お風呂のドアの破損を放置しておく事は非常に危険だ。
ガラス部分であれば怪我をする危険性もあるし、ヒビ割れや隙間があれば水漏れが起き、そこから腐れやカビが発生する恐れもある。
今回は建築のプロである一級建築士が、お風呂のドアを早急に修理するために役立つ、気になる交換費用や部品の入手方法をご紹介する。
ドアの破損は被害が広範囲に波及していくため、最後にご紹介している火災保険で費用を抑えるテクニックを活用しながら、できる限り早急な対処を行うようにして欲しい。
この記事読むことで理解できること
お風呂ドアの破損は非常に危険
お風呂のドアの破損は見た目を我慢すれば良いと安易に考えず、人や建物に大きな悪影響を及ぼすことを肝に銘じなければならない。
ガラスや枠の割れは鋭利な状態が多く、使う人に大怪我をさせてしまうことが十分に考えられる。
また破損した部分から壁の中や床下に水が入り込めば、腐食が発生したり湿気に導かれシロアリ被害につながったりする。
これらは目に見えない場所に発生するため、腐れや侵食が広がりきってから気づくことになり、当然ながら修理の費用は莫大なものになるだろう。
ドアの破損は小さくともその影響は住まいの各所に及び、深刻な被害や出費を強いる始まりであることをしっかりと認識して頂きたい。
専門業者のドア交換方法と費用
ここでは専門業者へ修理を依頼した場合の費用をご紹介するが、その前に建築会社の保証を必ず確認しよう。
破損の原因にもよるが保証期間内であれば無償で直る可能性もあるし、もし建築会社が無くなっていても保証期間が残っていればドアメーカーで対応してくれる場合もある。
もし保証外の場合は費用を自己負担して直すことになるが、この場合は傷んだ部分の部品交換や補修で直しコストを抑える部分修理と、ドアが全体的に傷んでいたり分解が出来ず部品の入れ換えができなかったりする場合に行うドアの本体交換がある。
出来る限り長く使えるようドアの本体交換のような修理方法が、結果的に出費は安く済むのでお勧めだ。
費用一覧
修理内容 | 相場金額 |
防水パッキンの交換 | 15,000円〜 |
戸車や吊りラッチの交換 | 20,000円〜 |
ドアノブ交換 | 25,000円〜 |
パネル交換(ガラスの場合) | 40,000円〜 |
パネル交換(樹脂製の場合) | 30,000円〜 |
ドア本体のみの交換 | 50,000円〜 |
※工事の範囲や規模により費用は変動する。追加の部品代や出張料がかかる場合もあり。
同じドアや部品が無いと修理はできない
ドアは本体にしても部品にしても、現在付いているのと同じ物が入手できないと交換修理は非常に難しい。
同じメーカーのドアでもモデルが異なれば、わずかな違いで取り付けは不可能であり、似たような形の物を無理矢理付けても隙間が残ったり破損したりする恐れが大きく、最悪そこから水漏れが発生する可能性すらある。
中にはパネルのように材料を加工して作ってもらえる物もあるが決して安価にはならず、リスクも含めると決して賢明な選択ではない。
ドアや部品の在庫が無い場合は、以下で紹介するカバー工法によるドア枠も含めた全交換を強くお勧めする。
短時間で新しくなるカバー工法
カバー工法とは既存のドア枠の上に新たなドア枠を被せて全体を新しくしてしまう交換方法で、交換の部品が入手できなかったりドア枠も痛んでいたりする場合はこちらの修理がベストだ。
壁を壊すなどの工事が不要なため従来の大掛かりな交換より費用が抑えられ、しかも工事期間が短いというメリットもある。
お風呂の工事で日数がかかると、その間どこかへ入浴をしに行かなくてはならないが、カバー工法ならその心配もない。
費用は80,000円〜100,000円で部分補修などより高めだが、全てが新しくなるので長い目で見て安心だ。
老朽化したドアなら今回の損傷を直しても後日他の部分が壊れる可能性があり、修理が重なっていけば出費も膨らんでいく。
もし他にも気になる痛みがあるようなら、ぜひ検討してみることをお勧めする。
浴室ドアを自分で直す
お風呂のドアの修理は、自分で部品を手に入れ交換することで費用を抑えることができる。
ただし既に述べたように部品は全く同じものを探し出さなければいけないし、取り付けも一歩間違えれば水漏れを起こしてしまうため、細心の注意を払う必要がある。
そこでここでは部品を特定し手配する手順と交換においての注意点、そして後の項ではDIYは避け専門業者へ依頼すべきケースを解説する。
浴室品番からドア品番を特定する
ドアの部品やドア本体を入手するには、まずドアのメーカーや品番を確認する必要がある。
ユニットバス(以降UB)の場合はドアの右上、または左上に貼られたシールからUBのメーカーと品番を確認し、それをUBメーカーに伝えドア品番や部品在庫を教えてもらう。
ただしUBのメーカーとドアのメーカーが違うことも珍しくなく、リクシルのようにUBとドア両方を作っているメーカーもあれば、ユニットバスを作っていてもドアはYKKや三協など別メーカーのものを使っているところもある。
もしドアは別メーカーであることがわかったら、UBメーカーにドア品番を確認の上でそのドアメーカーに部品などの在庫を問い合わせることになる。
一方でお風呂がユニットではなく部材を組み合わせて職人が作っていく造成浴室の場合は、ドアに貼られているシールにドアメーカーとその品番が記されているので、直接問い合わせすることができる。
浴室品番がわからない場合の調べ方
浴室内にシールがなかったり劣化して読めなかったりした場合には、保証書や取扱説明書でメーカーや品番を確認することができる。
もしそれらも残っていないなら、建築時の図面や仕様書、見積もりなどでも確認できることがある。
それでもわからない場合は、以下をメーカーにメールで送り問い合わせることもできる。
1つのメーカーから発売されている浴室は無数にあり、同じモデルでもバリエーションが細かく分かれており、なるべく多くの情報を正確に伝えることで特定が可能になる。
・浴室とドアの両方の縦横高さ
・写真
UBの場合は浴室内も様々な角度から撮る。
UBが特定できて初めてドアを特定できることを忘れずに。
造成浴室の場合はドア本体の写真で構わない。
・上棟時期
極力正確に〇〇年◯月まで伝える。
建物引き渡しの時期ではなく上棟時期の方がUBの発注時期と近いため、メーカー側もモデルを特定しやすくなる。
・建築地
地域によってモデルや細かな仕様が変わることがあるため伝えておこう。
併せてドアや欲しいパーツの品番と在庫、価格、施工マニュアルや製品図面などをもらえるかも聞いておくと、何度もやり取りをしなくて済む。
ドアや部品の入手方法
ドア本体やノブ、ハンドル、ヒンジなどが特定できて、在庫があればその部材のみ入手することができる。
前述のようにアフターサービス窓口に依頼しても良いし、メーカーによるパーツショップのサイトでも購入可能だ。
ただサイトには全ての部材が網羅されている訳ではないので、掲載されていない場合もアフターサービス窓口へ必ず問い合わせるようにしよう。
さらに建材専門のネットショップでも入手は可能で、特にドアや窓関係に特化したショップならかなり細かい部材まで購入できる。
金額はメーカー直販とそれほど変わらないが、在庫処分などのタイミングに合えば安価に入手できるかもしれない。
ただしTOTOのようにDIYを推奨していないメーカーの部品は、在庫があってもメーカー手配の修理でないと供給されないこともある。
その場合はネットショップでも購入は難しいので、メーカー修理を検討するしかないだろう。
ドアの交換方法
もし同じドアが入手できるようなら、外枠は残してのドア本体交換は比較的容易だ。
ドアを購入すれば大抵は一緒に施工マニュアルが同封されてくるし、それをしっかり読み解けば外し方も理解できるはずだ。
ただしメーカーによっては自社販売でないと施工マニュアルを支給しなかったり、格安の工場直送品や在庫処分品だと同封されていなかったりすることもあるので、購入する前に必ず確認するようにしよう。
また繰り返しになるが全く同じドアが手に入らない場合は、自分で交換するのは避けた方が良い。
外見は同じように見えても商品が変わればわずかな寸法違いではまらない場合も多く、しかもドアは基本的に開封後の返品がきかない。
仮に取り付けができても隙間が空いて水漏れが発生する可能性があるため、決して無理をしないよう注意をして欲しい。
パネルや部品の交換について
ドア枠にある防水パッキンのように半ば消耗品となっている部分は、現在と同じものが手に入れば自分で交換できる場合がある。
部材代も安価で交換のマニュアル付きで販売しているメーカーもあり、ネットショップやホームセンターでも入手可能だ。
特に新し目のドアはユーザーでの交換を想定してか、比較的簡単に作業が行えるものも多い。
ただし年数が経っているドアの場合は、業者が持つ工具を使わないと外せなかったり、カルキ等によって部品が固着して外すことができなかったりと、作業が極端に困難になる。
無理に分解しようとすれば樹脂の硬化でドアを割ってしまう恐れもあり、相当作業に慣れた方でないと交換は危険だ。
一つの目安ではあるが10年以上経過したドアは、例え同じ部品が入手できたとしても専門業者へ任せた方が安全だろう。
こんな場合は専門業者へ依頼しよう
自分で交換や修理を行えば確かに費用は抑えられるが、水回りは失敗による建物へのダメージが大きいため、専門業者へ依頼した方が良い場合もある。
お風呂の周辺は僅かな隙間でも水漏れが発生し、見えない部分で腐れや錆び、シロアリの被害を発生させてしまうからだ。
ここではプロに修理を任せるべきケースをまとめているので、無理をせず建物にとって間違いない方法を選んで欲しい。
同じドアや部品の在庫がない
何度かお伝えしているように、現在と同じドアや部品が入手できない場合は、自分で修理する事は諦めた方が良い。
わずかなサイズの違いでも取り付けが困難なばかりか、無理に取り付けをすれば破損や水漏れを引き起こす可能性もある。
失敗の確率の高さとその後の被害の大きさを考慮すると、外枠も含めたドア全体の交換を専門業者へ相談することをお勧めする。
ドアの外枠が壊れている場合
お風呂のドアの外枠の方が破損している場合、修理には枠を外すだけでなくその下地も修理することも考えられる。
こうなると専門的な知識と職人用の工具などが必要となり、残念ながらDIYの範疇を超えてくる。
さらに新たな枠の設置とドアの収まり調整は防水に大きく影響するため、かなり精度の高い作業が要求される。
これらのことを考慮するとドアの外枠が割れていたり歪んでいたりする場合は、DIYで修理する事は避け専門業者に依頼をするべきだろう。
ガラスが破損している場合
ドアの半透明パネルが樹脂製なら枠の分解が出来れば交換可能だが、パネルがガラス製の場合は一気に難易度がアップする。
大きなガラスは取り扱いに慣れた方でないと割ったり怪我をしたりする恐れがあり、その上ガラスをドア部品として販売しているメーカーも殆どない。
大型のホームセンターなどでガラスを加工販売してもらう方法もあるが、精密な採寸や運搬が心配でありやはり危険が伴う。
ドアに限らないが、ガラスの破損は専門業者へ依頼した方が安全である。
ドアの種類を変えるリフォームもプロへ
修理とは違うが現在の折れ戸を開き戸にしたり引き戸にしたりと、ドアの開きの種類を変えたいという場合もやはり専門業者へ任せるべきだ。
ドアの種類を変える場合は、横の壁を壊したり内部の配管や電気配線を変えたりと大掛かりな工事になり、もはやリフォームと言える範疇だ。
しかも脱衣室側の改修も必要になり単に入れ替えるだけでは済まない。
将来の安全性のためバリアフリー化など、プロの意見を聞きながら行った方がメリットは多いため、検討の初期段階から専門業者へ相談した方が良いだろう。
火災保険で修理費を抑えよう
ドアの修理を業者に依頼をしたいが費用がやはり心配だと言う方は、ご自身の加入する火災保険を確認してみよう。
火災保険は火事の時にだけに使うものと思われがちだが、現代のものは大雪や台風と言った自然災害、あるいは盗難被など住まいの損害に関する総合保険になっている。
お風呂のドアの損傷も条件が合えば火災保険で補償されるため、最低限の自己負担額で新たなドアに交換することも可能だ。
そこでここではどのような損傷のケースが補償されるのか、そして保険を利用して修理を依頼する業者を選ぶ際の注意点についてお伝えする。
どのような損傷で補償されるのか
火災保険でドアの損傷が保障される場合には不測かつ突発的な事故による汚損・破損と言う補償項目に該当する必要がある。
これはうっかり物をぶつけて壊してしまったり、お子さんが遊んでいる時に衝突して壊したりした場合に補償するものである。
条件としては発生した日時や原因がはっきりしている必要があり、また損傷した場所の機能に影響が出ていると補償される可能性が高い。
逆に経年劣化で自然に壊れていた場合は対象とならないので注意が必要だ。
その他の細かな条件は保険会社や商品によって違いがあるため、保険加入時の書類や保険証券で確認し、どうしても不明な場合は保険会社に直接問い合わせてみると良いだろう。
保険利用では業者の申請実績を重視
保険を利用してドア修理を保証してもらう場合は、その損傷の原因や現在の状態を正確に保険会社へ書類で申請する必要がある。
これはいくら腕の良い補修屋であっても申請に慣れていないと非常に難しい作業であるため、業者選択の上で注意が必要になる。
申請が不十分だと保険が利用できる損傷なのに、保険会社の承認が下りない事態になりかねない。
せっかく保険料を支払ってきたのであれば、確実に保険が利用できるよう申請実績が十分にある専門業者に依頼するようにしよう。
まとめ
浴室のドアの損傷は人に怪我をさせる可能性だけでなく、水漏れから建物の腐れなどを引き起こす。
DIYが可能なら今回の記事を参考に早急に修理を行ってもらいたい。
ただし部品の在庫が無かったり枠も損傷していたりなど、DIYが難しい場合は初期段階から専門業者へ相談する方がお勧めだ。
ドアを新しく交換すれば見た目だけでなく、防水性能や清潔度も改善され使い勝手も大きく向上する。
お風呂は毎日使うものであるため部分的に損傷を直すだけでなく、可能性な限り快適で後々の心配のない工事を選択して欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。