玄関に傷んでいるところや不便なところがあるなら早急にリフォームするべきだ。
玄関は毎日通る場所のため壁や床、タイルなどが劣化していれば痛みの進行は早く、収納が足りなければ靴などが散乱して見苦しい姿を来客に晒すからだ。
そこで今回は建築のプロである一級建築士が、自分でできる玄関リフォームを詳細に解説させて頂く。
併せて業者へ頼んだ場合の費用相場や、一般の方が行うには難しく業者に頼んだ方が、間違いがないケースもご案内している。
ぜひ最後までお読み頂き、手頃にきれいで便利な玄関にリフレッシュするため活用して欲しい。
この記事読むことで理解できること
玄関のリフォームにかかる費用相場
まずは玄関まわりの代表的なリフォームを、専門業者へ頼んだ場合の費用相場をご紹介しよう。
使う材料や工事する広さによって金額は増減するが、プロへ依頼するか検討する材料にはしてもらえるはずだ。
ただしリフォーム工事は各種の工事が重なりあうことが多いため、正確にご存知になりたい方は、一度見積もりを取ることをお勧めする。
工事内容 | 費用相場 | 備考 |
玄関タイルの張替え | 8万円〜 | 5㎡前後 |
床の塗装 | 10,000円〜30,000円/㎡ | |
壁紙の張替え | 50,000円〜 | 6畳(玄関+ホール) |
靴箱の入れ替え | 50,000円〜 | ベースのみ |
〃 | 80,000円〜 | ベース+吊戸 |
玄関ドアの塗装 | 50,000円〜 | 1面 |
玄関ドアの交換 | 200,000円〜 | 親扉のみ |
※大きな傷や汚れなどの補修費や下地を直す費用、出張費などは別途となる
自分でできる玄関リフォーム
ここからは自分で可能な玄関リフォームをご紹介しよう。
DIYに不慣れな方でも作業がしやすいものを選んであり、また道具や材料もネットやホームセンターで買えるものばかりなので、早速チャレンジしてみて欲しい。
ただし時間が足りなくなり慌てて作業をすることが失敗の大きな原因の一つになっているため、必ず多めに時間を確保し丁寧に作業を行うようにしよう。
壁や床の模様変え

壁や床の模様変えは難しそうに思えるが、いずれも既存の上に貼るリメイクシートが販売されていて非常に手軽に行うことができる。
色柄が豊富なので今と同じ雰囲気のままきれいにリフレッシュすることもできるし、思い切って違うイメージに変えてしまうことも可能だ。
施工は非常に簡単でカッターと定規を使ってカットし、シール状になっているので貼る場所をきれいに拭いて合わせるだけだ。
もう一歩踏み込んで今の壁紙を剥がしての張り替えや、床を塗装してのリフォームも丁寧に行えばDIY可能である。
上手くできれば質感や耐久性は上貼りのリメイクシートより良くなるので、関心のある方は以下の記事を参考にトライしてみよう。
「壁紙をDIYで張替えてリフォームする!費用と全テクニックを完全公開」
https://shufukulabo.com/diy-wallpaper
「フローリングの塗装補修を極める!DIY方法や種類を徹底的に解説!」
https://shufukulabo.com/painting-and-repairing-flooring
靴箱のリフレッシュ

意外に玄関の雰囲気を良くするのに効果があるのが靴箱のリフレッシュだ。
ボリュームもあるため影響は大きく、傷んでいるようならきれにしてあげることで玄関全体のイメージも良くなる。
こちらも手軽にリフォームを行うならリメイクシートを上貼りする方法がお勧めだ。
手順は取っ手を外して表面を、中性洗剤を薄めた水で絞った布でしっかり拭き、カットしてから貼るだけなので決して難しくはない。
一方で扉が木製だったり凹凸のあるデザインだったりするなら塗装するのも良いだろう。
シート貼りより若干手間はかかるが、想像されるよりは非常に簡単にDIYできる。
以下に手順をご紹介するので、より耐久性のあるリフォームをされたい方は挑戦してみて欲しい。
※扉は取外し可能なら屋外での作業がお勧めだが、室内で行う場合は窓を開け十分に換気をするようにしよう。
手順
①周りをマスキングテープとマスカーで十分に養生をし、床には新聞紙を厚めに敷く。
②
・化粧シートが貼られている靴箱の場合
扉は見えないだけでかなりの手脂など汚れが付いているため、脱脂クリーナーで表面を念入りに拭く。
これをしっかりと取り除かないと塗装が剥がれてきてしまうため十分に行おう。
またクリーナーは必ずプラスチック対応のものを選ぶよう注意して欲しい。
・木製の靴箱の場合
表面の塗装をサンドペーパーの150番辺りで削り落とし、240番→400番で磨いていく。
③下地用のシーラーを塗装面に塗る。
特に化粧シートは塗料の付きが良くないので、シーラー不要の塗料であっても必ず塗るようにしよう。
こちらも省くと塗装が数週間で剥がれてしまうことになる。
④塗料をローラーと筆で塗る
大きな面はローラーで塗った方がムラを防げてきれいに仕上がる。
細かな凹凸や壁際部分は筆で塗る。
塗料の説明にある乾燥時間を空けて2度塗りをする。
玄関タイルの張り替え

玄関の床タイル張り替えにおいては、古いタイルを剥がして新たに貼るリフォームは非常に難易度が高い。
工程も多い上に専用の道具も必要で、さらに平坦に仕上げるには高度な技術と経験が必要だからだ。
そこでDIYではPタイルと呼ばれる主に塩ビ樹脂で出来た床材を、今のタイルの上から貼る方法がお勧めだ。
Pタイルは耐久性が良く加工もしやすい上に値段も手頃と非常にDIY向きの床材で、作業も決して難しすぎるものではない。
以下の手順を守りぜひトライしてみて欲しい。
手順
①古いタイルをしっかり洗い、浮いているものがあればマイナスドライバーなどを使って剥がし、欠けやへこみなどと共に補修用モルタルで埋め乾燥させる。
②タイルを貼る場所の全面に下地用モルタルをパテベラで盛る。
厚さは1mm程度で良いが、タイルの凹凸があればそれが無くなるまで盛って平坦にする。
③Pタイルを仮置きして必要ならカッターでカットをする。
④Pタイルとモルタルの両方に貼れる接着剤をクシ目ゴテで扇を描くように塗っていく。
完了後の1日は人が乗ることを避け、その後1週間はよく換気をし、激しく乗ったり極端な冷暖房をかけたりはしないようにする。
玄関ドアの塗装は材質次第

玄関ドアの塗装は木製であればDIYでも可能で、前述の木製靴箱の塗装と同じ手順を屋外用塗料に変えて行う。
屋外用塗料には油性と水性があるが、水性の方が薄めたり道具を洗ったりするのが水でよく、しかもムラになりにくい上に臭いも少ないのでDIYではお勧めだ
一方でアルミ製のドアと木目の樹脂シートで覆われている玄関ドアは、DIYによる塗装は難しい。
いずれもDIYでは塗装の付きが悪いため短時間で剥がれる可能性が高く、しかも木目はそれを完全に再現するのも非常に困難なため、専門業者へ頼んだ方が断然きれいに仕上がる。
もし自分でリフォームするならリメイクシートを室内側に貼る程度にしておいた方が安全と言えるだろう。
業者に任せた方が良いケース
玄関まわりのリフォームにおいて一般の方には難しく専門業者へ任せた方が良いケースをご紹介しよう。
失敗のリスクが高い場合や専用の道具が必要である工事はもちろんだが、バリアフリーのように安易な工事では逆効果になりかねない工事もある。
リフォームする目的を確実に果たすためにも、以下の工事は専門業者に相談するようにして欲しい。
玄関ドアの交換

玄関ドアの現行品なら商品はネット通販で購入できるため、全く同じドアなら交換できるように思える。
しかし取り外しや取り付けは大人の男性が2人以上いないと難しく、また業者が使う工具が必要になるためDIYでは難易度が高い。
さらに調整も一定の知識や経験が必要であり、DIYでクローザーやロックを痛めてしまうケースも多く業者に任せた方が安全だろう。
またドアが廃盤になっていると枠から全部交換するか、既存の枠の上から被せるカバー工法の工事となり、完全に専門業者の仕事となる。
大掛かりな工事にはなってしまうが断熱性や防犯性が良くなったり、希望があれば引き戸からドアに変えることもできたりと、古いドアほどそのメリットは大きい。
どうせ変えるなら現在の不満を改善してくれるドアを、専門業者と相談しながら選ぶようにしよう。
靴箱の入れ替え

今使っている靴箱を外して新たなものに入れ替えるリフォームは、専門業者へ任せる方がお勧めだ。
まず古い靴箱を外す工事は細心の注意を必要とし、慣れていないと壁や床を傷つけ余計な補修の出費が発生する可能性があるからだ。
せっかく費用を抑えるためにDIYを行っているのに、これでは意味が無くなってしまう。
さらにDIYでは靴箱をしっかり固定できない恐れがあり、使っている最中に吊戸が落下したりタンスタイプものが倒れてきたりすれば、人に大怪我をさせてしまう危険性もあるだろう。
専門業者へ任せれば建物を不用意に傷つけることもなく、安全に工事をしてくれるはずだ。
まさにリスクを回避するためにも靴箱の入れ替えは専門業者に頼むようにしよう。
バリアフリー化

玄関まわりのバリアフリー化は皆さんが思われているより非常に複雑だ。
例えば手すりを一つ付けるだけでも、使う人の身長や体力などによって位置が微妙に異なり、丁寧に打ち合わせをしながら進めないと効果が半減してしまうからだ。
しかも手すりは体重がかかっても外れないようしっかり取り付ける必要があり、壁内の構造や取付け強度を取るための補助工事など様々な知識が必要となる。
さらにバリアフリー工事で良く行われる段差解消やスロープ工事も同様で、手すりとの位置関係を確かめながら高さや傾斜を設定しなければならない。
安易に工事をすれば使いづらくなるだけでなく利用者の安全にも関わってくるため、バリアフリー工事こそ専門業者へ任せるべきリフォームと言えるだろう。
賃貸でできるお手軽リフォーム
賃貸のアパートやマンションでは残念ながら跡が残るようなリフォームはできないが、壁や靴箱、ドアの内側にリメイクシートを貼る方法なら手軽に雰囲気を変えることができる。
手順は貼る場所を、中性洗剤を垂らした水で絞った布でしっかり拭き、汚れを取ったら大きさに合わせてカットをして貼るだけだ。
また照明器具をおしゃれなものに交換するのも、夜の雰囲気を手軽にイメージチェンジしてくれる。
既存の照明を一旦取り外しソケットの形状を確認した上で交換できる商品を探してみよう。
照明器具にはどのようなタイプのソケットなら取付けできるか解説されている。
注意点は天井からどれくらい下がってくるかを確かめることと、交換しても古い照明は捨てないようにすることだ。
安心なリフォーム業者の選び方
リフォームは近年非常に業者が増えたため、中には安いだけで粗悪な業者も多く注意する必要がある。
そこでここでは信頼できる業者の選び方について解説したい。
見積もりや工程をしっかり説明

見積もりの内容や工程を依頼主に説明することは、使う材料や行う作業を約束する意味もあり、真面目に仕事に取り組む業者の最低限のマナーだ。
ところが隙があれば行うべき工程を省き、儲けを増やそうとする業者にとって、見積もり内容や工程は細かく知られると手抜きに気づかれる原因となってしまう。
そのため「臨機応変に対応する」や「様子を見ながら判断」などと、もっともらしい言葉で説明を濁すのだ。
当然そのような業者の仕事は雑であり、安かろう悪かろうの典型的なパターンとなってしまうだろう。
そういった被害に遭わないためにも、見積もりを受け取った際は金額だけでなく、内容や工程をしっかりと説明してくれるか確認するようにしよう。
アフターサービスが十分か
リフォーム工事は終わってから材料が変化して色の違いや異音が発生する場合がある。
これらは建築ではある程度予想されることで、真面目な業者はその対応も仕事の内と考えている。
しかし中には代金を受け取ったら後は儲けにならないと、対応を後回しにしてしまう業者もいるので注意が必要だ。
特にチラシがポストに入っていただけや、飛び込みで営業をしてくる業者などにその傾向が強く、工事が終わったら音信不通になってしまう者さえいる。
依頼先を選ぶ際は、信頼できる相手からの紹介や、きちんとした事務所を構えているなど、工事後もしっかりと連絡が取れるような相手を選ぶようにしよう。
実績が目で見て確認できるか

いくら宣伝文句が素晴らしいものでも、雑な仕事をされてはプロに頼んだ意味が全くない。
しかし残念ながら言葉では立派なことを言っていても、それとは裏腹な粗悪な工事をしてトラブルになる業者が後を絶たない。
そこで依頼の前には必ず実際の仕事振りを確かめるようにしよう。
例えば自社サイトを持ち、そこで工事を行った実例を数多く紹介しているなど、目で見える形で実績を確かめられる相手に絞って選んでいくことが安全と言える。
逆にサイトでは金額のことばかりで仕事振りが全くわからないような業者は、候補から外すのも防衛策の一つだ。
くれぐれも言葉だけの「豊富な実績」に惑わされないよう注意をして欲しい。
火災保険を使って格安リフォーム

玄関まわりにもし傷や雨漏りなどの損傷があるなら、ぜひ加入している火災保険を確かめてみよう。
現代の火災保険は火事だけでなく、台風のような自然災害や予測できない事故など、住まいの損傷を幅広く補償する総合保険になっているからだ。
玄関まわりの損傷が条件を満たせばリフォームではなく修理として、その費用の一部を補償してもらえる可能性がある。
ここではどのような損傷が補償されるのか、そして保険での修理を依頼する業者選びの注意点について解説する。
火災保険を使える条件
まずリフォームをしようとしている場所に、うっかり物を落として傷を付けたり、子供がおもちゃを投げつけて壊れたりした箇所があれば「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」として補償されるかもしれない。
あるいは台風で屋根が壊れて発生した雨漏りでシミができているようなら「風災」の補償が受けられる可能性がある。
いずれも復旧の範囲ではあるが費用を補償してくれるため、壁なら希望の色に変えたり玄関ドアもきれいに直したりすることができる。
適用には損傷の原因や発生した日時がはっきりしている必要があり、その場所の機能に支障が出ているなど細かな条件がある。
ぜひ契約時の書類や証券を確認し、不明な場合は保険会社に問い合わせ、保険が利用できるかを確かめてみて欲しい。
工事を依頼する業者は実績重視
保険を使って工事をする場合は必ず保険申請の経験豊富な業者に頼むようにしよう。
保険申請ではその損傷原因や、修理としての工事内容や費用を保険会社に適正に伝えなければならない。
しかしこれは保険申請に不慣れな業者にとっては大変難しく、場合によっては申請の不備で補償を拒否されてしまう恐れがある。
せっかく保険で補償される損傷なのに、業者の経験不足で使えないのでは今まで払ってきた保険料が無駄になってしまう。
修理を確実に補償してもらうためにも、依頼先は保険申請の実績が豊富なリフォーム業者を選ぶようにして欲しい。
まとめ

玄関まわりのリフォームは自分で出来る部分もあるため、劣化が進んで見苦しくなる前に積極的に行ってみよう。
ただしDIYではハードルが高く専門業者へ任せた方が安心な工事も多い。
特に玄関ドア交換とバリアフリーに関しては専門的な知識が必要なため、初めから相談に乗ってもらった方がより良い結果になるはずだ。
まして火災保険を活用しながら格安にリフレッシュできるなら、プロのリフォームを行わない理由はない。
ぜひ安心できるリフォーム業者をしっかり見極め、満足のいく仕上がりの工事をして頂きたい。

株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。