塗装は見た目の問題で、気にしなければ痛みを直さなくても良いと、考えているなら非常に危険だ。
塗装は保護の役割を担っており剥がれなどの劣化を放置すれば、フローリング本体に深刻な損傷を招く。
そこで高額なフローリング補修が必要になる前に、DIYで簡単に塗装を行い、保護を復活させる方法を、建築のプロである一級建築士が詳しくご紹介する。
毎日人が歩き摩擦や荷重のかかるフローリングは他の場所より劣化が早いため、今回の記事を参考に迅速な対処をお勧めする。
この記事読むことで理解できること
見た目だけではない塗装の役割
フローリングの表面に施されている塗装は、決して色付けのためだけにある訳ではない。
住人やペットなどの摩擦や荷重、湿気や温度変化、紫外線から振動まで、塗装はあらゆる負荷からフローリングを守ってくれている。
これが経年劣化や損傷で保護力が失われているとしたらその部分は裸同然であり、傷は付きやすく劣化スピードが一気に上昇することになる。
もし塗装が落ち下の素材が露わになっているのを発見したら、緊急事態であると捉え大至急補修を行うようにして欲しい。
フローリングを塗装するDIY方法
フローリング塗装はDIYにおいて決して難しい類のものではない。
道具のほとんどがネットやホームセンターで入手可能であり、簡単でしかも安価にフローリングの保護を復活できる手段だ。
ここではその塗装のベーシックなDIY方法と、フローリングの素材に応じた塗料の種類をご紹介する。
DIY塗装で用意するもの
・ワックス落とし
・ヘラ
・ハケ
(小さな範囲や細かい凹凸のある場所、壁際を塗る際に使う)
・ローラーやコテバケ
(部分補修なら不要だが、広い面積を塗るならムラなく楽に塗れる)
・受け皿
・サンドペーパー
・マスキングテープ
・マスカー
(壁や家具の養生が必要な場合に使う)
・手袋
(なるべくピッタリしたサイズが作業しやすく、古くなった台所用などでも良い)
・塗料
塗料の種類を知ろう
使う塗料はフローリングの素材によって変わるため、まずご自宅が薄くスライスした木板を重ねた複合フローリングなのか、一枚の木の板で作られている無垢フローリングなのかを確かめよう。
さらに無垢フローリングでも表面が無塗装のものと、塗装やUVコーティングなどが施されているものがあり、その仕上げを確実に把握する必要がある。
その上で以下を読み進めて頂き、適切な塗料を購入してほしい。
ニスとウレタンの違い
木材用の塗料ではニスとウレタン塗料の名をよく聞くが、2つには大きな違いがある。
まずニスは素材の表面に作る膜が柔らかく傷が付きやすいため、主に木工作などの仕上げに使われ、フローリングにはあまり用いない。
中にはフローリング用のニスもあるが、次に紹介するウレタン系より保護性能は一段落ちる。
一方ウレタン塗料は保護膜が硬いため傷がつきにくく、耐用年数が長い上に耐水性も併せ持つという優秀な塗料だ。
ただし乾燥後にツヤが出る商品が多いため、マットな質感のフローリングに塗る際は商品を厳選する必要がある。
商品によっては床用ニスやフローリングニスと表記されている場合もあり混乱してしまうが、必ずフローリング塗装に使えるか確認の上で購入しよう。
無垢フローリングならオイルステイン
無垢フローリングはウレタン塗料を使うこともできるが、仕上がりにツヤが出るため無垢の質感が大きく変わってしまう。
これを避けるためオイルステインという浸透性の塗料があり、保護性能は若干ウレタンより落ちるが、表面の質感が変わらないため無垢にこだわりのある方ならお勧めだ。
ただし無垢フローリングで注意をして欲しいのが、表面に色付け塗装やUVコーティングがされている場合だ。
これらは施工をした業者独自の方法で塗装やコーティングされているものが多く、安易にDIY塗装を行うと変色などを起こす可能性がある。
何かしらの表面処理がされた無垢フローリングの場合は、専門業者へ相談し適切な方法で塗装をしてもらうようにしよう。
ペンキと間違えない
ペンキとは植物油を主成分とした合成樹脂ペイントであり、ウレタン樹脂やシリコン樹脂などを使ったいわゆる「塗料」とは厳密には別のものである。
過去の日本では建物の様々な箇所で良く使われたペンキだが、「塗料」に比べ耐久性や保護性能などが劣るため、現在ではクロスの上塗りなどなるべくコストを抑えて広く塗りたい場面で使われる。
万一フローリングに塗ってしまうと剥がれるのが早く、塗料が足に付くような事態になってしまうため、間違って購入しないよう注意しよう。
塗装の工程解説
ここからは具体的な塗装の作業工程を解説する。
DIYに不慣れな方は時間をしっかり確保し、それぞれの工程を丁寧に行うことを心がけて欲しい。
①ワックスを取り除く
フローリングに古いワックスが残っているようならしっかりと取り除く。
市販のワックス落としを使いながらはがしヘラでこそぎ落とし、その後丁寧に水拭きをして乾燥させる。
②研磨作業
表面に凹凸やザラつき、ささくれなどがあるようなら、塗装の前にサンドペーパーで研磨を行うと仕上りが綺麗になる。
初めは120番を使い荒削りで平坦にし、仕上げに240番で磨きをかける。
③補修を行う
この段階でまだ目立つ傷などがあるようなら補修をする。
特に凹みや剥がれは塗装が終わって全体が綺麗になると急に目立つようになるため、面倒がらずにしっかり直しておこう。
以下の記事で各種の傷の補修方法をご紹介しているので、参照して欲しい。
「フローリング傷の直し方!DIY法から業者費用相場まで全て公開!」
https://shufukulabo.com/repair-scratches-on-flooring
④清掃
削りカスが残らないよう掃除機をかけ、しっかりと水拭きを行った後に乾燥をさせる。
この乾燥具合で塗料ののりが変わるので、天候が悪い日は避けた方が良いだろう。
⑤マスキングと養生
削った箇所の周りにマスキングテープを貼り、塗料がはみ出さないように養生をする。
壁際であったり重くて動かせなかったりする家具のそばならマスカーで養生をしよう。
⑥塗装をする
塗装の基本は2度塗りである。
最近は1度塗りでも構わないと謳われている塗料もあるが、それでも薄く2度塗りした方が、仕上がりが圧倒的に綺麗だ。
1回目と2回目で空ける時間は塗料によって異なるため、説明書きをしっかり確認しよう。
塗り終わりはハケなどを止めずに、飛行機が離陸するように塗りながら床から離すときれいになる。
その他の塗り方のポイントは以下の通りだ。
・出口から遠い方から板目に沿って塗る
・何度も往復させない
・厚塗りしすぎないよう注意
・手直し塗りは途中ではせず乾燥してから
⑦マスキングテープを剥がす
塗装が終わったら塗料が乾ききる前にマスキングテープを剥がす。
乾燥してから剥がすと一緒に塗料も取れてしまうことがあるからだ。
もし乾燥が進んで塗料がつられてしまうようなら、カッターで切りながら剥がすと良い。
その後しっかりと乾燥すれば作業は完了だ。
塗装のテクニックと注意ポイント
ここで塗装のケース別にいくつかテクニックと注意して欲しいポイントを簡単にご紹介する。
塗装は塗料の種類や道具、塗る方法など非常に多くの手段が存在するが、まずは上記の基本をしっかり習得してから、その他のテクニックに挑戦するようにして欲しい。
グレーと白でシャビー加工
わざと劣化したような仕上げにするのがシャビー加工で、新品の綺麗さではなくアンティークな味わいを意図的に出す塗装方法だ。
まずグレーで下塗りをして十分に乾燥させた後、白や明るい色をハケで荒くぬっていく。
この際塗料は薄めずハケに少しだけ付けるようにして塗ると、下のグレーがかすれて劣化のように見える。
ある程度塗装に慣れ、床一面を塗り直すようならチャレンジしてみたらいかがだろうか。
スプレー塗装のメリット・デメリット
スプレーは均等にムラなく手軽に塗装を行えるメリットがあるが、一方で周りに塗料が飛散してしまう恐れがあり、また広い面積だとコストが割高になるという欠点がある。
特にしっかりと膜を作るために重ね塗りを繰り返すと、1本ではあまり広い面積は塗れないため、限られた小さな範囲限定と考えた方が良い。
また入り組んだ箇所などは養生を含めると圧倒的にハケ塗りの方が楽であり、今後も塗装をする可能性があるならハケやローラーでの塗装を習得した方が良いだろう。
こんな場合は専門業者へ
DIYは安価に済む一方で失敗のリスクが常にあり、また残念ながら仕上がりはプロの技術には遠く及ばない。
そこでどちらを選べばよいか迷った時のために、いくつか判断の目安をご紹介したい。
ただしぜひ知っておいて頂きたいのが、DIYで失敗や不満足な結果になってから専門業者へ依頼をすると、自分で行った補修を一旦取り除く手間代がかかる点だ。
リスクがあるなら初めからプロへ任せた方が安く済む、ということも考慮して判断をして欲しい。
広い面積を塗装する場合
広い面積を塗装する場合、工程で挙げた研磨作業は相当な労力を必要とする。
不慣れな体勢で地道に力を入れ続ける研磨は、身体に大きな負担をかけ翌日以降の日常生活に支障を来す恐れもある。
研磨をせず上塗りを考える方もいるかもしれないが、新たな塗装が剥がれやすくなる上に、古い塗装の色が上の塗装面に現れ、非常に汚らしい仕上がりになる可能性もある。
また塗装の直前に行う補修も広い面積で箇所数が多いようだと、新たな塗装をしてもまだらのように透けて見えてしまうことも考えられる。
これらの労力やリスクを考慮すると、部分的な塗装以外は専門業者へ任せた方が現実的と言えるだろう。
補修跡がわからないようにしたい場合
例え小さな面積でも仕上がりの綺麗さを重視するなら、やはり専門業者へ依頼した方が間違いない。
塗装はフローリングの材質や損傷具合によって染み込み具合が変わるため、DIYでは同じ塗料を使ってもどうしても色違いが出来てしまう。
そしてさらに難しいのが周りの元のフローリングと同じ色ツヤに仕上げることだ。
これには豊富な経験による色作りやツヤ調整の技術が必要であり、この後ご紹介する行動な技を持った補修屋のように、補修跡がわからないように塗装することはDIYでは不可能だ。
人を通したり毎日目にしたりするような場所なら、プロの技に頼った方が圧倒的な満足感を味わえるだろう。
割安に塗装するなら補修屋がお勧め
もしプロの補修を依頼するなら、補修屋という専門業者がお勧めだ。
補修屋とは住まいのあらゆる場所にできた表面的な損傷を、高い技術と豊富な経験で完全に消し去ってしまうリペアのプロフェッショナルだ。
よく聞くリフォーム業者の場合、元が建築会社であるため大きな工事を得意としており、フローリングの劣化は張り替えなど高額な工事に発展しがちだ。
一方で補修屋の場合は、損傷した部分に絞りピンポイントで作業をするため、手頃な価格で傷を消し去ることができる。
しかも床だけに限らずドアや壁、玄関など様々な場所の補修に対応できるため、一度の依頼で普段気になっている傷をまとめて直してもらえるメリットも持っている。
以下に補修屋の仕事振りを紹介した動画があるのでご覧頂き、その高い技術を確かめてみて欲しい。
補修屋を選ぶ際の注意点
補修屋に依頼する際に気をつけて頂きたいのが、どの補修屋でも傷を消し去る技術と幅広い対応力を持っている訳ではないという点だ。
補修屋を名乗る者の中には他の建築の仕事をしている職人が小遣い稼ぎで行っているケースもあり、専門家として取り組んでいる補修屋とは腕に雲泥の差がある。
せっかく費用のかかる専門業者へ頼んでも、DIYと大差ない仕上がりになる恐れさえあるのだ。
こういったトラブルを避けるには、例えば自社サイトで実際の補修事例を画像付きで紹介しているなど、その技量を目で見て確かめられる補修屋を選ぶようにしよう。
再塗装と補修の技術費用相場
ここでは参考に補修屋の塗装や部分補修の技術費用相場をご紹介する。
ただし損傷の程度や広さによって金額が増える場合もあり、また材料を新たに取り寄せる費用や出張費などは別途となる点はご了承頂きたい。
損傷の写真をメールで送れば無料で見積もりをしてくれる補修屋もあるので、正確な金額を知りたい場合は、一度依頼してみると良いだろう。
修復内容 | 費用相場 | 備考 |
研磨と再塗装 | 2,500円〜/㎡ | 小面積の場合単価アップ |
薄い擦り傷 | 15,000円〜 | |
凹みや削れ | 25,000円〜 | |
ひび割れ | 25,000円〜 | |
表面の剥がれ | 40,000円〜 | |
小さな変色や日焼け | 20,000円〜 | 表層処理のみ |
シミやカビ | 30,000円〜 | 表層処理のみ |
火災保険で塗装の出費を抑える
補修を専門業者へ頼みたいがやはり金額がネックだ、という方はぜにご自身が加入している火災保険を確かめてみて欲しい。
現代の火災保険は火事だけでなく台風や竜巻による自然災害、あるいは盗難被害など、住宅のあらゆる損傷を補償する総合保険になっている。
今回のフローリングの損傷も条件が合えば、その補修費用を補償してもらえる可能性がある。
ここでは具体的にどういった損傷が補償されるのか、そして保険を利用して補修を行う場合に依頼する業者の選び方についてご紹介する。
塗装で火災保険が利用できる条件
フローリング補修が補償される条件として、まず損傷が「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」に該当する場合が挙げられる。
これはうっかり物を落として傷つけてしまったり、子供がおもちゃを投げつけて破損してしまったりなど、突然発生した損傷を指す。
この場合は損傷が発生した日時がはっきりしている必要があり、さらにその部分の機能に支障が出ていると補償されやすい。
逆にいつの間にか自然に傷んでいたような経年劣化の場合は対象外となるので、注意をして欲しい。
あるいは「風災」と呼ばれる、台風や竜巻などによる屋根の破損も保険の対象となるが、その際に起きた雨漏りで床が濡れて発生した、変色や反りなども補償される可能性がある。
いずれも保険によって細かな条件の違いがあり、また自己負担額の設定がされている場合もあるので、契約時の書類などで詳細を確認するようにして頂きたい。
火災保険で塗装する場合の業者選び
火災保険を利用して補償を受けるには、保険会社に損傷の原因や現状を正確に書類で伝えなければならない。
しかしこれが不慣れな専門業者にとっては非常に難しいものであり、最悪書類の不備で保険利用を却下されてしまうケースさえある。
このため、依頼する専門業者の保険申請の経験値には、十分に注意しなければならない。
当たり前だが補修の腕と損傷の原因を正しく伝える技術は全く違うものになる。
せっかく補償対象となる損傷なのに、業者の経験不足で保険が使えないのでは、何のために保険料をこれまで払ってきたのかわからない。
保険を利用して補修を行う際は、申請経験の豊富な専門業者を選ぶようにしよう。
まとめ
フローリング塗装の劣化は、その下のフローリング本体の急速な状態悪化を招くため、大至急再塗装などをすべき事態である。
塗装と聞くと難しく思うかもしれないが、今回は比較的簡単なDIYをご紹介しているので、ぜひ積極的に挑戦してみて欲しい。
ただし塗装範囲が広かったり、再塗装がわからないよう直したりしたい場合は、専門業者への依頼をお勧めする。
失敗すればそれまでのDIY費用が無駄になるばかりか、DIY塗装を取り除くための余計な手間代もかかることもあるからだ。
最終的な出費と仕上がりを重視するなら、補修屋のような傷を消しされるプロフェッショナルに依頼することを、ぜひ検討してみよう。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。