無垢フローリングは正しい手入れを定期的に行わないと、見苦しい汚れや激しい損傷が発生しやすい材料だ。
無垢らしい自然な肌触りや風合いの良さも、適切なメンテナンスをしなければその魅力はあっという間に失われてしまうだろう。
そこで今回は無垢フローリングの普段の手入れの仕方から、長持ちさせるための定期的なメンテナンス方法まで、建築のプロである一級建築士が詳しくお伝えしたい。
せっかく木の魅力を持った無垢フローリングも、手入れを行わなかったおかげでみすぼらしい姿になってしまっては、わざわざ費用をかけて敷いた意味が無くなってしまう。
不慣れな方でも簡単に行える方法をご紹介しているので、ぜひ目を通して頂き手遅れになる前に実践をして頂きたい。
この記事読むことで理解できること
無垢は手入れを怠ると台無しになる
無垢のフローリングは一枚の木の板でできた床材であり、木本来の肌触りや風合いを持った人気の材料だ。
しかも適切な手入れを行えば非常に長持ちをし、価格は多少高めだが長い目で見れば大変コストパフォーマンスに優れた材料でもある。
しかし表面の保護膜をしっかり造ってあげた上で、その特性に合わせた手入れやメンテナンスを行わないと、汚れや水分を吸着しやすいという性質を持っている。
一度付いた汚れは大変取りにくく、また水分を必要以上に含むと変形やひび割れを起こしてしやすいため、非常にデリケートな素材とも言えるのだ。
今回の記事を参考にしっかり手入れとメンテナンスを行い、家族の一員のように末永く付き合えるフローリングにしてあげよう。
初めに今の仕上げを確認する
まず適切な手入れやメンテナンスの方法を読んで頂く前に、ご自宅の無垢フローリングの表面がどのような仕上げになっているかを確認して頂きたい。
その種類に応じて手入れやメンテナンスの仕方が変わるだけでなく、メンテナンス後の見た目や肌触りの違いにも繋がる。
建築時の仕上表やメンテナンスについての説明書などで、確認してもらった上で以下を読み進めて欲しい。
無垢らしい風合いのオイル仕上げ
無垢の表面に浸透性のある各種オイルを塗り保護膜を作ってあるのがオイル仕上げだ。
主に植物性の油成分を使い木の繊維の隙間に塗り込むため、素材の温かみや柔らかさを変えずに汚れや傷から守ってくれる。
特に無垢の樹種からこだわりを持って施工をしているメーカーや工務店の建前に多い仕上げだ。
油膜という性質上塗った直後はベタつきがあるが、乾拭きで磨いた上でしっかし乾燥させれば、すぐに馴染んで元の木の質感になる。
ただしこの後ご紹介するウレタン塗装ほどツヤは出ないので、それを無垢らしいと取るか、もっと輝いて欲しいかで選択が分かれるところではある。
保護力の高いウレタン塗装
樹脂系のウレタン塗料を表面に塗り保護膜を作る方法もある。
表面に完全に一定の硬さのある膜を作るため、傷や汚れに対する保護力はオイル仕上げに比べ非常に高い。
また再塗装のスパンも年単位であるため、再塗装時の手間もオイル仕上げに比べ少なくて済むのがメリットだ。
ただ完全に膜を作ってしまうので無垢本来の柔らかさや温かみは少なく、質感を重視する方には物足りなく感じるところでもある。
また膜がどうしてもツヤを持ってしまうので見た目の無垢らしさが無いという方も多い。
割合は少ないが無塗装もある
オイル仕上げやウレタン塗装などいずれの処理もしていない無塗装の無垢フローリングもある。
昔は無塗装を売りにしている輸入住宅などもあったが、現在は傷や汚れが非常に付きやすいため、どの建築業者も何かしらの塗装を推奨している。
自分で塗装するつもりでそのままになっているなら、フローリングのためにも大至急施工するべきだ。
また中古で入手した物件で、フローリングが傷が付きやすかったり、汚れがひどく拭いても取れなかったりするようなら、無塗装の可能性がある。
この場合も放置して良いことな何も無いので、早急に塗装を行うことをお勧めする。
普段の手入れと汚れの落とし方
それでは普段の手入れの仕方や掃除方法、そして汚れてしまった場合の対処をお伝えする。
繰り返しになるが表面の仕上げを確認し、適切な方法で行って頂きたい。
日頃の掃除は乾拭きで良い
日頃の掃除は掃除機でゴミを吸い取り、乾いた布で仕上げ拭きを行えば問題ない。
ただし後述する樹種の杉やパイン(松)などは柔らかめで傷がつきやすいので、オイル仕上げや無塗装仕上げの場合は掃除機を優しくかけるようにしよう。
また仕上げに関係なく科学雑巾や洗浄液などが染み込ませてあるクイックル、モップなどの使用は避けよう。
例え保護膜が作ってあったとしても変色や跡が残る可能性があり、しかも一度付いてしまうと取り除くには大掛かりな補修が必要になる。
せっかくの手入れがトラブルにならないよう注意して欲しい。
全体を水拭きする頻度
全体的に水拭きで掃除行う場合は仕上げによってそのスパンは変わってくる。
基本的にウレタン塗装がされているものは、週に一度程度の拭き掃除を行っても問題はない。
一方でオイル仕上げは水を吸いやすいため、全体を水拭きする場合は1〜2月に1度程度に止めよう。
水分が変形や割れの原因になる他、せっかくの仕上げのオイルを拭き取ってしまうことになる。
もちろん飲み物などをこぼしたならその部分を水拭きしても良いが、しっかりと乾拭きをすることを忘れないようにしよう。
専用クリーナーで汚れを落とす
どうしても気になる汚れをしっかり落としたいという場合は、無垢フローリング用のクリーナーを使ってみよう。
コストはかかるが単なる水拭きと違い床への影響の心配が少なくお勧めだ。
中には汚れ取りだけでなく保護成分が含まれている商品もあり、こまめに汚れを取りたい方は耐久性アップにも繋がるので選ぶと良いだろう。
この場合も既存の仕上げに合ったものを選ぶことが重要で、誤った組み合わせを選ぶと変色などを起こす可能性もあるため、説明書などにしっかり目を通して選ぶようにして欲しい。
樹種ごとの特徴とお手入れポイント
ここでは無垢の樹種ごとの特徴と手入れの注意点をお伝えする。
特に水拭きにおいて樹種ごとに違いがあるため、ご自宅のフローリングを確認した上で、適切な手入れを行って頂きたい。
メープル
細やかで抑え目な木目のメープルは、明るい色と程よい光沢を持ちナチュラルな風合いだ。
表面に硬さがあり体育館の床などにも使われるほど摩耗に強い。
そのため週に一度程度水拭きをしても、乾拭きさえ忘れなければ問題は起きにくい。
ただしメープルに限らずオイル仕上げは水拭きで薄まってしまうので、再塗装はこまめに行うようにしたい。
チーク
チークは重厚な色合いとはっきりした木目を持ち、高級感のある床材を好む方に人気だ。
こちらも硬さのある樹種で、反りなどの変形が少ないため船の甲板や高級家具にも使われる。
水にも強いので乾拭きを行うようにすれば週に一度程度の水拭きも問題ない。
だたしオイル仕上げを拭き取ってしまうので、マメに再塗装が必要という注意点はメープルと同様だ。
杉
柔らかい肌触りが人気の樹種で、調湿作用が高く古くから日本の建築には多用されてきた。
しかし柔らかさ故に水分が浸透しやすく、水拭きをしすぎると反りなどの原因となる。
例えオイル仕上げであっても日常的には汚れている部分の水拭きに抑え、全体の水拭きは1〜2ヶ月に一度の頻度にしよう。
パイン(松)
明るい色合いで柔らかさも備えた木らしい質感が特徴の樹種だ。
杉よりは多少硬めだがそれでも他種に比べると柔らかいため、水分を含みすぎると反りなど変形の恐れがある。
杉同様に水拭きは1〜2ヶ月に1度程度が良いだろう。
桧
古くから日本建築で重用されてきた桧は、柔らかさや温かみがある上に杉やパインより硬めのため、フローリングとしても人気が高い。
月に1回程度の水拭きを行なっても問題ないが、メープルやチークほどは耐水性はないため、仕上げの乾拭きを忘れないようにしよう。
また部分的な汚れを落としたい場合は、極力乾拭きで清掃した方が間違いが無い。
定期メンテナンスのワックスかけ
日頃の手入れとは別に一定期間ごとに行う表面保護のメンテナンス、ワックスかけの方法を解説する。
前提としては既存仕上げのオイルや塗料に指定されているワックスを使うようにする。
複合フローリングと違い、無垢フローリングの仕上げは独特の原料を使っているものが多く、指定外のワックスを使うと変色などのトラブルに繋がりやすいからだ。
また塗るサイクルはオイル仕上げだと月に1〜2回、ウレタン塗装だと半年から1年のものが多いが、製品ごとに違いがあるため、こちらも必ず説明書などで確認するようにしよう。
オイル仕上げのワックス選択は要注意
オイル仕上げの場合は使われているオイルそのものをワックスとして使う。
無垢用のオイルは樹種との相性を考慮してあり、別のオイルを塗ってしまうと変形や変色の恐れがあるため、基本的には現在塗ってあるのと同じ商品を使おう。
手順は事前に掃除機をかけ乾拭きをした上で、手ぬぐいなどに染み込ませて塗るだけなので非常に簡単だ。
水に薄めて雑巾に染み込ませて使うタイプと直接床に垂らしてから拭くタイプがあるので、説明書で確認して欲しい。
またオイル仕上げは普段の掃除などで剥がれやすいため、商品に書かれている推奨の塗るスパンを守るようにしたい。
ウレタン塗装は通常のワックスでOK
ウレタン塗装の場合はそれ自体が強固な膜を形成しているため、それほどシビアにワックスの膜を作ってあげる必要はない。
商品も複合フローリングと同様の一般的なワックスで構わず、塗るスパンも半年〜1年のサイクルで十分だ。
ただ注意したいのが傷などでウレタン塗装が剥がれている場合で、その部分は無塗装と同じ状態だ。
そこへ水分が入れば変形を起こし、汚れが入れば染み込んで消すのが困難になってしまう。
もし塗装がない状態を発見したら、以下の記事でご紹介している補修を行うようにしよう。
「フローリングの塗装補修を極める!DIY方法や種類を徹底的に解説!」
https://shufukulabo.com/painting-and-repairing-flooring
無塗装なら米ぬかオイルなどで保護
無塗装の無垢フローリングは全くの無防備状態であるため、汚れや特に水分が染み込みやすいため、早急に保護を行おう。
・オイル仕上げ
既に述べたように、無垢の質感や風合いを生かすのであれば、米ぬかなどの自然素材のオイルを塗布するのがお勧めだ。
手順は乾拭きと掃除機でしっかり清掃を行った後、原液のままか水で薄めたものを手ぬぐいなどで塗り込むだけだ。
念の為目立たない場所で試し塗りをし、半日経った後に触ってベタつきがなければ浸透しているので使用しても問題がない。
米ぬかの他にもエゴマやヒマワリなどの油分がフローリング用として販売されているので、探してみると良いだろう。
・ウレタン塗装
よりしっかりした保護膜を作るのであればやはりウレタン塗装がお勧めだ。
多少手間はかかるが耐久性が高いため、DIYで塗装の経験がある方ならぜひチャレンジしてみよう。
具体的な作業は以下の記事で紹介しているので参照して頂きたい。
「フローリングの劣化を自分で直す!研磨と塗装のDIY完全マニュアル」
・塗装工程
https://shufukulabo.com/flooring-deterioration#i-7
損傷があるなら補修屋がお勧め
もし手入れをしている時に傷や凹みを見つけたなら、補修屋という専門業者に相談してみよう。
補修屋とは床に限らず壁やドア、窓枠など、あらゆる素材の表面にできた傷や凹み、シミなどを全くわからないように消してしまうリペアのプロフェッショナルだ。
しかも傷のある部分に絞って補修を行うため、張り替えのような高額な費用にならず、手頃に直すことができる。
程度によっては自分で補修できそうな傷もあるが、残念ながら目立たない程度に直すのが精一杯で、せっかくの無垢の風合いを台無しにしかねない。
しかし腕の立つ補修屋なら傷があったことが全くわからないように直してくれるため、大切な無垢フローリングを見事に蘇らせてくれるだろう。
以下に補修屋の技術の高さがわかる動画をご紹介するのでぜひご覧頂き、一度相談してみることをお勧めする。
補修屋の技術費用相場
補修内容 | 技術相場金額 |
フローリング色あせ | 10,000円〜30,000円/㎡ |
フローリングの傷、凹み | 25,000円〜 |
フローリング剥がれ | 40,000円~ |
フローリングのシミ | 30,000円~ |
※損傷サイズにより増額の可能性あり。材料新規取り寄せ・出張費等は別途費用。
補修屋選びの注意点
補修屋に依頼をする際に注意したいのが、どの補修屋でも傷をきれいに消してくれる訳ではないということだ。
直した跡が全くわからないレベルで補修を行うには、豊富な経験とあらゆる素材や傷についての知識が必要であり、これは簡単に身につくものではない。
しかし補修屋の中にはわずかな建築知識で仕事をしている者もおり、DIYと大差ない仕上がりにされてしまうトラブルが後を絶たない。
このため依頼の際は相手の実績を目で確認することが重要であり、例えば自社サイトで補修の実績を画像つきで数多く紹介しているような相手を選ぶと良いだろう。
火災保険で傷を格安で直そう
フローリングの傷補修の費用を抑えるなら、加入している火災保険の利用を検討してみよう。
現代の火災保険は火事だけでなく台風や洪水、盗難による傷など、住まいの様々な損傷を補償する総合保険になっており、今回の傷も条件が合えば対象になるかもしれないからだ。
例えばフローリングの傷がうっかり物を落としてしまったり、お子さんがおもちゃを投げつけたりしてできたものなら、「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」として補償対象になる可能性がある。
あるいは台風で屋根が破損して発生した雨漏りでシミができたなら、「風災」の補償が受けられるかもしれない。
もしご自身で判断がつかないようなら、保険利用の実績豊富な専門業者に相談してみよう。
どちらにしても保険で補修する場合は、その原因を正確に保険会社に伝えないと申請が却下されてしまうため、保険に精通した業者に頼まなければならない。
そういった業者なら傷が保険対象になるかなども教えてもくれるはずだ。
これまで保険料を支払ってきたならこの機会にぜひ活用し、プロにしっかりと直してもらうようにしたい。
まとめ
無垢のフローリングは、肌触りや暖かさ、風合いなど、他の材料にはない魅力があり、しかも手をかければ複合フローリングなどよりはるかに長持ちもしてくれる優れた材料だ。
しかし適切な手入れやメンテナンスを行わないと、その味わいが失われてしまうばかりか、逆に見苦しい姿になってしまう危険性が高い。
ぜひ今回の記事を参考に日頃の手入れを定期的に行って頂き、損傷があれば補修屋の技術で直してあげて、その魅力を維持するようにして欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。