができるように形状から色の種類まで各メーカーは商品ラインナップに用意している。
ただし、定番色であるホワイト、ブラック、しんちゃ以外の色は、年数ごとに変更が行われ廃盤になる可能性がある。
また、定番色は人気があるため多めに在庫を抱えている傾向にあり納品待ちの可能性は低いが、その他の色は受注生産とされていて2週間ほど納品を待たなければいけない可能性がある。
後々、雨樋の修理や交換を行う際に既存の色と同じ雨樋にしたい場合は、廃盤のリスクを考えて定番色の雨樋を選ぶことをおすすめする。定番色は何年も継続して販売される人気色だ。メーカーによって定番色は異なるため、色の選定の際は担当者にどれが定番色か聞いておこう。
カーポートの雨樋の種類
カーポートにも小さいながらも雨樋が設置されている。一般的なカーポートの雨樋構造は、軒先はカーポート本体と一体となっている雨樋構造となっていて、縦樋は塩ビ性の丸樋が柱に固定されている。
建物に設置されている雨樋よりもサイズが小さいものが使われていることが多い。また、縦樋が通常の丸樋ではなくジャバラ型の樋になっている製品もある。
カーポートの縦樋の交換を行いたい場合は、一般的な丸樋が使われていれば既存のサイズにあった丸樋を調達できれば交換は可能で、ホームセンターやネットショッピングで購入することができるだろう。
ただし、専用の雨樋が使用されているカーポートでは他の部材では対応ができない可能性があり、メーカーから取り寄せなければいけない。年数が経っている製品だと部品の生産も終了している可能性があるため、在庫がある内に手に入れておくことが重要だ。部品の在庫終了までの目安はおよそ10年だ。
雨樋の役割と集水器・縦樋・エルボ・受け金具等の部品
雨樋の役割について真剣に考えたことがある人はどれくらいいるだろうか。単に雨樋は雨水を受けて地上に流すだけのものと捉えている人がほとんどかもしれない。それも間違いではないが、もう少し深掘りして雨樋の役割について考えてみたい。
もし、建物に雨樋がなかったらと想像してみると、屋根から降り頻る雨で建物周辺の地面は水浸しになってしまうことだろう。地面に雨が溜まると建物の基礎部が不安定化し不同沈下を起こす可能性がある。
また、基礎部の湿度が高くなりシロアリの発生が危惧されるのだ。つまり、雨樋の役割に建物近くに雨水が溜まるのを防ぐというのがある。
その他に考えられることは、雨樋がないと屋根から落ちる雨水が外壁を伝って下に流れていくだろう。外壁を伝って流れる雨水は壁に設けられている窓にも影響する。外壁に流れる雨の量が増えれば、壁面の劣化によってできたクラックから水が侵入しやすくなってしまう。
また、窓に打たれたコーキングにヒビがあれば、そこからも雨水は侵入してしまうだろう。雨晒しとなった外壁や窓は劣化が早まり、水の侵入のリスクが高くなるため、建物の構造体が腐食する可能性もある。このことから、雨樋は建物が雨水に晒されるのを防ぐ役割があるということだ。
建物の付属品としてあまり注目されない雨樋だが、建物の長寿命化やメンテナンス時期の間隔を長期化する貢献が雨樋にはあるのだ。
【雨樋の構成と部品】
建築に携わる人以外の一般の方は、軒先や外壁に設置されている全てを雨樋と認識しているのではないだろうか。実は雨樋は一つ一つの部材を組み合わせて構成されているものであり、部品ごとに独立した名称が付けられているのだ。下記の図は雨樋の構成図となっている。
上記の図により雨樋は複数の部材が組み合わさって構成されているのがお分かりいただけるのではないだろうか。建築の専門用語は一般の方には把握が困難なほど細分化されている。しかし、修理する際は建築の専門用語を知っていることで専門家とのコミュニケーションがとれて良好な関係が築きやすくなるのだ。
雨樋を施工する専門家でない限り、馴染みがない部材を一つ一つ覚えるのは大変だ。だが、雨樋の部材を全て覚える必要はない。
なぜなら雨樋を構成する部材は大別することができる。この大別した名称を覚えておくだけで専門家と円滑にコミュニケーションがとりやすくなるので、ぜひチェックしておいていただきたい。雨樋の構成を大別すると下記になる。
・軒樋
・縦樋
・集水器
大別すると、雨樋は水平に設置する「軒樋」と縦に設置する「縦樋」、雨水を縦樋に流す「集水器」の3つで構成される。この3つの部材の形状と名称を知っておけば専門家との会話も伝わりやすく、専門家が話すことも理解がしやすいだろう。
細かい部材の名称を正しく覚えていなくても、その部材の役割を伝えるだけで専門家は分かってくれることが多い。
例えば外曲がり、内曲がりの部材については、軒樋の曲がるところと言えば伝わる。また、縦樋の曲がりであるエルボも同様だ。打ち込み金具も樋を固定する金具と言えば十分理解できる範囲だ。
雨樋のメーカー
雨樋を販売するメーカーはいくつかあるので、ここではシェア率の高いメーカー「パナソニック」と「積水化学工業」、「タキロンシーアイ」の特徴についてお伝えしていきたい。
【パナソニック】
パナソニックが販売する雨樋は、硬質塩化ビニル樹脂の中にスチール芯を入れて強度をあげているのが特徴的だ。パナソニックというと家電製品などの開発、販売する電気メーカーという認識があるかもしれない。しかし、住宅建材や設備も多く販売している建材・住設備の大手メーカーでもあるのだ。パナソニックグループ会社であるケイミューは外壁サイディングや屋根材などの外装材を販売している。パナソニックブランド(ケイミューを含めて)で内装材や外装材、住宅設備を統一させることができるのも強みと言える。
【積水化学工業】
積水化学工業のエスロンシリーズは高い耐久性が特徴的で、樋のたわみは少ない。また、システム化された部品構成で施工性の高い雨樋である。積水化学工業も長い歴史を持ち、角タイプの雨樋から丸型の雨樋など豊富な商品ラインナップが揃えられている。
【タキロンシーアイ】
2017年により社名が変更となりタキロンからタキロンシーアイになった。合成樹脂の製造、加工、販売はタキロン時代から大手メーカーであり、雨樋の他にも配管類や貯水タンク、バルコニーのデッキ材などの樹脂製品も多く販売している。「サイホン雨どいシステム」は、排水能力の向上と従来の縦樋の数を半分に抑えることが可能になった。
その他にも雨樋を販売するメーカーはあるが、今回は主要3メーカーの他は割愛する。ご紹介したメーカー以外も知りたいという方は下記の記事でご紹介しているので、ぜひご参考していただきたい。
樋の構造や名称を徹底解説!これで点検・修理もお手の物!
https://shufukulabo.com/name-and-structure-of-the-gutter#i-7
樋の材料・素材にはどのようなものがあるのか?
樋の材料や素材は、耐久性に大きく関係してくる。複数の工事業者の見積もりを比較する場合、金額の違いが使用する材料の違いによるものなのか、施工費用によるものなのかによりその意味は大きく異なる。
特に塩ビ製の樋の場合、廉価タイプのものと表面に特殊コーティングを施されたものでは耐久性も材料費もかなり違うため確認が必要だ。耐用年数が大きく違わなくても、長期間美観を保つことができたり、汚れが目立たなかったりする。
また金属製のものは高い耐久性があるがやはり価格は割高になる。まずは、樋にはどのような材料や素材のものがあるのかを知ってほしい。
硬質塩化ビニル樹脂(塩ビ)
硬質塩化ビニル樹脂(塩ビ)は、いわゆるプラスチックのこと。錆びない腐らない塩化ビニルを素材に使用した価格もリーズナブルなもの。樋としても50年を超える歴史がある。現場でのカットも容易で施工性も高く、修繕時に一般的に使用されている。色についても、白や茶色、黒など外観に合わせやすい色のラインナップがある。
表面特殊処理硬質塩ビ
硬質塩化ビニル樹脂の表面を耐候性の高い特殊樹脂でコーティングしたもの。紫外線による色あせや劣化を抑える。また、表面にローゼット加工を施すことで、樹脂特有の光沢感を抑えたタイプやヘアライン加工によりメタリックの輝きを表現したタイプもある。
ガルバリウム
ガルバリウムとは、アルミニウムと亜鉛の合金素材で、加工しやすく、サビに強く、亜鉛メッキされた鋼板よりも3〜5倍程度の耐久性があると言われている。表面に樹脂系仕上げ塗装を施すことでさらに耐久性の高い素材となっている。カラーバリエーションやデザイン性の高さから、スタイリッシュな形状の樋も多い。屋根や外壁にも使用されることも多い素材で、熱による伸縮も少ないため大型建築物で採用されることも多い。屋根や外壁とともに樋もガルバニウムで統一した場合、メンテナンスのサイクルが合わせやすくなるメリットがある。
ステンレス
タニタハウジングウェアデジタルカタログP24/25
https://tanita-hw.e-manager.jp/book-search/viewnew/bookNum/167/
耐久性に優れたステンレス素材を基材に使用した樋。表面に塗膜のコーティングを行うことで、高級感と耐久性をさらに高めている。ヘアラインコーディングならステンレスの素材感を感じることができる。
シャープでモダンな印象を持つステンレスが樋を洗練されたものにしている。ステンレスならではの強度とその高い耐久性から、高級住宅や大型商業施設などでの採用事例が多い。
銅
タニタハウジングウェアデジタルカタログ
BB082-02 SusCu&スーパー銅P8/9
https://tanita-hw.e-manager.jp/book-search/viewnew/bookNum/167/
銅独特の赤橙色の美しさが特徴。その色は大気にさらされることで次第に緑青色に。その経年変化が樋全体に生成される歳月は約20年と言われている。その圧倒的な耐久性により神社仏閣などで使用されてきた。
ただ、現代では酸性雨や他の素材との相性などで樋に穴が開く場合もあり、ステンレス基材に銅をコーティングしたものがメーカー製品として販売されている。銅は柔らかい素材であるため、ステンレスを基材にすることにより対衝撃性も向上させている。
昔ながらの銅製の樋は、屋根の形状に合わせて板金職人の手によってオーダーメードで制作されることも多い。
アルミニウム
BB083-02 アルミニウム雨とい ビルアルミ総合カタログ
右:2P 左:5P
https://tanita-hw.e-manager.jp/book-search/viewnew/bookNum/165/
窓サッシに使われるアルミ合金を使用した樋。サッシ同様表面にアルマイト処理とアクリル樹脂の電着塗装を行うことで高い耐久性を実現している。樋の内側にも保護塗装を行うことで耐久性をより高めている。軽量というアルミニウムの特徴を生かし、高い排水能力を必要とする大型施設などで採用されることが多い。アルミニウムの美しい素材感とシャープな印象が生きるモダンな建物や超耐久性
が求められる場所に最適な素材と言える。
材質の比較表
上記でお伝えした雨樋の材質を比較表にしたので雨樋の選定の時に参考してもらいたい。
材質 | 耐久性 | 価格 | 備考 |
硬質塩化ビニル樹脂 (塩ビ) | × | ◎ | 多く流通していることから値段は安価。施工性も容易だが、経年劣化による歪みや硬化によるひび割れなどが生じる。雪の重さに弱い。 |
表面特殊処理硬質塩ビ | △ | ○ | 特殊樹脂の施しにより紫外線の色あせや劣化を抑える。外観上は塩化ビニルとほぼ同等だが、値段はやや高くなる。 |
ガルバリウム | ◎ | △ | 加工がしやすくサビに強いため耐久性が高い。価格は他の金属に比べて安い。 |
ステンレス | ◎ | × | 外観に高級感があり、他の金属よりも耐久性が高い。しかし、施工手間がかかり、価格も他の金属より高い。 |
銅 | ○ | × | 神社仏閣など日本の伝統建築に用いられることが多い。大気に晒されることで次第に緑青色に変わり、独特な雰囲気を醸しだすことができる。耐久性は高いが、価格も高い。施工も熟練された板金技術が必要になる。 |
アルミニウム | ◎ | × | サッシ類によく用いられる金属で錆に強く耐久性も高い。しかし塩害に弱く雨風により酸化する可能性がある。価格も高めに設定されている。 |
雨樋の材質は一長一短ある。地域性によって選定する雨樋の材質も変えることが重要だ。多雪地域では、雪害のリスクを考慮しなければならないため、塩ビ性の雨樋は不向きだ。
海岸沿いでは塩害のリスクを考えアルミニウム製の雨樋は避けた方がいいだろう。このように地域の特性を把握し適切な雨樋の材質を選ぶことだ。
樋の状態・トラブルのチェックポイント
樋は、外部に面しているため屋根や外壁同様、風雨や紫外線にさらされている。そのため定期的な点検やメンテナンスが必要だ。台風や豪雨の後などは特に、軒樋が集水器部分から外れていないか、樋が破損していないかチェックが必要だ。
また、樋は屋根から雨水受ける形状のため、上から落ちてくるゴミが溜まりやすい形状をしている。高い位置だと上から覗き込むことが、なかなかできないので、樋から雨水が溢れたりしていないかを目視することが不具合を発見することにつながる。トラブルを放置した場合どうなるのかを知り点検を行うようにしたい。
壊れる原因
雨樋のトラブルを理解していくためにも雨樋が壊れる原因について把握しておかなければならない。雨樋が壊れる原因で多いのは、強風や積雪など自然災害によるものだ。
台風で起こる強風は、既存の雨樋が弱っていると外れて飛散する可能性がある。また、屋根に積もった雪が落下し雨樋に覆いかぶさると、雪の重みに耐えられず雨樋が壊れてしまう危険がある。
台風や雪は雨樋の破損が起きやすい自然災害であるため、日頃から雨樋の状態をチェックし、定期的なメンテナンスをすることで破損のリスクを抑制することができる。雨樋は経年劣化し始めると、色あせや歪みが起きる。
色あせは美観の問題で済むが、雨樋の歪みは屋根から流れる雨水を受け止めることができないオーバーフローが生じる可能性がある。また、継手に隙間ができて水漏れを起こしたり、接着剤の効果が切れて外れてしまったりする恐れもあるので注意していただきたい。
では、このような雨樋の壊れる原因をそのままにしてしまうとどうなるか下記にてお伝えしていく。
樋の不具合を放置するとどうなるか
樋が外れたり破損したりしているものをそのまま放置すると、そこを流れる雨水が外壁や軒先、軒裏にかかったり、屋根から直接落下することになる。雨水がじわじわとまわることで、建物の劣化につながる。
モルタル壁のクラックやサイディング壁のシーリング劣化など発生している壁の場合、そこから水が壁の中に入り込み最悪の場合、雨漏りの原因にもなる。
また屋根から直接地面にポタポタと落ち続けることで、建物廻りの土間コンクリートなどに穴があいたり、跳ねた雨水が土台部分にかかることで腐食する原因にもなる。
建物廻りを歩く時に雨が落ちてきて不快だったり、室内にいても雨が落ちる音が気になったりするなどの問題も発生する。
樋の状態のチェックポイント
日頃の点検は、年に1回程度、建物外部からの目視が基本となる。
梅雨や雪解けの時期など雨水が問題なく流れているか確認しやすい時期が良いだろう。チェックポイントとしては、まずは、樋を建物に固定している金具が外れていないか、軒樋が集水器から外れていないか、縦樋の継ぎ目がずれていないかなどになる。
また、経年劣化による穴あき割れなどの破損がないかもチェックしておきたい。塩化ビニル製の樋の場合、色褪せなどの劣化の状況を把握することでメンテナンスの時期を予測することができる。
軒よりも背の高い落葉樹が近くにある場合は、落ち葉で樋が詰まっていないかが心配だ。落ち葉は溜まって樋内で腐ると樋が完全に詰まってしまい、そこに溜まった水の重さで樋の金物が破損したり、樋内部から劣化が進み、穴あきが起こったりする場合もある。高い位置にあるため上から覗くことは難しいので、雨の日に樋から水が流れているかを確認するようにしたい。
はしごや高所作業車を使った本格的な定期点検は、5年に1回程度、住宅を建てた建築会社や工務店などの専門業者に依頼するのが安全だ。高い場所をはしごに登って点検することは危険が伴うのでやめておいた方が無難だ。
雨樋の点検・全体のやりかえ・補修工事の周期や流れ
定期点検で樋に不具合が見つかった場合の対応は、その問題の程度によって変わる。ちょっとしたひび割れが、脚立などを使えば手が届く範囲にある程度であれば、自分で補修することも可能だ。市販の防水テープを貼るなどでひび割れを固定したり、穴を塞ぐことで応急処置になる。ただ、あくまでも一時的な補修となるので、台風シーズンなどの前には交換を行うようにしたい。
樋の外れや破損の修理は、まずは建物を建てた会社に相談するのが良いが、自分で業者を探す場合には、屋根や外壁工事を行っている業者に相談するのが良いだろう。は、オーダーメードの銅製の樋などで、建てた業者に連絡が取れない場合は、板金専門業者に依頼するのが良いだろう。
樋の一部の補修であれば、スライダーはしごや高所作業車を使い補修することが可能だ。樋の不具合が、全体的な劣化が原因の場合は、足場を組んで全部やりかえを行った方が良い場合もある。一般的な塩化ビニルの樋でも20年以上は耐用年数があるので、何度目かの屋根や外壁塗装工事のタイミングで行うのが良いだろう。色褪せや見た目の劣化が気になる場合は、部材によっては塗装を行うこともできる。
樋工事の費用の目安と材料による価格の違いについて
定期点検で樋に不具合が見つかった場合の対応は、その問題の程度によって変わる。ちょっとしたひび割れが、脚立などを使えば手が届く範囲にある程度であれば、自分で補修することも可能だ。
市販の防水テープを貼るなどでひび割れを固定したり、穴を塞いだりすることで応急処置になる。ただ、あくまでも一時的な補修となるので、台風シーズンなどの前には交換を行うようにしたい。
樋の外れや破損の修理は、まずは建物を建てた会社に相談するのが良いが、自分で業者を探す場合には、屋根や外壁工事を行っている業者に相談するのが良いだろう。オーダーメードの銅製の樋などで、建てた業者に連絡が取れない場合は、板金専門業者に依頼するのが良いだろう。
樋の一部の補修であれば、スライダーはしごや高所作業車を使い補修することが可能だ。樋の不具合が、全体的な劣化が原因の場合は、足場を組んで全部やりかえを行った方が良い場合もある。
一般的な塩化ビニルの樋でも20年以上は耐用年数があるので、何度目かの屋根や外壁塗装工事のタイミングで行うのが良いだろう。色褪せや見た目の劣化が気になる場合は、部材によっては塗装を行うこともできる。
樋の部分修繕の費用
樋が部分的に破損したり外れたりの場合は、その部分だけを交換することは可能だ。ただ、雨樋を部分交換する場合は、今設置されている樋に合うものを入手できることが必要となる。
取り付けから長期間立つ場合には、部材自体が廃番となっている可能性もある。形状の合うものがなければ、樋の一部の破損であっても、すべて取り替えることになる。
下記は、樋の部分交換ができる場合の費用の目安。部分修繕の場合、部材のmあたりの単価と集水器や金物などの部材の個数の合計で算出されることが多い。
【塩ビの半丸型の樋の部分修繕費用の目安】
・軒樋の取替工事費用(材料費込み)
3,500円/m~5,000円/m
・縦樋の取替工事費用(材料費込み)
2,500円/m ~3,500円/m
・控え金具取替工事費用(材料費込み)
竪樋用600円/ヶ所~
軒樋用800円/ヶ所~
・集水器の交換費用(材料費込み)
3,000~8,000円/ヶ所
・廃材処理費
10,000円~
平屋の屋根や1階下屋の軒樋の修繕なら、脚立などで作業できる。2階部分の軒や高所部分の縦樋の修繕の場合は、高所作業用のはしごやスライダーを使用する必要がある。
また、修繕範囲が広い場合は、作業効率を考え作業足場を組んで作業を行う。その場合は上記の施工費用とは別に5,000円から30,000円程度の費用がかかる場合がある。
平屋の屋根や1階下屋の軒樋の修繕なら、脚立などで作業できる。2階部分の軒や高所部分の縦樋の修繕の場合は、高所作業用のはしごやスライダーを使用する必要がある。
また、修繕範囲が広い場合は、作業効率を考え作業足場を組んで作業を行う。その場合は上記の施工費用とは別に5,000円から30,000円程度の費用がかかる場合がある。
建物全体の樋をやりかえる場合の工事費用
経年劣化や破損箇所が多い場合または交換用の部材が入手できない場合は、樋の全面やりかえ工事となる。その場合も、部分修繕工事と同様に、各部材の長さから積算を行い、その費用に建物全体に設置する足場費用を追加して算出する。
足場を設置する費用は、一般的に600円/㎡~1,000円/㎡となる。
延床面積30坪程度の一戸建ての雨樋をやりかえ工事した場合の参考工事費用は以下のようになる。
【延床面積30坪の一戸建て雨樋工事】
(軒樋50m+竪樋40m)の参考工事費費用(塩ビ丸樋75mmの場合)(消費税別)
軒樋部(部材・金物共) 50m × 3,500 = 175,000円
集水器 5ケ所 × 3,000 = 15,000円
竪縦部(部材・金物共) 40m × 2,500 = 100,000円
既存樋撤去処分費 一式 35,000円
足場設置費用 200㎡× 600 = 120,000円
合計 445,000円
上記は、サイズが75mmの場合の費用の目安となる。樋の幅には、100mm・105mm・120mmなどがあり、同じ材質でも幅が広くなると価格が上がる。
また、形状で言えば、半丸樋より角樋の方が高くなる。集水器は、デザイン性のあるものは価格が高くなる。その他部材、飾りなどを含めた価格比較になる。
見積もりに記載がなければ、材料費込みの工事単価には、継手部材や控え金具、接着剤なども含まれることが多いが、不明な場合には聞いて確認しておきたい。
樋の素材の違いによる価格の違い
樋は、素材により部材の単価が異なるため、工事費用も変動する。塩ビよりも金属製の樋の方が高くなる。また、施工方法は大きく変わらないが、施工性の違いにより職人の手間や技術が必要な場合には、工事費用は変わってくる。
素材により使用用途が異なるため一律に比較することは難しいが、軒樋のm単価を比較することでおよその違いを知ることはできる。
【軒樋の価格比較】(m単価・消費税別)
塩化ビ(半丸樋) 500円/m~
表面処理済み塩ビ 800円/m~
ガルバリウム製 1,000円/m~
銅メッキいぶし仕上げ 1,500円/m~
銅・ステンレンレス 5,000円/m〜
アルミ(大型) 10,000円/m〜
上記の単価の違いで計算すると、一般的な塩ビと表面処理済み塩ビで比較すると、先ほど挙げた一戸建ての場合で、30,000〜50,000円程度変わってくる計算になる。
金属製の場合はその差額は大きくなるが、見た目の高級感や耐久性を考えれば納得出来る価格差となっている。特に屋根や外壁の素材としても人気のガルバリウムは検討する価値はあるだろう。
業者の選び方
上記で雨樋の工事費用の目安についてお伝えした。工事費用はあくまで目安として参考にし、さらにもう一つ行っていただきたいことがある。それは相見積もりだ。相見積もりとは、複数の業者に見積もりを依頼して工事内容や金額を比較検討することだ。
建築工事は、工事の規模がい大きい小さい関係なく、専門用語も多く使われ工事全容が分かりにくいところがある。さらに家電製品のように定価というものがないため工事の金額が妥当なのか判断するのも難しい。
中には適当な工事をして多額の工事費用を請求する悪徳業者もいるので注意しなければならない。このように優良な業者を選定するためにも相見積もりは有効的な行動となる。
相見積もりをする際に重要視していただきたいのが、金額で選ばないということだ。なぜなら、いくら工事金額が安くても適当な工事をされてしまったり、仕上がりが悪い工事をされてしまったりしては後々不具合が出て再度修理をしなければならず、結果的に高くついてしまう恐れがあるからだ。
工事を丁寧に行ってくれる業者は、見積もりに記載する工事内容が具体的になっているのが特徴だ。工事項目はまとめて記載せず一つ一つ工事項目が書かれていること、数量は一式とはせずに〇〇円/mなど単価と数量がはっきり書かれていることがポイントだ。
また、工事内容や金額について詳しく説明してくれるのも優良業者の特徴でもある。不明点や疑問があるところは遠慮なく相談し、行う工事を明白にしておこう。ここで工事について曖昧に説明したり、説明するのをしぶったりするような業者は選定から除外する方が無難だ。
樋の修繕・交換工事の手順
雨樋工事は高所作業となる。工事も雨樋の勾配を見て設置しなければいけないため熟練された施工技術を要する。このため雨樋工事をDIYで行うのはおすすめできない。
しかし、どのように雨樋工事がすすめられていくか把握しておくと業者を選ぶ参考となるため、工事の流れについてご説明していきたい。
【雨樋工事の交換の流れ】
1:仮設足場の組み立て設置および養生ネット設置
2:既存雨樋の撤去
3:支持金具の取り付けおよび取り付け部コーキング防水処理
4:軒樋・縦樋のカットおよび取り付け(集水器の設置含む)
5:排水確認
6:仮設足場の撤去
7:完成
雨樋工事の重要なところを下記に記す。
①勾配が取れていること
②継手が隙間なく接着されていること
③固定金具の取り付け時にできる穴にコーキングを充填して防水処理がされていること
④屋根から流れる雨と軒樋の位置が適切であること
上記4点が雨樋工事の重要なところだ。
①の雨樋の勾配が取れていない場合、樋に集まる雨が流れず雨水が溜まってしまい樋から溢れてしまう(オーバーフロー)のだ。
②の継手に隙間がある場合は、水漏れを起こす。
③のコーキングの防水処理は、固定金具を取り付ける時に外壁に穴を開けるため、コーキングで隙間を埋めておかないと外壁の中に水が侵入し、柱や梁などの木部を腐食させてしまう恐れがあるのだ。
次に④の軒樋の位置についてだが、適切な位置に設置されていないと、屋根から流れてくる雨水が雨樋を飛び越えて落ちてくるのだ。これでは雨樋の役目が果たされず意味がないので、屋根と軒樋の位置が適切であるか確認することが重要となる。
雨樋工事の手順の通り、工事を行うには仮設足場の設置が必要だ。足場の設置は金額もかかるため雨樋工事のみ行うよりも、同じ足場が必要となる屋根の葺き替えや外壁塗装も一緒に行うことをおすすめしたい。同時に行うことで足場の設置が一度で済み、工事費用の節約にもなるからだ。
修繕時に採用したい樋のオプションアイテム
経年劣化以外の何らかの原因により樋が破損し修繕工事を行う場合、破損部分を直すだけでなく、その発生原因に対処できた方が再発防止になる。落ち葉による樋の詰まりや積雪による樋の破損などを防ぐアイテムや簡単に設置でき節水対策になる雨水貯留タンクを紹介したい。
落ち葉止め/落ち葉よけ
自然に囲まれた場所や隣家に大きな木がある場合などでは、落ち葉が徐々に入り樋の詰まりの原因になる。特に隣家から飛んでくる落ち葉は対処しにくい場合も多い。定期的な清掃を業者に依頼するには費用がかかるし、自分で直すには、高所作業が必要となり危険が伴う。そんな場合には、予防策として樋の上にメッシュの金具を取り付けることで落ち葉の入り込みを防ぐ方法がある。軒樋の中に円筒状の樹脂を入れるタイプもある。
積雪対応軒樋カバー
https://sumai.panasonic.jp/amatoi/kanren/lineup/maruchi.html
軒樋の上にカバーを被せることで、屋根に積もった雪が樋に入り込むことを防ぐ。対応する軒樋であれば取り付けが可能。雨水は軒カバーと樋の間から流れるようになっているので、積雪がない夏でも軒カバーを脱着する必要はない。
雨水貯留タンク
縦樋に連結するだけで樋から流れてきた雨水を貯めることができるのが雨水貯留タンク。貯めた水は、庭の草花や家庭菜園の水やりに最適。節約&エコに役立つアイテムだ。
保険適用で樋の修繕工事が実質0円で行える場合も
台風で樋に損害が発生。そんな時に、保険適用で修繕工事費用が実質ゼロ円にできる場合がある。突発的な暴風雨や台風、積雪などによる自然災害による被害は、問題なく火災保険が適用されるため被害のほとんどが補償される。
下記の事例では、台風による風災により屋根、雨樋、カーポートに損害が発生。その結果室内に雨漏りも発生。それらの被害に対し保険が適用され、結果的に75.8万円もの工事費用を保険金でカバーすることができた。
「台風、竜巻、雪害などで実際に下りた保険金額を公開!」
https://shufukulabo.com/sizensaigai
金自然災害で樋が破損した場合には、火災保険が適用できるか必ず確認するようにしたい。
まとめ
樋には、屋根、外壁と共に雨から建物を守る働きがあることが理解できたと思う。樋の不具合を放置することは建物の劣化を早めることに直結する。
樋には形状や素材など様々なものがあるため、修繕の場合には、樋の種類を知ることが間違のない修繕につながる。樋全体をやりかえる場合には、新しい素材や耐久性のある素材も選択肢に入れることで、メンテナンスコストを抑えることができる。
落ち葉よけに適した形状の樋や積雪に強い樋など、不具合や破損の原因を防ぐ機能性タイプに交換すれば樋のトラブルの再発を防ぐこともできる。様々な樋の種類を知り、住まいをしっかり守れるようにしたい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。