雨漏りが発生すると建物への被害は時間と共に広がってくため一刻を争う状況な上に、その原因を突き止めるのはプロでも困難な場合が多い。
しかしその代表的なチェックポイントを知っていれば、素早く賢い対処が可能となり被害を最小限に食い止められる。
また建築のプロである一級建築士がお伝えする、修理の金額相場や業者の選び方、見積りの見抜き方を知ることで、適切で安心な修理を行う事もできるのである。
大切な住まいが末永く健康でられるようにぜひ最後まで目を通して頂きたい。
この記事読むことで理解できること
原因不明の雨漏り発生!その時自分でできる対処とは?
雨漏りの発生にまず気がつくのは、その建物を使い、住んでいるあなただ。
突然のことも多く、予想外だろうし、原因が不明で不安になることもあるだろう。
雨漏りは、当然ながら雨が降った時しか起こらない。だから原因を探りやすいもの雨漏りが起きている時とも言えるのだ。その場で対処できることは、すぐに行ってほしい。
自分でできる対処その1:発生状況の確認と対処
最初に自分でできる対処としてビニール袋やシートを敷いて雑巾などを置き、水の染みが広がらないようにしておこう。
雨漏りが発生している箇所の天井裏に手が届くようなら、天井裏の部分にビニール袋やシートを敷いて雑巾などを置く。水を吸うと布は結構な重量になるので定期的に雑巾を取り替えることも必要だ。
天井自体は上部から吊られているだけで、重いものを乗せて置けるようなつくりにはなっていない。天井裏には重いものを置いておけないことは知っておいてほしい。
もし手が届かない位置なら部屋の雨水がしたたり落ちる場所へビニール袋やシートを敷いてバケツを置き、出来るだけ早く業者への連絡をしよう。
雨漏り発生時のはっきりした症状がわかっていた方が、その後の対処に役立つ。
だから、雨漏りが発生してしまった場合、雨水を受ける雨漏りの状況をしっかり確認してほしい。
室内から見える雨漏りが発生した場所、雨水の量など、確認し、写真をとっておくといいだろう。
また、可能であれば天井裏が覗ける場所を探し、中の状況を確認する。
部屋や廊下、あるいは収納の中に天井裏が覗ける点検口が設けられている場合もあるし、押し入れの中の天井が固定されておらず、押し上げて中を覗けるようなっている場合もある。
中の状況を見ると水が流れ落ちてきているのか、それとも水滴が染みている程度なのかを確認できる。
上記のような対処や確認をし、もし絶え間なく雨水が流れ落ちてきている状況であれば、早急に業者に連絡を取って欲しい。
最近はネット検索するとすぐに対応してくれる業者がわかるようになってきている。
ただしこの場合の修理は応急処置であることが多く、また料金も高めなので注意して欲しい。
応急処置をしてもらったらその先の修理依頼相手は後日しっかり比較検討した方が良いだろう。
自分でできる対処その2:浸入口のチェック
次に業者の対応を待つ間、雨水がどこから入ってきているか安全に注意しながら探してみよう。
当然雨漏りが発生している箇所の上部が浸入口の可能性が高い。
もし明らかな亀裂などが発見できれば詰め物をして水の浸入を抑えることができるし、事前に疑わしいところがわかればプロの素早い修理の助けにもなる。
この後、雨漏りの浸入口のチェックポイントを紹介するので、参考にしてほしい。
ただし雨漏りの真上に必ずしも浸入口があるとは限らず、天井の中の構造材、壁の中など様々なところを伝って雨水は落ちてくる。
一般の方では建物の構造も考えながら雨漏りの浸入口を特定するのは困難なのが現実だ。自分でできることは、あくまでも予想の範囲と考え必ず業者の判断を仰ごう。
雨漏りの代表的チェックポイント5つとそのメカニズム
それでは雨漏りの代表的な5つの原因箇所とそこから雨水が侵入するメカニズムを解説しよう。
ただし雨漏りの浸入口は1つとは限らず複数にまたがる事も珍しくないし、プロでさえも発見に何日もかかることがある。
自分で特定するというよりは予測を立てるためと考えて欲しい。
屋根まわり-屋根材と下地材にも注意
最も発生原因の可能性が高いのが屋根である。
日光はもとより雨風、雪、雹、など常に自然の影響にさらされている。
台風などの強風による飛来物や、時には不意の落下物もあるだろうし、屋根上に上る工事業者が原因を作る事さえある。
しかも雨漏りが発生した場合、表面的に解りにくいことも多く、その原因を発見するのが難しい場合もある。
ここでは原因となる可能性が高い箇所を解説していこう。
屋根の上は高所な上、足場も悪い。もし自身で確認する場合はくれぐれも安全に注意し、できればプロの調査を依頼して欲しい。
瓦葺き屋根/棟瓦・瓦の浮きや割れ・漆喰の割れや崩れ
屋根の三角形の尖っているところが棟と呼ばれる部分だ。屋根の斜面同士が合わせられる部分で、水平になっている。
棟瓦は、棟の部分に使う瓦で、周りと同様に焼き物でできている。
屋根の最も高い部分であり、斜面が合わさった部分を被せるように設置されている。のし瓦と呼ばれる平たい瓦を重ねている場合もあり、番線などで固定されていないとずれやすい。
素材自体は硬く耐久性も高いが、台風などでずれたり地震で割れたりして雨水が浸入する。
また、「瓦の浮き」が発生すると、そこから屋根の中に雨水が侵入する。
地震や台風、強風などで瓦が動くと、瓦の重なり部分の隙間が大きくなることがある。
瓦葺きはそもそも毛細管現象が起こらない程度の隙間を持ち、多少の動きがあることで長く屋根を守る働きをするが、隙間が大きくなりすぎると、そこから雨水が入り込むのだ。
瓦の下に防水層があるので、浮きがすぐに雨漏りに繋がるわけではないが、その防水層に劣化や施工不良があれば当然建物内に浸入してくる。
「瓦の割れ」も、雨漏りの原因となる。
原因は落下物や飛来物、地震による割れなどが疑われるが、瓦の割れは浮きよりも緊急性が高い。
瓦自体の割れは、瓦下に水が入り込む量が一気に増える。その上、ダイレクトに屋根材の下地に雨が当たる事になり、屋根材下にある防水層のアスファルトルーフィングなどを痛めやすい。
もし防水層に破れや割れなどがあれば、確実に雨漏りになると言えるだろう。
あるいは既に屋根の内部での被害が広がっている可能性もあるので、目視で割れが確認できたら早急にプロへ連絡して欲しい。
雨漏りは「漆喰の割れや崩れ」からも発生する。
漆喰は塗り壁の材料として知られているが、瓦屋根にも使われている。石灰系粘土質の材料で瓦同士の隙間を埋める詰め物として、施工されていて、雨水の浸入を防いでいる。
瓦自体の寿命は50年以上と言われているが、漆喰はそれよりも寿命が短く、10年から20年と言われているから、定期的な塗り直しも必要な箇所だ。
棟瓦の下にある面土漆喰は、雨や風当たりがよい場所な上に、材質的にも比較的ヒビが入りやすいため、地震などで割れたり、剥がれたりすることも多い。
面土漆喰は棟瓦を安定させる葺き土の上に塗られていて、そこから雨水がしみこむと、葺き土が崩れ、屋根内部に雨水が入り込みやすくなるし、瓦のズレも起こしやすくなる。
漆喰は、屋根の先端である軒先にも使われている。日本瓦は1枚1枚が波型にうねっているため、一番下の軒先では、隙間が開いてしまう。雀口と言われるその隙間にも漆喰が使われるのだ。この漆喰が割れたり剥がれたりすると、雨樋から溢れた雨水が、屋根に入り込むこともあり、雨漏りの原因となる。
スレート・トタン葺/板金・コーキング割れやサビ
屋根材がスレートの場合は棟が板金で出来ており、反ったり隙間が空いていたりすればそこから雨水が入り込む。
屋根の「コーキングの割れや剥がれ」は、起こりやすいトラブルだと言えるだろう。
屋根の板金や壁とのジョイントなど、隙間をコーキングで埋めている場合がある。
コーキングは紫外線や風雨の影響で硬化し割れたりするため、屋根材や外壁の変形、ずれなどで隙間が空いてしまうことが考えられる。
コーキング自体の劣化が早いこともあり、築年数の浅い建物で起こる雨漏りでは原因の上位に考えられる。紫外線の影響が大きいなど、場所によって劣化の速度が速い場合もあるので注意が必要だ。
しかし屋根周りのコーキングは遠目では発見しにくいので、可能性が疑われるようならプロのチェックが必要だろう。
トタン屋根の場合、「サビ」にも注意が必要だ。
古いトタン屋根など金属製の屋根材はサビで穴が空くこともあり、そこから水が浸入し雨漏りに繋がる。
今は1カ所かもしれないが、全体的な錆の進行は止められないため、次から次へと雨漏りが発生するケースだ。
長期的な安心を取るなら全体的な張替えを検討した方が良い。
屋根材下の防水層/防水シートの痛み
瓦など屋根材の下には、アスファルトルーフィングなどのルーフィングが敷かれている。ルーフィングが防水層となり、屋根材と共に2重に雨から守っているわけだ。
ルーフィングシートは、屋根全体を覆うように敷き込まれていて、雨漏りを防ぐ最後の砦とも言える。だから、ここの劣化は危険な状態だということがおわかりだろう。
経年でヒビ割れていたりすると雨水が入り込んで雨漏りに繋がる。
また屋根材が割れるような落下物や飛来物によって、一緒に傷ついてしまう場合もあるし、施工不良による隙間があったり、古い建物では施工されていなかったりする場合もある。
しかも瓦など屋根材を剥がさないとわかりにくく、地上からの目視では気付きにくいので、損傷が進行してしまっているケースが多い。
対処としては全面的な張替えがお勧めだが、一部の修理の場合でも、瓦など屋根材をはがす必要があり、範囲によっては大規模な工事になりコストもかかる。早めの対処が有効だ。
谷樋・雨樋の詰まり
谷樋は、屋根の傾斜が合流する部分の防水板金のことだ。
屋根の中で、出っ張った山折り部分ではなく、凹んだ谷折りになっている部分が「谷」と呼ばれ、屋根面の雨水が集まって来る。その雨水を板金で受け、下方に流すように施工されているのだ。
枯葉や鳥の巣などゴミが溜まってしまうと、雨水の流れをせき止めて滞留がおき、オーバーフローを起こす。その溢れた水が、屋根材の下に入り込むと雨漏りの原因となるのだ。
また塗膜が劣化してサビが発生すると、板金そのものに穴が空いてしまうため、そこから雨水が浸入することもある。
雨樋詰まりも、雨漏りの原因となる恐れがある。
雨樋に枯葉などが溜まってしまったり、大雪や大雨で屋根の先端についている雨樋が曲がったり、横に伸びる樋の勾配が狂ったりすると、雨水が溜まってしまい、オーバーフローの状態になる。そこから軒先の板金などの隙間を通って屋根の中に水が入り、浸入することがある。
自宅の庭の樹木だけでなく。近隣に林や畑があると、落ち葉や土などで詰まりやすいが、樋を上から見る機会はあまりないので気付きにくい。
雨が降っている時に下から樋を見上げると樋を流れるはずの雨水が溢れているのがわかる場合があるので、注意してみてみよう。
ベランダ-防水の劣化
ベランダは直に雨を受ける場所であり、屋根に次いで雨漏りの原因となることが多く、特に集合住宅などの場合は下の階の他人の住まいにも被害が及ぶ場合があるので要注意だ。特に、ベランダの下に部屋がある場合には注意したい。
ベランダ自体は人が入れるスペースだから、雨漏りのポイントを知って、早めの対処をしたい。
ベランダ床防水層の割れ
ベランダの床には塗装やFRPやシート防水の層が、施工されている。紫外線の影響による劣化・もしくは、硬いものを落とすことで割れるといった症状がベランダの雨漏り原因では最も多いだろう。
床の防水層の割れは、目立つ大きなものから、小さなひび割れ程度のものまであり、見慣れないと発見が遅れる。
ベランダという性質上水が溜まるものなので、そこから浸入する水は量が多く被害が大きくなりやすい。
紫外線による劣化は必ず起こると考えておこう。
笠木・手すりのコーキングの割れ
ベランダの腰壁上に被せてある金属製のカバーを笠木と呼ぶが、ここに設置してある手すりのジョイント部分や外壁へ当たっている部分はコーキング埋められており、これが劣化して割れなどの隙間ができると雨水が浸入する。
ベランダというと床にばかり目がいきやすくなかなか気付きにくい。
排水口詰まり・床の水溜
ベランダの雨水を排水管の途中でゴミなどの詰まると、逆流や溜まりが発生し劣化したジョイントなどから内部に漏水する。
高圧洗浄などで詰まりを押し出すが直らない場合はダクトをバラすことになる。
しかし配管は内部に隠蔽されている部分もあるので、詰まり箇所の発見に手間取ることも多い。
ベランダの床に水たまりができている場合は、水勾配が機能していないということだ。
ベランダ床は水をスムーズに流すために、水勾配が取られている。この勾配がしっかり機能しないと、うまく排水できず、途中で水が溜まってしまう。そして水溜り部分の防水層の割れなどから雨水が浸入する。
長時間溜まることでほんのわずかなひび割れでも徐々に雨水が浸入してしまうし、雨のたびに溜まることになり、床の劣化も早くなる。
防水シートの劣化による浮きや、下地、構造材の変形が原因となるため修理が広範囲になることもあり費用が大きくなるケースも多い。
窓まわり-窓や天窓のコーキングや板金に注意
窓周りに施工されているコーキングは10年未満でも割れる可能性が十分にあり、築年数の浅い建物の雨漏り原因に多い。
屋根と同様に自分で確認するのが難しい場所にあるので、無理をせずプロに調査を依頼した方が良いだろう。
外壁にある窓サッシのコーキングの劣化は、雨漏りの原因の一つだ。
窓の枠と外壁の取り付け部分はコーキングで埋められている。このコーキングは劣化が早く、特に南側に面したものは紫外線や熱の影響が大きく、割れも早く、大きくなる。
外壁には、通気工法の場合、通気層が壁の内部に入った水を逃がすスペースになる。通気層に入った水は自然に下に逃げていくので大きな被害になりにくいが、壁内に余分な湿気が入ることは避けた方が良い。通気層がない外壁では、壁内の防水シートの劣化が早くなり、雨水が浸入する可能性もある。
また古い建物などは防水シート自体が無い場合もあるので、より影響が大きくなる。
たかがコーキング割れとは侮れない。
サッシの枠の上下左右に施工されているが、枠が被っていて見えにくい場合もあるのでしっかり確認したい。
天窓(スカイライト)は外側のコーキングだけでなく板金や窓自体の密閉性にも注意したい。
屋根や屋上に取られた明かり取りの天窓(スカイライト・トップライト)の周りには、板金と言って金属製のカバーがあり、雨をうまく逃がすように施工されている。しかし、板金が錆びていたりめくれていたりすると雨水が浸入する。
またこの周りにコーキングがあると風雨や日光の影響を大変受けやすく、劣化も他のコーキングに比べ圧倒的に早いので要注意だ。
また開閉式の天窓の場合は枠とサッシ本体の間のパッキンが劣化して雨漏りすることもある。
外壁周り-割れやコーキングの状態をチェック
外壁の下には通常であれば防水シートがあるので、雨水の浸入を防いでくれ、すぐには雨漏りに繋がらないものだ。
ただし割れなどが発生してから時間が経っていると中の防水シートが痛んでいることもあるし、古い建物は防水シートが無い場合もある。
壁の内部に雨が入ることは、防水シートがあっても歓迎できることではなく、外壁を支える金物や下地材に影響が出流ことが多いし、壁内の結露の原因にもなりかねないので、放置せずに対処すべきと入れるだろう。
壁の内部は確認できないので、疑われる場合は窓周りなどと一緒にプロのチェックを受けた方が安心だ。
外壁の割れ
外壁の材料そのものにヒビが入ったり、割れたりすることがある。台風などの強風で、飛来物が当たったり、地震の影響で割れたりもするが、経年劣化で自然と割れることもある。
特に窓近辺や釘やビスを打っているところは、見えにくいが割れている場合も多い。
小さな割れであればコーキングなどの補修で済むが、補修跡が目立ちやすいのでタイミングが合えば外壁塗装と一緒に行うのがお勧めである。
コーキングの割れ/外壁のジョイント・換気扇周り
サイディングパネルなど外壁同士のジョイントには、コーキングが施工される。この部分も紫外線などの影響で劣化し、ヒビが入ったり割れていたりする場合がある。
緊急性は低いように見えるが内部の防水シートの劣化を早めてしまうので、なるべく早く打ち直すことをお勧めする。
こちらも外壁塗装と一緒に工事をすると費用を安く抑えられる。
換気扇フード周りや給・排気口にもコーキングが施工されている。
非常に見えにくいが換気扇の排気口フードや給・排気口の周りには、外壁との隙間を埋めるためのコーキングが施工されている。
これまでご紹介した通り、コーキングは紫外線や風雨の影響で劣化する。コーキングのひびや割れは雨漏りの原因になる。
台所や浴室の換気扇、リビングなどの給・排気口には、内部に繋がるダクトついているので、比較的雨水が浸入しやすい場所なのだ。
コーキングの打ち直しで修繕するが、換気扇が古くモーター音が大きいようなら寿命が近いのでいっそのこと換気扇自体を交換してしまうのも良いだろう。
後載せ太陽光
建物新築後に屋根や屋上に太陽光発電を載せていると、その工事の時に瓦や下地を痛めてしまい雨漏りするケースがある。
特に数年前の買取価格が高かったころは一気に業者が増え、粗悪な工事業者も多かった。
もしそこが浸入口と考えられる場合はまず施工した太陽光業者へ連絡してみよう。
雨漏りの原因特定のための調査方法と費用相場
業者に雨漏りの調査を依頼した場合どのような方法で行うかご紹介しよう。
最初の目視調査は必ず行われるが、しっかり原因を究明し修理をするならもう一歩踏み込んで調べる事をお勧めする。
またこの後述べるが短時間の目視調査だけで切り上げ、早々に工事に取りかかろうとする業者は注意が必要なので、その為にもぜひ知っておいて欲しい。
目視調査・散水調査
まずは目視調査だ。調査料は無料が多いはずだ。
その名の通り屋根やベランダに上がって目視で雨水の浸入口を探す。
自分でもできそうだが、プロは探すポイントを良く知っているし建物の構造も理解しているので確実性が高い。また、屋根上や2階以上の外壁は高所作業となるため、危険なので専門の業者に依頼した方が良いだろう。
浸入口と思われる箇所に水を浴びせ雨漏りが起きるか確認する方法。雨漏りが起きた時の再現をするわけだ。
水が入ってから出てくるまで時間がかかる場合もあるので、複数箇所を確かめようとすると意外と時間がかかる。
水を浴びせる人と下で待つ人のペアで行うことが多い。
発光液調査・赤外線カメラ調査
発光液を使う調査もある。調査費は10〜25万円。
紫外線を当てると発光する成分を含んだ液体を雨漏りの浸入口と思われる箇所から注ぎ込み、染み出してきたところへ紫外線を当て発光したら浸入口と繋がるという仕組みだ。
複数の浸入口が疑われる場合は色を変えて調査することもできるし、雨が降っていても調査可能だ。
赤外線サーモグラフィーによる調査も行われる。調査費は20〜30万円。
散水をして外部からサーモグラフィーカメラで建物の温度を撮影すると、水は温度が低いため建物内のどこを通っているか発見できる。
専門的な技術を必要とするので多少金額は張るが、正確性が高い上にどこを通っているかわかるため、雨水の浸入口と出口以外の損傷を発見することもできる。
この際しっかり治したいという方は最初からこの方法で調査を依頼し、原因を特定すると良いだろう。
雨漏り修理の費用相場とその方法
ここでは主な修理の金額・費用の相場をご紹介する。見積りを検討する際の参考にして欲しい。
業者により幅はあるが、屋根や外壁の修理で足場が必要になると、範囲にもよるが20万前後の追加になるので注意が必要だ。
雨漏り修理の費用相場
屋根周り修理費用相場
瓦浮きずれ補修 | 3〜5万円 |
交換(範囲により高額になる場合有り) | 5〜10万円 |
漆喰打ち直し | 30〜50万円 |
棟瓦補修 | 10〜30万円 |
棟板金補修 | 5〜20万円 |
スレート瓦葺き替え | 100〜150万円 |
スレート瓦カバー工法 | 70〜90万円 |
本瓦葺き替え | 120〜150万 |
その他の修理費用相場
バルコニー防水補修(トップコート全面塗装含む) | 10〜20万円 |
外壁コーキング打ち替え(全面) | 40〜50万円 |
コーキング部分補修(窓、屋根、外壁、笠木周りなど) | 3〜5万円 |
外壁割れ補修 | 2〜3万円 |
雨樋詰まり | 2万円〜 |
内部の修理費用相場
これらの原因箇所の修理費に加え、下記の雨漏りによって損傷を受けた箇所の修理費がかかる。
クロス張替え | 5〜10万円 |
下地交換(壁1面)+クロス張替え | 15〜20万円 |
和室の京壁上塗り | 10〜15万円 |
和室の造作材交換 | 20万円〜 |
構造部材の修理・交換 | 30万円〜 |
雨漏り修理の範囲が広ければ、複数の項目の修理をすることとなり、費用も合算されるので高額になるケースもある。
例えばクロスの被害と天井裏の構造被害があれば5〜10万円+30万円〜となり最低でも35万以上はかかるようになる。
雨漏り被害の修理費が思った以上にかかる要因だ。
予定通りにいかないからこそ定期メンテナンスを
雨漏りの修理では見積り通りに金額が収まらないことも多い。
例えば水の浸入口が最初に修理した所以外にも発見され範囲が増えて行くケースだ。
また天井裏やバルコニー下、瓦下などいざ修理で剥がしてみたら被害が大きかったという事もある。
この段階ではもう工事が始まっており後戻りができない上に、程度にもよるがその費用は追加となる。
さらに工事日数が余計にかかることになれば、住みながらの工事だと依頼側の時間的拘束も大きい。
これらの費用の追加については事前に工事業者にしっかりと確認しておくと良いだろう。
丁寧な業者であればある程度の見立てを話してくれるはずだ。
何にしても、雨漏りは起こらないに越したことはない。
まずはできるだけ雨漏りを起こさないように、自分でできるチェックの他に、業者による定期メンテナンスを受けることをお勧めしたい。
自分で新築した住宅であれば、施工した工務店などが定期的に無料点検とメンテナンスを行う場合もあるし、そうでない場合でも、定期的にメンテナンスを依頼できる先があるのは心強い。
起こさないようにとしていても、雨漏りは起こってしまう。そんな時に、すぐに相談できる先があるのは心強いはずだ。雨漏りは軽微なうちに原因を特定して対処することが一番の対応と言えるだろう。
雨漏りの責任は?住宅瑕疵担保責任について
ここで、住宅瑕疵担保責任についてご紹介しておこう。
雨漏りが発生した場合、それが起きた原因を探ることになる。
自然災害だけではなく、施工不良である場合も残念ながらあるのだ。そういった場合に、利用できるのが、「住宅瑕疵担保責任」で、建設業者に義務付けられている。
「住宅の品質確保の促進に関する法律」によって、新築住宅を建てた工務店などの建築業者には「瑕疵担保責任」を追うことが義務付けられている。新築の建売住宅を購入した場合も、同様の責任を売主の会社が負っている。いわゆる10年保証だ。
「瑕疵担保責任」は、住宅で重要な主要構造部分、施工不良による雨漏りについて、新築・引渡しから10年の間、無償で修繕するものだ。建築を請け負った建築業者は、それを修繕する義務がある。
これは、住んでみないとわからない瑕疵から、住宅と建築主を守る制度で、建築主にとっては、現場で見えなかった瑕疵が10年間保証される。
建築業者には、10年間の保証をするために資力を確保することも義務付けられていて、物件ごとに保証金を収める、もしくは、保険に加入している。
この住宅瑕疵担保保険に適用されれば、無料で修繕することができるのだ。
施工不良は、あってはならないが、発生してしまうこともある。新築後10年間についての保証だが、対象になる場合はぜひ活用するといいだろう。
詳しい解説はこちらのリンクを参考にしてほしい。
https://shufukulabo.com/rain-leakage-guarantee
雨漏りの修理方法
ここではプロが行う雨漏り修理のうち代表的なものを簡潔にご紹介する。
実際に自分で調査や修理を依頼する際の参考知識として欲しい。
あまりに何も知識が無いと正しく見積りを判断することもできないし、粗悪な業者につかまりやすくもなってしまうので、それらの対策にして頂ければ幸いだ。
ちなみにプロの修理と一般の方の修理で最も違うのが、数年先を見越した修理であることだ。
一般の方は金額や見栄えに目が行きがちだが、プロはこの先何年間かはトラブルが起きないようにすることを優先する。
そのためその場しのぎの補修は行わず一手間余計にかけたり、見えない部分も含めて範囲を広めに直したりするので、思ったより金額がかかる事もあるかもしれないがそれ相応の価値があることを知っておいて欲しい。
屋根瓦の浮きやずれ・割れ
屋根の瓦は、地震や強い台風などで浮いたりずれたりすることもあるが大抵はすぐに戻して直せる。
ただし念のため瓦を一度剥がし下地をチェックし、併せて周りの止め釘が浮いていなども確認する。
特に数枚ではなく同じ列が並んで歪んでいたりや、大きな範囲で沈むように瓦がずれていたら下地や小屋組などの構造材が痛んでいる可能性もあり、広い範囲で瓦を剥がして屋根全体をしっかり調査することもある。
割れている瓦はもちろんだが、瓦のヒビは細く下からは見えない事も多いので広範囲でチェックする。
また割れている周りの瓦も外し、下地や特に防水シートの痛みなどを念入りに確認する。
本瓦の場合は新たなものを入れ替えし、スレートの場合は外し戻しをしてからコーキングやセメントボンドで割れを塞ぐ。
漆喰打ち直し
漆喰は上塗りしても剥がれやすいので、表面的な浅いヒビ以外は既存漆喰を撤去して打ち直しをする。
中の葺き土も必要があれば撤去して内部を確認し、のし瓦から雨だれが漆喰にかからないように奥行きを調節しながら施工する。
雨樋の詰まり
高圧洗浄で詰まりを押し流すか、ワイヤーブラシを使ったり、時には樋を解体して詰まりを解消したりする。
一度解体した樋は、詰まりをとってもう一度施工するが、後で再発した時にまたバラしやすいようにつなぎ目は弱めに接着するのがポイント。
また重要なのが勾配調整で水を流しながら微妙な角度を取る。
ベランダ防水補修
洗浄して汚れを落とし、目荒らしを兼ねて既存の塗料やシートを撤去。
防水層の部分補修か塗り直しをしてその上にトップコートを施工する。
塗料には次の工程の時間指定があるので、下地のプライマーを含めて3層の施工を住宅サイズのベランダであれば1日で施工する。
コーキング打ち直し
既存のコーキングがあればカッターやラジオペンチなどを使い丁寧に撤去し、断面の残りもしっかり取る。
この作業が新たに詰めるコーキングの耐久性を左右する。
隙間やヒビの周りをテープで養生し、可能なら接着面(断面)にプライマーを塗って接着を良くする。
施工後の伸縮も考慮して、3点が接着するように施工する。
最後にヘラで形を整えるが、簡単に見えるコーキング打ち直しは、その後の効果がプロとDIYの最も違うところだ。
雨漏りのDIYは応急処置と心得る
ここまでプロの修理を見てくると、中には自分で直すDIYにチャレンジしようとする方もいるかもしれない。
確かに表面上はコーキングや塗装など自分でもできるように感じるし、ネットで道具や材料も手に入る。
しかし雨漏りの場合は確実に原因となる浸入口を突き止めるのが難しく、もし表面の傷を対処できたとしても内部被害に気付かず放置してしまうことになりかねない。
建物に使われている木材や金属の腐食やサビなどの内部被害は、時間をかけてゆっくり進行し、非常に重大な症状になってから現れ、手遅れになる場合がほとんどだ。
もちろん雨漏りは刻一刻と被害が広がるので、安全に対処できるなら、これまでの記事を参考に対処して頂いて構わない。
ただしあくまでDIYはその場の応急処置であり、傷を抑えるだけの絆創膏だ。応急処置の後は必ずプロのしっかりした調査を依頼して欲しい。
こんな業者は危険!業者選び5つのポイント
雨漏りは緊急が故に業者も焦って選びがちだろう。
しかししっかりした修理をしてもらうべきトラブルだ。的確な修理修繕を施さないと、直らないばかりか、後々被害が思いがけず大きくなってしまいかねない。
そこでここでは避けた方がよい業者の5つのポイントをご紹介したい。
ポイント1:調査は短く必ず直ると言い切る
雨漏りの原因究明は浸入口がいくつもあったり、場所も天井の染みの真上とは限らなかったりするため、とても難しい仕事である。
修理をして水をかけ、漏れが起きない事が確認できて初めて、そこが原因だったとわかるのだ。
経験のある業者なら原因発見の難しさを知っているので、調査も丁寧で軽はずみなことも言わない。
しかし「必ず直せる」と言い切る業者は、調査も簡単な上にさっさと修理を済ませ、目先の現金を手に入れて次の仕事に移りたい可能性も大いにあるので注意して欲しい。
ポイント2:すぐに契約を迫る
見積りの説明はそこそこに、すぐに契約を迫るのも危険な業者共通の対応だ。
特に雨漏りの場合は大きな工事になることも多く、普通に考えれば判断に少し時間が欲しい。
そこを「今日中や数日のうちに返事を」などと迫るのは、実は必要以上に高い見積りであったり、工事内容が不明確だったりなど、他社と比較して欲しくない事情があるからだ。
そういった業者は「近くで工事をしているから」や「キャンペーンをやっている」など、今なら安くできると理由を付けてくる。
しっかりした仕事をしている業者は、ある程度先まで仕事が埋まっているので、契約を急がせる理由は特にないはずだ。
必要以上に契約を急かす業者のペースに乗らずしっかり検討して欲しい。
ポイント3:会社が遠過ぎる
会社が遠方にあり何かがあった時にすぐに来てもらえないような業者も避けるべきだ。
特に雨漏りは再発する可能性も残念ながら高い。再発した場合に早急に対応してもらいたいので、すぐに駆けつけてくれる距離の業者が安心だ。
特に飛び込みの業者は遠方であることが多く、残念ながらすぐに駆けつけられないことをいいことに開き直り、アフターフォローをしない業者も存在する。
会社の場所が近隣であれば、こちらから出向くこともしやすいので、地域の業者をぜひ検討に加えて欲しい。
ポイント4:工程の説明が無い
どのような工程で工事を行うのか説明がない業者も要注意である。
工程の説明は、どういった内容の工事をどういった手順で行うかの確認であり、業者の都合でやるべき事を省かれるのを防ぐことができる。
工事を進めて行くうちに内容が変わるかもしれないと言い訳をする業者もいるが、それは十分わかっていると伝え、事前にしっかり説明をしてもらおう。
ポイント5:工事後の報告をしてくれるか?
その日の作業が終わったらどんな工事を行ったか、報告してくれるかも確認しよう。
真面目に工事を行う業者であれば快く引き受けてくれるだろう。
特に仕事などで工事に立ち会えない場合は安心できる訳だが、最も大切なのはその依頼に対して快く引き受けてくれる姿勢である。
こういった業者なら新たな損傷が見つかったり、もっと良い修理方法などが出てきたりしたらしっかり報告し、相談してくれるはずだ。
そしてそういったやり取りの積み重ねが、結果として安心できる修理を生むのである。
いい加減な見積り3つの見抜き方
続いて「いい加減な見積り」の特徴を3つお伝えしたい。
金額の高い安いだけでなく、見積りにはその業者の仕事に取り組む姿勢が現れる。
ぜひチェックして業者選びに役立てて欲しい。
特徴1:金額内容が一式になっていないか
見積りで最も注意したいのは「○○様邸 雨漏り修理一式」といった一式出しである。
かなり大雑把で一式を多用しているような見積りは、どのような修理になるのかわからないし、業者の好きなようにやれることになってしまう。
細かく出されても解らないという方もいると思うが、明記することで行う工事を確認でき、約束してもらえるのだから、大切な確認である。
見積りの中で一式の表現になる項目が実際にはあるわけだが、あまりに大きな括りでの一式出しの場合は再度細かく出してもらうか、そのような業者は候補から外すことも考えよう。
特徴2:手間代と材料費は明記されているか
工事の金額は大きく手間代と材料代に別れるが、工程ごとにそれぞれが明記されていることが望ましい。
中には小さな作業や会社でストックしている材料を使うなど分けることが難しいものもある。
しかしできる限り、工程ごとに分けて明記されている見積りの方が親切であり、その業者の仕事の丁寧さが伺える。
また工事を行いながら内容が変化しやすい雨漏り修理では、手間代は同じだが材料がこう変わったとか、この作業が1日増えたのでその手間代分が追加になる、など金額が変わった理由を理解しやすいのでその点からもお勧めしたい。
見積り書自体は、工事内容が明記されていることになるので、面倒でも内容を理解して依頼するようにしたい。
特徴3:追加工事の可能性があるのか
見積りの中で工事金額の追加があり得る事に触れているかも大切である。
雨漏り修理では天井や床を剥がしてみたら、予想以上に痛んでいたという事がよくある。
しかし見積りの中で追加に触れていないと業者側としては言いにくくなり、新たな修理は行わずに工事を進めてしまうかもしれない。
逆に事前に伝えてあれば新たな損傷がみつかれば依頼主に報告し、より良い修理を行ってくれることに繋がる。
「事前の想定以上に修理が多かった場合には費用の追加があります」、といった説明を口頭で受けるか、契約書や注文書に書いてあると安心だから、ぜひチェックして欲しい。
火災保険を賢く使って費用を抑える
雨漏りの修理は高額になるケースもあり、家計に手痛い出費となるだろう。
そこでぜひ検討して頂きたいのが火災保険である。
雨漏りで火災保険と聞くと意外に思われるかもしれないが、実は火災保険には雨漏りの修理もカバーできる特約が付いていることが多い。
せっかく保険料を支払っているのだから上手に活用して頂きたい。
保険内容を確認・どんな時に補償されるのか
まず保険の契約時の案内や証券などで、台風や竜巻、大雪などの自然災害で建物が被害を受けた場合に、修理費が補償になる特約が付いているか確認して欲しい。
もしわからない場合はぜひ保険会社に直接確認をして頂きたい。
その特約が付いていれば雨漏りの原因が自然災害だった場合、今回の修理費が補償される可能性がある。
特約では風災や雹災、雪災などによって建物が被害を受けた場合に補償されるとなっているはずだ。
実は火災保険は火災で使われるだけでなく、こういった特約で利用されることも多い。
ただし経年劣化や自分の不注意で壊れてしまった場合の雨漏りは補償対象にならないので注意して頂きたい。
経験豊富なプロに頼もう
ここで、火災保険の申請のやり方をみておこう。
1.まず保険会社に連絡を取り申請をしたいことを伝える。
2.保険会社から申請に必要な書類を送ってもらう。
3.申請書類を作成し状況報告書や修理見積りを添付の上、保険会社へ提出。
4.保険会社から派遣される損害鑑定人に状況を確認してもらう。
5.保険会社が審査を行い補償対象となれば保険金が支払われる。
こういった手順で申請を行い、自分ですることも可能ではある。
手続きを自分で行うことも可能ではあるが、特に状況報告書をしっかりと自然災害が原因であるとわかりやすく作成するのは難しい。
このようなケースでは、修理見積りの依頼も含めて保険利用の経験豊富なプロに任せるのが最も確実である。中には保険の申請に不慣れなところもあるから、火災保険申請の実績がある工事会社に依頼するのがお勧めだ。
こんな時のために保険料を支払っているのだから、間違いや無駄のない申請をして、保険を賢く利用し家計からの出費を抑えたいところである。
まとめ
雨漏りが発生した場合は早急に応急処置を手配して頂きたい。
しかし緊急だからと言って慌てて全ての修理を緊急対応してくれた業者に任せる必要はない。
まずは自分で状況判断をし、予備知識を持った上で、腰を据えて修理をしてくれる業者を探すことが重要だ。
雨漏りは再発の可能性もあるし長期的な目での修理が必要だからだ。
また火災保険を活用し、急な出費をなるべく抑えるためにも、保険申請に経験豊富な業者に依頼することもぜひ視野に入れて欲しい。
安心できる業者を選び、適切な費用をかけて、大切な財産である住宅をしっかり修理して頂きたい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。