現代の住宅にはドアやクローゼット扉など、多くの建具が使用されている。毎日何度も人や物が出入りするため、建具はキズや凹みなどの損傷が発生しやすい箇所だ。
今回は建具のキズや劣化について、損傷具合に合わせて3種類のDIY補修方法を紹介する。
自ら補修作業するメリットやデメリット、必要な道具・材料から、実際の作業手順まで詳しく解説するので、補修を考えているならぜひ参考にしてほしい。
記事の後半では、火災保険を活用して費用ゼロ円で補修する方法についても解説する。プロに依頼する際の費用相場と合わせて検討の材料になれば幸いだ。
この記事読むことで理解できること
建具補修DIYのメリット・デメリット
自ら建具補修をすることには当然メリットとデメリットがある。それぞれ十分に理解してから取り組まないと、後悔することもあるため注意が必要だ。ここではメリットとデメリットそれぞれを詳しく解説していく。建具補修DIYに踏み切る前に、参考にして欲しい。
メリット
・費用を抑えられる
DIY補修最大のメリットは、かかる費用を抑えられるという点だ。補修など小規模な仕事の場合は必要な材料や道具が少なく、人件費の割合が高くなるため自分で作業を行う恩恵は特に大きい。損傷具合と補修方法にもよるが、わずかな材料費のみで納まることが多い。予算の関係で放置するくらいなら、DIYで仮に補修しておくのも一つの手段だ。
・すぐに補修できる
プロに補修を依頼する場合、リフォームショップや工務店などを通じて依頼をするのが普通で、職人のスケジュールによっては補修作業が数週間以上先になることもある。特に腕のいい職人はスケジュールが埋まっていることが多いため、依頼してすぐに補修してもらえるケースは少ない。逆に、依頼してすぐにスケジュールが取れる職人は人気が無いということもあるため注意したほうが良いだろう。
DIYの場合は、道具と材料を揃えて自分の身体が空けばすぐにとりかかることができる。特に目立つ部分の補修など、人に見られたくない場所の場合はDIYで済ませてしまえば見られる心配も少ない。目立つ場所だが軽微な損傷の場合は、積極的にチャレンジするのがおすすめだ
デメリット
・きれいに仕上がらない場合がある
損傷個所の範囲や状況によっては補修難易度が高く、自然な仕上がりを得られない場合もある。特に木目の建具などは模様を再現するのが難しく、逆にみすぼらしく見えてしまうケースも。損傷個所が大きな場合や目立つ箇所の場合も難易度が高く、特に来客時に見えるような場所はプロに依頼したほうが無難だ。中途半端に手をかけてしまうと、プロの作業の妨げになるケースもあるので、自信がない場合は手を付ける前に依頼しよう。
細かい打痕の補修(幅1mm~2mm)は補修キット
尖った物などをぶつけてつけてしまった細かい傷については、専用の補修キットを使用して簡易的な補修が可能だ。尖った物でついた細長い引っかき傷などにも有効。かかる費用と手間が少なく、失敗した際の負担が少ないので、積極的にチャレンジしてみて欲しい。
用意する物
・クレヨンタイプのフローリング補修キット
・ヘラ(必要なくなったポイントカードのような平らなものでもOK)
≪参考商品≫
かくれん棒 ミニ10色セット ソフトタイプ AB-30
クレヨンタイプの手軽に使える補修キット。ワンセット持っておくと建具の傷のみならず、フローリングや家具の傷にも対応できるため無駄にならないだろう。フローリングなど接触が多い場所用の物は、はんだごてで溶かして使用するタイプなどもあるが、建具の場合は手軽に使用できるクレヨンタイプで十分だ。
作業手順
①打痕の周辺にバリ(木の繊維が毛羽立っている状態)がある場合はカッターなどを使用して表面を整える。
②既存の色に近い補修クレヨンを選ぶ、ない場合は近いものをいくつか混ぜ合わせて調色する。違う色を塗ってしまうと目立ってしまうので、慎重に選定すること。素材によって混ざりにくい場合は、火傷に注意しながらライターなどの火で軽く炙るとキレイに混ざりやすい。
➂凹みの場所に補修クレヨンを塗り込んでいく。少し盛り上がる程度に多めに塗り込み、色があっていることを確認したらヘラで余りを削り取り平らにならす。
※ワンポイントアドバイス※
補修箇所と既存部分の境目は、指で軽くこすってなじませると目立たなくなる。強くこすり過ぎると凹んでしまうため、あくまで軽い力でこすること。
大きな凹みの補修(5cm~10cm程度)はパテと塗装
重たい家具などで大きくへこんでしまった凹みについては、パテで表面を平らにならす作業が必要になり、少し難易度は高くなる。しかし、手先が器用なら十分に挑戦可能なので、工作が好きならチャレンジしてみると良いだろう。パテにはもともと色がついているタイプの商品もあるため、できるだけ既存建具に似た色のパテを用意すると塗装が楽になる。
用意する物
・カッター
・木工用ボンド
・パテ
・ヘラ
・サンドペーパー
・スプレー塗料(ツヤ有り・ツヤ無しなど現場に合わせる)
・新聞紙やビニールなど養生材
≪参考商品≫
セメダイン 内外装用 補修 穴うめパテ ポリ容器 200g ホワイト
屋内外問わず使用できる万能穴埋めパテ材。建具の木材から石膏ボード、コンクリートまで用途は幅広いため、一つ持っていて損はしないだろう。開封してそのままつける手軽さも、DIYにうってつけだ。ホワイト・アイボリーのカラーが用意されているので、なるべく既存建具に合わせて選べば後の色合わせがしやすくなるのでこだわってほしい。
作業手順
①建具周りの床を養生してから、損傷個所のバリなどをカッターで削って整える。損傷部が動くようなら、木工用ボンドを使用して固定する。
②ヘラを使いパテを損傷個所に盛り付けていく。パテは乾燥すると少し縮むため、はみ出しても構わないので少しだけ多めに盛っておくのがコツだ。
➂パテの説明書で指示されている時間乾燥させ、平らな角材などに巻き付けたサンドペーパーで表面を平らにならしていく。損傷個所に合わせてなるべく長い角材を使い、力をあまり入れずに縦横斜めなど複数方向に動かすのがキレイに仕上げるコツだ。水平方向から視認したり、指でなぞったりして引っかかりが無くなるまで繰り返すこと。
④やすり掛けで出た粉塵を除去し、パテと建具の色に違和感なければ完成。違和感がある場合は、既存色に合わせたスプレー塗料を用意して色合わせを行う。建具面から15~20cm程度離し、薄く少しずつ塗装するのがコツだ。一度に厚塗りするとムラになったり、垂れたりするため必ず薄塗りする。一度塗装したら十分に乾燥させ、さまざまな角度から目視して少しずつ色を近づけていくこと。
≪参考動画≫
細かい擦りキズや塗装剥げの補修は補修用シート
長年使用したことによる擦りキズや、経年劣化による塗装剥げなどには、専用の補修シートを貼って損傷部を隠してしまう方法が有効だ。
プロが使用する専用のシートなどは材料費・難易度ともに高いいためおすすめできないが、DIY用の簡易的なシートも販売されているので手軽に挑戦できる。今回紹介している参考商品は、簡単にはがすこともできるため、部屋の模様替え気分で建具全面に貼ってみるのもおすすめだ。
用意する物
・カッター
・紙やすり
・キッチン用など簡易的なアルコール消毒スプレー
・きれいな雑巾
・補修用シート
≪参考商品≫
LAPTAIN リメイクシート カッティングシート 木目調 61cm×5m
のり付きで使いやすく、耐熱・防水・防カビなどの機能もついているため水回りなどにも使用可能な補修用シートだ。
建具のみでなく、カウンターや窓枠など様々な場所に張れるため、部屋全体の模様替えにも使用できる。もちろんカットして部分補修にも使用可能だ。簡単にはがすこともできるため、定期的に気分を変えたいときにも便利なアイテムだ。
作業手順
①張り替える面の塗装が剥がれて荒れている場合、角材などに紙やすりを巻き付けて平らにならす。あまり力を入れずに、表面の凸凹をなくすイメージでやすりをかけること。あくまではがれやすくなっている部分を除去するイメージだ。
②アルコール消毒スプレーでシートを貼る部分の脱脂をする。やすり掛けした場合は粉塵もキレイにふき取ること。たっぷり含ませすぎると表面が水膨れする場合もあるため、雑巾などにスプレーしてサッとふき取るようにする。
➂裏面のシートを剥がさず、損傷個所に当てながら必要なサイズと形にカットする。
④シートを一部剥がして、幅が広く柔らかいヘラで空気を抜きながら少しずつシートを剥がしていく。空気が入ってしまったら、慌てずにシートをその部分まではがし、空気を抜いてから再び貼り進める。少しでも傾いていると仕上がりの印象が悪くなるため、適宜全体の傾きなどを確認しながらまっすぐに貼ること。上手くいかない場合は鉛筆などすぐに消せるものでガイドラインを引くといい。
プロに頼む場合の費用相場
ここでは、代表的な建具補修の方法をいくつかピックアップして、プロに依頼した場合の費用相場を紹介する。
簡易的な補修については市販の道具や材料でも十分にチャレンジする価値があるが、本格的な補修については素直にプロに依頼したほうが良い。必要な道具が増え、中途半端に取り組んであきらめた際の費用負担が大きいためだ。また、中途半端な状態で投げ出してプロに依頼すると、費用が余計掛かってしまうケースもある。
ここに挙げる例や、全体的な補修が必要になるケースは素直にプロに見積を出してもらい検討してほしい。
建具塗装の費用
建具の表面が剥がれたり、色褪せたりしている場合は全面塗装すると新品のような質感を取り戻せる。子供が落書きなどで汚してしまった場合にも有効な手段だ。全面塗装する場合の費用は、建具の素材や用途によっても大きく異なる。
木製玄関ドアの場合は工程や仕上げの方法によって大きく価格が異なる。単色の塗りつぶし工法は安く仕上がるが、木目を生かした仕上げでは工程が増えるため費用が高くなる。状況にもよるが30,000円~100,000円は予算を見ておいてほしい。
アルミ製玄関ドアの場合は基本的に塗りつぶし仕上げが基本となる。費用相場は30,000円~50,000円だ。
室内の既製品ドアは、素材や仕上げ方法によっては塗れないものもあるが、10,000円~20,000円が相場といったところだろう。基本的に枚数が増えれば単価は安くなるため、ある程度まとめて依頼するのがおすすめだ。
仕上げシート張替えの費用
一見木目に見えるドアの仕上げも、実は木目調のシートが貼り付けてある場合が少なくない。基本的にはビニール系の素材が多く、経年劣化で変色したり剥がれたりするケースもある。
中途半端に剥がれてしまっている状態は、素人が手を出せるレベルではないため、プロに張替えを依頼するのが無難だ。見た目の大部分がきれいになるため、新品のような見た目に近づくのが大きなメリットだ。
シート張替えをプロに依頼した場合の費用相場は、1㎡あたり8,000円~10,000円、ドア一枚あたり15,000~20,000円といったところだ。依頼する枚数が増えるほどドア一枚当たりの単価は安くなるため、部屋単位などまとめて依頼するのがおすすめだ。
凹み補修の費用
サイズの小さい凹み補修に関してはDIYも可能だが、多少の技術と手間が必要になるため、苦手なら無理に挑戦しない方が良い。また、アイボリーなどの定番色なら塗装の色合わせもしやすいが、珍しい色の場合難しいためプロに依頼したほうがきれいに仕上がるだろう。
損傷具合などの状況にもよるが、凹み補修をプロに依頼した場合、一ヵ所当たり15,000円~が費用相場だ。木目調のドアなど難易度が高くなると、費用も高くなるケースが多い。
建具交換の費用
補修が難しいほどの大きな損傷を受けた建具や、長年使用している建具などは交換してしまった方が良いケースもある。ドアノブや丁番など、金属パーツのサビや腐食があると表面だけきれいにしてもみすぼらしく見える場合も多い。
建具交換をプロに依頼した場合の費用相場は40,000円~100,000円前後と幅広い。表面の仕上げ材や、ガラスの有無などによっても大きく価格は変動する。見積を依頼する場合は、希望の仕様と最安仕様など、複数パターンで計算してもらうと目安が分かりやすいだろう。
建具の補修に火災保険が適用される場合がある
意外と知られていないことだが、ここでご紹介した建具の補修に火災保険が適用できるケースがある。火災保険は家を立てる際に誰もが加入しているはずだ。
いくつかの条件はあるが、上手く活用できれば費用ゼロ円で補修することもできる。知らずに自費で補修すると損をしてしまう可能性もあるため、まずは適用できるか確認してみて欲しい。
「不測かつ突発的な事故」の場合保険が使える場合がある
例えば、地震で家具が倒れて建具が凹んでしまったケースや、子供がペンキをこぼしてしまいドアが汚れてしまったケースなどは「不測かつ突発的な事故」に分類され、保険適用対象になる。
ただし、破損や損傷が起きた原因と日時がはっきりしていることが条件となるため、対象になりそうなケースが発生したらメモを残しておくのが良いだろう。火災保険は建物全体に対してかけるため、室内外のすべての建具が対象範囲となる。
契約内容や保険会社の規定によって支払われる金額は様々だ。まずは火災保険に加入した際の保険証書の内容を確認してみてほしい。「不測かつ突発的な事故」が契約内容に含まれていれば、業者に見積や報告書の作成を依頼し、分からなければ保険会社に連絡を取って確認する必要がある。
保険対象の場合でも、建具補修に火災保険を活用するためには、保険会社が納得する見積や資料の作成が必要となる。保険申請に慣れていない補修業者は、資料作成に時間がかかったり不備があったりする可能性もある。
詳しくはこちらのサイトを参照してほしい。https://shufukulabo.com/
まとめ
建具のキズは損傷具合によっては手軽にDIY補修に挑戦することができる。軽微な補修なら手間も費用も少なく済むため、ちょっとしたことなら積極的に挑戦してみて欲しい。
しかし、大掛かりな補修の場合は素人がキレイに仕上げるのは難しいケースが多い。特にリビングや廊下周りなど、来客時に人に見られる建具の補修はプロに依頼したほうがきれいに仕上がるため無難だ。
プロに依頼するとそれなりの費用が掛かるのは仕方ないことだが、不可抗力な事故などによる損傷なら火災保険を活用してゼロ円で補修できる可能性が高い。自費で依頼する前に、まずは弊サイトに相談して欲しい。
建具は部屋を仕切るだけでなく、部屋全体の印象を大きく左右する大切なインテリアでもある。気持ちよく過ごせる空間を保つために、当記事を参考にして建具を美しく保って欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。