【ゼロ円】雨樋修理、屋根リフォーム、雨漏り対策の「修復ラボ」

樋の構造や名称を徹底解説!これで点検・修理もお手の物!

雨樋は軒や壁に支持体で固定される構造なので強風に煽られての破損や雨樋に積もった大雪の重さで支持体が破壊して雨樋が落下する事故が発生しやすい。

雨樋の修理は、高所作業となる場合が多いので、専門家に依頼することをお勧めするが、丸投げで依頼するのと、見積依頼時に雨樋の部分名称や部材の名称をテクニカルタームで説明するのでは工事会社の印象が大きく異なる。

良く知っている施主として専門家も一目を置いてくれるので、過大な見積や手抜き工事の可能性が低くなる。本稿を熟読することで構造や名称を身につけて欲しい。

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雨樋の役割を理解しよう

日本の木造家屋では、お馴染の雨樋だが、屋根の終端の側面に頼りなげに取り付けられている、と言うのが正直な印象だろう。また、スタイリッシュにデザインされた家屋をダサい様に飾り付けていると感じるのは筆者だけだろうか?

だが、雨樋は家屋にとって重要な役割を果している。これは、雨による家屋の劣化を防止するのだが、具体的には、以下に示す事項だ。これらは、雨樋が存在しない状態を想像すれば容易に理解できる現象だ。

雨樋の果す役割を端的に表現すると、屋根部に降った雨水をスムーズに排水路(雨水用の下水路)へ放出する、と言うことだ。これには、以下に示す効果がある。

①壁面が雨水に晒されるのを防ぐ

⇒壁面のクラックから雨水が侵入し壁面内部が腐食されるのを防止

⇒屋根と壁面の接合部が雨水に晒されて雨漏りが発生するのを防止

②家屋の基礎部近傍に雨水が溜まるのを防ぐ

⇒基礎部近傍に雨水が滞留し、基礎部が不安定化(不等沈下)するのを防止

⇒基礎部近傍が雨水で高湿度化し、シロアリの発生を誘発するのを防止

地味な存在の雨樋だが、家屋の長寿命化やメンテナンス実施間隔の長期化に大きく貢献すると言う、縁の下の力持ちならぬ、壁の上の名脇役である。

更に付け加えるならば、雨天の時に軒先の至る所から雨水が滴り落ちていると家屋への出入りや軒先の歩行が快適に行なえないが、雨樋の存在により、雨天時の住生活が快適に行なえることになる。

雨樋の部位・金具の名称と全体構造を把握しよう

建築関係者以外では、雨樋に部分名称が存在していることを知らないだろう。

多くは、雨樋という名称は屋根が壁から張り出している軒先に設えられた半月状の雨を受ける水路と雨水を下水に流すパイプ全体を意味しているとしか理解していないだろう。しかし、雨樋は複数の部材が組み合わさって機能を果たしている構造となっている。

建築関係の専門用語は一般人には把握が困難な程、細分化が進んでいる。だが、専門家と良好なコミュニケーションを築くには、相手の用いる用語を理解しておくことが必須だ。ここでは、雨樋の部位の名称と全体構造を把握しよう。

図1.は雨樋の部位の名称を示したもので、実物の雨樋を見ると種々の部品・部材で構成されていることが解る。部品・部材で構成されていることは、夫々が名称を有していることを意味しており、図1.に示すような細かい部品・部材まで名称が付けられている。

図1.雨樋の部分名称

雨樋は、水平の構造体と縦方向の構造体に大別できる。縦方向の構造体の構成要素は、塩ビのパイプと継ぎ手及び固定の金具で、これらの名称は雨樋独特の名称と言うより、パイプ類の一般的な名称が用いられている。一方、水平の構造体は、雨樋独自の構造と名称だ。

このことから、雨樋の名称は、水平の構造体を構成する部品・部材の形状と名称を覚えておけば、多くの場面で役立つことを意味している。

例えば、たて樋の部分は、寸法を指定して“塩ビのパイプ”と言えば、理解可能だし、エルボもL字の塩ビパイプと言えば理解してくれる。また、“打ちこみ”も塩ビパイプを固定する金具、と言えば解る専門家は多い。

雨樋の部品部材の独特なデザイン

雨樋は、塩ビパイプの集合体だが、雨樋独特の機能とデザインを有した部品がある。これは、水平の構造体である“軒樋”と言われる屋根から流れ落ちる雨水を受け止める半円又は角状の水路を縦のパイプと繋ぐ集水器(又はじょうご)と呼ばれる部品・部材だ。

この部分は、図1.にも記載されているが、解り易い様に拡大した様子を図2.に示すので参照して欲しい。この部分は、軒の側面に軒樋が張り付いた様に見える地味な印象しかない雨樋の中で、この部分は存在感が際立つところだ。

ただ、前述した様に雨樋は、決してスタイリッシュや優雅な存在ではなく、材料的にも塩ビパイプを用いている例が多いので、高級感も感じられない、と言うのが正直な感想だろう。

図2.雨樋の独特なデザイン部

だが、竪樋の部分は単調な家屋の壁面の装飾材料として作用する可能性がある。出窓でない単純な窓しか存在しない壁面に複数の竪樋が整然と並び、材料的にも銅製であれば、高級感とアクセントを作り出すことができる。

雨樋の部品・部材と金具の外観写真

雨樋は、凡そ全ての家屋にあり、一瞥すると単純な構造体の様に見えるが、前節で述べたように数多くの部品・部材の集合体だ。それ故、修理を実施しようとすると正確に部品・部材の名称を施工会社に伝えた方が間違いを起こさない。

【部品・部材の外観写真】

名称を覚えるには、実物を目にすることが効果的であるので、ここでは写真で雨樋の代表的な部品・部材を紹介しよう。これらの名称と形・機能が脳内でニューラルネットワークが構成されれば記憶が定着したことになる。

図3.に示す雨樋の部品・部材の名称と外観写真を示すので特徴を捉えてほしい。

図3.雨樋の部品部材の外観

図1.と図3.の名称が異な部品・部材が存在するが、地域差・流儀で名称は変化するので、色々な言い方がされていると理解して欲しい。名称の付け方の特徴として、その機能、形状、プロセスに注目している。

例えば、軒樋と竪樋の連結部分である“集水器”は、軒樋を流れる雨水を集める機能が名称となっているし、“じょうご”は、形状から名付けられている。また、“打ち込み”は、固定する際に、壁や軒に打ち込むプロセスから名称が付けられている。

雨樋の部品を単体で見てもどんな役割をするのかイメージがしにくいかと思われる。では、下記にて雨樋の各部材の役割について簡単に説明する。

雨樋の各部材名称
【軒樋(注1)】 屋根の軒先に設けられている。屋根から流れる雨を受ける役割を持っている。
【丸樋(注2)】と【角樋(注3)】 外壁に沿って縦に設けられる。軒樋から流れる雨を流し下水または地面に流す役割がある。縦樋の形状は丸と角の2種類があり、それぞれサイズも複数ある。
【ジャバラ(注4)】 主にカーポートやバルコニーに設けられた樋に使われる部材。軒樋から流れる水を流す役割があり、

形状がジャバラになっていることから自在に曲げることが可能。

【ジョイント(注5)】 縦樋を継ぐための部材。ジョイントまたはたて継手とも呼ばれる。雨樋の形状に合わせて丸樋用と角樋用がある。
【エルボ(注6)】 縦樋を曲げるための部材。エルボには90°105°など角度が固定されたものと角度調整ができる自在型がある。また、雨樋の形状に合わせて丸型と角形のエルボもある。
【継手(注7)】 軒樋を継ぐための部材。縦樋と同様に丸樋用と角樋用がある。
【じょうご(注8)】 軒樋から流れる雨水を集め縦樋へ流す部材。じょうごの他に集水器と呼ぶこともある。
【樋網(注9)】 軒樋の中に落ち葉が溜まるのを防ぐために設ける軒樋用の網。
【曲がり(注10)】 軒樋を曲げるための部材。
【金具(注11)】 図にあるのは縦樋を固定するための金具。外壁にビス留めするタイプと先端が尖っていて穴を開け打ち込むタイプがある。名称は縦樋金具でも通じるが「でんでん」とも呼ばれている。軒樋を受ける金具の名称は樋受け金具となっている。
【止まり(注12)】 軒樋の端を止める部材。軒樋の両端は何も塞がれていないため、図のような部材を取り付けて塞ぐ構造となっている。

尚、前述の雨樋の部品・部材の外観写真は、アマゾンで検索した結果得られたたもので、本編末尾にURLを示しているので参照して欲しい。

雨樋の材質と形状の種類

雨樋の材質は塩ビ製と銅製のものがある。塩ビ製の雨樋は施工性が高く材料費も安価なため現在では多く普及している雨樋だ。軒樋や縦樋はプラスチック用の鋸で簡単にカットができるので調整が用意となる。

また、各部材も専用の接着剤で止めるだけとなっている。塩ビ製雨樋の欠点は仕方ないことではあるが経年変化による劣化だ。劣化が生じると色あせして建物の美観を損なう。

また、雨樋の割れや歪みも生じるため水漏れが起きる。一般的に塩ビ製雨樋の耐久年数は20年程だが、施工は足場の設置が必要なため、メンテナンス時期はタイミングを見て行うことが大切だ。

続いて銅製の雨樋についてだ。素材が銅であることから意匠性に優れ純和風住宅にふさわしいデザインとなっている。銅製でも「ステンレス+銅メッキ」「ステンレス+純銅」「純銅」の3種類があり、それぞれ特徴が異なる。

銅製の雨樋の特徴として年数による色の変化が味わえる。銅の色は赤橙色→褐色→黒褐色→緑青色と変化していく。きれいな緑青色になるまでは15年から20年かかるが、年数と共に風合いを感じることができるのは銅製雨樋の特徴だろう。

ただし、銅製雨樋の欠点は部材の金額の高さだ。一般的な塩ビ性の雨樋に比べて値段が高いばかりでなく、代用できる部材も少ないため部分的に交換することができない可能性がある。また、銅製の雨樋は耐久性が高くなっているが、電飾が原因して腐食し穴があいてしまう恐れがある。原因は瓦に含まれる成分との相性によるもののため、銅製の雨樋を設置する場合は、屋根に葺かれている瓦との相性がいいか確認をとることが大切だ。

銅製の雨樋については下記の記事で詳しく説明しているので、良ければ参考にしていただきたい。

<銅製雨樋の修理費用の相場とDIYでできる補修方法を解説!>

https://shufukulabo.com/copper-gutter#i-28

前述した雨樋の部材名称でも触れたが、雨樋の形状は種類が複数ある。軒樋は半丸型と角型、縦樋は丸型と角型だ。昔の住宅の軒樋の多くは半丸型だったが、集水量が増えた角型が現在では多く採用されている。ただし、縦樋で多く採用されているのは丸型の縦樋だ。

そのため現在建てられている住宅の雨樋は「軒樋:角型+縦樋:丸型」の組み合わせが多く普及している。ただし、モダンなデザインから角型の縦樋を採用している住宅もあるが、普及が多い丸型に比べて在庫数が少ない場合や、取り扱っている店が少ないことから丸型の縦樋の方が欠品のリスクがなくメンテナンス時も迅速な対応ができる。

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意外な部品・部材も用意されている

雨樋は、軒の周囲に設置されているために、風雨に晒されており、木枯らしの吹く季節には木々の葉が軒樋に堆積することがある。この軒樋に堆積した落ち葉を長期間放置しておくと悪さをすることがある。

図1.や図2.にある様に屋根部に降った雨水は屋根を流れ落ち軒樋が受け止め、集水器に向かって流れ、たて樋を通じて、雨水用下水道へと排水される。だが、軒樋に落ち葉が堆積していると集水器への流入を阻害することがある。

軒樋から集水器への流れが悪化すると雨量によっては、軒樋から雨水が溢れ出すので、雨樋の役割を果すことが出来なくなる。要は、雨樋が設置されていない状態と同様となってしまう。

そこで、図3.の(注9)に示す樋網が用意されている。これは、軒樋の開放部を網で覆うことで落ち葉の軒樋部への侵入を防止することができる。

雨樋のメーカーと購入できる場所

雨樋を販売するメーカーは複数あるため、ここでは雨樋メーカーの紹介と特徴についてお伝えしていく。

ここで商品知識を身につけて、ぜひ雨樋を選定する時の参考にしていただきたい。

【Panasonic(パナソニック)】

Panasonicは水回り設備から内装建材、グループ会社のケイミューとの関係からサイディングなどの外装材、太陽光パネルなど幅広く扱っているメーカーだ。電機メーカーのイメージが強いかもしれないが建材メーカーとしての歴史は長く、旧名でいうとナショナルでいろいろな製品を販売していた。

雨樋も同様にナショナル名で販売されていたこともあり、現在ではPanasonic名で新しい雨樋を販売している。Panasonic製の雨樋は硬質塩化ビニル樹脂の中にスチール芯を入れて一本化し強度を上げた雨樋が特徴だ。

【積水化学工業】

積水化学工業も長い歴史を持つ大手メーカーだ。販売する雨樋エスロンは高い品質とたわみの少ない耐久性を持ち、施工性を高めた雨樋の部品のシステム化がされている。角タイプの雨樋から丸型の雨樋も商品ラインナップに揃えられていて、外観に適した雨樋の選定が可能だ。

【三菱ケミカル(旧三菱樹脂)】

旧社名の三菱樹脂は現在合併し三菱ケミカルとなっている。樋表面には高耐候性特殊樹脂層を設け、従来の塩ビ製品より耐候性を上げている。また、鋼板を芯材に使用、さらに表面には塩ビフィルムを積層しているため、塩ビ製の雨樋と比較して温度による伸縮が小さく、錆や腐食に強く紫外線劣化などが起こりにくい素材となっている。

【タキロンシーアイ】

2017年合併によりタキロンからタキロンシーアイに社名が変更された。このメーカーはタキロンの時代から合成樹脂製品の製造、加工、販売を行う大手メーカーだ。雨樋の他にも配管類や貯水タンク、バルコニーのデッキ材など樹脂製の住宅建材を販売している。

タキロンの「サイホン雨どいシステム」は排水能力の向上と従来の縦樋の数を半分に抑えることが可能となっている。また、縦樋のサイズは40mm×40mmの角型と非常にスリムな形状だ。

【DENKA(旧電気化学工業株式会社)】

デンカ株式会社は電子部材やセメント、ワクチンなど様々な化学製品を扱っている日本の総合科学品会社だ。住設資材も販売し以前よりトヨ雨どいブランドを取り扱う。特徴は商品マークとなっている軍配(グンバイ)が雨樋にも印字がされていて、他メーカーを見分ける目安となる。商品ラインナップも丸タイプの雨樋から角型の雨樋と豊富に揃えられている。

【タニタハウジングウェア】

金属樋の専門メーカーとして有名でガルバリウム製、銅製、ステンレス製の雨樋を取り扱っている。住宅向けの雨樋はガルバリウム鋼板が主力だが、もともと銅製の雨樋の評価も高い。雨樋の他にも屋根材も扱っているメーカーだが、金属製であるため他メーカーと比べると金額が高く採用する際はある程度の予算がかかる。

【雨樋を購入できる場所】

雨樋を購入する際はネット通販やホームセンターで購入することができるが、上記でご紹介したメーカーすべてが取り扱われているわけではないので注意していただきたい。

Panasonic製や積水化学工業製の雨樋はホームセンターで取り扱われているところもあるが、その他のメーカーは取り扱われていない可能性が高い。もし、購入したいメーカーが取り扱われていない場合はネット通販かメーカーから取り寄せとなる。

また、実店舗では最近少なくなってしまったが金物屋でも手に入れることができる。専門職の人が利用する店のため入りづらい印象があるかもしれないが、通常の店と同じで現金で購入することができ、扱っている建材製品も豊富でおすすめだ。

樋は屋根の形状によって取り付けも変わる

普段から屋根の形状を注意深く見ることは少ないかもしれない。現在建てられている住宅はいろいろな屋根の形があり、その形状によって雨樋の数量や取り付け方も異なってくる。ここでは、日本家屋の屋根の名称と形、樋の取り付け方についてお伝えしたい。

日本家屋の屋根の名称・形と樋の取り付け方

屋根の形状は細かく分けると数種類とあるため、ここではほとんどの住宅に見られる「切妻屋根」「寄棟屋根」「片流れ屋根」の3つを紹介する。

「切妻屋根」

上空から見て四角形の面が2面で構成、軒先は勾配が流れる側の屋根両端2方向となっている一般的な屋根だ。シンプルな形状から雨漏りのリスクが少ない。

「寄棟屋根」

屋根面が4面で構成されている屋根で、4面のすべて三角形に構成されているのが「方形屋根」という。4面のうち2枚の屋根面が台形となっているものもあるが、ここでは同じ寄棟として扱う。寄棟は切妻屋根のようなケラバはなく、代わりに軒先は四方となっている。

「片流れ屋根」

流れが一方だけの屋根となっている。屋根面が1面のみなのでコストを抑えることが可能。雨漏りが発生しやすいと言われているため、雨仕舞いがしっかり施工されていることが重要だ。

【屋根の名称】

上記の画像に屋根の基本的な名称を記した。

画像のようにケラバがあり軒先が2方向となっているのが切妻屋根であり、ケラバがなく四方に軒先がある屋根が寄棟屋根となる。屋根の一番高いところが棟といい、この箇所には棟板金という金属製の部品が取り付けられている。

【屋根形状による雨樋の数量の違いと雨樋の選定の注意点】

雨樋は屋根形状によって取り付け方が異なり、軒樋は基本的に軒先に取り付けられる。そのため寄棟は屋根周囲にぐるりと軒樋を取り付ける必要があり、軒樋のメーター数と集水器の数も増える。このように屋根と雨樋は深く関係するため、屋根の名称を知っておくと雨樋工事の時も理解がしやすくなるだろう。

また、リフォーム時に注意していただきたいことがある。それは屋根材が変わることで、雨樋の機能が果たせなくなってしまう恐れだ。例えば瓦屋根からスレート屋根または金属屋根にリフォームすると、屋根の高さが変わるため今まで雨水を受けていたのが、上手く軒樋に入らなくなってしまう可能性がある。そのため屋根材の高さが変わる場合は、屋根工事と一緒に雨樋の交換をしなければいけないことを理解しておこう。

樋の損傷を最小限に抑える方法

地震以外の自然の脅威は、天気予報のかたちで容易に来襲を知ることが可能な時代だ。これは事前に種々の準備ができることを意味している。また、災厄は過去った後の始末の仕方で将来の出費を削減できる。ここでは樋の損傷を抑えていく方法と修理が必要な時の工事手配などの流れ、修理に活用できる火災保険についてお伝えしていく。

事前準備(点検)と事後対応(点検・修理の手配)について

事前の準備の代表例は、火災保険の様なリスクファイナンスだ。火災保険に関しては、後述するので参考にして欲しい。そこで、ここでは台風の襲来を例に、台風襲来に備えた事前の準備について説明する。

事前の準備と言うと、台風の来襲に備えて特別なことを行なう様に感じるが、日頃から家屋周りの掃除を行なっているのであれば、平常の活動を平然と行えば良いだけだ。清掃を日常的に行なうことで、家屋や家屋周りの状況を把握できるからだ。

また、日常的に家屋等の掃除を行なっていなのならば、台風の来襲の前に点検を兼ねて掃除を行なうことをお勧めする。更に台風の通過後に点検を行なえば、これにより前後の比較が可能となる。

【事後対応:点検・修理の手配】

上記で事前の準備の重要性を述べたが、台風が過去った後の始末も重要項目だ。これは、窓ガラスが割れて、風雨が吹き込む等の明白なアクシデントが発生しないと家屋のダメージは、把握し難いからだ。

家屋のダメージを察知するには、前述の日頃の点検・清掃の実行が役立つ。これなしに雨漏りや窓ガラス割れの様な目前に破損の結果が現れる重大事故以外のダメージを見つけることは困難だ。

例えば、軒下の壁に小さなダメージを受けて雨が染み込んでも、当初は問題の発生はないが、長期に亘ると壁の内部が腐食し補修に多大の費用を要することになる。この様に微細なダメージを放置すると大きな損失を招くことがある。

それ故、“たいしたことは無い”、と判断せずに専門家の診断を仰ぐことをお勧めする。

施工業者依頼時の注意点

施工会社と日頃付き合いのある方は、少数派で、どこに修理依頼していいのか解らない、と言うのが多くの方の正直な感想たろう。ここで、注意したいのは少数ながら依頼主の無知に付け込んで過大な費用を請求する業者が存在することだ。

悪徳業者を排除するために、以下①②③の事項に留意して業者探しを行なうことだ。

①競争見積/あい見積  

株式の様に市場で日々価格が形成されているものであれば客観的な価格を把握できるが、住宅工事の様に請負仕事の場合には、発注者には適正価格が解り難い。そこで、複数の業者より見積を入手して、比較検討することをお勧めする。

ただ、注意すべき点は、○▲修理一式的な見積もりでなく、材料費や人件費等を個別に記載した詳細な見積を作成する様依頼することだ。その際に、個別事項は同一項目(名称)で記載してもらえば、比較が容易になる。

また、依頼する業者には競争見積もりであることを依頼時に併せて知らせよう。多くの施工会社は、この時点で難点を示すことはないので、ここで難色を呈するような施工会社は選外とした方がいい。

②契約書の締結

契約書無し・口約束で修理を急がせる業者は論外だ。見積書自体も契約書としての効果を有しているので全ての修理に対して別途契約書の作成は、仰々しさを感じるが、金額が大きいと感じるならば契約書は交わした方がいい。

③提案力と工事の内容説明

適正な価格で原状回復+αの工事を提案してくれる業者が提案力のある施工会社で、火災保険の適用の仕方もアドバイスがあれば採用候補だ。また、修理の工事内容についても素人に解り易く説明してくれる業者が最有力となる。

火災保険は事前・事後の有効なリスク対策だ

火災保険は、災害リスクに対するリスクファイナンスを加入者に提供する仕組みだ。火災保険は、火災のみならず、種々の災害に対しても補償が行渡るように保険の対象とする災害を選択できる。

リスクファイナンスとは、被災した場合の損害を金銭的に補償することで、リスクの現実化による損害を保険者へ転換する仕組だ。火災保険の加入者は、この仕組みの利用料として保険料を支払うことになる。

火災保険は、事前には、加入者に対してリスクファイナンスを通じて安心を提供し、事後には被災の大きさに相当する金銭的な補償を提供する。これによって被災者は、生活再建を図ることができる。

火災保険の加入時の注意

火災保険を真にリスクファイナンスとして機能させるには、火災保険に漫然と加入してはならない。火災保険は、火災だけでなく種々の自然災害や事故にも対応した保険だが、デフォルトで全ての災害や事故に対応している訳ではなく、加入者が選択すると考えた方がいい。

対応する災害・事故を賢く選択してコスト(保険料)を押さえても、住居地で遭遇する災害・事故はカバーできている、と言った状態を実現したいものだ。このためには以下に述べる点を注意して欲しい。

①リスクの認識

所在地を襲う可能性のある災害・事故の種類と発生確率を調べよう。如何なる所在地でも自然災害や事故は発生するが、発生確率は所在地により異なるので地形的(台地や低地等)・地質的(埋立地等)・環境的(建物・施設・河川等)要因を調べよう。

②ハザードマップの調査

地盤の液状化や洪水の発生しやすさ等は、地方公共団体がハザードマップで公開している。これらの情報をチェックすればハザードマップ記載の災害の発生確率を定性的に把握できる。

③記録のチェック

過去の被災記録をHP上で公開している市町村があるのでHPで災害記録をチェックしてみよう。また、市町村の窓口に問合せてみることも有用だ。付加的な情報を入手できる場合がある。

④旧町名確認

旧町名も歴史を記憶しているので、市町村の窓口を訪れた際に聞くことをお忘れなく。所在地が●▲新田という旧町名であれば、田圃を埋め立てたところと解るし、水に関係する地名であれば池や沼であった可能性が高い。

⑤局所的な情報を入手

上記は、地域的にマクロな情報を入手するのに役立つが、所在地自体の特徴を掴むことも必要だ。そのためには古くからの近隣の住人へのインタビューが欠かせない。また、自身で近所を歩き回ることも必須だ。歩き回ることで土地の高低や周辺施設を明確に把握できる。

強風がやってくる

気候変動の影響で台風が強大化しており、過去最大級クラスの台風が襲来することも多々ある。従来では、台風が来襲しても、大事とならないような地域でも台風による強風で被災することもある。

特に、樋は軒や壁に沿う様に配置され、金具で固定されているだけなので風に対する耐性が高い構造物とは言えない。そこで、台風の前後の点検を疎かにしてはならい。また、火災保険の対象災害も風に起因する被災は必須の選択だ。

また、強風で庭木が被災することもある。傾くことや倒れたりすることもあるので雨樋の位置関係も把握しておくことも必要だ。屋根と同程度の高さの庭木が倒れると雨樋に被害が及ぶ可能性が高い。

更に、近隣の建物の配置も風の強さに影響を与える。風の吹いてくる方向に風を遮る建物が無いと、思わぬ風害を受ける可能性があるので、自宅周辺のチェックを行うようにして欲しい。

まとめ

家造りの中心は大工さんを代表例とする職人だ。職人の世界は、細々としたものまで専門用語で規定されているので、話しを聞いていても具体的に何を示しているのかが理解し難いことがある。今回の樋に様に単純な設備でも種々の部品・部材で構成されているので厄介だ。

本稿は、台風等の災害で損害を受けやすい樋について、部分名称や部品・部材の名称を解り易く説明したので、参考にして欲しい。また、本稿を熟読して専門用語を習得すれば、専門家にも一目置かれる存在となり、過大な費用請求や手抜き工事防止に役立つ。

注1)軒樋

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注2)丸樋

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注3)角樋

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注4)ジャバラ

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注5)ジョイント

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注6)エルボ

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注7)継手

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注8)じょうご

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注9)樋網

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注10)曲がり

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注11)金具

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注12)止まり

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株式会社アーキバンク代表取締役/一級建築士

一級建築士としての経験を活かした収益物件開発、不動産投資家向けのコンサルティング事業、及びWEBサイトを複数運営。建築・不動産業界に新たな価値を提供する活動を行う。