キャスターによってできたフローリングのへこみや傷を、大したことはないと放置しているなら非常に危険だ。
それらは日々確実に悪化していき、修理費の高騰や人へ被害を及ぼす可能性があるからだ。
そこで今回は建築のプロである一級建築士が、へこみなどを簡単に直せるDIY方法と、未然に防ぐための防止策を詳しく解説する。
併せて賃貸では、その修理費は誰が負担するのか、また判断を誤ると高額請求になるリスクもお伝えしている。
フローリングの補修で余計な出費を抑えるために、ぜひご一読して頂きたい。
この記事読むことで理解できること
フローリングのへこみや傷を放置すると危険
キャスターによってフローリングにできたへこみや傷を、そのままにしておくと非常に危険だ。
フローリングは木を薄くスライスした板を何層にも重ねたものが多く、その一番上の層は1〜2mmと非常に薄い。
この為、へこみは徐々にひび割れから剥がれへと悪化し、当然修理費は高額になってしまうだろう。
また剥がれた表層が鋭利な状態なら足裏の怪我の原因にもなるし、もしハイハイをしている赤ちゃんがいれば、取り返しのつかない大怪我になる危険性がある。
フローリングのへこみや傷は、早急に補修を行うべき損傷であるとぜひ心得て欲しい。
すばやく簡単に補修するDIY方法
最も早急にしかも安価に損傷を直せるのがDIYだ。
現在は多くの補修キットがネットやホームセンターで手に入り、損傷を目立たなくする程度なら技術的にも難しくない。
ここではフローリングの種類ごとの、DIYによる補修方法をご紹介する。
無垢フローリングならアイロンで修復
一枚の木の板である無垢フローリングは家庭にあるアイロンで手軽に修復ができる。
ただし表面にウレタンやUVの保護塗装がある場合は剥げる恐れがあるので、次項のパテによる補修を行おう。
手順
①へこみや傷の周りを布で拭き汚れやホコリを取る。
②スポイトで凹み部分に水を垂らし染み込ませる。
③染み込まないようなら針で凹みに小さく穴を何箇所か空ける。
④5分程度経過したら水で絞った薄い布を凹みに被せアイロンを当てる。
温度が高いと変色や変形の原因になるため低めの温度から始め、様子を見ながら何度か繰り返そう。
④冷えても凹みが残っているようなら次のパテ補修で埋める。
複合フローリングはパテで補修
薄くスライスした木の板を何層か重ね合わせたのが複合フローリングだ。
こちらをアイロンで熱してしまうと変形や剥がれを起こす恐れがある為、パテによる補修を行う。
手順
①へこみや傷の周りを布で拭いて汚れやホコリを取り周囲にマスキングテープを貼る。
②パテを付属のヘラで多めに盛り1日程度乾燥させる。
③固まったら表面をサンドペーパーで削る。
240番あたりの目から始め徐々に細かい目で仕上げていく。
④色の違いが気になるようなら補修ペンで多少目立たなくする。
最後に家庭用ワックスを塗るとより自然な仕上がりになる。
へこみを防止することが最も安く済む
補修費用を安くすることも大切だが、へこみや傷を作らないことが最も出費を抑えられる。
ここでは家庭でも簡単にできる防止策をご紹介したい。
まず原始的であるがカーペットなどを敷くことで、かなりのへこみや傷は防ぐことができる。
特にチェアマットなら掃除も簡単でキャスターの転がりも良くお勧めだ。
また椅子などでキャスターが交換できるタイプなら、ウレタン樹脂製のものに変えるとフローリングへの傷を低減できる。
ただしワックスの表層や柔らかめのフローリングには多少跡が残るので、賃貸などで万全を期すならやはりチェアマットが良いだろう。
傷が出来てしまってから悩むより、多少の出費があっても損傷を作らない方が精神的にも楽なので、ぜひ防止策を取って欲しい。
賃貸のへこみは誰が直す?
マンションやアパートは退出時に原状回復の義務があり、管理会社が点検し損傷がひどければ補修費用を請求される。
そしてキャスターで付けたフローリングのへこみや傷は、借主負担となる可能性が非常に高いので注意が必要だ。
部屋を借りると常識的な注意を払って部屋を使うべきとした善管注意義務が発生し、これを怠って傷などを作ると損害賠償の対象となってしまう。
現在はキャスターによってフローリングに傷が付くことは広く知られており、払って当然の注意とされているのだ。
行政の発行する賃貸のガイドラインや、物件の入居規約などにも借主責任と明記されていることも多く、痛めてしまった場合は費用負担が避けられないだろう。
賃貸の補修は高額になりやすい
賃貸で行われる補修工事は、直接専門業者へ依頼する場合に比べ高額になりやすい。
まず大家は次に借りる人のことを考えるので、補修は目立たない程度ではなく徹底的に行われる。
例えばフローリングの傷はその部分の補修ではなく、張替えになることも多く当然費用は高額だ。
また大家側に「どうせ借りた側が払う金だ」という意識があり特に業者と値段交渉もしないため、業者の言うままの高めな金額で請求を回してくる。
さらに管理会社の中間マージンも乗れば、簡単な工事でもあっという間に数十万という金額になってしまうだろう。
賃貸で行われる原状回復費はかなり高額になると覚悟した方が良いだろう。
安易なDIYは出費を増やすだけ
高額な原状回復費用を抑えようとDIYを考えるかもしれないが、それこそ高額出費になるため避けたほうが良い。
前項で触れたが貸主側は次に入居を検討する人に敬遠されないよう補修したいため、ひと目で補修跡がわかるようなDIYは全く意味が無く、再度その上に専門業者の補修が行われることになる。
これではDIYでかけた道具や材料の費用は無駄になり、さらにはDIYの補修を剥がす手間代も追加で請求されかねない。
ただでさえ割高な補修費にこれらが加われば、今回ご紹介している補修の中で最も高額な出費になるだろう。
賃貸にDIYを行うことはぜひ避けていただき、賃貸の規約で可能であれば、ご自身で補修業者を手配するなどで出費を抑えた方が間違いないだろう。
優れた補修屋を見つけるポイント!
(へこみからの剥がれの補修 ビフォーアフター)
もしフローリングのへこみなどを自己負担で直すなら、リペアのプロフェッショナルである補修屋がお勧めだ。
補修屋とはあらゆる住まいの傷に精通し、床に限らず壁やドアなどにできた損傷を、ピンポイントで消し去ってくれる。
百聞は一見にしかず、その腕前がわかる動画をご紹介するので、依頼を検討してみたらいかがだろうか。
補修屋の技術費用相場
補修屋の技術費用相場は1箇所およそ15,000円〜であり、損傷の状態によって変動する。
以下に損傷の種類別に費用相場をご紹介するが、詳しく知りたい方は損傷の状態や大きさがわかる画像をメールすれば無料で見積もりをしてくれるので、一度依頼してみると良いだろう。
補修内容 | 技術相場金額 |
フローリングの浮き、剥がれ | 40,000円〜 |
フローリングの傷、凹み | 25,000円~ |
フローリングのシミ | 30,000円~ |
ペットによる傷 | 45,000円〜 |
※損傷サイズにより増額の場合あり。材料新規取り寄せ・出張費等は別途費用。
実績を目で確認できる補修屋を選ぶ
補修屋と一口に言ってもその技量は様々なので注意が必要だ。
中には他の分野の建築職人が小遣い稼ぎで行っている場合もあり、本職の補修屋とは仕上がりが雲泥の差だ。
特に補修跡がわからないように直してもらうには、十分な経験を積んだ本職の補修屋を見極める必要がある。
優れた補修屋を見つけるのに最も大切なのはその実績を確かめることであり、例えば自社サイトで過去の補修事例を画像つきで紹介していると信用に値するだろう。
くれぐれも言葉だけの「実績豊富」に惑わされないで欲しい。
火災保険で自己負担費を最小限に
プロの補修屋に依頼したいが金額がどうしてもネックだ、という方はご自身が加入する火災保険を見直してみよう。
フローリングのへこみに火災保険?と不思議に思われるかもしれないが、現代の火災保険は台風などの自然災害や盗難の被害など、住まいを広くカバーする総合保険になっている。
今回のキャスターによるフローリングのへこみも、条件によっては保険で補修費用が補償される可能性がある。
ここではどのような場合に保険が使えるのか、そして保険利用時の業者選択の注意点をお伝えする。
どのようなケースで保険が使えるのか
持ち家で加入している火災保険なら「不測かつ突発的な事故による汚損・破損」という項目がないか確かめてみよう。
これはうっかり建物を傷つけてしまった場合に補償するもので、その機能に支障が出ている場合に適用されやすい。
損傷した日時や原因がはっきりしている必要があり、逆にいつの間にか傷ついていたというケースは除外される。
一方で賃貸の場合は入居時に加入した家財の火災保険に、借家人賠償責任担保特約があれば補償の可能性がある。
これは大家に対して損害賠償をする場合に補償するもので、条件が合えばフローリングのへこみなども対象になる。
いずれも保険加入時の書類で確かめ、どうしても不明な場合は保険会社に問い合わせてみると良いだろう。
保険利用時の業者選びに注意
保険を利用して補修を行う場合、依頼する補修屋選びでぜひ確認して欲しいのが、保険の申請実績だ。
保険で補償してもらうには、傷の原因や状態を正確に保険会社に伝えなければならないが、これは専門業者でも経験が少ないと難しい作業だ。
申請に不慣れな業者に依頼してしまうと、書類の不備で折角保険料を支払ってきたのに補償を受けられないことあり得る。
保険利用で補修依頼をする際は必ず申請の実績を確認するようにしよう。
まとめ
キャスターで付けてしまったフローリングのへこみや傷は、放置せず早急に対処をしなければならない。
DIYが可能ならそれが最も素早くコストを抑えた補修となるが、賃貸では無駄になり、逆に高額な出費になりかねない。
そこでお勧めなのがリペアのプロである補修屋だ。
補修部分に絞って直すため手頃な費用で依頼でき、しかも腕の立つ者なら跡が全くわからないように仕上げてくれる。
しかも火災保険が適用になれば自己負担を最低限で実現可能だ。
ぜひ一度見積もりを取るなどして検討してみることをお勧めする。
株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士
一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。