フローリングの補修を後回しにしていると損傷は確実に悪化し、いざ直すとなった時には高額請求に繋がる。
傷や変色が時間と共に広がるのはもちろんだが、賃貸においては放置した責任を問われることもあるからだ。
そこで今回は対処を急いで頂くための参考に、フローリング補修の費用相場を建築のプロである一級建築士が具体的に解説する。
また今後のためにもフローリングの損傷を防ぐ効果的な方法を併せてお伝えしている。
補修の費用だけでなく、将来売却することになった際の資産価値を落とさないためにも、ぜひ最後まで目を通して頂きたい。
この記事読むことで理解できること
補修費用相場を詳しく解説

まず傷の種類別に専門業者へ補修を依頼した場合の費用相場をご紹介するが、この金額は様々な業者の平均である。
記事の後半で解説しているが、補修は依頼先によってはかなり高額になるケースもあるので注意が必要だ。
先にお伝えしてしまうと、一番経済的に綺麗に補修できるのは、自分で補修の専門業者(リペア職人)に依頼することである。
またあくまで損傷の初期段階の補修費用であり、放置し状態が悪化すれば金額は上がっていくこともご承知頂きたい。
損傷別の補修費用相場
補修内容 | 相場金額 |
フローリングの浮き、剥がれ | 60,000円〜 |
フローリングの傷、凹み | 40,000円~ |
フローリングのシミ | 50,000円~ |
※損傷サイズにより増額の場合あり。材料新規取り寄せ・出張費等は別途費用。
張り替えリフォームになるケースと費用

もし損傷を放置して悪化した結果、範囲が広がったり材料の深い部分に損傷が及んだりすれば、フローリングの張替えが必要になり、さらに高額な出費を招くことになる。
しかも張替えでは同じ材料の在庫や施工方法によっては、損傷部分だけでなく部屋全体のフローリングを張替えになる恐れもあるのだ。
こうなると既存撤去の費用も加わり6畳の目安で150,000円〜と、部分補修とは桁違いに高額な補修費用になる。
やはりフローリングの損傷は、発見したら早急に対処することが出費を抑える上で重要だと言えるだろう。
賃貸はどこまで補修責任があるのか

賃貸は退出時に原状回復のクリーニングや補修が行われるが、原則は故意や過失によって通常使用では生まれない傷を作った場合は、補修費用を請求されることになる。
代表的なのはタバコの焦げや物を落としての凹みなどだ。
一方で普通に生活をしていても避けられない劣化や損傷、例えば日焼けや重い家具を置いていた床の跡などは、費用負担の責任は無い。
しかし最も注意したいのが、自然にできた損傷でも気付いていながら放置し、被害が拡大した場合はその責任を問われる点だ。
自然に発生した割れや結露によるフローリングの痛みが悪化していくのを知りながら、対策や貸主への連絡を怠れば損害賠償請求される恐れがある。
もし悪化してしまった傷などがあるようなら、早急に補修を行うべきと言えるだろう。
DIYで補修する方法

フローリングの損傷に最も素早く対処出来るのがDIYによる補修だ。
多くの補修キットが発売されており、ホームセンターやネットで簡単に手に入るため挑戦してみるのも良いだろう。
ただし失敗をすると損傷を悪化させる恐れもあるので、時間を多めに確保し丁寧に行って欲しい。
変色やシミは補修ペンで消す

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表面的な変色やシミは市販の補修ペンで消すことができる。
まず中性洗剤を垂らした水で絞った雑巾でよく拭き、しっかり乾燥させた後にペンで塗っていく。
ポイントは少しずつ様子を見ながら塗り重ねていくことで、一気に塗るよりも自然な色に仕上がりになるだろう。
小さな傷はクレヨン補修材で直す

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小さな当たり傷や擦り傷はクレヨンタイプの補修材が最適だ。
ドライヤーで温めてから塗り込み、付属のヘラで均すと見た目はかなり改善されるはずだ。
作業前に損傷部分にある汚れやホコリをしっかり拭き取ってから行うと、補修材がしっかり定着する。
凹み剥がれはパテとペンを併用

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凹んだり表層が剥がれたりしたフローリングはパテを盛り、固まった後にサンドペーパーで平坦にする。
240番辺りの目から始め、焦らず徐々に細かい目に切り替えながら仕上げていく。
最後に冒頭に紹介した補修ペンで色付けをし、さらに家庭用ワックスをかけると綺麗に仕上がる。
無垢フローリングはアイロンで補修

一枚の木の板でできている無垢フローリングは、傷や凹みに水を垂らし濡らした布を被せてアイロンで熱すると木が膨張して回復することができる。
まずこの方法を試しそれでも凹みなどがあるようなら、パテなどの補修を行うと良いだろう。
※スライスした木の板を重ねた複合フローリングや、無垢でも表面にコーティングがしてあると、アイロンの熱で変色してしまう恐れがあるため、その場合はパテ補修で対処するようにしよう。
フローリングの傷を防ぐ2つのポイント

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当たり前ではあるが、フローリングの傷を防ぐことが最も出費を抑える方法だ。
そこでご家庭で簡単にできる対策を2つご紹介する。
まず1つ目がカーペットなどで保護をすることだ。
特に小さいお子さんのいるお宅では、頻繁に物を落としたり飲み物をこぼしたりするため、できるだけ広い面積をカバーできる物が良いだろう。
もし掃除が面倒であれば、フロアシートのようなビニール素材であれば楽に拭き掃除ができる。
LDKはもちろん椅子や収納家具に付いたキャスターの凹み傷も防いでくれるので、応用範囲は広くお勧めだ。
そしてもう一つの対策は定期的にワックスを塗ることである。
見た目を綺麗にするイメージのあるワックスだが、実はフローリング保護の役割も大きい。
定期的に塗って常に保護膜を作ることで、小さな物を落としたり引きずったりした程度の傷なら、かなりの割合で防いでくれる。
手間は多少かかるが耐用年数が長いものを選べば年に1回で済むし、その頻度なら非常に安価にできる対策だ。
傷ができてからの補修費の方がよほど高額なので、手間を惜しまず定期的に塗ることをお勧めする。
専門業者へ依頼すべき損傷
DIYによる補修は確かにスピーディーで安価に行えるが、その一方で大きな問題を抱えている。
それはDIYの補修では完全に損傷を消すことができず必ず跡が残ってしまう点で、場合によっては費用を抑えるどころが逆に大きな損失に繋がる恐れがある。
ここではそのリスクが高く補修を専門業者に依頼すべきケースを2つご紹介したい。
賃貸では高額修理になる危険性あり

まず一つが賃貸退出時の原状回復補修だ。
部屋に費用請求されそうな傷があると、自分で直そうと考える方がいるかもしれないが、それは避けておこう。
なぜなら貸主側は次の入居希望者に敬遠されないようしっかり直したいと考えていて、補修跡がわかるようなDIYでは全く意味がないからだ。
結局は貸主側で行う補修を避けられず、しかもDIYでかけた費用は無駄になってしまう。
賃貸ではDIYを行わず、損傷を完全に消し去るレベルの技術を持った専門業者へ依頼するほうが費用を抑えられると知っておいて頂きたい。
売却時の資産価値を落とさないために

また自己所有のマンションでは、将来転勤や高齢化での住替えで売却する場合を考えると、やはり補修したことがわかるDIYは大きな損失に繋がる。
売却時には部屋の状態をチェックされる訳だが、残念ながら第3者からするとDIY跡は見苦しく値段交渉で不利になる可能性が高い。
自分では「傷が目立たなければ良い」とDIYの仕上がりでも満足かもしれないが、購入する側はシビアに判断するため値下げ要求もあり得る。
マンションは住まいであると共に大切な資産と考え、その価値を目減りさせないよう、傷跡がわからないレベルで補修できる専門業者に依頼するべきだろう。
手頃に素早く直すなら補修屋がお勧め


補修は依頼する業者の種類によって金額が全く違ってくる。
例えば賃貸で手配される補修は、どうせ借りる側が支払うという考えが貸主側にあるため、補修業者から上がってきた高めな金額の見積もりまま、請求されることが多い。
またよく聞くリフォーム会社の場合いわゆる工務店が工事を行うため、小さな損傷であってもフローリングの張り替えなど大掛かりになりがちで、当然かなりの出費を覚悟しなければならない。
もし傷んだ部分だけに絞って補修することで費用を抑えたいのであれば、補修屋と呼ばれる専門業者がお勧めだ。
補修屋はあらゆる床材や損傷に精通した部分補修のプロであり、腕の確かな者なら補修したことが全くわからないように傷を消し去ることができる。
またフローリングに限らず壁やドアの損傷など守備範囲が広いのも特徴で、気になるところがあれば一緒に依頼することで、費用や時間を抑えることも可能だ。
その補修屋の仕事振りがわかる動画があるので、そのスキルを確かめてみて欲しい。
補修屋の技術費用相場
補修屋の技術費用相場は、軽度なものなら1箇所で概ね15,000円〜となるが、損傷の種類や程度によって変わってくる。
ここではフローリングの相場をご紹介するが、メールで傷んだ場所の写真を送ると無料で見積もりをしてくれる補修業者もあるので、一度相談してみると良いだろう。
補修内容 | 技術相場金額 |
フローリングの浮き、剥がれ | 40,000円〜 |
フローリングの傷、凹み | 25,000円~ |
フローリングのシミ | 30,000円~ |
※損傷サイズにより増額の場合あり。材料新規取り寄せ・出張費等は別途費用。
補修屋を選ぶときの注意点

補修屋を選ぶ時に注意をして欲しいのが、どこも同じ腕前ではないという点だ。
材料に関しての知識や多くの経験があって初めて仕上がりの良さに繋がる訳だが、補修屋の中には他の建築関係の職人がアルバイトで行っている者もいる。
そうなるとDIYと大差ない仕上がりになる危険性もあり、依頼する前にしっかりとその腕前を確認することが重要だ。
例えば自社サイトを持ち、そこで過去の実績を画像付きで紹介しているようなら、非常に安心できるだろう。
くれぐれも口だけの「経験豊富」に騙されないよう気を付けて頂きたい。
火災保険を使って自己負担を減らそう

補修をする上で費用がネックになっているなら、ぜひ加入している火災保険の利用を検討してみよう。
現在の火災保険は台風や大雪などの自然災害や盗難など、火事に限らず住宅被害の総合保険になっており、対象となればフローリングの補修も利用できるのだ。
そこでここでは、どういった状態が保険の対象となるのか、そして保険を利用して補修する際の業者選びの注意点をお伝えしたい。
保険適用になる具体例
持ち家の場合は加入している火災保険の「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」という項目に条件が合えば補償をされる。
これは物を運んでいる途中でうっかり落としてしまったり、こどもがおもちゃをぶつけたりなどの予想外の事故による損傷を対象としている。
条件としては発生原因や日時がはっきりしていて、さらにフローリングの機能に支障が出ている場合に補償されやすい。
また賃貸では入居時に契約した家財の火災保険に「借家人賠償責任担保特約」があれば補償される可能性がある。
これは部屋を痛めてしまい、貸す側から損害賠償を請求された場合に補償されるもので、こちらも条件が合えばフローリング補修が対象になる。
いずれの場合も保険の内容や保険会社によって適用条件が異なるため、まずは加入時の書類や証券などで確認をしてみよう。
保険補修で失敗しない業者選び
火災保険で補修をする場合に注意したいのが、依頼する業者の保険申請の実績だ。
この申請では被害の原因や現状を正確に伝える必要があるが、これは例え補修屋であっても経験が少ないと非常に難しいものになる。
せっかく保険を使える損傷なのに、業者の書類不備で審査が通らない場合もあり注意が必要だ。
支払ってきた保険料を無駄にしないためにも、依頼の際は必ずその実績を確かめるようにして欲しい。
まとめ

フローリングの補修費用は対処が遅れるごとに高額になる危険性がある。
DIYが可能であれば素早く補修が行えるが、賃貸や売却時の価値を考えると必ずしも得策ではなく、トータルで考えると専門業者に補修依頼をした方が出費を抑えることに繋がる。
特に補修屋は値段も手頃な上にしっかりした相手を選べば損傷を完全に消し去ってくれるだろう。
火災保険を上手に活用しながら、大切な住まいの価値を維持してあげて欲しい。

株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。