外壁などによく使われるコーキング、実は耐久性はそれほど長くはなく、10年を越えれば劣化している可能性が非常に大きい。
外壁コーキングの劣化を放置してしまうと、建物内部に深刻な損傷を与えることになる。もしひび割れなどを発見した場合は早急に対処したいところだ。
しかし専門業者に依頼すれば一定の金額がかかる。とはいえ安く済ませるためにDIYで補修することが可能なのか大いに悩むところだろう。
今回建築のプロである一級建築士がお伝えする、DIYと専門業者が行うコーキング補修との金額を含めた違いをご理解頂ければ、自身にとってどちらがベストな選択なのか参考にしてもらえるはずだ。
また記事の中では、コーキングがある見落としがちな場所や、信頼できる専門業者の見分け方もお伝えしているのでぜひ最後まで目を通して欲しい。
この記事読むことで理解できること
古いコーキングの劣化を放置する危険性
コーキングの大切な役目の一つが防水だ。外壁の隙間などを塞ぎ、雨水の浸入を防ぎ、壁内にある建物の構造体を守ってくれている。
しかし外から見ただけでは、壁の内部被害が目に見えないため、コーキングの割れなどトラブルに気づいていても対処を後回しにしている方は実に多い。
壁の内部で発生する被害が恐ろしいのは、損傷が目に見えないところで進行してしまい、目に見えるようになったころには被害は重症化してしまっていることだ。
そしてもう一つの大切な役割は、緩衝材としての役割だ。硬く重いサイディングなどの外壁材のパネル同士をつなぐコーキングには、弾力性がある。地震などによる振動を吸収して、外壁の損傷を防いでくれるのだ。こういった役割も、コーキングが劣化していれば効果が失われてしまう。
まずここではコーキングが劣化して発生する建物被害を、改めてお伝えしておきたい。
腐れや錆・シロアリ・雨漏りの発生
コーキングに割れがあると、そこから雨水が入り、壁の中に浸入する。壁の中は、大抵の場合水を防ぎ、湿気をためないように壁内通気工法が取られ、防水シートが貼られているので、すぐに壁内の構造材など重要な部分に水が浸入することはない。
しかし、防水シートに経年劣化や施工不良で隙間があれば、壁の内部へと雨水は浸入する。
壁の内部にと雨水が浸入すると、壁の中に湿気が溜まり木材であれば腐れ、鉄であれば錆といった腐食を引き起こし、建物を支える大切な構造部分の材料強度を弱くし、最悪は破壊してしまい、危険な状態になってしまうだろう。
さらに壁の中の湿気はシロアリの食害被害ももたらしかねない。湿気と暗い環境はシロアリが最も好む状態であり、発生の危険性が非常に高くなる。
シロアリは木材を食べ荒らす事で、建物の耐久性や耐震性を大きく低下させてしまう。
コーキング割れが小さく、浸入する雨水は僅かに見えるが、閉ざされた壁内はその水を溜め込み、被害が大きくなって行く。決して油断してはいけない。
雨水が外壁コーキングのひび割れから浸入するのは、壁内だけではない。室内へ雨漏りとして現れ、部屋の壁紙にシミやカビを作り、付近にある家具や家電を濡らし被害を与える。
また電気製品を濡らすと漏電が発生する危険もある。何度もブレーカーが落ちると、精密機器であるテレビやパソコン、そして周辺機器の故障に繋がっていくし、配線に痛みがあれば、ショートしてしまうこともあるのだ。
雨漏りが室内側へ現れるということは壁内にも必ず雨水が染み込んでいる。当然構造体にも影響があることも忘れてはならない。
外壁のズレや破損
コーキングの役割である、外壁パネル間の緩衝材として機能が弱くなるとどのようなことが起こるのだろうか。
建物は地震だけでなく、大型車両の通行、近隣の大規模工事などの日常的な振動により頻繁に揺さぶられている。
当然建物も一緒に揺れるのだが、この時外壁パネルは右へ左へと微妙に動く。パネル同士がそれぞれ動くのだ。
そのような状態の時、外壁パネル同士の継ぎ目にあるコーキングが、クッションとして機能し、その圧力を吸収、さらにはその弾力性で元へ戻す作用もしているのだ。
こういった働きにより外壁が損傷することを防いでくれている。
しかしコーキングが劣化すれば、そもそも持っていた弾力性が失われ、その効果は弱まり、外壁材そのものの割れや破損を引き起こすことになるだろう。
肉やせ・ひび割れ・破断・剥離/補修のタイミングは?
コーキングには寿命があり、特に外壁など外部に使われている場合には、紫外線や風雨の影響で劣化が早くなる。5年から10年が寿命と言われるが、施工されている場所の条件によって、劣化の速度が変わってくる。
補修を行う上で適したタイミングは、その表面に現れる劣化によって見分けることができる。
ここでは、肉やせ・ひび割れ・破断・剥離の4つのトラブルを紹介し、どういったタイミングで補修すべきかを見て行こう。
ひび割れや肉やせは本格的な損傷の手前ではあるが、早期発見と素早い対処が被害を最小限に抑えてくれる。
ぜひご自宅の外部を一回り点検し、気になるようなら専門業者に点検をしてもらうと良いだろう。
①肉やせ
コーキングの表面が硬くなり、施工時よりも徐々に凹んで痩せてくる。これが「肉やせ」で、変色することも多く近くで点検をすればすぐに気づくことができる。
コーキングには可塑剤という柔軟性を持たせる成分が入っており、これが年数とともに徐々に抜けて縮んでいくのが肉やせの原因だ。
痩せて凹んだように見えるだけで、具体的被害はまだ起きない段階だが、時間が経つと劣化が進み、ひび割れや剥離が発生する可能性が高い。発見した場合は注意して定期的に点検していくことが必要だ。
②ひび割れ
コーキングは、紫外線や風雨に当たることで柔軟性が失われてくる。そうすると現れるのがひび割れだ。
ひび割れも劣化の初期症状で、日当たりや周りの環境によるが、早ければ施工から5年前後から現れてくる。
細かいひび割れの場合、緊急性はまだ無いが、ひび割れが深くなれば次の破断の前兆であるため定期的に観察するようにしよう。
③破断
ひび割れを放置しておくと症状が進む。ひび割れが深くなり、コーキングの向こう側まで割れが貫通する「破断」に至る。
こうなると破断部分から壁内へ雨水が入り込むことになる。またコーキングの収縮や外壁の動きと共に割れが広がっていく。破断がある場合は、早急に対処するべき状態だ。
④剥離
本来コーキングは外壁の動きや収縮に追従し、一緒に動くのだが、年数が経って肉やせしたコーキングは硬化があるため外壁の動きに付いていけず、外壁との接着面(両側面)に剥離が起きる。
この場合も外壁の内側へ雨水が侵入してしまうなど被害へ繋がっていくため、早急に対処し、補修を行う必要がある。
コーキングの基礎知識
コーキングは身近な建材だが、身近な分、具体的で基本的な知識が少ないかもしれない。
ここでは、どういった種類があり、どのような場所で使われているのか、基本的なことを見て行こう。
コーキングの補修をする前に、基本を知って、効果的な補修につなげたい。
コーキングとシーリングの違い
コーキングはシーリングと表現されることもある。
違いがあるのだろうか?
どちらも接着剤の一種であり、シーリングは、目地や隙間に充填して防水性、気密性などの機能を発揮させる材料全体のこと。
コーキングはペースト状のシーリング材のことであり、厳密に言えばシーリング材の中の1つの種類にコーキングがあるのだが、業界内では区別して用いられることはほとんど無い。専門業者でさえ同じ意味で使用しているため特に分けて考える必要はないだろう。
コーキングとシーリングは建築で用いる場合は、意味は全く同じと考えて良い。
種類と特徴/ウレタン・変性シリコン・アクリルなど
コーキングにはいくつか種類があり、選択を間違えるとせっかくの補修が無駄なものになる恐れがある。
ここではその種類と特徴、用途を解説するので選ぶ上での参考にして頂きたい。
①ウレタン系コーキング
主にコンクリートのひび割れの補修や木材に使用する。
耐久性が高く施工後はゴムのような弾性を持つ上に外壁材との付きも良いため、外壁目地に非常に適している。
ただし紫外線に弱いため、上から塗装することが前提となるため、外壁塗装と同時に使用するのが一般的だ。
②シリコン系コーキング
お風呂やキッチンなどの水まわりでも使われるコーキング剤として最も普及している。
耐久性、耐候性、耐熱性、撥水性があり、手頃でありながらバランスが良いコーキング剤だ。
油を出すため上から塗装ができないため後々外壁塗装をするなら避けた方が良い。
外部で使う場合は、タイル外壁など塗装を行わない外壁材に使った方がベターだろう。
③変成シリコン系コーキング
施工後塗装ができるため、主に外壁で使われるコーキング剤。
水まわりでも使用ができる万能型で、シリコン系と比べると耐久性、ウレタン系と比べて密着性が劣るが、色数も豊富なため外壁のひび割れ補修にも使われる。
用途が広く、性能も十分なため、迷った場合はこれを選んでおけば間違いは無いだろう。
④アクリル系コーキング
濡れている場所でも使用できるメリットはあるが肉やせしやすい上に耐久性も低い。
現在はほとんど使われなくなってきており、外壁の補修で使われることもないので、間違って購入しないよう注意しよう。
コーキングの種類一覧
種類 | 価格 | 特徴 |
ウレタン系 | 518円/本(320ml) | 弾性や付着性は高いが紫外線に弱く上から塗装が前提 |
シリコン系 | 431円/本(330ml) | 手頃で耐久性が高いが上から塗装できない |
変成シリコン系 | 598円/本(333ml) | 上から塗装が可能で耐久性もある万能型 |
アクリル系 | 841円/本(330ml) | 耐久性が低く外壁補修には不向き |
⑤2液混合型について −1液型との違い
主剤と硬化剤が別々になっており、施工前に2液を混合してから使用するのが2液混合型だ。
1液型とは主剤と硬化剤が混ざった単品でそのまま使用できるものを指す。上に紹介した①〜④は全て1液型になる。
1液型は、取扱いが簡単で少量からネットで手軽に手に入るためDIYに適している。
2液混合型は、1液型に比べ、価格は抑えめで耐久性は高いというメリットがある。
しかし硬化が速く保存が難しいため使用量を適切に見極める必要があり、主剤と硬化剤をしっかりと攪拌してから使用する必要がある。しかも購入時の梱包量も多いので、扱いに慣れた専門業者向けと言える。
DIYではよほど広範囲を施工しない限りは1液型を選んだ方が良いだろう。
外壁周りのコーキングはどこに使われているか?
外壁のコーキングと言うと、サイディングなど外壁パネルの継ぎ目部分が最も目につくが、その他にもコーキングが施工されているところは多い。
パネルの継ぎ目部分のコーキングが劣化しているということは、他のコーキングも同様に傷んでいる可能性が高く補修の必要も出てくると考えるべきだろう。
コーキングのチェックをするときに、パネルの継ぎ目部分以外にも注意を払っていただけるよう、主だったコーキング施工箇所を挙げてみたい。
外壁パネルの継ぎ目・窓枠サッシ周り
最も代表的で施工量も多いのが外壁のパネルの継ぎ目部分のコーキングである。
タイル貼りパネルや事前に工場で塗装がされてくるデザインサイディングの場合は、コーキングに塗装がされておらずそのままの状態のため、紫外線や風雨の影響を直接受けることになり劣化が早い。
新築時にコーキングの上から外壁と一緒に現場で塗装される場合には、塗装が保護膜の役目をして多少コーキングの寿命は長めになるはずだ。
一度自宅のコーキングがどのような状態か確認してみると良いだろう。
窓枠サッシ周りも防水のためにコーキング処理がされている。
パネルの継ぎ目と比較すると、劣化が幾分遅い印象があるが、やはり日当たりのいい南側のサッシ周りなどのコーキングは、劣化が早い。
またサッシ上部のコーキングは、外壁を伝って落ちてきた雨水が、サッシの上部の出っ張りに溜まり、濡れて乾いてを繰り返すことで劣化が早まることもある。
外壁パネルの継ぎ目部分と同様、わかりやすいので、一度状態を見てみることをお勧めする。ただし、窓上部や2階の窓など脚立などが必要な部分は、十分安全に注意して行おう。できれば専門の業者に点検してもらうと良いだろう。
換気扇フード・照明器具
換気扇の排気口に被さる外部フードの周りにもコーキングが施工されている。
目立ちにくい場所だがコーキングが割れて内部へ浸入すれば、換気扇ダクトがトンネルの役目をして壁内や室内へ雨水が流れ込みやすい。
以前はキッチンやトイレなどの水回りにしか換気扇は無かったが、2003年の建築基準法の改正で24時間換気の設置が義務付けられ住宅の換気口は一気に増えた。水廻りのほか、リビングやホールなどにも給排気様の外部フードがそれぞれ設置されている。
このため換気フード周りのコーキング劣化による雨水浸入のリスクは高い状態だ。
外部フードの上部や2階に設置されているものは一般の方には点検しにくいので、なるべく専門業者に点検してもらうと良いだろう。
玄関灯に始まり勝手口灯、あるいは死角になる場所に防犯灯など、外部の照明器具周りにもコーキングが施工されているものがある。
上方に屋根があれば劣化は幾分抑えられるが、剥き出しや南側に設置されている場合は劣化が速いため、こまめに点検をして頂きたい部分だ。
照明はひび割れから雨水が浸入すると器具の故障はもちろん、漏電にも繋がる危険性があるので注意をして頂きたい。
取り合い部分/下屋・腰壁
2階建ての建物の1階の屋根を下屋と呼ぶ。屋根の部分が2階の外壁に差し込むようになっているため、外壁に屋根が接している箇所にもコーキングが打たれている場合が多い。
通常は板金で防水をされているが、補助的にコーキングが打たれていることも多い。
特に屋根周りは受ける雨量が家の側面とは比べ物にならないので、さらなる注意が必要になる。
また雨漏りが発生すると雨量が多いことから室内はもちろん天井裏や壁内といった構造体への被害も大きくなるため、該当箇所は少ないが常に注視して頂きたい部分と言えるだろう。
ベランダやマンションの外部廊下は腰高の壁で囲まれているが、これと外壁とのジョイントにもコーキングが施工されていることが多い。手すりなどがついていれば、その継ぎ目にもコーキングが施工されている。
こちらも雨が直接当たるし、日光も当たるため劣化が非常に早く漏れの被害も大きいと言える。
特にベランダはそれ自体が重く荷重もかかっており、もし内部の構造体が損傷すると深刻な被害が心配されるため、必ず専門業者へ連絡し確認をしてもらうようにしよう。
コーキングのDIY補修方法とコツ
では劣化したコーキングをDIYで補修する方法とその費用相場をお伝えしたい。
コーキングは簡単なように見えて実は行う作業は多く、しかも材や方法の選定など配慮すべき点は少なくない。
ぜひじっくり目を通して頂き、手間を省かず丁寧に作業を行って頂きたい。
打ち替えと増し打ちの違い
最初に知っておいて頂きたいのがコーキングの補修には「打ち替え」と「増し打ち」の二通りの方法があることだ。
「打ち替え」は既存のコーキングを綺麗に撤去してから新たにコーキングを施工する(打つ)。完全に新しくしてしまう方法だ。
剥がれの心配が比較的少なく、手間と費用は増し打ちよりもかかるが、ぜひ採用して欲しい方法だ。今回は次の章でこちらをご紹介する。
一方「増し打ち」は既存のコーキングの上に新規のコーキングを重ねて打つ方法で、作業は短時間で済み費用も抑えられるためDIYで行う方もいるが、耐久性に劣り持ちが良くない。
増し打ちは、数日のうちには専門業者へ本格的な補修を依頼する、などの際の応急処置と考えた方が良いだろう。
上手に仕上げる手順と道具
それではDIYで行うコーキングの打ち替え手順と道具をご紹介するが、実際に行ってみると意外に重労働であり手間もかかるため、作業時間を多めに確保することをお勧めする。
ちなみに35坪程度の住宅のコーキングの全長は200m以上ある。2階建て以上なら、作業に足場の設置も必要となるため、家全体のコーキング打ち替えをDIYで行うのは現実的ではない。
もし一階だけでもトライしたいという場合は、試しに数メートルほど施工してみてから、作業を続けるか検討する方が良いだろう。
撤去〜マスキングテープで養生
まず、既存のコーキングの撤去、目地底の確認、マスキングテープで行う養生、までの工程を紹介する。使用する道具類も一緒に紹介するので参考にしてほしい。
①既存のコーキングの撤去
外壁とコーキングのジョイントをコーキングカッターで切り、パネルの継ぎ目に先端が入るような細いラジオペンチなどで引っ張り出す。
その後、外壁断面にコーキングがわずかに残っているので、それもカッターできれいに剥がす。
この断面の剥がしを丁寧にやるかやらないかで、新たに打つコーキングの付きが全く変わるので、決して手を抜かないこと。
【ここに注意!】
通常のカッターでは時間が非常にかかる上、手が痺れてしまい作業に支障が出るため、専用のものは必須だ。
また刃はすぐ切れなくなるので予備を数枚用意しよう。
・コーキングカッター
・ラジオペンチ
・コーキング取り
コーキング取りは必須ではないが、コーキングが硬化していたり、目地底にも接着されていたりして取りにくい場合にあると助かる道具だ。
パネルの継ぎ目の幅と合ったものを選ぼう。
②目地底を確認しボンドブレーカーなどを施工
コーキングは両脇の外壁材の断面との2面接着のみとし、目地の奥の面=目地底には接着しないようにする。
目地底を含めた3面接着にしてしまうと、外壁が動いたり収縮したりの際にコーキングが追従できず外壁から剥がれてしまうからだ。
そのため目地底にはハットジョイナーというバックアップ材が取り付けられ、さらにその表面にコーキングが付着するのを防ぐボンドブレーカーが貼られている。
コーキングの打ち替えで既存コーキングを剥がす際にこのボンドブレーカーが一緒に取れてしまうことがあるので、その場合はマイナスドライバーなどを使い新たに貼ることになる。
またボンドブレーカーが元から貼られていない手抜き工事も有り得るので注意して欲しい。
・ボンドブレーカーテープ
またハットジョイナー自体が無かったり、他種のバックアップ材が付けられていたが既存コーキング撤去の際に取れてしまったりの場合は、新たにバックアップ材を設置する。
後入れできるバックアップ材の多くは接着を防ぐボンドブレーカーを兼ねた材質だが、念の為確認してから購入すること。
・バックアップ材
【ここに注意!】
新たにバックアップ材を詰めたときなど、新たに打つコーキングが10mmの厚みを確保できるかどうか確認してほしい。厚みが薄くなってしまうと耐久性が著しく落ちてしまう。
もし10mm以上確保できない場合は、残念だがDIYではなく専門業者に補修をしてもらうことをお勧めする。
既存コーキングを全て撤去してから10mmを確保できないことが判明すると、それまでの作業が無駄になる。まず確認用に一部だけを撤去して、ハットジョイナーの有無や壁厚を確認するとスムーズだ。
③マスキングテープで養生をする
コーキングが施工箇所の周辺に付着しないようにマスキングテープで養生する。
このとき目地の内側(外壁の断面)にテープが入り込まないように注意しよう。
・マスキングテープ
ここまでの工程で、コーキングを新たに打つ準備が整ったことになる。
プライマー塗 〜 コーキング・養生はがし
続いて、プライマー塗からコーキングを打地仕上げるまでを説明しよう。
④プライマーを塗る
まずは、コーキングの付きを良くするプライマーを両側の外壁材の断面に塗る。
プライマーはこの後のコーキングと外壁の密着性を高める。
【ここに注意!】
この工程を丁寧に行うかどうかで、コーキングの付きが変る。耐久性を持たせるためにもしっかり行いたい。
・プライマー
⑤コーキングを打つ
コーキングガンにコーキング剤を取り付け、コーキングをパネルの継ぎ目に打っていく。
初めは難しいかもしれないがなるべくテンポ良く打った方がうまくいく。
1本のチューブで3mほど打てることが使用量の目安となる。
【ここに注意!】
コーキングは仕上げの時に厚みを確保することが大切だ。この後の工程で、ヘラでならすが、その時に余分なコーキングを取るつもりで出来るだけ多めに打とう。
・変性コーキング
・コーキングガン
⑥ヘラで形を整え養生テープを剥がす
打ったコーキングを、ヘラでならす。ヘラで盛り上がりを取り除きながら丁寧に成らしていき養生テープを剥がして完了。
コーキングの乾燥時間は商品や季節によって違うが概ね2日〜1週間と言ったところだ。
表面は固まっても中まで乾燥するのは時間がかかるので注意が必要だ。
【ここに注意!】
DIYである程度の距離を施工する場合は、2〜3メートル打つごとに均しと養生テープの剥がしを行うと良いだろう。
まとめて長い距離を打ってから均しやテープ剥がしを行うと、コーキングの表面が固まり始めてきれいに出来なくなる。
・ヘラ
コーキングのDIY費用相場
下記はDIYにかかる金額だ。目安として3m施工した場合で試算した費用相場だ。
3mは、ちょうどコーキングのチューブ1本で打てる長さで、概ね1階の外壁の上から下までの長さに相当するので参考にして欲しい。
材料 | 価格 | 備考 |
コーキング材 (変成シリコン) | 545円 | 1本(概ね3m施工可能) 初心者の方は予備を1本購入しておく |
ボンドブレーカーテープ | 808円 | 必要な場合 |
プライマー | 636円 | 1缶あたり22m施工可能(メーカー推定値) |
養生テープ | 779円 | |
コーキングカッター +ラジオペンチ | 3,420円 | |
コーキングガン | 390円 | |
ヘラ | 517円 | |
合計 | 7,095円 |
※金額は記事作成時のもの
DIYの危険性(安全・耐久性)と注意点
DIYは、金額が抑えられるというメリットはあるが、反面、デメリットともいえる十分に気をつけて頂きたい点もあり、結局は高くついてしまうことも有り得る。
DIYだけでは補えない部分がある。DIYは、あくまで応急処置と捉え、あまり時間を空けずに専門業者の補修を依頼するようにしよう。
・施工時の安全性の確保
最もDIYで気をつけなければいけないのが安全の確保である。
コーキングは高所に打たれていることも多く、高所で両手を使って作業をすることになる。例え脚立からでも落ちた場合は大怪我をしかねない。
職人が工事する姿を見ればわかると思うが、どんな小さな工事でも必ずヘルメットを被っている。もちろん建設の安全基準であるが、彼らがどんな現場にも危険が潜んでいることを熟知しているからなのだ。プロでないならなおさら安全に配慮しなければならない。
コストダウンのためにDIYを行ったはずが、怪我をしてしまえば、治療費の他にも仕事を休むことになるなど損失は大きい。
ぜひ2階以上の作業などはぜひ避けて頂き、低い場所でもヘルメットを着用の上、安全に留意して行って欲しい。
・耐久性に大きな不安
施工したコーキングの耐久性に影響するポイントは既存のコーキングをいかに綺麗に剥がせるかどうかと、プライマーを丁寧に塗れるかの2点にかかっている。
しかし既存コーキングの撤去は、想像よりはるかに重労働であり、丁寧に行うのは時間も体力も必要だ。作業場所が不安定であれば、撤去する作業はもちろん、プライマーの塗布やコーキングの施工も雑になる可能性が高い。
せっかく打ったコーキングが短期間で取れてしまい、結局専門業者に依頼するようであれば、最初に行ったDIYの時間と費用は無駄になってしまうだろう。
時間が十分に取れなかったり作業の精度に不安があったりするようなら、初めから専門業者に依頼する方が安上がりかもしれない。
DIYの注意1:外壁のひび割れは手を出さない
コーキング部分ではなく、外壁材そのものにひびが入ったり、割れたりしていることもある。外壁のひび割れも一見コーキングでDIY補修できるように見えるかもしれない。
しかし外壁材のひび割れ補修はコーキングの付きが良くなるよう断面を専用工具で削ってから打つのだが、これは簡単に身につく技術ではない。
しっかり加工を行わないとコーキングの付きが悪いばかりか、まず間違いなく汚い仕上がりになってしまうだろう。
確かに安く済むかもしれないがそれ以外にメリットは全く無く、多くの方が後悔するのが外壁ひび割れのDIY補修だ。
こちらのDIYは決して手を出さず、早々に専門業者へ依頼することを強くお勧めする。
DIYの注意2:サッシ周りを打つ場合の注意点
これまでご紹介した通り、コーキングの補修は打ち替えがお勧めであるのだが、サッシ周りの場合は既存のコーキングを剥がす際に、奥にある防水テープをカッターで切ってしまう可能性がある。
サッシ周りは雨漏りのリスクが大きいため、外壁を施工する前にサッシの4方に防水テープが施工されている。サッシを取り付ける際に重要な手順なのだ。
その防水テープを傷つけてしまうと、雨漏りのリスクが大きくなり、しかも修繕には外壁を剥がす必要があり、非常にしづらい部分でもある。
せっかくコーキングを新しくし打っても防水性能が不十分になってしまう。DIYでサッシ周りを補修する際は増し打ちをお勧めする。
またサッシの上部にコーキングが施工されていなかったり、一部空いていたりする場合があるが、これはサッシ上の外壁の割れなどから雨水が侵入した場合の水抜きとして空いている。
ただその効果は壁内の構造やサッシのサイズなどを根拠に、専門業者やメーカーの間でも意見が分かれている。
DIYでは増し打ちのため形状はそのままとなるが、心配であれば専門業者に相談した方が良いだろう。
専門業者へ依頼した場合の費用相場と注意点
ここでは専門業者へ依頼した場合の費用の相場をお伝えする。
ここまでお伝えしてきた補修の内容やDIYのデメリットなどを良くご理解頂いた上で、金額を検討してもらうと的確な判断が行えるだろう。
特に補修した後の持ちや作業時間の違いは金額だけでは見えない大きな要素だ。
また専門業者の見積もりを比較する際は、打ち替えなのか増し打ちなのかや使う材料をしっかり確認をするようにしよう。
特に安価な業者の中には増し打ちで見積もりを作り安く見せる悪質な者もいるので注意をして頂きたい。
ここでは専門業者へ依頼した場合の費用の相場をお伝えする。
ここまでお伝えしてきた通り、DIYで全てが補修できるわけではないし、専門業者に依頼すべき補修もある。補修の内容などを良くご理解頂いた上で、金額を検討してもらうと的確な判断が行えるだろう。
特に補修した後の耐久性や作業時間の違いは金額だけでは見えない大きな要素だ。
また専門業者の見積もりを比較する際は、打ち替えなのか増し打ちなのかと、使う材料をしっかり確認をして比較するようにしよう。
特に安価な業者の中には、増し打ちで見積もりを作り、安く見せる悪質な者もいるので注意をして頂きたい。
・専門業者の費用相場
下表は約35坪の戸建て住宅で外壁周りを全て補修した場合を想定し、コーキングの距離を仮の240mで計算している。
ただこの距離は外壁の種類や建物構造、屋根形状などで大きく増減し、実際には打ち替えと増打ちが混在したり、全面ではなく劣化部分だけを補修したりする場合もあるので、あくまで目安として欲しい。
打ち替え | 増し打ち | |
m施工単価相場 (材工共、変成シリコン使用) | 1,200円 | 900円 |
既存撤去費 | 30,000円 | 0円 |
240mの合計 | 318,000円 | 168,000円 |
※業者によって別途諸経費がかかる場合がある。
・足場の費用と必要性
コーキング補修をする場所や広さによっては、足場が必要になる場合がある。
建設業者には守るべき安全基準があり、現在どの専門業者も安全面は非常に重視している。一昔前と違い「そんな簡単な作業でも必要?」と一般の方が思われる場所でも設置するようになってきている。
「昔頼んだ時は、足場は設置しなかったのに」という声も良く聞かれるのだが、安全への対応は時代とともに変わってきており、何より自宅で職人に大怪我されるのは、依頼した側も気分が良くないはずだ。
また1階でも軒裏などのように、脚立では安定した姿勢を長時間取れない場合に足場を設置することもある。
これは補修作業の丁寧さ=仕上がりの質に繋がり、必要とされた場合はそれだけしっかり仕事をしたいのだなと理解し設置するようにしよう。
・外壁塗装と一緒に行うことのメリット
広範囲のコーキング補修を行う際に、外壁塗装を同時に行うことをお勧めしたい。
前述の通り広範囲のコーキング補修では、足場が必要になることが多い。足場があることでコーキング補修の精度が上がるとともに、隅々まで家の点検を行うこともできるだろう。
外壁の塗装は定期的に行う必要があるが、足場をかけないとできない工事だ。コーキングの施工と一緒に施工すれば、足場をかける費用が1回で済むわけだ。
また、補修したコーキングの上から塗装ができるので、耐久性を増すことができるし、外壁との色違いも防ぐことができる。
コーキングが劣化しているということは、外壁の塗装も遅かれ早かれメンテナンスが必要になることが多いから、十分に検討の余地があるだろう。
・少量のコーキング補修費
コーキングの補修が一部だけの場合、少量の補修を依頼することになる。専門業者へ少量の補修を依頼した場合、DIYで目安とした3mの補修工事であれば3万円前後が費用の相場だろう。
全体補修から比べれば割高だが、移動も含めれば最低でも半日は職人を取られるため仕方が無いのかもしれない。
こういった場合は、ある程度広い範囲を依頼した方が1m当たりの単価という意味では下がっていくので、先々痛みそうな部分も予防の意味で加えて補修してもらった方が良いだろう。
信頼できる業者を選ぶ4つのポイント
信頼できる業者を既にご存知の方は良いが、そうでない方も多いのではないだろうか。
せっかく補修を依頼しても、金額を吹っかけられたり手抜きをされてしまったりでは、全く意味の無い出費になってしまう。
業者を選ぶ際は必ず見積もりを取ること。その上で、それが適正かどうかを見極める必要がある。ここでは適正な価格で真面目に工事を行ってくれる業者の選び方のポイントをお伝えするので、ぜひ目先の安さに惑わされず、しっかりした専門業者を選んで頂きたい。
ポイント1:すぐに契約を迫ってくる業者は危ない?
見積もりを渡されたその場や翌日など、短時間に返答を迫ってくる業者は注意をした方が良いだろう。
見積もり金額を、余計に上乗せしてあって、他社と比べるなどじっくり検討されると困るか、仕事が無く困っているかのどちらかの可能性が大きい。
腕の良い業者は、金額に明確な根拠があり、余計な上乗せはしないものだ。依頼も当然多いため相手の返答を無理に急かす必要も無いはずだ。
仕事に困っている業者は仕事が来ない理由があるわけで、そういった相手に補修を任せるのは安心できないだろう。
ポイント2:工程をしっかり説明してくれるか
工程とはどのような作業をどのタイミングで行うかの計画のことだが、これを依頼主に説明することでしっかりした工事内容で手抜きの無い仕事を約束する重要な意味を持つ。
業者は工程を元に職人や材料の手配を行うので必ず工程は存在するのだが、「様子を見ながら」や「臨機応変に」などあやふやな言葉で煙に巻き、説明したがらない業者は要注意だ。
どういった内容の工事をどういった手順で行うのか、工程を確認するとわかるのだ。本来行うべき作業を抜いて費用を浮かそうと考える業者は、工程を知られてしまうと手抜きが出来なくなるため説明をしたがらない。
工程の説明はそうしたことを防ぎ、さらにコーキングの場合なら打ち替えか増し打ちなのか、プライマーをしっかり塗るかなど、様々なことの確認にもなるためしっかり説明してもらうようにしよう。
ポイント3:一式見積もりに注意
見積もりが一式表記になっている業者も注意が必要だろう。
確かに短時間で終わる作業の工賃や会社にある在庫を使う材料費などは、金額を計算するのが難しく一式金額になってしまうことはある。
しかし重要なのは金額ではなく、何という材料を使いどのような作業を行うのかが見積もりの明記されていることだ。
例えばコーキングならどういった種類を使うのかがわかり、しかも相場以上の上乗せを防ぐ効果もある。
もし明細が無く一式出しの見積もりを平然と作ってくる業者であれば、気をつけた方が良いかもしれない。
ポイント4:飛び込み業者は避けよう
いきなり訪問してきて「お宅のコーキングは傷んでいて至急補修をしないと危険だ」などと声を懸けてくる業者も注意をしたい。
大抵は通りすがりの雑な仕事をし、早々に代金を回収して音信不通になる場合が多い。
特にコーキングの補修は日が経ってから不具合が出る事も多いため、後日対応して貰おうとしても連絡がつかなければお手上げとなってしまう。
またポストにチラシが入っているような業者も同様で、身元がはっきりしないところは避けた方が無難だろう。
ぜひ名のある会社や信頼できるところからの紹介など、しっかりしたアフターフォローが期待できる業者を選ぶようにしよう。
自然災害による補修は火災保険が適用される!?
外壁のコーキングの修理が突然必要になれば手痛い出費となりかねない。ぜひ確認して頂きたいのが加入している火災保険だ。
火災保険は火災の時だけに使うイメージがあるが、実は台風や竜巻、大雪や雹、土砂災害などの自然災害による損傷の補修費を補償してくれるものがある。
現実的にはコーキングの損傷は経年変化によるものが多いため対象になることは少ないかもしれないが、もし原因が該当すれば修理費の自己負担を軽減できるかもしれない。
一度申請の実績が豊富な専門業者へ相談し、原因の調査を行ってもらうと良いだろう。
まとめ
外壁のコーキングは放置しておくと、想像以上の被害を住宅にもたらすため安易に放置してはいけない。
また一見するとDIYで補修が可能なように見えるため、金額を抑えるために検討される方もいるだろう。
しかし専門業者の補修とは決定的な違いがあるため、DIYは応急処置と捉え必ず専門業者の点検や補修を行って欲しい。
また金額は確かにかかるが外壁塗装を同時に行うといった、総額を抑え将来的なメンテナンスも兼ねた安心できる方法もある。
ぜひ長期的な視野で適切な方法を選び、トータルの出費が抑えられるようにして頂きたい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。