ドアの役目は、任意にここの場とあそこの場を区切る機能だ。任意に区切る為には、単に板があれば機能する訳でなく、回転や移動や開閉を行える機能を有する部品が必要となる。
多くの場面で用いられるのは回転で開閉するドアで、回転部を担う部品を蝶番という。
本稿では、ドアや蝶番に纏わるトラブルとその解決法について専門外の方に分かりやすく解説するので、ドアの調整や修理に役立ててほしい。
また、ドアはサイズや重量からして専門家に依頼する部分が多いので、優れた専門家の探し方も紹介する。
この記事読むことで理解できること
回転で開閉を司る蝶番とは?
ドアは、回転する本体である板状部(扉)と、これを支える枠部、回転で開閉を司る蝶番が主要な部材だ。蝶番(チョウツガイ)は、丁番(チョウバン)とも呼ばれ、ヒンジ(hinge)ともいわれるドアを構成する重要部品(金具)だ。
蝶番の種類・構造
蝶番は回転軸を中心に固定される枠部に取り付ける羽根と可動部に取り付ける2枚の羽根の様な金属プレートで構成されている。両側に羽根を広げた蝶々の様な形状を基本的な構造としている。蝶番の代表的な例を以下に示す。
蝶番の素材
蝶番の素材は、金属とプラスチックに大別できる。金属の例として、ステンレス 銅 スチール(冷間圧延鋼) チタン 真鍮等が使用されている。プラスチック類としては、アクリル、ポリカーボネート、スチロール樹脂等が代表的な事例だ。
金属の蝶番では鈍い輝きのあるグレーだけでなく金色や黒色もある。これらの色は金属面の表面処理(メッキやコーティング)により着色されている。また、アンティーク調の蝶番には真鍮を用いて、錆色を醸し出す場合もある。
一方、プラスチックの蝶番は透明性を有しているのが特徴だ。透明な材料ではガラスがいの一番に思い浮かぶが、耐久性・強度・材料コスト・加工コストの点でプラスチックのメリットが大きい。
このような症状は蝶番の調整or交換で解決!
ドア(扉)の開閉は日常的な風景だ。日々の記憶に残らない動作だが、扉は重量があり、その回転部には大きな負荷が掛かる。大きな負荷により、蝶番のような比較的単純な部品は故障する前に兆候を発するので、その兆候を捉えることが補修費用の低減につながる。
以下に示す様な症状に対して、蝶番の調整や交換で対応することになるが、方法等については後述するので参照して欲しい。
扉がぐらつく
扉の開閉時に不安定感を感じる程、不安になることは少ないだろう。特に開閉回数の多い食器棚等の中空にある扉の不安定感を感じると、落下をイメージしてしまう。ぐらつく不安定感の原因は扉本体と蝶番、蝶番と枠部のネジの弛みに起因することが多い。
ネジの様な回転力で本体内に進行する金具は摩擦力で固定される。扉の開閉で振動が生じるとネジの逆回転が起こりネジの弛みが生じる。また、振動でネジ部周辺の木材部にダメージを与えてネジ穴が拡大してネジの安定が損なわれるので、扉がぐらつくことになる。
扉が閉まりきらない・床を擦る
扉が閉まらない、閉まりきらない、床を擦る等の現象の原因は、①扉本体、②扉の取付け、③蝶番等に分類できる。これらの部材に内在する要因を以下に示すが、①や②は、施工上の問題なので入居初期には発生しているので施工会社に対応を依頼しよう。
①扉本体 ⇒ 寸法違い
②扉の取付け ⇒ 取付け位置の調整不足(上下・左右の間隔が不均一)
③蝶番 ⇒ 扉の重量、開閉の負荷等で蝶番の固定ネジが緩み、扉がレバー側に傾く
開閉時に音がする
扉は音も無くスムーズに扉を開閉できるという先入観があり、ドアを開閉したときに、金属が擦れる音(ギーギー)を発するとミステリー映画のワンシーンを思い浮かべてしまう。この様な症状は、回転部の潤滑性の劣化が主な原因だ。
また、長年に亘る開け閉めの振動で蝶番部のネジが緩んでしまうことがある。そして、回転軸に対して扉本体が斜めになり金属同士が接触する場合があり、ドアの回転に伴い金属同士の擦れ音が発生することもある。
蝶番のメンテンナス方法と調整
蝶番を構造で分解すると、扉本体や扉枠である相手と結合する部分と回転部で構成されている。また、結合のされ方はビス(ネジ)留めでされる場合が多い。この構造からするとメンテナンスを行う部位は、ビス(ネジ)留め部分と回転部が対象となる。
蝶番の点検する部分とメンテナンス方法
ビス(ネジ)留め部の点検事項はネジの弛みで、増し締めを行いガタの発生を防止していく。また、回転部は潤滑性が低下すると音を発するので日頃から金属の擦れる音の発生に注意していることが早期の対処に繋がる。
ネジの頭に溝や穴が形成されているので、溝や穴形状に適したドライバーを用いてネジの増し締めを行う。穴や溝とサイズ違いのドライバーを用いると穴や溝を潰すことがあるので適切なサイズのドライバーを用いることに心掛けねばならない。
回転部には、回転の摩擦で生じた金属粉・ゴミ・ホコリが付着している。これらは、スムーズな回転を妨げるので歯ブラシで回転部の清掃し、ウエスで蝶番全体を拭き取り、その後にスプレー式の防錆潤滑剤をスプレーすると回転がスムーズになる。
必要な道具と価格帯
点検とメンテナンスが必要な部位は上述した通りだが、これに用いる基本的な道具類はネジの増し締めや弛みの補正、回転部の摩擦を低減させるものだ。以下のそれらを示すので参考にして欲しい。特に、代表的な道具は写真で示す。
・ドライバー(プラス/マイナス)セット 手回しのもの
・六角レンチ
ドライバーと六角レンチは、ネジを回すのに用いる。概ね、これらは1000円前後で購入できるし、100円ショップでも取り揃えている。調整やメンテナンスで用いる道具類は手回しの方が微妙な可能なので手回しのものも取り揃えよう。
ネジの固定部に負荷が掛かるとねじ込まれる木材部のネジ穴がダメージを受けることがあり、ネジ穴がダメージを受けると増し締めを行っても効果が無い。その場合には、ネジ穴の再生を行うので、必要な道具類を以下に示す。
・木槌/金槌
・カッターナイフ
・補修用の埋木(割りばし)/ねじパテ
・キリ
・木工用ボンド
・紙やすり
扉の枠部の固定用ネジをとり、ダメージを受けたネジ穴に木工用ボンドを注入して埋木を挿入する。その際に周辺を傷付けない様に木槌で埋木の頭部を叩き込む。ただ、大きな衝撃力が必要な場合もあるので、その際には金槌を用いた方がよい。
・ブルーシート/養生テープ(作業中の床の養生)
調整の手順
扉が床を擦る様な動きがし、扉が従前と比較して大きく上下する場合を想定して調整の手順を以下に示すので、実際に調整する際の参考にして欲しい。
(a)蝶番のネジが調整できる程度に扉を開ける
(b)扉と床の隙間に本・雑誌・新聞・板を差し込み扉の位置を調整
(c)蝶番のネジを増す締めする
(d)蝶番の回転部や周辺の異物を取り除く
DIYでの蝶番の交換方法
ドアは一見すると複雑な機械や電子制御された装置のイメージではない。むしろ、簡単な仕掛けと言うイメージを抱くのでDIYで可能と考えがちだ。だが、ドアのハンドリングは思いの外手が掛かることを理解してDIYに取掛ろう。
必要な道具
弘法筆を選ばずという諺がある。名人は、どんな道具でも立派な仕事するという意味で用いられている。だが、一般人がミッションを成し遂げるには、作業に適した道具類が必要で、ドライバーが無いとネジ一つ回せない。
扉の蝶番の交換で使用する可能性のある道具類を以下に示す。
・ドライバー(プラス・マイナス)/電動ドライバー
・プライヤー
・ニッパー
・ドリル/電動ドリル
・錐
・ワイヤーブラシ/刷毛
・防錆潤滑剤
手順
扉がガタついている状態を仮定しよう。原因として蝶番のネジ部の弛みがある場合で蝶番もスムーズな回転ができなので交換しよう。実行内容としては、ネジ穴を補強して蝶番を付け替えることになる。作業の手順を以下に示すのでDIY際の参考にして欲しい。
(a)道具や材料の準備
(b)床の養生(ブルーシートを養生テープで固定)
(c)扉の取外し(ドライバーでネジを緩める)
(d)ネジ穴内部及び周辺の清掃(刷毛で異物を除去)
(e)木工ボンドをネジ穴に注入
(f)埋木をネジ穴に挿入し、周辺部と同一平面にならす(カッター等で突起部を除去)
(g)錐やドリルでネジ穴の先導部を形成
(h)ネジで蝶番を固定
(i)扉を取り付ける
(j)調整ネジにて扉の位置と開閉の動きを調整
作業の時の注意事項
扉はDIYで扱う最大・最重量の材料・部材で作業も脚立を用いて高所で行うこともある。この様なことから、扉の据え付けや調整において、安全の確保が最重要課題となるので、単独作業でなく複数人での作業を行って欲しい。
また、指先の保護も念頭に手袋の着用や脚立に上る際には、足元が不安定にならない様に足元を固めることも必須だ。
優れた専門家の探し方
扉や棚等の内装仕事は建具職人の範疇で、大工は建屋を作り内部は建具職人が設えることになる。一般的に建具職人は、大工(棟梁)から依頼されて対象の建物の内装工事を担当するので、ユーザーと直接コンタクトする機会は大工より少ないというのが実情だろう。
接点を見出す頃が難しいので、工務店に問い合わせるのが基本だ。また、リフォームに関する一括見積サイトもあるので、それを利用すると手間が省ける。それに加えて、不動産一括査定サイトでもリフォーム業者からの見積を受け取れる。
ただし注意点が二点ある。
①見積り比較サイトはサイト運営者の利益が乗り、業者の利益が減るので作業が粗悪になるケースがある。
②あまりにも安い業者は技術力が劣るため止めたほうが良い
当サイトでは火災保険を活用した住宅に関する修理を優れた専門家が対応する。火災保険が適用されるケースは後に解説しているのでご確認いただきたい。
優れた専門家の意味合いは、仕事を依頼したくなる技能とビジネスとして誠実な対応を期待できる専門家を示す。
実績の確認が可能か?
専門家の技能を確認するにはその実績のチェックは欠かせない。誇らしい仕事をしたならば、それを多くの人に見てほしくなるのが心理的な欲求だ。そこで、対象となる専門家に実績を確認できる場の紹介を申し入れよう。
実物、写真、ビデオ等で過去の仕事をチェックできる仕組みを有していれば候補となる。だが、実績確認の依頼に応えられない専門家であれば、自身の技能に対する思い入れも無い専門家ということで対象外と考えよう。
尚、HP等で事前のチェックもお忘れなく。
提案の有無があるか?
黙々と依頼された様に仕事を成し遂げることも貴重だ。だが、依頼者の立場に立ち、多面的に依頼内容を考えることも重要な要素だ。その為には、依頼者の表面的な言葉の裏にある欲求を引出せるコミュニケーション力が欲しい。
依頼者本来の欲求を満足させる提案を生みだせる企画力の存在は大きな付加価値だ。例えば、質的には同等でコストダウンが可能な提案やコストは同等でもデザイン的には、より依頼者の希望に沿う提案等だ。
見積りの内容がわかりやすいか?
口約束で修理の仕事を依頼することは絶対に避けることが肝要で、契約書と見積書の取得は必須と考えたい。だが、契約書は工事の規模にも依存することもあるが、見積書は絶対に必要だ。見積書自体も契約書としての効力を有する。
見積書の記載内容で専門家の特質が判断可能だ。工事一式〇〇万円式の見積書を提出してくる専門家は対象外としよう。工事のプロセス・材料毎に単価及び数量を明記されていることが重要だ。
詳細な項目に区分されて明記されているために、見積書の記載の仕方を工程別・材料別に単価と数量を明確にすることを申し入れよう。この要求を拒否する専門家であれば、その場で断ることも必要だ。
専門家に依頼した場合の費用の概略
蝶番の交換は容易な印象があるが、扉自体が重量物であることと精巧な調整を要することから専門家に依頼した方が最終的には満足度が高いことになる。ただ、専門家に依頼する場合には気になるのが費用だ。
費用は、一般的に以下に示す様な細目で構成されている。価格的には、扉一か所で1万円-2万円程度となる。交通費が変動要素として大きいので費用を抑えるには、できるだけ近隣の専門家に依頼すべきだ。
①基本料金 ⇒人件費に相当
②金具(蝶番)代金 ⇒交換する金具等の費用
③作業代金 ⇒半日仕事、全日仕事の様に人件費に相当
④出張代金(交通費)⇒事務所から現地までの交通費
火災保険で修復は可能か?
火災保険の役割をご存じだろうか?火事で家屋や家財が損傷した場合に補填してくれる保険というイメージを抱いている方が大多数だろう。だが、火事はもとより、様々な災害に対応しており、特約で室内の事故にも対応した便利な保険でもある。
加入している火災保険をチェックしよう
持ち家でも賃貸でも火災保険への加入は必須といっても良いだろう。
ただ、保険料を考えると保険会社が提案する全ての特約を採用することは難しい。そこで、火災保険の設計というプロセスの出番になり、想定される脅威の中から発生頻度の低い災害や事故は除かれる。
そして、時間の経過と共に火災保険のカバー範囲は契約者の記憶から消えていく。種々の災害が発生する時代なので、火災保険の契約書は何時でも見られる場所に保管することを推奨する。保険代理店の電話番号を冷蔵庫の扉に貼れば、事故発生時に気軽に確認ができる。
火災保険の適用範囲とは?
火災保険は、家屋に対する補償と家財に対する補償があり、家屋と家財に対する補償も選択できる。また、火事以外のサポートしている災害や事故の例として、落雷、大風、雹・霰、自動車事故、デモ隊による破損等が挙げられる。
保険は、加入者全体で広く・薄く被災で生じた損害を補填する仕組みだ。
また、私企業が運営しているので地域全体に亘る災害をカバーすることは困難だ。そこで、火災保険が対象外としている災害や事故が存在する。以下の対象外の災害・事故を示す。
①地震・津波・火山の噴火
②原子力関係施設の事故による災害
③経年劣化・自然摩耗
④室内での子供の火遊びの様な重大な過失・故意
上記の①②は、地域全体が被災する災害・事故に相当するので対象外だ。
ただ、地震に関しては、火災保険とは別に日本政府を再保険者とする地震保険が運用されている。③に関しては寿命の到来、④は保険の本旨から外れる行為ということで対象外となる。
特約でカバー可能だ
火災保険は、例外はあるものの前述の様に多くの災害や事故に対応している。更に、多種多様な事故に対応できるように特約が準備されている。例えば、不測かつ突発的な事故による破損・汚損等をサポートする特約がある。
これは、扉にものをぶつけて扉を壊した場合や模様替え中に家具を倒して壊した場合の費用を補償する。また、賃貸の場合には修理費用保険を特約で付加することによりドアの修理費用の補填が可能だ。
まとめ
日頃は意識しない蝶番だが、開閉部にとって無くてはならない部品であることをご理解頂けただろう。地味で縁の下の力持ちといった存在だ。事実、蝶番を交換するとなると、一人で行うには荷が重く、怪我の元となる可能性も高い。
破損したときに、その重要性を体感する不可欠な役割を担う蝶番の調整や交換に関して、必須の情報を本稿で紹介しているのでドアの開閉で難儀した際には、熟読して参考にして欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。