ドア枠の不具合をそのままにしていると非常に危険だ。
損傷が悪化し修理費用が高額になるばかりか、急に閉まるなどして人に大怪我をさせかねないからだ。
そこでドア枠を簡単に自分で修理するDIY方法を、建築のプロである一級建築士が詳細に解説をする。
併せて専門業者へ依頼した場合の費用相場や、賃貸でのDIY修理の危険性などについても詳しくお伝えしているのでぜひ最後までお読み頂き、ドア枠を素早く手頃に直すために活用して頂きたい。
この記事読むことで理解できること
ドア枠の不具合は放置すると危険
ドア枠の不具合を、開け閉めは出来るからとそのままにしておくと非常に危険である。
日々開け閉めされることで枠には力が加わり、また人が触れて摩擦が起きたりすることで、損傷は確実に悪化していくからだ。
当然修理費用は高額になり、しかもこの後ご紹介するDIYも手遅れになって、安価に済ませることもできなくなってしまう。
さらには枠の劣化でドアが外れたり急に閉まったりすれば、人の手を挟むなど大怪我をさせる恐れさえある。
ドア枠の不具合は見た目の悪さだけに納まらず、大きな出費や被害につながるということを、十分に認識して頂きたい。
専門業者の修理費用相場
ドア枠の補修の参考に、様々な専門業者へ修理を依頼した場合の費用相場をご紹介する。
傷の程度によって金額は増減するが、特に賃貸の場合は原状回復工事が高額になりやすく注意が必要だ。
ドア枠の損傷は素早く補修を行うことが出費を抑えることになるため、早めに対処することを強くお勧めする。
損傷の種類 | 費用相場 |
枠のすり傷 | 30,000円〜 |
化粧シートの割れ | 40,000円〜 |
化粧シートのへこみや剥がれ | 50,000円〜 |
無垢材枠のパテ補修 | 40,000円〜 |
※材料の新規取り寄せ費や出張費などは別途となる
室内ドア枠のDIY補修のやり方
一般の方が比較的簡単に行える室内ドアの補修をご紹介しよう。
室内のドア枠は大半が、木目がプリントされた樹脂製のシートが貼られており、ぶつかったり擦れたりして表面が欠けてしまう。
またシート下の基材との接着が経年劣化で剥がれてくることもある。
いずれも一度始まると広がってしまうスピードが速いため、発生した場合は早急に補修を行おう。
すり傷のリタッチ
表面への擦り傷は補修ペンでリタッチ(補修塗装)を行うときれいに直すことができる。
手順は傷部分をよく絞った雑巾で手脂などの汚れを拭き取り、補修ペンで塗るだけなので非常に簡単だ。
コツは薄い色のペンを選び、何度も塗り重ねながら色を濃くしていくことで、その方が色の濃いペンを塗って逆に目立ってしまうことを防ぐことができる。
またなるべく傷で木目が剥げている部分にだけ塗るようにすると、乾いた後に傷が目立ちにくくなる。
割れや浮きの接着補修
化粧シートが割れてしまった場合は、瞬間接着剤を入れて押さえることで補修できる。
時間が経つと浮いたシート部分が硬化し、押さえた時に割れてしまうので早めに補修しよう。
手順
①割れの周りをマスキングテープで養生する。
②割れ部分に瞬間接着剤を入れ、はみ出た部分はすぐに布で拭き取る。
割れの周囲の化粧シートが浮いているようなら、その下にも接着剤が入るように入れる。
③布で上から押さえて割れの盛り上がりを平坦にする。
長く押さえると布が接着剤に付いてしまうので、こまめに離し様子を見ながら押さえる。
④どうしても盛り上がりがなくならない場合は、薄い布を被せアイロンを低温にして当ててみる。
化粧シートは熱によって変形や変色の恐れがあるため、少し当てたら離して様子を見るようにしながら行い、決して中温以上の温度にはしないように。
へこみや剥がれは部分張替え
へこみや剥がれが起きた場合は部分的に化粧シートをカットし、新たな化粧シートに張替えることで補修可能だ。
パテ補修だと化粧シートの上ではサンドペーパーで成形の削りができないためお勧めしない。
張替えなら色柄の違いは多少出てしまうが無難に仕上がり確実だ。
サンゲツのリアテックシートが色柄も豊富で品質も良くお勧めだが、大きなサイズで販売のため少し割高だ。
なるべくコストを抑えるなら、色数は限られるがフローリング用の補修シートでも良いだろう。
手順
①カッターで傷んだ部分を囲うように四角く化粧シートを切り取る。
②切り取ったところをサンドペーパー(400番辺り)で削る。
傷のバリがあればカッターで切り取る。
③新たな化粧シートを切り取り部分に当てカットする。
④上記でご紹介した商品はいずれもシール製品なのでそのまま貼り付け、上からしっかり押し付ける。
⑤継ぎ目の隙間が気になるようならクレヨン補修材で埋めて完了。
無垢のへこみはパテ補修
ドア枠の中には無垢材を使ったものもあり、すり傷程度なら化粧シートと同じくペンで補修を行う。
一方で化粧シートでは難しかったへこみや深めの傷へのパテ補修がこちらは可能なので、多少色を合わせる難しさはあるがぜひ挑戦してみて欲しい。
手順
①へこみや傷にバリがあればカッターで切り取っておく。
手で触り盛り上がっている部分があればサンドペーパー(240番あたり)で平坦にする。
②パテを少し盛り上がる程度に盛る。
枠とパテの間に空気が入らないように丁寧に盛ろう。
③乾燥したらサンドペーパーで削る。
150番辺りから始め、240番、400番と徐々に目を細くしていく。
④平坦になったら塗装部分にマスキングテープを貼りフローリング用水性ニスで塗装をする。
1回で仕上げようとせず重ね塗って色を濃くしていった方が失敗は少ない。
事前に枠の目立たない場所に塗って色の違いを確かめ、複数色を混ぜて調色をしても良いだろう。
⑤乾燥したら乾いた布で磨いて完了。
玄関ドア枠のDIY補修のやり方
玄関ドアの枠も出入りが頻繁なため傷つくことも多いだろう。
ただしDIYで補修できるのは塗装のハゲ程度であり、素材が金属の場合はへこみなどの補修は難易度が高い。
ここではドア枠の塗装をご紹介するが、それ以上の損傷の場合は専門業者へ相談することをお勧めする。
・小さな塗装ハゲ(直径1センチ以内)
小さな塗装ハゲは車用のタッチアップペンがお勧めだ。
車用のものは色数が豊富で元の色に合わせやすく、また塗装箇所を拭いて塗るだけなので、作業も簡単である。
・1センチ以上の塗装ハゲ
多少大きな塗装ハゲは専用の塗料で塗装を行う。
手順
①補修部分を絞った雑巾でしかり拭き、古い塗装のバリがあれば軽くサンドペーパーで均しておく。
②塗装部分の周りをマスキングテープで養生をする。
③下塗り材を塗布し2時間以上乾燥させる。
④アルミ用油性塗料を塗り、半日以上乾燥させれば完了。
ハケ跡が出るようなら1〜2割薄めると良い。
専門業者へ任せた方が良い場合
ドア枠の損傷の中にはDIYは避けて初めから補修を専門業者へ任せた方が良い場合がある。
難易度が高かったり専門の道具や技術が必要だったりすると、DIYを行っても状態を悪化させて修理費が余計にかかる危険性が高い。
当然それまでにかけた道具や材料代が無駄になり、初めから専門業者へ頼んだ方が安かったという結果になるだろう。
ここではそういった無駄な出費を防ぐために、専門業者へ任せるべきケースをご紹介する。
玄関ドア枠のへこみ
玄関ドアの枠であるアルミは、一般の方にとって補修は大変難しい。
近頃は塗料の進化でやっと塗装補修ができるようになったが、へこみや深い傷の場合は完全に専門業者の仕事となる。
パテ埋めは平坦に削る作業が経験を積まないと難しく、さらに最後の塗装も技術と色のかけ合わせの知識がないと、直した跡がはっきりわかる見すぼらしい結果となってしまう。
しかもDIYでは付きも悪いためあっという間に剥がれ落ちてしまい、せっかく時間をかけても振出しに戻ってしまいかねない。
アルミ枠への補修は時間も材料も無駄になる確率が高いため、DIYのことは考えず初めから専門業者へ任せた方が確実だろう。
枠の歪み
枠が歪んでドアと隙間が空いたり当たって擦れていたりするようなら、DIYでの修理は困難だ。
歪みを直すには一度枠を外し、矯正をする必要があり、場合によっては下地の調整も行うため、専門業者でないと行えない作業だからだ。
無垢材であれば削りで解消することもあるが、その場合も知識と経験がないと削る場所の特定すら難しい。
しかも一般の方が歪み解消に失敗し、余計に床や枠に当たるようになり、擦り傷を増やしてしまうケースも非常に多い。
枠の歪みは難易度が高く、失敗して症状を悪化させてしまう典型的な不具合のため、もし発生した場合は迷わず専門業者に助けを求めるようにしよう。
ドア本体も傷んでいる
ドア枠だけでなくドア本体にも痛みがあるようなら、やはり専門業者へ相談をすべきだろう。
ドア枠だけを直しても後日ドア本体の不具合が出る恐れがあり、せっかく直したドア枠を再度傷つける恐れがある。
また枠と本体が両方共傷んでいるということは寿命である可能性が高く、短期間で直しては壊れての繰り返しとなり、修理費が積み重なって高額になるパターンに陥りかねない。
一度専門業者に状態を確認してもらい、カバー工法のような手頃に交換できる方法などを提案してもらった上で修理を検討た方が、出費を抑えられるだろう。
賃貸のDIYは余計な出費を招く
賃貸の原状回復費を安く抑えようとドア枠の損傷をDIYで修理するのは逆効果だ。
これまでご紹介してきたDIY補修は、残念ながら補修した跡がわかる仕上がりとなり、あくまで目立たないようにするのが精一杯である。
しかし貸主側は次に借りようと検討している人の印象を考え、傷があったことが全くわからないように直したいと考えている。
このためDIY補修は完全に無視されることになり、原状回復工事は行われて費用を安くすることはできないのだ。
それどころかDIY補修の塗装やパテを一旦剥がすための業者の手間代を追加請求される恐れもあり、DIY補修で使った道具や材料代も合わせれば、大変高額な無駄使いをしたことになる。
物件によっては借り主の補修業者手配を禁じている場合もあるためリスクを考慮してにはなるが、この後ご紹介する補修屋のような傷を完全に消せるプロに相談した方が出費は安くなると言えるだろう。
ドア枠を直すなら補修屋がベスト
ドア枠の損傷を直した跡がわからないように消したいのなら、補修屋という専門業者がお勧めである。
補修屋とはあらゆる素材の傷やシミなどに精通し、それらを跡形もなく直してしまうリペアのプロフェッショナルだ。
しかもリフォーム業者の補修のように枠交換のような大きな工事になりにくく、損傷した場所のみを補修するため非常に手頃な価格で直せるのも魅力だ。
以下にドアの損傷であるが補修屋の高い技術がわかる動画をご紹介するので、ぜひご覧頂き依頼を検討してみてはいかがだろうか。
補修屋の技術費用相場
検討の参考にしてもらうため、補修屋の技術費用相場もご紹介しよう。
傷の大きさや程度によって金額は変動するが、依頼する際の目安にはなるはずだ。
正確な金額を知りたい方は、メールで傷の写真を送ると無料で見積もりをしてくれる補修屋もあるので、一度相談をしてみると良いだろう。
表面の浅い傷 | 15,000円〜 |
ひび割れや凹み | 25,000円〜 |
剥がれや穴 | 35,000円〜 |
※材料の新規交換費や出張料は別途となる。
優れた補修屋の見分け方
補修屋を検討する時に気を付けて頂きたいのが、どの補修屋でも傷を完全に消せる技術を持っている訳ではない、という点だ。
傷を跡がわからないように消すには、高い技術と豊富な知識、そして数多くの傷を直してきた経験があって初めて可能になる。
しかし補修屋を名乗っている者の中には、他の建築系の仕事をしている職人がアルバイトで行っている場合もあり、補修跡がはっきりわかる仕事をされてトラブルになるケースもある。
こういった被害を防ぐためにも、例えば自社サイトで補修の実績を画像つきで数多く公開している業者など、その腕前がこちらの目でしっかり確かめられる相手を選ぶことが重要になる。
くれぐれも言葉だけの「実績豊富」に惑わされないよう、十分に気を付けて頂きたい。
火災保険でドア枠を格安補修
ドア枠の損傷を格安な出費で補修をしたいのであれば、ぜひ加入している火災保険を確かめてみて欲しい。
現代の火災保険は火事だけでなく、台風や大雨による自然災害や泥棒による盗難の被害など、住まいの損傷を幅広く補償する総合保険になっているのだ。
今回のドア枠の損傷も条件が満たされれば保険が使える可能性があり、補償されれば最小限の自己負担でプロの補修が受けられる。
ここではその適用の条件と、保険で補修を依頼する際の業者の選び方についてご紹介する。
保険が適用になる条件
今回の損傷が例えば重い荷物を運んでいてうっかりぶつけてしまったり、お子さんがおもちゃを投げつけて出来たりしたものであれば「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」となって保険が使える可能性がある。
あるいは台風で屋根が破損して起きた雨漏りによって、ドアが濡れてシミができたのなら自然災害の「風災」が適用されるかもしれない。
いずれの場合も損傷ができた原因や日時がはっきりしている必要があり、また損傷した部分の機能に支障が出ているなど、保険ごとに細かな条件が設けてある。
まずは保険加入時の書類や証券を読んで頂き、それでも不明な場合は保険会社に直接問い合わせるなどして、補償されるかどうかを確かめてみて欲しい。
補償で直す場合の業者選び
保険で損傷を補償してもらう場合、依頼する専門業者の保険申請の実績をしっかり確かめるようにしよう。
保険を使うには損傷原因や現状を保険会社に書類で伝える必要があるのだが、これが申請経験が浅い業者だと失敗をしてしまう恐れがあるからだ。
損傷の原因を突き止めそれが保険適用の条件を満たすことを正確に伝えるには、補修とは別の技術が必要であり、保険申請を数多く手がけている業者でないと難しい。
せっかく保険料を払ってきたのに、肝心な時に業者の経験不足で使えないのでは、全く意味がない。
必ず保険でドア枠の修理をする際は、相手業者の保険申請の実績を確かめた上で依頼するようにしよう。
まとめ
ドア枠の損傷は時間と共に悪化し修理費が高額になってしまうだけでなく、使う人に怪我をさせる可能性もあるため早急に修理をするべきだ。
傷の中にはDIYで安価に直せるものもあるので、早めに修理をして被害の拡大を防いで欲しい。
ただし状態によっては専門業者へ任せた方が良いケースもあり、その場合は初めからプロへ任せた方が結局は安い出費で済むことになるだろう。
特に賃貸のように直した跡がわからないように傷を消したい場合は、腕の立つ補修屋に依頼した方が間違いはなく、金額以上の満足も得られるはずだ。
ぜひ仕上がりを重視した冷静な判断をして、大切な住まいをきれいで安全な状態に戻してあげて欲しい。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。