フローリングにできた傷や削れを、気にしなければ良いと放置していると非常に危険だ。
床の損傷は確実に悪化する性質を持ち、修理費が増えていくだけでなく通る人に怪我を与えることさえあるのだ。
そこで今回はフローリングの傷を素早く安価に直すDIY方法と、専門業者に依頼した場合の費用相場を、建築のプロである一級建築士が詳しくお伝えする。
また賃貸ではどこまでの傷が費用請求されるのか、そして賃貸でDIYを行う危険性についてもわかりやすく解説している。
記事の最後にご紹介している火災保険を利用した自己負担費を抑えるテクニックと併せて、問題解決に役立てて欲しい。
この記事読むことで理解できること
フローリングの傷を放置すると危険な理由
フローリングの傷をそのままにしておくと症状は悪化し、いざ補修となった時には費用が上がってしまうことになる。
傷の周辺に人が通ることで摩擦や重量が加わり、ささくれとなったり割れが発生したりと、確実に状態は悪くなっていくからだ。
さらに損傷部分が鋭利な状態になっていれば人に怪我をさせることも考えられる。
大人が足の裏などに裂傷を負うだけでなく、小さな子どもや赤ん坊なら大きな怪我につながる可能性がある。
特にハイハイをしている赤ちゃんならどこに刺さってしまうかわからず、取り返しのつかない事態になりかねない。
多くのリスクを含んだフローリングの傷は、見た目を我慢すれば良いと対処を後回しに決してしないで頂きたい。
補修を依頼するといくらかかるのか
フローリングの傷は早急に直すべきだと理解できても、やはり気になるのは費用だろう。
しかも小さな傷なのに業者に依頼したら非常に高額だった、という意見もネットでは多く見受けられる。
そういった事態を避けるためにもまずは一般的な相場を知っておくことが大切だ。
小さめの凹みや傷なら1箇所およそ30,000円〜、深めの割れや剥がれなら50,000円〜、シミなら大きさにもよるが40,000円〜といったところが平均だろう。
もちろん損傷の大きさや程度によって前後するのだが、それ以上に気をつけて頂きたいのが同じ傷の補修でも依頼先によって金額が変わることだ。
特にリフォーム会社や賃貸の管理会社などに頼むと高額になりやすく、依頼先を検討する際は複数から見積を取るなどして慎重に判断するようにしよう。
DIYでかんたんに格安修理する
DIYによる補修は最も安価で素早い対処であり、しかも一般の方でも行いやすい補修キットが豊富に発売されているため、積極的にトライしてみるべきだろう。
そこで傷の種類別に代表的なキットでの補修方法をご紹介しよう。
DIYを行う上で最も大切なのはしっかり時間を確保することだ。
失敗の多くが途中で時間が足りなくなったり飽きたりして、作業が雑になることに原因がある。
丸一日かかっても良いくらいのつもりで腰を据えて丁寧に取り組んで欲しい。
浅い擦り傷は補修クレヨンで消す
フローリングの表面にできた浅い擦り傷は、クレヨンタイプの補修キットで簡単に直すことができる。
道具はホームセンターやネットで簡単に手に入り手間もかからないので、初心者の方にもお勧めだ。
手順
①凹みや削れ部分を布で拭いて汚れやゴミを取り除く。
②クレヨンの先をドライヤーで温め柔らかくし、傷に対して直角に交差するように塗り込む。
③はみ出たところはヘラで削り取り、最後に柔らかい布で優しく磨いて完了。
凹み削れは加熱タイプ補修材で直す
少し深めの凹みや削れはしっかり補修材を盛る必要があるため、熱で溶かしながら練り込むタイプのものを使う。
擦り傷より若干手間はかかるが決して難しくはなく、一度行えば慣れてしまうので今後のためにも覚えておくと良いだろう。
手順
①凹みや削れ部分を布で拭いて汚れやゴミを取り除く。
ささくれやバリがあればカッターで削り取っておく。
②補修クレヨンを電熱コテで溶かしながら損傷部分に少し盛り上がるくらいに練り込む。
③耐熱保護ジェルを損傷部分とその周りに塗っておく。
コテが直接触れると焦げる場合があるので広めに塗る。
④電熱コテでクレヨンの盛り上がりを溶かしながら奥から手前に均していく。
⑤ヘラで周囲に残ったクレヨンを削り取る。
⑥色違いが気になるようなら補修ペンで色付けをし、柔らかい布で優しく磨き完了。
周りと艶に差があるようなら市販のワックスをかけると目立たなくなる。
無垢フローリングはアイロンで補修
木の一枚板でできている無垢フローリングにできた凹みは、家庭にあるアイロンで修復することもできる。
水分を含ませ熱を加えると膨張するという木が持つ性質を利用するのだ。
ただし薄い木の板を重ね合わせた複合フローリングは、表層の木板が剥がれてしまう恐れがあるので、必ず無垢フローリングであることを確認してから行って頂きたい。
さらに、無垢材の中でもウレタン塗装やUV塗装を施している場合は、塗装が剥げることがあるため、コーティング系塗装の場合は控えていただきたい。
手順
①スポイトなどで凹み部分に水を垂らし染み込ませる
②染み込まないようなら針で凹みに小さく穴を何箇所か空ける。
③5分程度経過したら水で絞った薄い布を凹みに被せ、アイロンを充てる。
充て過ぎたり温度が高すぎたりすると変色する場合があるので、低めの温度から試し様子を見ながら行おう。
④冷えても凹みが残っているようなら前述のクレヨン補修材で埋める。
賃貸のフローリング傷は高額請求の可能性
賃貸のアパートやマンションでは退出時に管理会社による傷などの点検が行われ、場合によってはその補修費用が入居者に請求される。
これが小さな傷でも高額になるケースもあり、ネットなどではこの金額が不当なのではという声が常に聞かれる。
しかしこの補修費は事前に金額がわからず、補修後に請求が来るため例え高額でも支払いを避けることは難しい。
そこでまずどういった費用が借りた側の負担になるのか、そしてなぜ賃貸の補修費は高額なのかを知っておくようにしたい。
自然な劣化の傷以外は入居者負担
まず通常の使い方をしていても当然に発生する損傷は、原状回復の責任を負うことにはならない。
例えばタンスを置いてあった場所の床の日焼け跡や、重い家具や家電を置いておいた場所の足の跡などだ。
一方で入居者の不注意でできた傷、例えば物を落としたり引っ越しなどで家具を引きずってできてしまったりの傷などは、原状回復の責任が発生し入居者負担で補修を行われる。
傷の大きさによって見逃されることがあるかもしれないが、ぱっと見てわかる傷はほぼ確実に請求されると考えておいた方が良いだろう。
賃貸の補修費は相場よりも高額になる
実は賃貸の場合は直接業者へ補修を依頼した場合より割高になる傾向がある。
なぜなら補修を依頼する貸主側には、どうせ費用は入居者が払うという意識があるため、補修業者から出された金額を、そのまま値段交渉もせず了承してしまう。
さらに補修する業者にしても安くする必要のない仕事のため、初めから割高な金額設定にしているところも多い。
その上管理会社が中間マージンを上乗せするケースさえあり、冒頭で紹介したような金額相場より2〜3割ほど高額になる恐れがあるのだ。
これを避けるために自分で直したくなるところだが、賃貸ではDIYこそが最も出費の多い選択肢となってしまう。
この危険性については次項で詳しくお伝えしたい。
専門業者へ依頼すべき3つの理由
DIYによる格安な補修が有効な一方で専門業者へ依頼すべきケースも存在する。
確かに自分で直せば費用のメリットは大きいが、求められるレベルの仕上がりにならなければ、かけた費用や時間が無駄になってしまうだろう。
特に賃貸の場合は高額な修理費を避けるためにDIYを行っても決して安くなる訳ではなく、むしろ多額な出費を招くことになりかねない。
ここでは持ち家や賃貸で決してDIYがお勧めできない部分を解説しておきたい。
DIYでは補修跡を完璧に消せない
まずDIYの大前提として、どんなに懸命に取り組んでも補修した跡がはっきりとわかる仕上がりになってしまうことは承知しておいて欲しい。
残念ながら元のフローリングと全く同様に補修跡を消し去るには、高度な技術と多くの経験、そして絵心にも通じるセンスが必要となり、いくら器用な方でも相当な場数を踏まないと完璧に仕上げることは難しい。
あくまで傷が目立たない程度にするつもりなら問題は無いが、もし友人などを呼んだ時でも恥ずかしくない仕上がりを求めるなら、専門業者の中でも補修屋のような高度な技術を持ったプロに任せるべきだろう。
DIYは跡が残っても構わないという場所に限定する方が後悔はせずに済むだろう。
全体がボロボロだと手に負えない
フローリングの一部ではなく、全体的に広く損傷があるようならやはり専門業者に任せたい。
広範囲に損傷が多いとDIYでは補修跡がまだらになり、非常にみすぼらしい姿になるのは確実だ。
さらに損傷が多いということはフローリング自体が傷んでいる可能性もあり、補修しても次々と割れや反りが発生する可能性もある。
この状況判断は一般の方では難しく、もし劣化を見過ごしたまま表面的なDIYを行っても、直後にフローリングの張替えとなればそれまでの努力は水の泡だ。
あまりに傷や凹みが多いようならDIYでは手に負えないため、一度専門業者に状態を見てもらいそのまま補修を任せた方が間違いは無いだろう。
賃貸のDIYは決して安くならない
賃貸の退出時補修が割高なのは既にお伝えした通りだが、そこで安易にDIYに手を出してしまうのは非常に危険だ。
なぜなら賃貸の補修こそ高度な仕上がりを求められ、安易なDIY補修の仕上がりでは管理会社の高額補修を避けられないからだ。
部屋を貸す側が最も避けたいのは次の入居者が入らない空室であり、内見に来た人が敬遠したくなるような見た目の悪いDIYは全く意味を成さない。
中途半端な仕上がりの補修は無視され、貸す側での補修が行われるだけでなく場合によってはDIYの補修を剥がすための手間代を上乗せされかねない。
費用を安く済ませたいのであればなおさら賃貸ではDIYには手を出さず、専門業者へ依頼するべきだと考えて欲しい。
プロの補修を手軽に行うなら補修屋がお勧め
補修をプロに依頼するなら、その中でも補修屋と呼ばれる専門業者がお勧めだ。
補修屋とは家の各所表面にできた損傷をピンポイントで補修するリペアの専門家で、様々な素材と損傷の種類に精通している。
しかも損傷部分に絞って作業するため比較的安価で短時間での補修が可能であり、日頃から気になっている傷や凹みがあれば気軽に依頼できるだろう。
まずはその補修屋の仕事の一例を紹介した動画があるので、参考にご覧頂きたい。
他にも補修の依頼先としてはリフォーム業者が思い浮かぶが、こちらはいわゆる工務店が工事を行うため、部分的な補修よりフローリングの張替えなど大掛かりな工事になりやすい。
確かに完全に損傷は消せるが費用は高額になるため、なかなか気軽に依頼するというわけにはいかない。
ただしフローリングが広い範囲で傷んでいたり劣化が激しかったりなどで、フローリングの張り替えが明らかな場合は最適な依頼先と言える。
依頼先として補修屋、リフォーム業者のいずれにもメリットはあるため、補修の規模や予算に応じて使い分けると良いだろう。
補修屋に依頼する2つのメリット
フローリングの傷をDIYで直すのではなく、補修屋に依頼するメリットを2つお伝えしておきたい。
まず補修した跡がわからないという点で、補修屋とDIYでは圧倒的な差がある。
傷にパテを盛った部分と床の境目を消したり完全にフラットにしたりする技術、そして元のフローリングと全く変わらない色や柄を再現する腕は、一朝一夕のDIYテクニックでは到底かなわないだろう。
そしてもう一つは守備範囲の広さだ。
補修屋は住宅内外のあらゆる場所の傷の補修を可能としている。
壁や室内ドアはもちろん、玄関ドア、天井、キッチンの天板、洗面台の扉などなど、様々な部分にできた傷を消し去ることができる。
1箇所の傷を直す精一杯のDIYとは大違いで、もしフローリング以外にも気になる部分があるなら、一緒に依頼することで大幅な時間短縮になるはずだ。
補修キットの金額だけでなく、仕上がりの満足度やDIYのために準備したり調べたりする時間など、トータルで費用対効果の高い選択をしてはいかがだろうか。
技術費用相場
ここでは補修屋の技術費用相場をご紹介しておく。
冒頭の他の業者を含めた平均より若干だが手頃になるのがおわかり頂けるはずだ。
ただし補修の箇所数や程度によって費用は変化し、材料の新規取り寄せや出張費がかかれば別途となる。
正確な金額を知りたい場合は一度見積もり依頼をしてみると良いだろう。
凹みや傷 | 25,000円〜 |
深い割れ | 40,000円~ |
フローリングの剥がれ | 40,000円~ |
フローリングのシミ | 30,000円〜 |
安心できる補修屋の選び方
ここで注意して頂きたいのが、補修屋であればどこも同じ腕前ではないということだ。
本来補修屋には損傷や素材に対する豊富な知識と、それを実践してきた多くの経験が必要であり、それが仕上がりに直結すると言っても過言ではない。
しかし補修屋を名乗っていても腕が伴わずDIYと大差ない仕上がりの業者もいるのだ。
こういった業者を避けるには、飛び込みやポストにチラシが入っていただけのような素性の知れない業者は論外として、しっかりと実績を目で見える形で確認することが重要だ。
例えば自社サイトを持ち画像付きで補修の事例を見ることができれば、大きな判断の材料となるだろう。
くれぐれも言葉だけの「実績豊富」に惑わされないよう気をつけて頂きたい。
火災保険で費用負担を減らそう
プロの補修を依頼しようと考えてはみたものの「やはり金額がネックだ」という方は、ぜひご自身の加入する火災保険を確認してみて欲しい。
フローリングの傷で火災保険と聞くと不思議に思うかもしれないが、現在の火災保険は火事だけでなく、大雪や台風のような自然災害から盗難の被害までをカバーする住宅の総合保険になっている。
今回のフローリングの傷も保険の対象となる可能性があり、補償されれば最低限の自己負担でプロの補修を受けられるだろう。
それではどのような場合に補償されるのか、そして保険を利用して補修する場合の業者選びの注意点をお伝えする。
保険適用になるのはどのようなケースか
まず持ち家の方の場合は、加入されている火災保険に「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」という補償項目があれば、今回のフローリングの傷が対象となる可能性がある。
これはうっかり物を落としてしまったり、お子さんが遊んでいて付けてしまったりした傷を対象とする。
適用には傷ができた原因や日時がはっきりしている必要があり、床の機能に支障がある場合に対象となりやすい。
逆に経年劣化やいつの間にかできていた損傷は対象とならないので注意しよう。
賃貸の場合は入居時に加入した家財の火災保険に「借家人賠償責任担保特約」が付加されていれば、補償される可能性がある。
これは賃貸を借りている人が大家に対して損害賠償をしなければならない事態に補償されるものだ。
いずれの場合も対象となるかどうかは保険の内容や保険会社の判断によるため、加入した際の書類を確かめ、どうしても不明の場合は保険会社に直接問い合わせるか、見積もり依頼を兼ねて保険申請の実績が豊富な補修屋に見てもらうと良いだろう。
保険を使う場合は実績を確認する
保険を利用して補修する場合は依頼する補修屋を慎重に選ぶ必要がある。
前述の通り補修屋の腕も依頼先によって様々だが、それ以上に保険申請についての知識や経験は補修屋によって大きな差がある。
保険を使って費用を補償してもらうためには保険会社に損傷の原因や状態を的確に申請しなければならないが、これを不慣れな業者が行ったため折角補償対象となる損傷なのに却下されてしまうことがあるのだ。
こういった失敗を防ぐには、これまでにどれくらい保険申請を手がけてきたかが非常に重要になる。
今まで支払ってきた保険料を無駄にしないためにも、依頼の際は必ずその実績を確かめるようにして欲しい。
まとめ
フローリングの傷は早めに対処をしないと、修理費が増えてしまうだけでなく怪我の原因にもなる。
可能であればDIYで素早く直したいところだが、残念ながらその仕上がりは補修跡がはっきりわかるものになってしまう。
特に賃貸ではDIYで直しても退出時の貸主側の補修費を避けられる訳ではなく、むしろ道具代や時間が無駄になりかねない。
トータルで考えコストパフォーマンスが良く、しかも人に見せても後悔のない補修を行うなら、腕の確かな補修屋に依頼するのがお勧めだ。
火災保険を利用できればDIYよりさらに安く済む可能性すらある。
ぜひ一度見積もりを取るなどで相談してみて欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。