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入居者・大家さんも必見!賃貸フローリングの損傷トラブルを回避する知識・方法

フローリング仕様の賃貸物件は多く、知って頂きたいのがフローリングの損傷問題である。フローリングはちょっとした不注意で傷や陥没等の損傷を受けやすく、退去時の原状回復でトラブルになりやすい事も多々ある。

本稿では、賃貸物件の入居者はもとよりオーナーにとっても有用なフローリング仕様の物件に対するノウハウを提供するので、無用のトラブルを防止するために本稿を熟読して役立てて欲しい。

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入居者負担?大家負担?原状回復をめぐるガイドラインとは

賃貸物件の退去時の原状回復はトラブルとなりやすく、近年に多発するようになった事象でなく過去より頻発する揉め事だ。そこで、国(国交省)としてもトラブル防止の指針を示す様になった。

この指針は、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(以下ガイドライン)と呼ばれ、ガイドラインには法的な拘束力は無いが、主管官庁が定めた遵守すべき事項だ。それ故、大多数の管理会社が原状回復における入居者とオーナーの費用分担の根拠としている。

ガイドラインにおける原状回復の意味合い

過去には、原状回復という字面から入居者が借りた時点の状態に復帰させることと理解され、管理会社と入居者の間で原状回復費用の分担でバトルが繰り広げられた。

だが、ガイドラインでは、建物の価値は、居住の有無にかかわらず、時間の経過により減少し、入居者が通常の用法に従い住居して物件の価値が減少していても、社会通念上通常の使用方法で使用されたであろう状態であれば、そのまま返還すれば良いという立場にある。

ガイドラインで定義された原状回復とは、「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損(以下「損耗等」という。)を復旧すること」と定義している。

注1)国交省HP 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000020.html

賃借人の原状回復義務とは何か

後述するが国交省は、賃貸住宅の契約に係るトラブル防止を目的に、賃貸住宅標準契約書(以下標準契約書)(注2)を作成している。この標準契約書の第15条で原状回復に関する事項を定めている。

標準契約書第15条に記載されている内容から、標準契約書では、建物の損耗等を以下に示すように2つに区分している。

①賃借人の通常の使用により生ずる損耗

②賃借人の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗

標準契約書では、①には賃借人の原状回復義務がなく、②について賃借人に原状回復義務があると定めている。したがって、損耗等を補修・修繕する場合の費用については、①については賃貸人が負担することになり、②については賃借人が負担することになる。

尚、原状回復の内容・方法、①と②すなわち通常損耗分とそれ以外の区分については当事者間の協議事項とされている。

注2)国交省HP 『賃貸住宅標準契約書』について

http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html

借主の責任となる損傷

前述の様に標準契約で借主の原状回復義務の範囲を定めており、入居者の通常の使用で生じる損耗は、原状回復の対象外としている。

また、同様にガイドラインによると借主は、原則として原状回復を実行しなければならないが、借主の帰責事由によらない損耗については、原状回復は不要だ。また、通常の使用に伴い生じた損耗及び経年変化による損耗も原状回復の対象外となる。

上記の原則を踏まえてフローリングを含む床関係で借主の負担となる損傷(注1)を以下に示す。

a.カーペットに飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ

(こぼした後の手入れ不足等の場合)

b.冷蔵庫下のサビ跡(サビを放置し、床に汚損等の損害を与えた場合)

c.引越作業等で生じた引っかきキズ

d.フローリングの色落ち(賃借人の不注意で雨が吹き込んだことなどによるもの)

 尚、借主の故意・過失等で生じた損耗は、借主の原状回復義務となるが、借主が負担すべき費用は、全額を借主が当然に負担することではなく、経年変化・通常損耗が前提となる。建物や設備等の経過年数を考慮し、経年する程負担割合を減少させることが適当だ。

貸主の責任となる損傷

借主の原状回復義務の範囲から経年劣化や通常損耗が除かれたために、建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)及び借主の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)については、貸主の負担となる。

上記の標準契約書やガイドラインが示す原則を踏まえて、フローリングを含む床関係で貸主の負担となる損傷(注1)を以下に示す。

a.畳の裏返し、表替え(特に破損してないが、次の入居者確保のために行うもの)

b.フローリングのワックスがけ

c.家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡

d.畳の変色、フローリングの色落ち

(日照、建物構造欠陥による雨漏りなどで発生したもの)

賃貸契約の実例を知っておこう

他者の所有物件に入居して賃料を支払うと言う行為を継続的に行なうことから契約は文書で交わすことになる。また、私人間の契約であるので、必要となる事項さえ記載されていれば事足りるが、入居者と管理会社等の圧倒的な情報量格差から標準的な書式が望まれる。

賃貸住宅標準契約書とは

原状回復の様な退去時のトラブルを退去時固有の問題と捉えるのではなく、入居時の双方の認識の差が根本原因として国交省が賃貸契約に関する標準的な契約書として作成した。主管官庁作成の推薦雛形であるので、多くの管理会社で使用されている。

標準契約書は、契約書本体と承諾書例で構成されており、家賃保証会社対応型と連帯保証人対応に分かれている。これをザックリと言うと、借主が保証会社を入れるか連帯保証人を頼むかの違いで、内容的には差異はない。

標準契約書の中身は、以下の10項目で全体では31ページに及ぶ。

①物件を特定するための記載部分

②契約期間

③賃料・共益費・敷金・その他

④貸主及び管理会社

⑤借主及び同居人

⑥連帯保証人及び極度額/家賃債務保証業者(家賃保証会社のこと)

⑦契約書本文

⑧別表部(別表1~別表5)

⑨記名押印欄

⑩記載に対する注意事項

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標準契約書における敷金とは

標準契約書第6条より、入居者の賃貸契約から生じる債務の担保として、オーナー(又は管理会社)に交付する金員が敷金だ。簡単に言うと、入居に際する保証金であり、退去時の原状回復費用に当てられる金員となる。

標準契約書における原状回復とは

標準契約書第15条より、入居者は賃貸した物件を賃貸開始時点の状態に戻してオーナーに返却する必要がある。ただし、入居者の通常の使用や経年劣化、入居者に帰責時事由が無い場合は除かれる。

上記の意味合いは、ガイドラインに記載されている原状回復と同意義であることを強調しておく。

フローリングの損傷の代表例と修復の実例

フローリングは床の表面部分の構成材料であることから、損傷しやすい部分であることは間違いないが、気遣うことで損傷の程度を低減することが可能となる。また、その為には損傷の事例から発生原因を理解しておくことが必要だ。

代表的なフローリングの傷

当初は、傷一つないフローリングだが、時間の経過と共に引掻き傷、擦り傷、打痕傷が残るようになる。これらの代表的な傷を写真1.に示す。

引掻き傷は、フローリング上で鋭角を有する固い物体を引きずると上記の写真に示すような傷を残すことになる。乾燥したご飯粒やガラス片を椅子や机を引きずる際に、これらの脚部に巻き込み、フローリングにダメージを与える。

擦り傷は、椅子や机を何度も同じ場所で移動を繰り返すことで時間の経過と共にダメージを残すことになる。

また、打痕傷は、重量のある物体を床に落とすことで生じることやフローリング上にあるゴルフボールに不用意に乗ることで生じてしまう。

補修材料の例

フローリングの修復材料としてクレヨンのような樹脂が用いられる。下記に代表的な補修材料を示す。これは、アマゾンで検索すると容易に探すことができる。また、画像の例以外にも多数の材料が上市されている。

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クレヨンタイプの補修剤は傷やへこみ、穴の損傷部分を【埋める】役割を果たしてくれる。

さらに、下記のペンタイプの補修キットでは【木目を描く】ことが出来る為、損傷箇所を埋めるだけよりも、自然な仕上がりに補修する事ができる。

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補修の様子と注意点

(補修前)

(補修後)

実際に上記の材料と道具を使用して、フローリングの補修に取り掛かろうとしても初回のチャレンジだと多少の不安を感じることもあるだろう。そこで、プロのリペア職人による補修の様子がこちらの動画でご覧いただけるので参照して欲しい。

https://www.youtube.com/watch?v=gRs2bdTYIy0&t=4s

動画のように補修キットを用いれば、小さな傷や穴、へこみであれば、自分で綺麗に補修することは可能だ。

しかし、このような補修に自信がない方や、損傷の長さが15cm以上の場合、又は深さが1mm以上ある場合は、プロのリペア業者に修復を依頼することをおすすめする。

 何故ならば、賃貸のフローリングに、もしも補修した事がわかるような跡が残ってしまえば、勝手に手を加えたことが貸主にわかり、逆に悪い印象を与えてしまうからである。

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「不測かつ突発的な事故」であれば火災保険が適用される!

大雨や大風で窓ガラスが破壊されて、フローリングが損傷した場合や、重量物が飛び込んでフローリングに陥没痕が出来ることもある。

この様な不測かつ突発的な事故によるフローリングの損傷の修復には【火災保険】が適用されるケースがあるのだ。

火災保険の適用条件は4つ

火災保険と言う名称から火事による被災に限定された保険のイメージを抱く方が多いだろうが、火災保険は多様な自然災害や事故に対応した損害保険だ。特約と言うオプションを付加することで災害や事故の対応範囲を拡大できる。

だが、対応していない自然災害や事故が存在する。これは、地震・津波・噴火に起因する災害で地震保険が守備範囲となる。また、原子力関係の事故による被災も火災保険の守備範囲外だ。

また、保険事故の対象となる災害や事故でも保険会社が免責となる場合がある。例えば、台風当日に窓の閉め忘れで室内の床や壁の水濡れ、室内での火遊びで転んで火災となった場合の様な重過失がその例だ。

更に、基本的に保険金支払の対象とならない場合がある。これは、経年劣化という時間の経過による磨耗や施工不良という施工会社に帰責事由がある場合だ。施工不良であれば保険金でなく施工会社に修復させることが可能だ。

上記の火災保険が適用されない場合を解説したが、これより火災保険が適用されるか否かを判断するポイントを以下に示す。これらの項目に対する答えがYESであれば保険金が給付される可能性が高い。

①適用される自然災害や事故か?

②火災保険の適用外(地震・津波・噴火・原子力等)の災害・事故でない?

③重過失はない?

③経年劣化や施工不良でない?

「不測かつ突発的な事故」とは?

火災保険のオプションに「不測かつ突発的な事故」という特約がある。

これは、物を運んでいる時にバランスを崩し、物を落として床材が破損した場合やプラズマテレビが掃除中に倒れて床材を破損した場合が想定される。

この様な故意ではない、あらゆる不測かつ突発的な事故が発生した場合に、この特約が約定されていれば保険金が給付されるので、フローリングの修復も保険金で可能となる。

損傷が起きてから保険で修復するまでの流れ

損傷の発生から修復までの一般的な流れを火災保険の申請に絡めて説明するので、本稿に記載してある事項に注意して修復及び申請を行なって欲しい。

以下に手続の流れと注意事項(⇒の部分)を示す。

(1)損傷の発見

⇒損傷の早期発見が重要

⇒損傷原因の特定と事故日の記録

⇒損傷部分の記録(写真撮影)

⇒賃貸物件全体の点検を忘れずに

(2)施工会社へ修復の見積依頼

⇒施工会社へ見積依頼

⇒細目を記載した見積作成を依頼

(3)保険会社へ連絡

⇒事故の状況を連絡して申請書の送付を依頼

⇒事故の原因を聞かれるので、原因は特定しておくこと

(4)保険会社へ申請書及び添付書類の送付

⇒申請書自体の記載は容易だが添付書類の作成は施工会社の協力が不可欠

⇒見積と損傷部分の写真は必須

⇒損傷原因を明確に記載

(5)保険金の決定と入金

⇒費用査定のために鑑定人の調査がある場合あり

⇒火災保険に質権が設定されている場合には金融機関との協議が必要(保険会社が実施)

(6)保険金の入金と修復工事実行と費用の払込

⇒工事の手抜き防止の立会いは、出来る限り実施

まとめ

賃貸契約終了後の明け渡しに伴う原状回復は、手間及び費用の点で入居者とオーナーの間は利益相反関係となる。双方にとって頭の痛い問題で、“飛ぶ鳥後を濁さず”の例えとは真逆の状態となり、精神的にも重圧となる。

本稿は、人気のフリーリング仕様の賃貸に住居した際のメンテと補修のスキルについて解り易く解説しているので、本稿で述べられたスキルを習得してフローリングの修復にチャレンジして欲しい。

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株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士

一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。