フローリングの表面の劣化が始まっているようなら、早急に対処をしなければならない。
毎日歩くことや日光による紫外線で劣化は加速し症状は悪化する一方のため、大至急表面を研磨し塗装をすべきだろう。
そこで今回は素早くしかも安価に補修を行うために、フローリングの表面を自分で研磨し塗装する方法を、建築のプロである一級建築士が詳細に解説する。
あまり一般の方が行えるイメージの無い補修かもしれないが、道具や手順をしっかり把握をすれば決して困難な作業ではない。
もちろんリスクが高く専門業者へ任せるべきケースもあるため、その点も詳細にお伝えしている。
症状がこれ以上悪化し高額な出費に繋がる前に早めに対処をして頂きたい。
この記事読むことで理解できること
フローリングの劣化はすぐに対応すべき
フローリングの表面に変色や割れが起きているなら痛みは刻一刻と進行し、小さな傷の補修とは比べ物にならない高額な修理費に繋がることを知って頂きたい。
変色が起きているということは表層の保護膜が無くなっている状態であり、歩く人の荷重や摩擦、そして紫外線や湿気などを直接木材が受けることで、劣化スピードは非常に早まっていく。
また割れも同様で、上記の影響の他に生活上の小さな振動、近隣の車や地震などの揺れでも症状は悪化する。
これらを放置すれば、これからご紹介するDIYによる補修が不可能になるばかりか、専門業者に依頼すれば高額な出費に繋がるだろう。
さらにフローリングの劣化範囲が広いようであれば、床材の深くに劣化が及んでいる可能性もある。
フローリングの劣化は決して見た目の問題ではなく、早急に対処すべき緊急事態であると認識して頂きたい。
フローリングの研磨と塗装はDIYでできる
フローリングの表層劣化は、まず表面を研磨して保護膜や劣化部分を取り除き、再塗装を行うことで改善ができる。
ただしフローリング材が、1枚の木の板でできた無垢フローリングではこの研磨は有効だが、薄くスライスした木板を重ねた複合フローリングだと表層が1mm程度しかないため、研磨をかけると削れて下の層が出てきてしまう恐れがある。
まずはご自宅のフローリング材を確かめ、適した方法で作業するようにして欲しい。
複合フローリングの場合は以下の記事を参考に床の補修を行い、その後「2-2:塗装工程」に移ろう。
「フローリング傷の直し方!DIY法から業者費用相場まで全て公開!」
https://shufukulabo.com/repair-scratches-on-flooring
研磨工程
まず塗装のノリを良くするため表面にある古い塗膜や、無塗膜だとしても変色部分や汚れを取り除くために研磨を行う。
既存の保護膜によっては削りが非常に時間がかかる場合もあるので、一度目立たない場所で試しの研磨をしてから、作業範囲や日程の計画を立てると良い。
実際に作業を始めると時間と共に疲れで力加減が変わったり、やすりを取り替えたりすることで、微妙に削りが変わってしまう。
このため慣れないうちは、同じ部屋でも1〜2枚の板ごとに区切って行うなど、ある程度仕上がりの色が変わっても違和感がないような工夫をしよう。
用意するもの
研磨する範囲が小さい場合にはサンドペーパーを使い手作業で研磨を行うが、不慣れな方は削りやすくするため、あて木やホルダーを使っても良い。
ただし手でかけた方がわずかな凹凸や傷を見つけやすかったり、削り加減の違いによる研磨ライン同士の色違いを防げたりする。
初めはサンドペーパーのみで削ってみて、疲れ具合によって道具の購入を検討するのも良いだろう。
・サンドペーパー
・あて木(サンディングブロック)
・ホルダー
サンダーとグラインダーの違い
研磨する範囲が広い場合は電動工具を使っても良いが、購入時に注意して頂きたいのがサンダーとグラインダーの違いだ。
サンダーは研磨専用のサンドペーパーを使う工具で、平坦な場所を滑らかに削るための道具である。
一方グラインダーは円盤状の砥石を回転させ研磨や切断に使える工具だが、研磨と言っても物の角や先端を削る用途向きで、フローリングを滑らかにするのには向かない。
しかし現場ではこの名前が混在していてグラインダーをサンダーと呼ぶ職人も多いため、アドバイスを求めて間違ってグラインダーの方を買わないように注意して欲しい。
商品名の方は明確に分かれているためサンダーの名のついた工具を選ぶようにしよう。
・サンダー
削りカスを後ろの袋に貯めるタイプがお勧め。
・グラインダー
これをサンダーと呼ぶ職人も多いので注意。
作業手順
研磨の基本は粗掛け、中掛け、仕上げ掛けの3回に分け、ペーパーの目は#60→#120→#240の順で行う。
粗掛けは既存の塗膜や劣化の具合によってはとにかく時間がかかるので、時間の余裕を持って行おう。
削りが進むごとに削りカスを掃除することを忘れずに。
また同じ部屋でも塗膜や汚れの具合が違うことも多いため、少し削っては遠目で見て具合を調整していく。
仕上げ掛けは塗装後の綺麗さを左右するため、こちらも時間を多めに取って丁寧に研磨する。
最後に掃除機をかけ雑巾でしっかり拭いて乾いたら完了だ。
ポリッシャーは部分補修向き
より綺麗に仕上げるなら塗装に移る前に、ポリッシャーで仕上げ研磨を行うこともできる。
ただし市販のハンディタイプだと面積が広い場合は、相当な労力が必要になる上に均等に仕上げるのが難しい。
さらに塗装の最後の仕上げで行う場合もあるが、こちらはより綺麗で均等な作業が求められる。
不慣れな方が行うとポリッシャーを掛けた跡が模様のように残ってしまうこともあるため、限られた範囲の補修や作業にかなり慣れた方限定の工程と考えた方が安全だ。
塗装工程
研磨が終わったら塗装に移るが、広範囲に行う場合は住む人の生活動線を確保しながら、何度かに分けて行うようにする。
とにかく時間をたっぷり取り、例え小さな範囲でも何日かかけるつもりで取り組むと失敗が防げる。
2つの塗料の特徴
・オイルステイン
・ウレタンニス
塗料は木の質感を残せるオイルステインと、より保護力の高いウレタンニスがある。
DIYでも簡単に塗装できる反面、オイルステインは定期的な再塗装が必要であり、一方ウレタン系は肌触りが硬くなるというデメリットもある。
施工手順は大きくは変わらないため、仕上がりや耐久性を考慮して選ぶようにしよう。
いずれも水性のものなら匂いが比較的少なく、住みながらの塗装にはお勧めだ。
ただし複合フローリング用のニスを無垢フローリングに塗ってしまうとムラになってしまうため、必ず無垢フローリング用のウレタンニスを選ぶようにする。
色は元の木の色を活かしたいのであればクリアのニスを選び、逆に無垢材の色違いが気になるようなら、濃い色のものを選ぶと目立たなくすることができる。
ウレタンニスはオイルステインに比べツヤがあるため、無垢らしい質感を求める方は注意したい。
用意するもの
・塗料
・コテバケやハケ
平面で広い場所ではコテバケを使い、狭いところや入り組んだ場所にハケを使うと楽に塗れる。
ただし手間はかかるがハケで塗った方が、細かな場所ごとの吸い込みの差による色違いを解消しやすい。
・受け皿
作業手順
十分に研磨のカスを掃除機や雑巾がけで取り除き、しっかり乾燥してから行う。
基本は2度塗りで、1度目がしっかり乾いてから2回目を塗るようにする。
乾燥時間は数時間から1日と塗料によって差があるので、塗料の説明書きを確認し十分に触らない時間を確保しよう。
専門業者に依頼すべきケース
専門業者に依頼すべきケースとしてまず挙げられるのが、仕上がりを重視した研磨、塗装を行う場合だ。
既存の塗膜を完全に剥がしたり、素材に対して均等に研磨したりする技術はプロと大きな差があり、また塗装も豊富な経験があれば塗料の吸い込み具合を確認しながら、念入りかつ丁寧に行えるため仕上がりはDIYと段違いの素晴らしさがある。
そしてもう一つが、広い面積の補修を行う場合だ。
研磨に必要とされる労力は想像以上のため、広い範囲だとDIYでは削ることで精一杯となり、仕上がりに目を向けながら力加減を変えたりするゆとりは殆ど無い。
結果として塗装の浸透が均等にならず色がまばらになってしまうが、これら一連の作業もプロは広い面積だからこそ全体の仕上がりに目を向け、常に広い視野で仕上がり具合を確認しながら作業をする余裕がある。
DIYはあくまで目立たないようにする目的であり、しかも部分的な補修に適した手段であることをご存知頂きたい。
より綺麗に直すなら補修屋がお勧め
もしフローリングの表面に傷や割れがあり、そこを含めて直したいのであれば、補修屋という専門業者がお勧めだ。
補修屋とは床に限らずドアや壁などあらゆる素材の表面にできた傷などを、ピンポイントで直してくれるリペアのプロフェッショナルである。
当然研磨と塗装もお手の物だが、他のフローリング塗装業者と大きく違うのがその傷などを補修する技術だ。
塗装業者はあくまで塗装のプロであり、傷や割れの補修も可能だがメインの仕事ではないため、どうしても専業の補修屋の仕上がりには及ばない。
一方で補修屋は様々な傷の種類と補修方法を日々研究・実戦しており、腕の立つ者であれば補修跡がわからないように傷などを消し去ることができる。
塗装業者でさえ手に余る傷などを塗装前に直す場合、補修屋に依頼するほどで、その腕の確かさがわかるだろう。
以下に補修屋の行う研磨・塗装の様子を紹介した動画があるので、参考にご覧になって欲しい。
他にも傷があると費用対効果が高い
補修屋は床の傷だけでなく、壁やドア、キッチンなど、様々な場所にできた損傷を消すことができる。
そのためフローリングの研磨・塗装を依頼するのであれば、同時に他の場所の気になる傷やシミを一緒に直してもらうと、費用や業者に依頼する手間を省けるだろう。
特にリビングなど人を通すようなところは、床が綺麗になると途端に壁やドア周りの傷、汚れが気になるようになってしまうことが多い。
そこからまた補修を依頼するのは非常に面倒であり、一度で終わらせることが出来る方が、精神的にも楽なのではないだろうか。
同時に他の補修も一括で依頼できるのは補修屋ならでは。
ぜひ一度、他の補修も併せて相談することをお勧めしたい。
補修屋の技術費用相場
ここでは専門業者に依頼した場合の費用相場をご紹介する。
一般的な状態の既存塗膜を剥離する費用込みになっているが、特殊なUVコートや厚塗り、硬化した塗膜などの研磨は別途費用となる。
またフローリングの傷や割れなどの補修費用は別になるが、仕上がりや後々のフローリングの耐久性を考えるなら、しっかりと行っておく方がお勧めだ。
塗料 | ㎡単価の相場 | 備考 |
水性ウレタンニス | 2,800円〜 | |
オイルステイン | 2,500円〜 | オイルステインは自然素材のものや、仕上げに専用ニスを塗るものなど、高額商品も多いので注意。 |
※主張費や廃材処分費は別途
真面目な専門業者を見分ける3大ポイント
普段から補修屋に依頼し慣れていない方は、真面目に仕事をやってくれるか不安になることがあるかもしれない。
いい加減な仕事をされてしまったり後から高額な追加費用を請求されたりと、トラブルになった話しを耳にしていればなおさらだ。
そこでフローリングの研磨・塗装を依頼する相手が、真面目で誠実に対応してくれる者か見分ける、3つのポイントをご紹介する。
しっかりとしたプロの研磨と塗装が行われるよう、依頼先選びに活用して頂きたい。
見積もりをしっかり説明するか
見積もりは単にかかる金額が示されているだけでなく、どのような材料を使いどういった作業が行われるかも書かれている。
これをきちんと把握をしないと適正な金額か判断できないし、万一手抜きをされてもわからないことになってしまう。
残念だが隙さえあれば依頼主に気づかれないよう工程を減らし、金額を浮かせて儲けを多くしようと考えている業者も存在し、そういった手抜き業者にとって見積もり内容は正確に把握してもらいたくないものなのだ。
こうした粗悪な業者に捕まらなために、見積もりを受け取ったらまず金額だけでなく項目が詳しく書かれているかを確認し、それを丁寧に説明してくれるか見定めるようにして欲しい。
アフターケアはしっかりしているか
フローリングに限らないが、補修は完了してから数日経つと光の当たり具合や気温の変化などによって、見えなかったムラや色違いが現れる場合がある。
これらはある程度発生しうる現象なのだが、重要なのは後から気付いたことに対して、しっかりアフターケアの対応をしてくれるかどうかだ。
補修業者への不満で特に多いのが、代金を払ったら放ったらかしにされた、というケースだ、
特に飛び込みやポストにチラシが入っているだけだったり、激安をアピールしていたりするような業者にその傾向が強い。
依頼先を検討する際は上記のような業者を避け、名のしれた大きな会社や、信頼できるところからの紹介など、後々も確実に連絡が取れる相手を選ぶようにしよう。
実績を確かめて選ぶ
補修屋と一口に言っても、その腕には業者ごとに大きな差がある点に気をつけなければならない。
傷などをわからないように消してしまうには、豊富な知識と十分な経験が必要だが、補修屋の中には経験が浅かったり、他の建築系の職人がアルバイトでやっていたりするため、DIYと大差がない仕上がりにされてしまう恐れがある。
そういった被害を避けるためには、依頼の際は必ずその補修屋の実績を目で見えるかたちで確認するようにしたい。
例えば実際の作業を仕上がりまで含め、画像や動画で紹介しているようなら、頼む上で大きな安心材料になるだろう。
くれぐれも口先だけの「経験豊富」に騙されないよう、気をつけて頂きたい。
火災保険で床の補修費用を抑える
床の補修費用を出来るだけ抑えたいのであれば、ご自分の加入する火災保険を確認してみよう。
火災保険と聞くと火事の時にだけ使うものと思いがちだが、実は現代の火災保険は自然災害や盗難の被害など、家に関する様々な損傷を補償する総合保険になっている。
もしフローリングなどに条件に合う損傷があれば、保険でその補修費用が補償され、0円で直せる可能性さえあるのだ。
そこで実際にどのようなフローリングの損傷が対象になるのか、そして保険を利用して補修を行う際の業者選びの注意点を解説する。
どのような補修が補償されるのか
まず火災保険に「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」という項目があるかを確認しよう。
これはフローリングにうっかり物を落として傷付けたり、お子さんがおもちゃを投げてへこみを作ったりと言った、突然発生した傷や汚れを補償するものだ。
損傷ができた日時や原因がはっきりしており、傷んだ部分の機能に支障が出ていると補償対象となりやすい。
あるいは「風災」を補償する火災保険なら、例えば台風で屋根が損傷して雨漏りが発生し、フローリングに染みや割れなどが発生したなら補償の対象となる。
一方で日焼けなど時間と共に自然と劣化した損傷は対象とならない。
その他保険によって細かな適用条件や、最低限の自己負担分が設定されている場合もあるので、詳細を保険加入時の書類で必ず確認し、不明な場合は保険会社に直接問い合わせるようにしよう。
保険で補修する場合の業者選び
保険を利用する場合は、その損傷原因を正確に保険会社に書類で伝え無ければならないが、もし保険申請の経験の浅い専門業者へ依頼してしまうと、十分な申請書類を作ることが出来ず、保険適用を拒否されてしまう可能性がある。
損傷の原因を書面で伝えるためには、的確な写真と専門的な建築やメンテナンスの知識が必要であり、これらは研磨・塗装とは全く別の知識が必要だ。
経験が乏しいと十分な申請ができず、せっかく保険料を支払ってきたのに肝心な時に保険を使えない、ということになりかねない。
保険を利用して補修を行う際はその技量だけでなく、申請の実績もしっかりと確認した上で依頼先を選ぶようにしよう。
まとめ
フローリングの劣化は確実に日々悪化するため早急な対処が必要だ。
もしDIYで補修が可能ならスピーディーでしかも安価に行えるため、積極的にトライをすべきだろう。
ただし、より綺麗に修復したい場合や、広い面積で研磨・塗装をするなら、リスク回避のために専門業者へ依頼をすべきだ。
フローリングは毎日歩き目にする部分のため、今回の価格相場や真面目な業者を見分けるポイントを参考に、適正な出費でしっかりした仕上げの研磨・塗装を行って欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。