サッシに不具合があっても、開け閉めができるからと放置しておくのは非常に危険だ。
サッシは動かすごとに症状が悪化するため、いざ修理しようとした時に費用が高額になるばかりか、きちんと閉まらなければ防犯上の危険性にも繋がっていく。
そこで今回はサッシの不具合を自分で直すための簡単DIY方法を、建築のプロである一級建築士が詳細に解説する。
DIYが可能ならそれは最も素早く対処できる方法であり、しかも費用を抑えた対処となるはずだ。
一方でDIYでは難易度が高く専門業者へ任せた方が安全なケースと、そのプロの修理を安価に実現する火災保険の活用テクニックもご紹介する。
ぜひ最後まで目を通して頂き、より確実なサッシ修理を最小限の出費で実現して頂きたい。
この記事読むことで理解できること
サッシの補修を後回しにすると危険
まずサッシは開け閉めをすることで負荷がかかり、確実に不具合が悪化していくことをご存知頂きたい。
状態が悪くなれば、この後ご紹介する割安なDIY修理が手遅れになるばかりか、部品などの廃盤によって、非常に高額なサッシの全交換に繋がる恐れさえある。
また建て付けが悪ければ外れて落下をする恐れがあり、住む人や来客、場所によっては通行人に大怪我をさせる危険性さえある。
さらには閉まりが悪ければ防犯機能も失われるなど、サッシの不具合は大至急対処をすべき緊急事態であると十分に認識をして頂きたい。
サッシの不具合原因とDIY補修
それではサッシの不具合別に原因とDIY補修の方法をご紹介しよう。
サッシに限らず住まいの不具合は、まずしっかりと原因を特定してから作業に取り掛かることが重要だ。
間違った認識で違うところを直そうとすれば、余計な時間や無駄な道具の出費が発生してしまうからだ。
あせる気持ちを抑えてじっくりと状態を確認し、的確な補修を行って頂きたい。
サッシの動きが硬い場合
最もサッシで頻繁に起きる不具合が、開け閉めの動きが硬くなることだ。
一般の方には不可解な現象だが、その原因の大多数はこの後ご紹介する箇所に集中しており、補修方法もシンプルなためぜひDIYにトライして欲しい不具合だ。
特に年数が経過したサッシでは頻繁に発生する不具合のため、一度しっかりと原因の特定方法や直し方を覚えておくことをお勧めしたい。
戸車交換
サッシの動きの硬さでまず疑われるのは、サッシ下部に付いている戸車の不具合だ。
そこでサッシを枠から外し、底の部分にある戸車が割れたり削れていたりしていないか確認する。
また戸車と枠の隙間にゴミが入り込んで動きが悪くなっている場合もあるので、隙間も確認し必要なら清掃を行う。
もし戸車が損傷しているなら交換が必要なため、まずはサッシメーカーに純正の交換用戸車が無いかを問い合わせてみよう。
多くのメーカーが個人でも販売をしてくれるし、万一廃盤でも代替品を用意している場合もある。
入手時には交換用の説明書を付けてもらうか、無いようなら手順をしっかりと聞いておくと良いだろう。
※ペアガラスの掃き出しサッシなどは非常に重量があるため、外す作業は十分に注意して頂き、できれば2人以上で作業するようにして欲しい。
レール補修
戸車に損傷がないのにサッシの動きが悪いようなら、次に疑われるのがレールのゴミ詰まりや変形だ。
まずはレールの状態を確認し、ゴミや土埃などがあればきれいに清掃してみよう。
もし清掃しても直らないようならレールに削れている部分がないかを探し、あればその部分をヤスリでさらに削ると改善することがある。
ただしあまり削ってしまうと強度が落ちてしまうため薄く削る程度にし、それでも動きが悪いままのようなら残念だがDIYの限界だ。
症状が悪化する前に専門業者に相談し、原因究明の上で修理をしてもらうようにしよう。
鍵のかかりが悪い
サッシの中央に付いているクレセントと呼ばれる鍵のかかりが悪い場合、その中心や上下にある位置調整用のネジをドライバーで回すことで簡単に修正できる。
さらには受け側も調整できるモデルもあり、この仕様ならさらに大きなズレによる不具合を解消することが可能だ。
中にはネジ部に樹脂カバーが被せてある製品もあるが、マイナスドライバーを使えば簡単に外せて調整ができる。
またクレセント本体や受けが変形してかかりが悪いようなら、DIYでの交換も簡単に行える。
部品はサッシメーカーのサービスに問い合わせれば個人に販売してくれるところも多く、もし廃盤だとしても代替品の案内をしてくれるので、一度問い合わせてみると良いだろう。
またネットで探すと凡用品が販売されているので、サイズをしっかり確認した上で試してみても良いだろう。
網戸が破れている
破れている網戸はDIYで簡単に張り替えることができる。
材料や道具はホームセンターやネットで購入でき、初心者用に必要なものが一式セットになっているものもある。
未経験の方には難しく感じるかもしれないが、一度やってみると実に簡単なことがわかるはずだ。
今回に限らず先々も出番が多い補修なので、一度しっかり覚えておくことをお勧めする。
本格的な張り替えから補修テープによる応急処置まで、以下の記事で具体的に手順をご紹介しているので、ぜひ目を通して頂きたい。
「網戸の修理を極める!玄関ドア網戸や戸車修理の対処方法を徹底解説!」
https://shufukulabo.com/screen-door-repair
歪みで隙間風が入る
隙間風は主に枠に対してサッシ本体の位置がずれていることで発生する。
もしサッシ下にある戸車が位置調整可能なものなら、側面下にある調整用のネジを回すことで解決できるので試してみよう。
一気に回さず少しずつ様子を見ながら回していくのがコツで、何度も開け閉めをしながら調整していく。
またサッシの側面にパッキンのある製品なら破れたりしていないかを確かめ、もし傷んでいるようなら、メーカーに問い合わせてパッキンを購入し交換を行う。
もし上記の作業を行っても直らなかったり、調整機能のない戸車やパッキンの無いサッシだったりした場合は、サッシの歪みや反りが疑われる。
サッシを側面から見て縦方向が微妙に反っていたり、正面から遠目で見て歪んでいたりした場合は本体の調整や交換が必要になるが、これはDIYでは困難な作業になる。
隙間が広がってしまう前に専門業者に対処してもらうことをお勧めする。
表面の薄い傷
アルミサッシの枠や本体にできた薄い擦り傷なら、DIYで直すことが可能だ。
小傷であれば車用のタッチペンで、擦り傷ならやはり車のボディ用のコンパウンドで目立たなくすることができる。
補修ペンは色の選択が難しいのが車用は色数が豊富なため、根気よく探せばかなり近い色を見つけられるだろう。
ただしいずれの場合も元の素材や仕上げによっては逆に補修跡が目立ってしまう可能性があるので、必ず目立たない下の方の部分で試してから、補修を行うようにして欲しい。
またどんなに上手くいったように見えても、DIYでは陽の光の当たり具合や角度で、補修跡がわかってしまう。
来客の目に触れるような場所で、完全にわからないように直したいのであれば、この後ご紹介する補修屋のような、リペアのプロに任せる方が確実だろう。
こんな場合は専門業者へ依頼すべき
既にご紹介したレールの交換やサッシの歪み解消、そして傷をわからないように直す他にも、DIYは避け専門業者へ依頼すべきケースがあるのでご紹介したい。
DIYは安価に済ませたいという目的が大きいと思うが、失敗してから専門業者へ頼むと、それまでの道具や材料の費用が無駄になってしまう。
さらにはDIY補修で失敗した部分を直すための、余計な費用が上乗せになる可能性すらある。
なるべく出費を抑えたい気持ちはわかるが、ここは冷静に判断し最終的な支払いが抑えられる方法を選ぶようにして欲しい。
純正の交換部品がない
サッシ修理に必要な純正の交換部品が手に入らない場合は専門業者へ相談をしてみよう。
現在は多くの部品がネットで入手できるようになったが、それでも膨大な種類のサッシの細かな部品を網羅しているショップは存在しない。
そのためショップ側で扱っていない部品を問い合わせると、廃盤や入手不可といった一言で片付けられてしまい、諦めてしまうことになる。
しかし実は問屋や取次店、部品メーカーなどに在庫がある場合も多く、専門業者を通すと入手できる可能性が十分にあるのだ。
もちろん交換や取り付けも依頼することになるが、その後も継続的に部品を入手できることを考えれば、後々の修理も安心できる。
今後も頼れる専門業者を持っておくためにも一度相談することをお勧めする。
ガラスの交換
ガラスの割れやヒビによる交換は初めから専門業者へ任せた方が安全だ。
まずガラスの取扱いは危険を伴うため、扱いに不慣れな方では大怪我に繋がる恐れがある。
またネットや大型のホームセンターではオーダーでガラスを購入できるところも増えているが、納まり寸法の知識が無いとしっかりとはめ込めるサイズを指定することは難しい。
無理にはめ込んでもガタつきや隙間風、雨漏りなどのトラブルになることも多く、結局専門業者へ依頼されるケースが後を絶たない。
そうなれば当然自分でオーダーしたガラスは無駄になり、損失額の最も大きいDIYとなってしまう。
安全性と金額面のリスクを考慮すると、ガラス交換は専門業者に任せるべき損傷であると言えるだろう。
枠の継ぎ目から雨漏り
サッシ枠と壁との継ぎ目から雨漏りがしている場合は、DIYで何とかしようというレベルの損傷ではない。
中には見た目だけの問題だと考える方もいるが、深刻なのは外部から入った雨水が壁の中へ浸入している点だ。
壁の中へ入った雨水は内部の柱など構造材を腐食させ、住まいの耐久性や耐震性を奪っていく。
また腐れだけでなく、カビによるアレルギーやシロアリによる侵食も引き起こすため、一刻も早く防水と内部の点検を行う必要がある。
また浸水の入り口は漏れている場所の反対側とは限らず、外壁の継ぎ目をコーキングで塞いでも、そう簡単に雨漏りは止められない。
サッシの継ぎ目からの雨漏りは一刻を争う緊急事態だと考え、大至急専門業者に連絡をして対処をしてもらって欲しい。
専門業者の費用相場一覧
以下にサッシ修理を専門業者へ依頼した場合の費用相場をご紹介する。
金額はあくまで損傷が最小限の場合であり、その程度や使用する部品などによって金額が大きく変わる点はご注意頂きたい。
特に掃き出しサッシの交換となると、ガラスや枠の種類によっては数十万になることも珍しくない。
メールによる概算見積もりを受け付けている業者もあるので、心配な場合は一度相談をしてみると良いだろう。
損傷の種類 | 費用相場 | 備考 |
開閉不具合や隙間解消 | 20,000円〜 | 戸車や納まりの調整 |
戸車交換 | 25,000円〜 | |
鍵の交換 | 20,000円〜 | |
ガラス交換 | 25,000円〜 | |
サッシ本体交換 | 35,000円〜 | サイズによる金額幅が大きいため注意 |
※下地工事や特殊加工、出張費などは別途
傷や錆は補修屋がお勧め
サッシの表面にできた傷や錆の補修なら補修屋という専門業者がお勧めだ。
補修屋とはサッシに限らず、床や壁、室内ドアなど、住まいの様々な部材の表面にできた傷や凹み、変色などを見事に消し去ってしまうリペアのプロフェッショナルだ。
ハウスメーカーや工務店などに依頼しても良いが、大きな工事を得意としているため小さな傷でも高額な交換による修理になりがちだ。
しかし補修屋は傷んだ部分をピンポイントで直すため、非常に手頃な価格で補修してくれるというメリットがある。
また守備範囲が大変広いためサッシに限らず気になっている傷などがあれば、同時に依頼することで時間や連絡の手間を大きくカットできるのも魅力だ。
以下に補修屋の仕事振りがわかる写真を紹介する。
いずれも玄関ドアではあるが多くのサッシと同様アルミ製なので、その技術力の高さがわかるはずだ。
気になる傷や凹み、錆などがあるようなら、一度相談をしてみることをお勧めする。
補修屋の技術費用相場
以下に補修屋の主な損傷の技術費用相場をご紹介するので、依頼を検討する参考にして欲しい。
こちらも写真をメールで送れば無料で概算を見積もってくれる業者もあるので、金額が気になる場合は一度連絡をしてみると良いだろう。
補修内容 | 技術相場金額 |
サッシ枠の小傷 | 25,000円〜 |
フローリングのすり傷、小さな凹み | 15,000円〜 |
フローリングのシミ | 30,000円~ |
ペットによる壁の噛み傷 | 45,000円〜 |
壁の穴(こぶし大) | 25,000円〜 |
建具補修 | 35,000円〜 |
玄関ドアの凹み | 30,000円〜 |
※損傷の程度により増額の可能性あり。材料の新規取り寄せや出張料などは別途。
腕の立つ補修屋の見分け方
補修屋の大きなメリットの一つが、DIYと違って傷の跡がわからないように直してくれることだが、これはどの補修屋でも可能な技術ではない。
補修屋を名乗っている業者の中には、建築の他の仕事をしている職人がアルバイトで行っているケースもあり、当然専業の補修屋とは仕上がりに雲泥の差がある。
せっかくDIYよりも多くの費用を支払ったのに、跡がはっきりわかるようなレベルの補修をされ、トラブルとなる事例が非常に多く注意が必要だ。
腕の立つ補修屋を見分ける確実な方法は、その業者の補修実例を目で見て確かめることであり、例えば自社サイトで補修の実績を数多く紹介しているところなどに絞って探すと良いだろう。
くれぐれも口先だけの「豊富な実績」に惑わされないように注意をして頂きたい。
火災保険でプロの修理を格安に
サッシの修理をできるだけ安く抑えたい、という方はぜひ加入されている火災保険を確かめてみて欲しい。
サッシの修理で火災保険と聞くと不思議に思われるかもしれないが、現代の火災保険は火事だけでなく突発的な損傷や台風や洪水など自然災害も補償の対象とする、住まいの総合保険になっているものが殆どだ。
もし保険で修理費を補償してもらえるケースなのに見落としてしまっては、せっかく払っている保険料が無駄になってしまう。
以下に保険を利用できるケースをご紹介するので、ぜひご自身の火災保険の条件を確かめてみて欲しい。
保険が利用できるケース
まずサッシの損傷が台風や竜巻などでできたものであれば、風災の補償対象となる可能性がある。
風圧や風で飛んできた物でガラスが割れたり、枠が損傷したりした場合に補償されるため、台風や暴風雨が通り過ぎた後はぜひ確認をしてみよう。
また不測かつ突発的な事故による汚損・破損も補償対象としている保険は多い。
これは家具を移動中にうっかりぶつけてサッシを傷つけてしまったり、子供がおもちゃを投げつけてガラスを割ってしまったりした場合に補償される。
いずれも発生した日時がはっきりしており、破損箇所の機能に支障が出ていると補償されやすい。
ただし保険会社ごとで細かな適用条件があるので、まずは契約時の書類や証券で確認し、それでも不明な場合は保険会社に問い合わせをしてみよう。
保険申請実績の豊富な業者を選ぶ
保険を使って修理を行う場合にぜひ注意をして頂きたいのが、依頼をする専門業者の保険申請実績だ。
修理費を保険で補償してもらうには、保険会社に損傷の原因や現状を正確に書類で伝えなければならないが、これは申請経験の少ない専門業者には非常に難しいからだ。
当然だが修理と申請の技量は全く別であり、不慣れな専門業者に申請を手伝ってもらうと書類の不備などで補償を却下される恐れがある。
これではプロにわざわざ頼んだ意味がなくなるばかりか、払ってきた保険料も水の泡となってしまうため注意をしなければならない。
火災保険を利用するなら必ず依頼先の保険の申請実績を確かめ、十分な経験と知識を持った相手を選ぶようにして欲しい。
まとめ
サッシの損傷は対処を後回しにしていると修理費用が高額になるだけでなく、防犯面の心配や人に怪我をさせる危険性なども増加していく。
開け閉めができるからと安心せず早急に対処をし、DIYが可能なら費用も抑えられるためすぐにでも取り掛かって頂きたい。
一方で一般の方が修理をするのが困難な場合もあり、無理をせず専門業者へ依頼した方が結局は安価で安心なケースもある。
今回の記事を参考に冷静に状態を見極め、もし火災保険を利用できるならなおさらプロの技術に頼った方が良いだろう。
大切な住まいを守るためにも素早くかつ確実な修理を施してあげて欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。